異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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投稿遅れてしまい申し訳ありません!
色々とありまして…


395.将星、合間見える

──中央歴1643年3月7日午前11時、ムー北方海域──

 

──バタバタバタバタバタバタ……

 

深夜まで繰り広げられていた大海戦が嘘のように静かな、しかしその名残が漂流する海面を見下ろすようにヘリが飛んでいた。

 

「エンタープライズ、間もなく到着するけど受け入れ準備は?」

 

《こちらエンタープライズ、問題ない。目視距離になったら誘導を開始する》

 

「……」

 

サラトガがヘッドセットでエンタープライズと交信している頃、単身で会談に臨むカイザルは緊張よりも大きな関心に満ちた表情で海面を見下ろしていた。

 

(あれほどの海戦を経ても尚、これ程の戦力が残っているとは…もし彼らが会談を申し出なければ我々は殲滅されていただろうな)

 

カイザルの視線に映るのは、異世界連合艦隊の残存艦艇であった。

多数の駆逐艦はもちろん、巡洋艦以上の主力艦艇も多く残存している他、その姿は帝国艦艇と殆ど遜色が無い。

 

(あの駆逐艦や巡洋艦、一部の戦艦に搭載されている箱型の装備は何だ?魚雷発射管…には見えないな)

 

見慣れない装備を搭載した艦艇へ興味を向けるカイザルだったが、程なくしてヘリが減速し、徐々に降下し始めた。

 

「これが…!」

 

ヘリが着艦しようとしている空母に目を向けたカイザルは驚愕に目を見開いた。

帝国海軍の主力空母であるペガスス級は全長242m全幅29mもの広大な飛行甲板を持ち、前世界ユグドでは最強最大の空母と謳われていた。

しかし、目の前に見える空母ことエンタープライズはペガスス級が小型空母に見えるほどの威容である。

 

「あれが会談場所の空母なのか?」

 

「はい、カイザル将軍。"彼女"が私達アズールレーンの総旗艦にして、最大の空母エンタープライズです」

 

カイザルの質問に朗らかにレキシントンが答える。

 

「かなり大きいな…差し支えなければ大まかな規模を教えて頂けるだろうか?」

 

「機密に触れない程度なら構いませんよ。確かあの子は…飛行甲板のサイズはおおよそ長さ330m、幅は77m程度。基準排水量は7万5千トン、蒸気カタパルトを4基装備しています」

 

「なっ…!?」

 

エンタープライズの巨大さに驚愕し、目眩を覚えるカイザル。

これ程の巨艦を建造し、運用するのは帝国でも難しい。

もし、異世界連合艦隊の艦艇がエンタープライズの技術をフィードバックして建造或いは改修されているとすれば、帝国の艦艇では太刀打ち出来ない可能性が高い。

そんな相手と交戦した事を後悔しつつ、カイザルは違和感を覚えていた。

 

「……人が居ない?」

 

通常、艦艇の艦上には多くの乗組員が作業をしており、空母ともなれば艦載機の整備員等も加わって多数の乗組員の姿が見える筈である。

しかし、エンタープライズの広大な飛行甲板には乗組員の姿が見えず、若干の銃を携えた兵士が待機しているだけだ。

カイザルが来る事を受けて人払いしているとも考えられるが…それにしても人の気配を感じない。

 

「カイザル将軍、着艦するから座ってベルトを締めてくれるかしら?」

 

「う、うむ。了解した」

 

サラトガからの指示を受けてカイザルは座席に座り直しシートベルトを締めた。

 

──バタバタバタバタバタバタ…ギッ…

 

ヘリのスキッドが接地し、ローターの回転が徐々に遅くなる。

 

「燃料供給停止、エンジン停止…着艦完了。お疲れ様」

 

「お疲れ様でした、カイザル将軍。ここからは案内の者に引き継ぎます」

 

「うむ、ありがとう」

 

そんなやり取りをしていると、ヘリのドアが開かれた。  

 

──ガチャンッ

 

「ようこそ、カイザル将軍。私が案内のエンタープライズだ。足元に注意して降りていただきたい」

 

「エンタープライズ…?それはこの空母の名前では?」

 

「それは間違いないし、私の名前もエンタープライズで間違いない。その件については案内しながら説明させていただく」

 

降り立った空母と目の前の若い女性が同じ名前だという事に戸惑うカイザルだが、エンタープライズを始めとしたKAN-SEN達には慣れた事だ。

普段から初接触した異世界の人々にするようにKAN-SENについての解説をしながら、エンタープライズはカイザルを会談の場へと案内する。

 

「……信じられん」

 

案内されつつ解説を聞いていたカイザルであったが、出てきたのは理解を拒むような言葉だった。

しかし、これまでの…特にフォーク海峡海戦の戦闘詳報と、エンタープライズの艦内で誰の姿も見えなかった事から"もしかしたら…"という考えも頭を過ってしまう。

 

「確かに貴方達からすれば私のような存在が軍艦そのものだとは信じられないだろう。だが、私の世界ではこれが常識なんだ」

 

「…分かった。とりあえずはそれを信じよう」

 

信じ難い話ではあるが、此方を騙すにしてももう少し分かりにくい嘘を言うだろう。

とりあえずはエンタープライズの言葉を信じる事としたカイザルは、彼女と共に立ち止まった。

 

「今回は士官用食堂を会談の場とした。ここで私達の総指揮官とカバル殿下がお待ちだ。では良いだろうか?」

 

「うむ、何時でも」

 

アズールレーンの総指揮官…在りし日の先帝と瓜二つの姿を持つ若い男と直接話す事への緊張感はあるが、カバルの無事を確かめ、艦隊の運命を左右する会談から逃げる訳にはいかない。

 

──コンコンコンッ

 

「指揮官、エンタープライズだ。カイザル将軍をお連れした」

 

「ご苦労、開いているから案内してくれ」

 

「了解」

 

──ガチャ

 

カイザルが通されたエンタープライズの士官用食堂はよく清掃されている…というよりは使用感が殆ど無いものだった。

空母の士官は100名以上は居るものであるし、時間をずらしても士官用食堂は30名以上が使う事になる。

そうなれば如何に気を付けて使おうが、清掃を徹底しようが使用感は出てしまうものだ。

 

(やはりKAN-SEN…1人の女性が軍艦を動かすというのは事実なのか?)

 

「カイザル!」

 

「殿下!」

 

KAN-SENについての信憑性を高める情報に思考を巡らせるカイザルであったが、快活な呼び声に思わず喜色を隠さない声を上げた。

 

「カイザルよ、よくぞ参った!」

 

「殿下こそよくぞご無事で…将兵皆で心配しておりました」

 

帝国将兵から慕われているカバルが拉致されてから、帝国将兵はカバルが異世界人から手酷い扱いを受けていないか心底心配していた。

しかし、カバルは血色もよく怯えた様子も無い。

むしろ宮廷内で会った時よりも生き生きしているように見える。

そして、カイザルを待ち侘びていたのはカバルだけではなかった。

 

「カイザルよ、無事で良かった」

 

「義兄上!お久しぶりです」

 

カイザルの妻の兄であり、カバルの側仕えであるフェルドは立ち上がるとカイザルへと歩み寄り力強い抱擁を交わした。

 

「フェルド義兄上もご無事で何よりです」

 

「うむ、殿下も私も…殿下専用機の乗員にも彼らは良くしてくれたよ。カイザル、お前には是非とも彼らとしっかり話してほしい。この会談はきっと帝国の未来を左右する事となるだろう」

 

そう言ってフェルドが視線を送った先、そこにはカイザルを案内したエンタープライズと、彼女の側で堂々とした…しかしながら傲慢さは無い態度の若い男が座っていた。

 

「お初にお目にかかる、カイザル将軍。アズールレーン総指揮官にして、ロデニウス連邦軍参謀本部上級大将…クリストファー・フレッツァと申す。貴官とは有意義な会談を望む」

 

「グラ・バルカス帝国海軍大将、カイザル・ローランドだ。こちらこそよろしく頼む」

 

相対した2人の将星…その会談は後に世界情勢に大きな影響を与えたものとして『エンタープライズ会談』と名付けられ、語り継がれる事となった。




最近のアズレンと言えばやっぱりベルファストの改造ですよね!
アズレンの初期から大人気だったベルファストに改造が来るとは感慨深い…

それに9周年イベントまでもう少し!
突然、天津風の情報も出てきましたし、果たして誰が実装される事やら…
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