異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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イベントお疲れ様でした!
今回も全員揃えられましたし、後は日本版9周年イベントまで復刻やコラボや計画艦に精を出しますか


389.軍神進撃【15】

──中央歴1643年3月6日午後8時、ムー北方海域──

 

「……潮時か」

 

帝国連合艦隊旗艦グレードアトラスターの長官公室で司令長官であるカイザルは達観したように呟いた。

磁気嵐により電波を使えない状況ながらも敵は此方の位置を把握し潜水艦と航空機による襲撃を敢行し、未だに信じ難いが誘導弾を実用化しこちらの射程外から高精度の攻撃を叩き込んでくる。

一縷の望みに賭けて夜戦に縺れ込んだが、敵艦隊を照らすこちらのサーチライトは次々と消えてゆく。

これ以上戦っても何の意味もない。

ただ徒に損害を増やし、敵に戦果を与えるようなものだ。

 

「司令長官…如何…なされますか」

 

青白い顔の参謀長が問い掛ける。

しかし彼にも…そして他の参謀達も結論は出ているのだろうが、それを口にする事は出来ないのだろう。

だが彼らを責任逃れと罵る事は出来ない。

ミレケネスが率いる大艦隊すら囮とした世界最強最大の艦隊による攻撃が失敗した挙句、撤退を余儀なくされるなど誰も想像していなかったのだ。

 

「……司令室へ行く」

 

「はっ…!」

 

席を立ったカイザルへ参謀達が一斉に立ち上がって敬礼する。

それに背を向け、長官公室を後にするカイザルは彼らの啜り泣きを背に受けながら艦橋の根元にある司令室へと向かった。

 

「司令長官」

 

「敬礼は結構」

 

司令室へ足を踏み入れたカイザルに艦長のラクスタルが敬礼し、その他の人員も倣おうとするがカイザルはそれを制した。

 

「状況は」

 

「……芳しくありませんな」

 

ラクスタルの答えはカイザルの想定通りであった。

 

「そうか…信号弾を撃て。9番、5番、9番の順だ」

 

「…はっ」

 

既に察していたラクスタルはカイザルの命令を砲術長メイルに伝えた。

 

「はっ、2番高角砲最大仰角。信号弾959。繰り返す、信号弾959」

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

メイルの指示から程なくして、高角砲より3発の砲弾が上空へ向かって放たれ、砲弾は高度1万m付近で炸裂し、炎色反応を利用した炸薬により赤、緑、赤の順に眩い光を放ちながらそれぞれ炸裂した。

これは帝国海軍における撤退信号であり、それが20秒間隔で3回繰り返される。

 

「続けて光信号により『本艦は撤退を支援すべく、敵艦隊への吶喊を行う』と伝達せよ」

 

「はっ」

 

続いてカイザルは通信士にそう伝え、通信士は艦橋頂上に設置された識別灯を点滅させ、周囲の艦へカイザルの言葉と共に他艦へ伝達するように伝えた。

 

「……すまんな」

 

「いえ、お供致しますよ」

 

申し訳なさそうに軍帽を目深に被り直しながら謝罪するカイザルへ、ラクスタルや司令室要員は苦笑しながらそう応えた。

このままただ撤退すれば、圧倒的戦力を動員しながらも敵に大した損害も与えられずに逃げ帰った臆病者、敗北主義者として懲罰部隊か処刑は免れないだろう。

しかし、グレードアトラスターが死兵となって戦えば多少なりとも敵に損害は与えられるだろうし、帝国軍人としての矜持を示す事が出来る。

そうすれば撤退した将兵への追及は幾分か軽いものになる可能性があり、何より帝国支配地域を防衛する為の戦力を残せる。

それを期待しての決断であった。

 

「…だ、第88艦隊より光信号!『我が艦隊、貴艦の指揮下に入る』だそうです!」

 

「88艦隊が?」

 

通信士が見張りが解読した識別灯の点滅を読み上げ、それを受けてカイザルは驚きの表情を浮かべた。

第88艦隊はカイザルが初めて艦隊司令を任された艦隊であり、海軍生活で最も長く所属していた艦隊でもある。

故に顔馴染みが多く、最後までカイザルに付き従うべくグレードアトラスターと共に殿を買って出たのだった。

そしてそれは第88艦隊だけではない。

 

「だ、第71及び第92艦隊も…いや、第21、26、63艦隊も本艦の指揮下に入るとの事です!」

 

「……馬鹿者め」

 

比較的被害が少なかった艦隊が次々と殿として残る事を決め、それを光信号でグレードアトラスターへと伝えた。

それを知ったカイザルは呆れたように、しかしその声には隠しきれない喜色が滲んでいた。

こんなにも敗色濃厚だと言うのにまだまだ士気を高く保っている…一介の将としてこんなに嬉しい事はない。

 

「…諸君、我々はこれより敵艦隊に対して総攻撃を仕掛ける。敵艦隊は我が方より優れた兵器と機材により優位に立っている事だろう」

 

艦内放送のマイクを取り、カイザルは乗組員全員に呼びかける。

 

「しかし、我々の戦意と帝国への忠義は何者にも負けはしない!異世界国家に帝国軍人の意地と覚悟を見せるのだ!皇帝陛下、神となりし歴代皇帝陛下よ!どうかご照覧あれ!」

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

敗北は決まったようなものだが、それでも一花咲かせて派手に散ろうと覚悟を決めた乗組員達の士気は最高潮に達した。

それは自らが属する民族こそが優秀であり、他民族は劣等種という歪んだ民族主義に由来するものではない。

入隊時に宣誓した帝国への献身…そして何よりも男として戦友を少しでも生かして帰すという義務感によるものだ。

 

「皆…ありがとう」

 

死地に向かう事を引き受けてくれた事に感謝の言葉を零すカイザル。

その頬には一筋の涙が伝うが、彼はそれを袖で拭い『軍神』と渾名される戦意の火を瞳に宿した。

 

「全艦、照明弾発射!照明弾を絶やすな!」

 

「はっ!照明弾発射!」

 

「照明弾発射ぁぁぁ!」

 

カイザルの命令をラクスタルが復唱し、続いてメイルが高角砲要員へと伝達する。

 

──ドンッ!ドンッ!

 

天高く打ち上げられた照明弾はパラシュートを開き、ゆっくりと落下しながらマグネシウムの燃焼による眩い光を放ちながら辺りを照らす。

それに倣うようにグレードアトラスターに付き従った艦隊もそれぞれが照明弾を打ち上げた結果、辺りは昼間のような明るさとなった。

先程までは駆逐艦による肉薄雷撃を意図してサーチライトのみだったが、今は味方を逃がす為の囮となりつつも敵と刺し違える為に戦うのだ。

その上、敵は磁気嵐の中でもレーダーを使えるらしいとなれば、煌々と照明弾を焚いて視界を確保する方が良いという判断からだ。

 

「全艦吶喊!とにかく暴れ回れ!」

 

──ボォォォォォォォッ!!

 

カイザルの檄と共に汽笛が鳴り響き、グレードアトラスターが増速する。

史上最大級の海戦、その雌雄が決しようとしていた。

 

 




今月末はアイリスイベントらしいですが、時期的にミニイベントになりそうですね
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