異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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色々と落ち着いたので、更新再開です


398.震える帝都

──中央歴1643年3月5日午前11時、帝都ラグナ──

 

時は僅かに遡り、今日も今日とて光化学スモッグが立ち込めるグラ・バルカス帝国帝都ラグナ。

 

「これはどういう事だ!!」

 

その中心に聳えるニヴルズ城の謁見の間では、城の主であり帝国の頂点に君臨する皇帝グラ・ルークスが怒声を張り上げていた。

 

「余の許可を取らず、これ程の戦力を動かした事ももちろんだが、その動機がカバルを拉致された事に対する報復だと!?」

 

グラ・ルークスが激怒する理由…それは皇太子グラ・カバルを異世界国家に拉致された事に対する報復として、大軍を動員した事だ。

そんな皇帝の怒りを受けて跪くのは帝国軍のトップである軍本部長『サンド・パスタル』である。

 

「はっ、仰る通りでございます」

 

「たわけが!如何に皇太子を拉致されたとは言え、人員と戦費を浪費する理由にはならん!帝国が覇を唱えるには人員と戦費は何よりも重要…此度の作戦で浪費すれば、それだけ遠のくのだぞ!」

 

「重々承知しております。しかし…」

 

「言い訳はやめよ!貴様は現時点を以て軍本部長の座を…」

 

「此度の作戦を実行するよう命じたのは近衛兵団総帥カーデラ閣下であります」

 

「…!?」

 

サンドの言葉を聞いたグラ・ルークスは目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。

 

「お…叔父上が…?」

 

「はっ。話によりますと、外務省と近衛兵団により行われたカバル殿下の返還要求交渉にて、異世界国家側は我が方の要求に対し、陛下の退位及び占領地の放棄といった受け入れがたい条件を示したらしく…」

 

「なんと…しかし如何に叔父上の判断とは言え、余に無断で大軍を動員する事は看過出来ん。サンドよ、貴様の事情も知らずに叱責した事を詫びよう」

 

「いえ、陛下のお怒りもごもっとでございます。して、如何いたしましょう?」

 

原因が軍ではなく、近衛兵団であった事を知ったグラ・ルークスは頭を抱える。

近年の近衛兵団は独自の兵器を配備し、一国の軍を上回る戦力を保有する等増長が見られてきた。

今までは広大な帝国植民地を維持し、帝国の支配を確固たるものにする為には必要だと考えてきたが、今回の件は明らかな越権行為だ。

 

「……此度の件は明らかな越権行為であり、余の許可なく作戦を決行した事は赦されぬ。今すぐに我が名を以て本作戦の中止を命ずる」

 

「なっ…!?」

 

作戦中止の決断を下したグラ・ルークスに、サンドは驚愕する。

 

「し、しかし陛下!相手は帝国を下回る技術しか持たぬ後進国の集まりでしかない異世界国家軍です。これ程の戦力を擁する帝国軍に抵抗出来るとは…」

 

「それが問題なのだ」

 

サンドの言葉にグラ・ルークスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

グラ・ルークスは報告でしか異世界国家の実態を知らないが、報告によれば最大の脅威になるであろう神聖ミリシアル帝国ですら、帝国より一段劣る技術力しか持たず、局地戦で多少苦戦する程度だろうと評されていた。

それに対し本作戦で動員された帝国軍の戦力ならば間違いなく勝てる勝負だ。

始まりがどうであれ、異世界国家に壊滅的な被害を与えられれば、このまま作戦を続行すべきだろう。

 

「此度の作戦は近衛兵団が実行を呼びかけた…それで異世界国家が壊滅的な被害を受け、帝国に屈したとなればどうなる?」

 

「……はっ!まさか…」

 

サンドは軍本部長であり、いわゆる制服組ながらも背広組…つまり政治的な立場に近しい人物である故に、グラ・ルークスの言葉の意味が理解出来た。

 

「そうだ。近衛兵団はその勝利を背景に喧伝するであろう。皇太子が拉致されたというのに動かなかった皇帝と、素早い決定で異世界国家に鉄槌を下した近衛兵団…どちらが帝国を導くに相応しいかと」

 

そう、グラ・ルークスが危惧しているのは近衛兵団が主導した作戦が大成功を納め、近衛兵団の影響力が今以上に高まってしまう事だ。

ただでさえ現在のグラ・ルークスは先帝と比較され国内での支持は盤石ではなく、民族主義によりタカ派から支持を集めている近衛兵団がより求心力を高めるような事があれば、皇帝の座は形骸化してしまうだろう。

 

「……承知しました。陛下のお名前で作戦の中止を全軍に通達いたします」

 

「頼む。その後、部隊を再編し改めて異世界国家に対する攻撃を行うが…」

 

グラ・ルークスの気掛かりは息子であるカバルの安否であった。

現在、異世界国家がどのような被害を受けているかは分からないが、報復の報復としてカバルを害する可能性がある。

その可能性を下げる為に、グラ・ルークスは決断を下す。

 

「我が子にして皇太子たるグラ・カバルの皇太子位及び皇族籍を剥奪する。帝王府での正式な手続きが完了すれば、カバルは皇太子でも皇族でもない一般人となる」

 

これは苦渋の決断であった。

皇族としての位を剥奪する事自体は前例が無い訳では無い。

しかし、一度剥奪された位に復帰する事は前例が無く、これが受理されればもし無事に帰ったとしてもカバルが元の地位に返り咲く事はほぼ不可能だろう。

だがカバルが皇太子でも皇族でもなくなれば利用価値は無くなり、望み薄だが解放される可能性もある。

無論、利用価値が無くなった故に処刑される可能性が高いが、それは現状も同じだ。

そして何より、敵が皇太子を人質にしているとなれば士気に関わるだろう。

それを避ける為にも、カバルの位を剥奪する必要がある。

 

「よろしいのですか?」

 

「仕方あるまい。こうでもしなければ…」

 

《な、なんだ!?》

 

《止まれ!何を持っている!》

 

話が纏った辺りで謁見の間の出入り口の外側で騒ぎが起きる。

 

「何事だ?」

 

「分かりません。しかし、何やら嫌な予感が…」

 

軍本部長という地位のある人物を叱責するつもりなだけあって、謁見の間にはグラ・ルークスとサンドしか居らず、扉の外に2名の近衛兵団所属の衛兵が居るだけだ。

 

──パンッ!パンッ!

 

「銃声!?」

 

扉の外側から聴こえた銃声にサンドは反射的にグラ・ルークスの前に立ち塞がる。

それとほぼ同じタイミングで、扉が勢い良く開け放たれた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫と共に駆け込んできたのは近衛兵団員の男…肩から2つの鞄を吊り下げ、一直線にグラ・ルークスの元へ向かってきた。

 

「陛下!」

 

「なっ…!」

 

グラ・ルークスと一対一で謁見するにあたってサンドは拳銃等を携帯しては居なかった。

故に徒手空拳で迎え打とうとしたのだが…

 

──ドンッ!!

 

「がっ…!」

 

「っ!」

 

鞄から炎が噴き出したのが見えた瞬間、グラ・ルークスとサンドは激しい衝撃と熱の中で意識を失った。




ゴールデン・ハインドの着せ替え、2度も更新入ったのに未だに全裸バグ残っているんですよね…
よほど直すのが難しいのか、それとも抜け道的なサービスなのか…
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