果たしてゲーム内イベントは誰が実装されるのか…
──中央歴1643年3月7日正午、エンタープライズ艦内士官用食堂──
時間も頃合いかつお互いに思考を巡らせる為には必要だという事で、会談の場となった士官用食堂には料理が供されていた。
焼き立てのパンに新鮮な野菜を使ったサラダ、香ばしく焼かれながらも肉汁を閉じ込めたラム肉のグリル、様々な野菜やハーブを煮込んで抽出したコンソメスープ…洋上の軍艦とは思えない新鮮な食材をふんだんに使った手が込んだ料理の数々にカイザルは内心で舌を巻いた。
(なんと…口にしなくても分かる程に新鮮な食材の数々…!如何に迎撃側とはいえ、これ程の物資を用意出来るとは何たる補給体制か!)
「カイザル将軍、どうぞご遠慮なく」
「カイザル、ここの食事は絶品だぞ!口にしなければ後悔する程だ!」
「ではいただこう」
幼少期から宮廷料理を口にしてきたカバルがそれ程の賞賛を送るとは余程の味わいなのだろう。
「……美味い」
ラム肉をナイフで小さく切り、口に運ぶとその味わいにカイザルは瞠目した。
香草や香辛料の豊かな香りと風味にラム肉のしつこくない脂身が口いっぱいに広がり、一口で大きな満足感がある。
一流レストランの料理長が手掛けたと言っても納得するだろう。
「それは良かった。作った者にもそう伝えておきます」
カイザルの反応に満足そうに頷いた指揮官は、まるで日常会話でもするように言葉を続けた。
「さて、まず明確にしたいのが私はアズールレーン総指揮官としてアズールレーン全参加国の全権委任者としてこの場に居る事です。それを前提として貴官にお伝えしたい事があります」
「聞こう」
空気が張り詰めたのがはっきりと分かる。
カイザルは自身の目の前に居る若い男は先帝と瓜二つという事を抜きにしても堂々とした振る舞いから、数え切れない鉄火場を切り抜けてきた強者であると認識し始めていた。
「我々…つまり貴国の主要交戦国の一部たるロデニウス連邦とムーは貴国を滅ぼしたい訳ではなく、他のアズールレーン参加国もその意見に賛成の立場を明確にしています」
「……それはどういうつもりか?」
指揮官の言葉の真意をカイザルは図りかねていた。
帝国のこれまでの行い、つまり世界的な会議の場で恭順を求め、捕虜を公開処刑したとなれば客観的に見れば滅ぼされても文句は言えない立場だ。
異世界人は慈悲深い…と思いたいが、おそらくそんなに単純な話ではないだろう。
「一言で言ってしまうと"無駄"なのですよ」
「無駄?」
「えぇ、貴国を滅ぼす…ないし屈伏させ植民地同然にしたとてそれは無駄なのです」
怪訝な表情で聞き返すカイザルに指揮官はそう述べると、グラスに注がれたミネラルウォーターで唇を湿らせて続けた。
「貴国の本土を占領するコストとそれによって得られる戦利品、それらは全く釣り合いません。莫大な戦費と兵員と物資を浪費して手に入るのが遅れつつある技術…はっきり言って全くの無駄なんですよ」
「……」
指揮官の言葉に沈黙で応えるカイザル。
ユグドにおいて帝国は最も優れた技術を持った国であり、その技術を欲する国は多かった。
しかし、今はどうだ。
これまでの戦い、そして現在彼が乗り込んでいる空母を見るに異世界国家…特にアズールレーンは帝国を上回る技術を持っているらしい。
そうなれば指揮官の言葉にも納得が出来る。
「ただ、勘違いして頂きたくないのがだからと言って貴国に譲歩する訳ではありません。貴国が尚も頑ななまま戦争を望むのならば、我々は貴国の本土に上陸し、あらゆる兵器を用いて屈伏させる事すら選択肢にあるのですから」
「では貴殿らは何を望むのか?」
「我々が望むのは大きく言って3つ」
カイザルの問いかけに指揮官は3本の指を立て、その内の1本を折った。
「まず1つ目は転移直後の領土へと撤退する事」
続いて2本目の指を折る。
「2つ目は軍事力の削減を行う事」
最後に3本目の指が折られる。
「最後に公開処刑に関わった者全てを此方に引き渡す事…これらを履行しない限り、我々は貴国を攻撃し続ける事でしょう」
「なるほど…」
指揮官が述べた条件を受け、カイザルは考え込む。
海軍はある種の外交官的役割を持っており、司令長官であるカイザル自身もある程度の外交交渉の経験がある。
それらの経験を総動員した結果、彼は慎重に言葉を選びながら返答した。
「まず1つ目の条件だが、転移直後の領土まで撤退すれば我が国の商業活動は非常に制限され、経済的に困窮する。その先に待ち受けるのは再びの植民地獲得戦争だ。それに、我が国の影響下にある国々は何も武力で屈伏させた国ばかりではないし、パガンダ王国やレイフォル侵攻・占領は此方に大義名分がある」
「確かにパガンダ王国の件は貴国の捕虜やカバル殿下からの聞き取り、そしてムー国内の一部メディアでも報じられていましたし、レイフォル艦隊が偽装降伏を行ったという情報もそれなりに確度が高いと認識しています。しかしそれを認め、パガンダ王国とレイフォルを貴国の領土とすればムーと貴国の距離があまりにも近くなってしまいます。それは貴国にとっても望ましくないのでは?」
「…確かにな」
パガンダ王国とレイフォルを攻撃し、占領した事については帝国側に大義名分がある。
しかしそれを根拠にレイフォルを領土とすればムーと国境が接する事となってしまう。
そうなればアズールレーンという巨大軍事組織の支援を受けられるムーに対し、帝国は一国で技術的優位にある相手と直接相対しなければならなくなる。
その負担は計り知れないものがあり、いつしか破綻してしまうだろう。
それを回避するには緩衝地帯を設けるのが一番だ。
「レイフォルに関してはムーによる委任統治を経て再独立を想定しています。パガンダに関しては非武装地帯とする…という草案があります」
「ふむ…」
草案の内容は悪くないものだった。
今回の作戦で多くの戦力を失った帝国はレイフォルの地でムーと直接相対し続ける余力は無いが、実態はどうであれレイフォルと海を緩衝地帯とする事が出来るのであれば現状の戦力でも帝国の経済圏を守る事は出来る。
「そしてパガンダ以西の国々については主権を回復させた上で貴国の影響下に留まるか否かを貴国と我々の監視化で選択させる…という事を考えています」
「…分かった。細かい事は正式な停戦交渉の場でだな。それで2つ目の条件についてだが、外交交渉で戦力の削減を行った結果、侵攻を受けた国は幾つもの前例がある。我が国が戦力削減を行った途端に貴殿らが侵攻して来ない保障はない上に、アズールレーン参加国以外の国家が侵攻を企てる可能性がある」
「無論、自衛に必要な戦力の保有は認めるつもりです。しかし、それでも貴国は我々と他国の侵攻を疑う必要があるでしょう。ですので貴国が希望するのなら…貴国のアズールレーン加盟を提案します」
「ほう…」
これは予想外だった。
アズールレーンには今まさに帝国が刃を向けているムーも加盟しているのだ。
そんな組織への加盟を提案するとは、カイザルの経験を以てしても予想出来なかった。
「我々アズールレーンは加盟国の防衛に全面的に協力する事を理念としており、万が一加盟国以外の国家による貴国への侵攻があった場合、貴国がアズールレーンに加盟していれば防衛に協力します。今正に我々がムーにしているようにです」
「カイザル、アズールレーンに加盟する恩恵は軍事的なものばかりではないぞ」
指揮官の言葉を引き継ぐように今まで2人のやり取りを静かに聞いていたカバルが口を開いた。
「実はフレッツァ将軍とロデニウス連邦大統領と私の3名で非公式の会談を行ったのだが、もし我が国が戦力を削減した上でアズールレーンに加盟するのならば、防衛協力の他にアズールレーン加盟国に対する通商条約締結に全面協力をしてくれるそうだ。他にも生産設備の排煙や廃液を浄化する設備の技術協力により、環境改善にも協力すると確約してくれた」
「なんと…!」
思わず驚愕するカイザル。
これには事情があった。
「カイザル…お前の気持ちもよく分かる。しかし、情に流されてはならない」
カイザルの心が揺れた事を察知したフェルドが釘を刺す。
というのもフェルドの妹であるカイザルの妻は劣悪な環境による帝都患いを拗らせてしまい、地方の病院に入院しきりであり、そんな妻との間に授かった一人息子も幼い頃に酷い肺病で亡くしているのだ。
カイザルはこれらの原因が排煙と廃液を垂れ流しにしている工場であると察しており、これらの改善を密かに望んでいたのである。
そんな中で提示されたアズールレーン加盟の見返りはカイザルにとっては余りにも甘美なものに思えた。
しかし、フェルドが言ったように自身の個人的事情に流されてはならない。
「……次に3つ目の条件だが…」
私事を振り切るように3つ目の条件について切り出すカイザル。
艦上の会談は大詰めとなりつつあった。
10周年まで温存する気はしますが、今年こそ大和実装なるか
はたまた初のURである信濃のバリエーションとして信濃(戦艦)が来るか…
架空艦なら全く予想出来ないですね…