異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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大陸版9周年イベントの情報が発表されましたね!
建造URはゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン、配布URはU-2501、そして久しぶりの改造はアドミラル・ヒッパーと盛りだくさんでしたね!

これは日本版9周年も楽しみですねぇ


386.軍神進撃【12】

──中央歴1643年3月6日午後5時、ムー北方海域──

 

「日が落ちてきましたね…」

 

グラ・バルカス帝国海軍所属のヘルクレス級戦艦『エヴェクレス』の艦長である『ヤルエン・マッキャル』は、夕日で赤く染まった海を開いているのか閉じているのか分からない目で見渡しながら、苦々しく呟いた。

レーダーも通信も使えない現状、夜戦に縺れ込む事は避けたいところだが、それは敵も同じであるし、何より敵の有力な航空戦力を封じる事が出来るため決して悪い事ばかりではない。

 

(それに加えてこの磁気嵐では敵も電波は使えない…ならば状況は五分五分かつ、我が方の練度で逆転出来るはずです)

 

磁気嵐の正体が異世界国家軍による電波妨害だと知らないヤルエンは夜戦にもつれ込めば練度の差で勝利出来ると考えていた。

しかし、彼の想定は甘いと言わざるを得ない。

 

《敵艦捕捉!巡洋艦1、駆逐艦3!小規模な水雷戦隊と思われます!》

 

「水雷戦隊…カイザル司令の話では異世界国家軍は魚雷を実用化したという話でしたね。接近されると厄介です。少々狙いは付け難いでしょうが、ここで仕留めましょう。全艦、砲戦用意!」

 

エヴェクレスの主砲が旋回し、砲身が仰角を付ける。

それに倣うように僚艦の巡洋艦と駆逐艦も主砲を用意し始める。

敵艦隊との距離は20kmあるか無いか…巡洋艦の主砲でもギリギリな距離であるため、彼らの役目はエヴェクレスの砲撃を潜り抜けた敵艦隊への対処だ。

 

「砲撃開始……」

 

《2時の方向、光った!》

 

「何!?」

 

攻撃の命令を下そうとしたヤルエンだったが、見張員からの報告に面食らった。

 

──ヒュゥゥゥゥゥゥ……ズドォォォォォンッ!

 

 

「ぐっ…!?」

 

エヴェクレスの直近に立ち登る巨大な水柱。

それは排水量4万トンにも及ぶ巨艦を左右に大きく揺さぶり、ヤルエン達は手近な物に掴まって転ばないようにするのが精一杯であった。

 

「誰か落ちたぞ!」

「あ…頭を打った…」

「おい!大丈夫か!?」

 

当たっていないなら被害は無い…と思ってはいけない。

着弾の衝撃はもちろん、海中で炸裂した砲弾の衝撃波は空気より密度が高い海水を伝播し、エヴェクレスの艦底に強い打撃を与えたのだ。

 

「まさか…敵戦艦!?見張員は!?」

 

「先程から呼びかけていますが応答がありません!おそらく落下したのが…」

 

見張員は遠くまで見渡す為に艦橋の最も高い位置にある見張台に立っているのだが、見張台は視界を確保する為に屋根も壁も無く、落下防止の為の胸壁がある程度だ。

艦橋の根元にいるヤルエン達がこんなにも揺さぶられたのだから、艦橋の頂上近くに居た見張員は自身の腕力ではどうしょうもなかったのだろう。

 

「…今は救助する余裕がありません。誰か夜目が利く者を代わりに」

 

救助とは言うが、エヴェクレスの見張り台は海面から40m程の高さがある。

そんな高さから落ちたとなれば、海面はコンクリートのような硬さとなっていただろう。

 

「しかし、此方が視認出来ない距離から砲撃とは…威嚇がまぐれ当たりしたか…」

 

「2時方向、再び光りました!」

 

「いや、これは間違いなく此方を認識している!総員、対衝撃体勢を!」

 

ラッキーパンチだと考えていたヤルエンだったが、視察窓から外を伺っていた通信士の言葉にそれは間違いだと悟った。

 

──ヒュゥゥゥゥゥゥッ!

 

「不味い…取舵一杯!」

 

砲弾が落下してくる風切り音が先程よりも強いものだと気付いたヤルエンは顔を青くして回避を命令する。

しかし、それは無駄な悪あがきにしかならなかった。

 

──ズドォォォォォンッ!ゴォォォンッ!

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

耳をつんざくような轟音と内臓を掻き乱すような衝撃…そして右舷艦首側で立ち登る炎が混ざった水柱。

 

「右舷艦首側被弾!状況を報告せよ!」

 

《こちら第一砲塔弾薬庫!し、浸水が発生している!我々では手に負えない!》

 

「弾薬庫…!」

 

艦内電話により副艦長から報告を求められ応えたのは被弾位置に最も近い第一砲塔、その弾薬庫からだった。

 

「水中弾を貰ったようですね…」

 

戦艦程の装甲があれば至近弾であっても酷くて舷側装甲が歪み、浸水が発生したり配管や配線の断裂が発生する程度だろう。

しかし今回被害を受けたのは、装甲や隔壁に守られた弾薬庫…それを受けてヤルエンは水中弾の直撃を受けたと判断した。

砲弾は水面に着弾すると、時折水の抵抗によって針路が変わって水平に近い角度で水中を進む事がある。

それこそが水中弾であり、これが厄介なのだ。

水中を進む砲弾は魚雷のように振る舞う事はもちろん、硬く強靭な鉄塊である砲弾は魚雷よりも強い運動エネルギーで衝突する為、衝撃波を吸収する事を目的とした対魚雷防御を貫く可能性があるのだ。

 

「……サーチライトを」

 

「はっ!サーチライト、用意!」

 

僅かな間逡巡したヤルエンはそんな命令を下し、副艦長がそれを復唱した。

敵戦艦はエヴェクレスに損傷を与える程の主砲を持ち、なおかつレーダーが使えず目視も難しい時間に正確に目標を探知して攻撃する能力を持っている。

それが巡洋艦や駆逐艦に振るわれれば艦隊は崩壊してしまうだろう。

故にヤルエンが決断したのは戦艦のもう一つの武器を使う事であった。

 

「サーチライト、照射!」

 

──ボンッ!ボンッ!

 

爆発のような音と共にエヴェクレスに装備されたサーチライトが灯る。

軍艦に装備されたサーチライトは我々がよく目にする野球場のナイター照明などとは比べ物にならない光量を持ち、10km先に居ても本が読める程だ。

時にはタバコの火ですら致命傷と成り得る夜戦でそんな光を煌々と灯すという事は、どうぞ狙って下さいと言っているに等しい。

しかし、ヤルエンの狙いはズバリそれだ。

 

「敵戦艦、発砲!」

 

「怯んではいけません!反撃を!」

 

──ドドンッ!ドドンッ!ドドンッ!ドドンッ!

 

エヴェクレスの主砲が一斉に火を噴き、闇が濃くなり始めた海を明るく照らす。

 

──ヒュゥゥゥゥゥゥ!

 

「また近い…取舵一杯!」

 

砲弾の落下音から至近弾、或いは直撃コースだと判断したヤルエンは回避を指示する。

しかし鈍い…第一砲塔弾薬庫への浸水を引き起こした右舷の破孔が抵抗となり、左への舵が効きにくい状態となっていたのだ。

 

「不味い!対衝撃体勢!」

 

ヤルエンが叫んだ瞬間だった。

 

──ゴガァァァァァンッ!

 

耳をつんざく轟音と視界を埋め尽くす爆炎、体がバラバラになりそうな衝撃…敵戦艦が放った砲弾のうち1発がエヴェクレスの第二砲塔右舷側に着弾したのだ。

 

「被害報告!」

 

「被害報告…第二砲塔右舷側に被弾!バーベットを貫通したようです!」

 

「なっ…!」

 

バーベットは砲塔の根元を包み込む筒状の装甲であり、戦艦の装甲の中でも重要視される装甲の一つである。

それが貫通されるとなれば、敵戦艦は少なくともエヴェクレスと同等かそれ以上の主砲を持っている事は間違いないだろう。

しかし、それでもエヴェクレスは弾薬庫に火が回る事なく浮いている。

そう、戦艦の武器は何も火力だけではない。

分厚い装甲による防御力と巨大による莫大な予備浮力、それらを活かした圧倒的耐久性こそが戦艦のもう一つの武器なのだ。

 

「大丈夫です。エヴェクレスはこれぐらいでは沈みません。サーチライトの照射と敵戦艦への攻撃を続行!本艦は麾下の巡洋艦及び駆逐艦を援護する為に囮となる!」

 

ヤルエンが下した決断はサーチライトにより味方艦の攻撃を援護しつつ、敵艦からの攻撃を全て引き受けるという事だ。

おそらく…いや間違いなくエヴェクレスは多数の被弾を受け、それに見合う死傷者が出て、最悪沈む事になるだろう。

しかし、エヴェクレスと引き換えに戦艦を含む敵艦隊を撃滅出来るなら十分な戦果だ。

 

「お供いたしますよ、艦長」

 

「ありがとうございます」

 

自らの右腕である副艦長の言葉に柔和な笑みで礼を言う。

もうじき辺りは闇に包まれる事だろう。

 

 

 




そう言えば着せ替えにモガドールがありましたが、やっぱりKAN-SENは空挺降下出来るようですね
流石にビキニじゃないとダメという事は無いはずですし
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