異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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あー…これは軍神進撃のくだり、確実に20までいきますね
あまり長くするとダレるので端折れるところは端折っていきますか


388.軍神進撃【14】

──中央歴1643年3月6日午後7時、ムー北方海域──

 

「敵艦、此方に接近しています!」

 

「傾斜の回復を早くしろ!」

 

グラ・バルカス帝国海軍所属の戦艦『オリオン』の艦内では艦長である『ネクル・ワードン』が檄を飛ばしていた。

ネクルはもう再来月には退官する年齢であり、この作戦が最後のご奉公だと決めて…いや、彼にとっては"やっと来た"退官の花道としていた。

というのもネクルは悪い意味で要領が良く、のらりくらりと軍隊生活を送っており、上手く二線級艦隊に所属するように動いていた事でオリオン級戦艦のネームシップであるオリオンの艦長にまで昇り詰めている。

そしてオリオンは年内の退役が決まっており、今まで一種の練習艦として活動していた。

つまりはやる気の無い艦長が指揮する退役間近の戦艦…故に夜戦の混乱で何処からともなく来た魚雷により損傷し、敵艦にここまで接近されてしまったのである。

 

「くそぉ…まさか退官間近になってこんな事になるとは…!」

 

退官して恩給を貰いながら悠々自適に暮らし、時折退役軍人会に出ては階級を振りかざして偉ぶる…そんなセカンドライフを送るつもりだったネクルは歯噛みする。

しかし、敵艦は帝国から見れば世代遅れにせよ、ムーとしては最新鋭戦艦である。

それを沈めたとなれば、恩給に多少の色が付くかもしれない…そんな邪な考えがネクルの脳裏を過った瞬間だった。

 

「傾斜、主砲旋回可能角度まで回復!」

 

「よ、よし!主砲により敵艦を攻撃する!主砲用意!」

 

オリオンは手負いであるが、それでも諜報により得られた敵艦…ラ・カサミ級戦艦に対しては圧倒的に優位だ。

しかも敵艦は主砲が使えないのか、高角砲らしき砲をがむしゃらに撃ってきている。

いいカモだ。

 

「敵艦、尚も接近中!速力、推定20ノット!」

 

「主砲早くしろ!主砲俯角の限界まで接近されては本艦でも手こずるぞ!」

 

先程まで離脱しようとしていたところでいきなり主砲準備だ。

急かしてもそう早くはならない。

 

「て、敵艦!速度を落としません!」

 

「なんだと!?このままではぶつかるぞ!」

 

敵艦ことラ・エルドの意図は正にそれである。

そしてネクル達もそれを察し始めていた。

 

「衝突回避!回避だ!」

 

「ダメです!間に合わな……!」

 

──グゴカァァァァァァンッ!!

 

まるで40cm級砲弾が直撃したかのような轟音と衝撃。

オリオンは回避しようとしたが間に合わず、右舷艦首側にラ・エルドの艦首が突き刺さる形となった。

 

「うっ…うぅ…被害は…?」

 

「被害報告!……何?艦長!敵艦甲板に乗組員が集結しているとの事!」

 

「は…?」

 

衝突の衝撃にふらつくネクルは、副艦長からの報告が理解出来なかった。

 

「ですから切り込みです!敵艦の乗組員が本艦に乗り込んで白兵戦を仕掛けて来ます!」

 

「……はぁぁぁぁぁ!?」

 

30年以上にも及ぶ海軍生活、その中でネクルは退官を目前に予想もしなかった事態に巻き込まれる事となった。 

 

 

──同日、ラ・エルド甲板──

 

「艦長!本当に行くんですか!?」

 

オリオンに突っ込んだラ・エルドの甲板、そこに集まった乗組員に混じって私物のショットガンを持ったテナルへ副艦長が呼びかける。

 

「海軍規範第76条『切り込みに際しては艦長が率先して率いるべし』だ。艦の事は一旦君に任せる」

 

「それが制定されたのはもう200年以上前ですよ…」

 

消されていないだけの古い規則を持ち出したテナルに副艦長は呆れるが、テナルがこうなってはもう梃子でも動かない事は熟知している。

故にそれ以上引き止めはせず、彼に敬礼した。

 

「この艦の艦長は貴方なんです。どうかご無事」

 

「ああ、君も」

 

副艦長と敬礼を交わしたテナルは首にかけたホイッスルを持つと、集まった乗組員へ向けて声を張り上げた。

 

「諸君!これはおそらくムー海軍史上最後の移乗攻撃となるだろう!永きに渡るムー海軍の歴史、その一端の最後に諸君らの名が刻まれるのだ!行くぞ!」

 

──ピィィィィィィィィィィッ!

 

肺いっぱいに吸い込んだ空気を吐き出し、高らかにホイッスルを吹き鳴らす。

それと同時に応急修理用の木材で作った即席のハシゴやスロープを伝い、武装したラ・エルドの乗組員がオリオンへの乗り移った。

 

──パパパパパパッ!パパパッ!

 

アズールレーンから製造設備ごと買い取った『MP40』が火を噴き、無数の弾丸がホースで水を撒くようにばら撒かれる。

それに対するオリオンの乗組員が持つのは陸軍工廠から調達したボルトアクションライフル、或いは士官が持ち込んだ私物の拳銃だ。

そもそもグ帝海軍の艦船乗組員は艦内警備、或いは上陸時に泊地警備隊の応援を行う程度の想定しかしていない為、武器の数も質も兵の練度もムーのそれに劣る。

 

──ズドンッ!ズドンッ!

 

「道を開けろぉ!我こそはムー海軍なるぞ!」

 

ムー水兵の猛攻にグ帝水兵は勝手知ってる艦内へ逃げ込むが、それは彼らを更に追い詰める結果となった。

 

「ぎゃっ…!」

「散弾銃だ!」

「た、助け…」

 

アドレナリンでハイになっているテナルがショットガンを艦内に通じる通路へ連射する。

ショットガンから一斉に放たれるおよそ10発もの鉛玉は狭い艦内通路の逃げ場を無くし、丸腰のグ帝水兵を次々と撃ち倒した。

加えてサブマシンガンのコンパクトかつほどほどの威力の弾丸を連射出来るという特性も艦内では優位に働く。  

 

──パパパッ!パパパッ!

 

「リロード!」

「カバーに入る!」

「前に出過ぎるなよ!」

 

切り込みの実戦は初めてであるが、ムー水兵は訓練をしっかり行ってきたお陰でよく連携出来ている。

対してグ帝水兵はと言うと…

 

「右だ!右から敵が来る!」 

「ちょっ…ちょっと待ってくれ!」

「待て!撃つな!」

 

長いボルトアクションライフルを艦内に持ち込んだせいで銃口の方向を変えるにも一苦労である上に、100m以上の距離で撃ち合う事を想定したライフル弾は威力が高すぎて貫通弾による同士討ちや跳弾の可能性がある。

そもそも武器の数が少ないのも相まって、グ帝側は艦内での戦闘でも押されてゆき、ムー水兵はオリオンの司令室へと迫りくる。

 

「は、早く敵を叩き出せ!ムー如き大した敵ではないだろう!?」

 

銃声と悲鳴、怒号が近づきつつある司令室でネクルは私物の拳銃を握り締めて震えながら檄を飛ばしていた。

しかし、彼が如何に喚こうが敵は待ってくれない。

 

「ここか!?」

「多分ここだ!金剛殿の艦内を見学した時に見た事がある!」

「おい、出てこい!さもなくば艦を爆破してやる!」

 

司令室と通路を隔てる分厚い防爆扉、その向こう側でムー水兵が怒声を張り上げながら防爆扉を蹴りやショットガンのストックで叩きまくる。

 

「だ、大丈夫だ…あの扉は施錠してある!連中が入って来れる訳が…」

 

ネクルの言う通り、司令室は敵工作員の侵入を想定して内側から鍵をかけられるようになっている。

一応は艦長や副艦長が持つ鍵で開けられはするが、ネクルも副艦長も司令室の中だ。

 

「クッソ…開けてくれないな…」

「そうだ!砲弾の装薬を持って来よう!導火線で火を付けてドカンだ!」

「採用!降伏した敵に手近な砲塔まで案内させよう!」

 

籠城していればとりあえず安全と考えていたネクルだが、ムー水兵の艦を爆破するという脅しがどうやら脅しではない事を察したネクルは顔を真っ青にした。

 

「ま、待て!開ける!開けるから待ってくれ!」

 

「艦長!?」

 

退官間際で艦と命運を共にしたくない…そんな俗っぽい価値観のネクルは副艦長を始めとした司令室要員が止める間もなく防爆扉へ飛びつき、鍵を開けてしまった。

 

「手を上げろ!降伏すれば危害は加えない!」

 

テナルを先頭に司令室に雪崩込んだムー水兵達の姿を見て、ネクル達は手にした武器を捨てて両手を上げた。

 

これを以てオリオンはラ・エルドへ降伏。

テナル達ラ・エルド乗組員はムー海軍で最後に移乗攻撃を行ったとして、海軍士官学校で長らく語り継がれる事となるのだった。

 




すっごい私事ですが、妻の車が運転には問題ないけど車検には通らない、かつ修理はそこそこ高額な故障をしたので、走行距離もそこそこ行ってるので次の車検を最後に手放すのですよ
で、私が今乗ってる車を妻に渡して、私は車を買い換えようと思うのですが…
最近の車ってやっぱり高いですねぇ…
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