何と言っても新陣営のバルパライソが衝撃でしたね…
もしヴァンガードがチリに売り払われたら、というIFの姿らしいですがヴァンガードから変わりすぎじゃないですか?
──中央歴1643年3月6日午後10時、ムー北方海域──
「敵艦隊、発砲!」
「来たか!」
分厚い装甲で守られた司令塔から視界の良い艦橋へと移動したカイザルは、闇夜を切り裂く爆炎と、その閃光によって浮かび上がった敵艦隊の姿を目にし冷や汗を浮かべた。
「怯むな、とにかく敵艦隊へ肉薄せよ!主砲用意!」
しかし、漸く敵艦隊を視認出来たのだ。
このチャンスを逃せば夜明けとなり、再び敵航空隊による熾烈な空襲を受ける事となる…そうなれば身を挺して逃がした味方にまで敵の手が伸びる事は想像に難くない。
それを回避するには、自身に付き従ってくれた艦隊を以て刺し違えてでも敵艦隊に痛打を与え、敵の戦意を削ぐより他無いのだ。
「撃て!」
「主砲発射!」
カイザルの命令を受け、ラクスタルが復唱する。
「主砲発射!」
それを更にメイルが復唱し、射撃盤のトリガーを引いた。
──ズゴォォンッ!ズゴォォンッ!
グレードアトラスターの新たなる牙、51cm連装砲の内前部の2基が火を噴く。
46cm砲の時点でもその砲声は人体に悪影響を与える程であったが51cm砲はそれを上回り、艦橋にはめ込まれた分厚い防弾ガラスがギシギシと軋む程だ。
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!
そして後に続くように他艦も発砲する。
打ち上げ続けている照明弾と発射炎の閃光により周囲が昼間のように照らされ、それと同時に海上に別の閃光が走った。
──ドゴォォォォンッ!!
「なっ…!」
敵艦隊から放たれた砲弾が着弾し、水柱が幾つもの上がるが、味方艦の1隻がそれに巻き込まれた。
「ち、チューク被弾!あぁっ!そんな…まさか!?」
艦隊の右翼で全力航行していたヘルクレス級戦艦の『チューク』の主砲塔が爆炎と共に天高く突き上げられ、チューク自体も大きく傾斜し…
──ドゴォォォォンッ!!
「うっ…!?」
正に轟沈であった。
チュークは敵艦隊から放たれた砲弾が直撃し、分厚い装甲で守られた弾薬庫やボイラーに砲弾が飛び込み誘爆及び水蒸気爆発を起こし、恐ろしい炎の怪物が内側から食い破って出てきたかのように爆炎が至る所から噴き出し、大爆発を起こしながら瞬く間に沈んでしまった。
「司令長官…これは…」
「あぁ…おそらく…」
恐れ慄くラクスタルにカイザルは同意を示す。
チュークはヘルクレス級戦艦、つまり40cm砲を装備した戦艦であり、重要区画を覆う装甲は同砲に耐えうる強度を持つ。
そんなチュークが2発乃至3発の直撃で沈んだとなれば、敵艦隊は40cm砲を上回る砲…それこそグレードアトラスター級の46cm砲を搭載している可能性が高い。
「全艦通達!敵艦隊には46cm砲を装備した戦艦が存在すると思われる!最大の注意を払え!」
「はっ!」
カイザルの命令を受けた通信士が識別灯を点滅させ、彼の言葉を味方艦に伝える。
敵艦隊にグレードアトラスターに匹敵する戦艦が存在するというのは大きな脅威であるが、ある意味ではチャンスかもしれない。
46cm砲搭載戦艦ともなればおいそれと量産出来るような代物ではなく海軍を、それこそ国家を象徴するような戦艦であるだろう。
それを沈める事が出来れば異世界国家に大きな衝撃を与える事が出来るであろうし、運が良ければ厭戦気分を引き起こし、帝国が戦力を再編するまでの時間を稼ぐ事が出来るかもしれない。
「ラクスタル君、敵にグレードアトラスター級が居たとして勝てるか?」
「はい、現状の本艦であるなら勝てますとも」
ラクスタルへと問いかけたカイザルであったが、返答は何とも頼もしいものであった。
確かに46cm砲に対する防御を持ち、対46cm砲防御を引き裂く51cm砲を搭載したグレードアトラスターは現状の帝国艦隊において敵艦隊に存在すると思われるグレードアトラスター級相当の戦艦に唯一対抗出来る存在だ。
ならば行うべきはただ一つ。
「総員、本艦はこれより敵艦隊に存在すると思われるグレードアトラスター級相当戦艦を撃沈すべく吶喊する。おそらく敵艦隊は本艦に対し熾烈な攻撃を浴びせてくるだろう。しかし、帝国の繁栄の為には刺し違えてでも敵戦艦を撃沈せねばならない。すまんが、皆の命をくれ」
艦内放送でそう呼びかけるカイザル。
それに乗組員は静かな闘志と覚悟を含んだ沈黙で応えた。
「……すまんな」
「今更ですよ、司令長官。もう逃げ場なぞありはしません」
嬉しさと共に、こんなにも勇敢な男達を死地に向かわせる事しか出来ない罪悪感から謝罪を溢すカイザルであるが、それに冗談を言うようにラクスタルが応えた。
それは慰めでもあり、呪いのようにもカイザルにのしかかったが、それでも進むしかない。
「主砲、第2射用意完了!」
「彼我の距離は?」
「およそ20000!主砲の有効射程内です!」
「よし、第2射撃て!」
──ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!
「取舵いっぱい!」
艦前部の主砲を斉射した後、グレードアトラスターは回頭を開始する。
これ程までに接近すればレーダーの有無は大して意味を成さず、他の戦艦の主砲も射程内だ。
故に敵艦隊に舷側を向け、全ての砲門が向けられるようにする。
──ズゥゥゥゥゥン…!
「敵艦、被弾した模様!火災の炎が見えます!」
「よし!主砲装填急げ!」
遠く響く轟音と共に敵艦隊に火の手が上がる。
おそらくグレードアトラスターが放った砲弾が敵艦に直撃したのだろう。
そうなれば敵艦は間違いなく戦えない程の損傷を受けた筈だ。
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!
味方艦も負けじと主砲を発射し、敵艦隊へ砲弾を叩き込む。
一方の敵艦隊も敵討ちだとばかりに次々と砲弾が発射され、艦隊に振り注ぐ。
正に戦艦同士の殴り合い、海の王者によるデスマッチだ。
──ズガァァァァンッ!
「モゲイラ、被弾!火災発生!」
「ガレルナの傾斜が…!」
「敵艦に命中!どの艦だ!?」
味方が被弾し、敵も被弾する。
海上は発射炎により最早照明弾を使わずとも艦影が視認出来る程に明るく、漂う硝煙が星を隠す。
──ガゴォォォォンッ!
「ぐっ…!」
「司令長官!」
グレードアトラスターの左舷に至近弾が発生した。
巨大な水柱で艦橋が濡れ、着弾の衝撃で艦が揺れる。
おそらくは40cm砲によるもの…角度次第ではグレードアトラスターすらも致命打を受けかねない。
「私は大丈夫だ。艦は?」
「今確認しています。ですがこの様子だとおそらく大したことは無いでしょう」
ラクスタルの言葉を肯定するようにグレードアトラスターの航行に歪みは無く、砲搭は滑らかに動いている。
「流石は帝国海軍最強の戦艦だ。これなら諸君らを生きて帰せるかもしれん」
「期待していますよ、司令長官」
戦闘の熱さを和らげるように軽口をたたき合うカイザルとラクスタル。
しかし、それとは裏腹に艦隊決戦は佳境に突入しつつあった。
となると7月8月の大型イベントは新陣営のイベントだったりするんですかね?
流石に9周年は重桜でしょうし