異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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明けましておめでとうございます

本年もよろしくお願いします


54.世界へ

──中央暦1639年10月31日午後1時、神聖ミリシアル帝国、港町カルトアルパスの酒場──

 

中央世界とも呼ばれる第一文明圏の最大国家…つまり、世界最大最強の国家である神聖ミリシアル帝国第二の都市であるカルトアルパスの酒場は多くの人々で賑わっていた。

 

「そろそろ始まるか?」

 

客の一人が、酒場の壁に掛けられている水晶の板に視線を向ける。

それに呼応するかのように、他の客も一斉に同じ方向を見る。

その水晶板は、カラー映像付き魔信ニュースを受信するためのもの…要はテレビだ。

映像付きの放送がこんな酒場でも流れるのは、この神聖ミリシアル帝国とムーのみであろう。そして、その事が上位列強の証でもある。

しかし、東の大陸…ロデニウス大陸では一般市民が掌サイズの通信機でカラー映像を送受信しているのだが。

 

《こんにちは、世界のニュースの時間です。今日は第三文明圏外の大陸、ロデニウス大陸より中継を繋げてお送りします。》

 

酒場がざわつく。それも無理は無い。

世界のニュースは世界情勢、主に列強国や文明国の動きを報道するものであり、文明圏外の事なぞわざわざ報道するようなものではない。

 

《それでは、ロデニウス大陸に中継を繋げます。お願いします。》

 

画面が切り替わり、ややノイズの入った映像となった。

 

 

──同日、ロデニウス連邦首都クワ・トイネ、大統領官邸──

 

カメラのフラッシュが瞬き、幾つものレンズが向けられる中でロデニウス連邦国家元首、大統領カナタは演台を前にして立っていた。 所謂、記者会見だ。

多くは各国の新聞社のフィルムカメラだが、数名は肩に巨大なビデオカメラを担いでいる。

ロデニウス国営放送、クイラ文化放送局、For Tube、バチバチ動画…その中に、神聖ミリシアル帝国から来訪した世界のニュースのカメラマンも居る。

舞台袖の報道官がサムズアップしたのを合図に、カナタは口を開く。

 

「初めまして。旧クワ・トイネ公国の首相、カナタと申します。」

 

一際大きく、フラッシュが瞬く。

 

「さて…去る中央暦1638年4月12日、このロデニウス大陸で戦争が勃発しました。クワ・トイネ公国とクイラ王国に対し、ロウリア王国が宣戦布告した戦争…『ロデニウス統一戦争』です。しかし…この戦争には、裏がありました。」

 

演台に置かれたグラスを手に取り、水を一口飲む。

 

「ロウリア王国の国王は、パーパルディア皇国により恫喝されていたのです。故に…我が国、クワ・トイネ公国へ侵攻せざる負えなかった。そして…統一戦争により多くの血が流れました。」

 

カナタは演台に掌を叩き付けて、如何にも憤っているような態度を見せる。

 

「しかし我々はその痛みを乗り越え、固く強い絆で結ばれました!我々は、姑息な手段を用い、自らの利益のみを欲深く求めるパーパルディア皇国のやり方は一切許容出来ません!故に、我々は一つの国家としてパーパルディア皇国に立ち向かいます!」

 

バッ!とカナタが両腕を広げると、背後の緞帳がスルスルと左右に開いた。

そこには、一枚の旗が掲げられている。

上から、統一戦争により流れた血を意味する赤、白紙からのスタートを意味する白、不変を意味する黒の三色旗。

そして旗の中央にはクワ・トイネ公国を表す麦の穂、クイラ王国を表すツルハシ、ロウリア王国を表す剣が*型に配置されていた。

 

「我々は、ロデニウス連邦として新たに出発する事を宣言します!」

 

記者会見の場がざわめき、再びフラッシュが瞬く。

閃光の中、カナタは眼前で拳を握り締めた。

 

「先日、我が国の同盟国であるフェン王国の外交官の随行員…そして、我々のかけがえの無い親しい友人が、パーパルディア皇国の手により、殺害されるという事件が発生しました。姑息で、著しく外交儀礼を欠いた野蛮な国家であるパーパルディア皇国は列強国として相応しくありません!」

 

会見会場に居る者に同意を求めるように、辺りを見渡す。

 

「故に我が国、ロデニウス連邦は新たなる列強国…そして現在、第三文明圏外と呼ばれている地域は第四文明圏としての道を歩んで行く事を宣言します!」

 

会場は今日一番の閃光に包まれた。

 

「それを踏まえて、特定の国家に依らない第四文明圏全体の防衛軍『アズールレーン』を設立しました。我々に武力を振るうという事は、第四文明圏全てを敵に回すという事なのです。」

 

ざわめきの中、質疑応答へと移った。

 

 

──同日、港町カルトアルパスの酒場──

 

「わーはっはっはっはっ!身の程知らずな国もあるもんだなぁ!」

「しかもパーパルディア皇国にケンカ売るなんてなぁ…」

「滅ぼされるぜ、アイツら。」

 

世界のニュースを視聴していた客達は嘲笑い、呆れていた。

文明圏外国が列強国にケンカを売るどころか、自らを新たな列強国…そして、文明圏として名乗るなぞ驚愕よりも嘲りの方が大きくなるのも仕方無い。

しかし、そんな客達に驚愕すべきニュースが飛び込んできた。

 

《速報です!……はい?本当ですか!?……あ、失礼しました。アズールレーンは既にフェン王国に侵攻したパーパルディア皇国海軍の戦列艦と竜母合わせて200以上を撃沈する戦果を上げているようです!》

 

その速報が伝えられた瞬間、酒場が静まりかえった。

 

「おいおい…本当か?」

「いや…もしかしたら、型落ちを使ってる国家監察軍の間違いかもしれねぇ…」

「それでも文明圏外の戦力でパーパルディア皇国の戦力を潰すとは…侮れんかもな。」

 

ざわざわと酒場が活気を取り戻す中、再び冷や水がかけられた。

 

《え!?また、速報……失礼しました。再び速報です。……え?…む……ムーは、ロデニウス連邦主導の第四文明圏設立を支持すると表明しました!そして、ロデニウス連邦の列強国入りを歓迎するとも表明しています!》

 

「なっ……なっ……なっ……」

 

「「「「「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」」」」

 

酒場が混沌に包まれた。

 

「嘘だろ!?あの日和見主義のムーがか!?」

「どうしちまったんだ!?」

「おいおい、まさか…ムーはあの仕返しをするつもりか?」

 

一人の客が静かに告げる。

他の客は、その客に注目した。

 

「あの仕返し…って何だ?」

 

「今は滅びたが…何故、レイフォルみたいな文明国に毛が生えたような国が列強になれたか分かるか?」

 

「そう言えば…」

 

世界に5ヶ国しか無い列強国、その中で一段劣るとされているのがパーパルディア皇国とレイフォルだった。

また、その2ヶ国の内レイフォルは列強国最弱…準列強などと陰口を叩かれていた。

よくよく考えれば、そんなレイフォルが列強国であるのは違和感がある。

 

「それはな…ムーを牽制したい神聖ミリシアル帝国の差し金だ。第二文明圏でムーに好き勝手させない為に力を付けてきたレイフォルを列強国に推薦したのさ。それに、乗っかったのがパーパルディア皇国だ。」

 

「あぁ…自分がビリなのが気に食わないパーパルディア皇国が、神聖ミリシアル帝国の考えに乗った…と?」

 

「そうだ。ムーからすればその時の意趣返し…って事だな。」

 

「なるほど……」

 

酒場の客達は、今後の世界情勢について夜まで語り明かすのだった。

 

 

──同日、パーパルディア皇国第三外務局──

 

第三外務局のオフィスは静まり返っていた。

その原因は、BGMがわりに流していた魔信ラジオから発せられた世界のニュースだ。

パーパルディア皇国を姑息、野蛮と称し、自らを新たな列強国と名乗るロデニウス連邦…しかも第二列強であるムーがそれを支持している。

驚愕が広がるのは当たり前だった。

 

──バンッ!

 

そんな静寂を破るような音が響いた。

皆、一斉に音の方を見る。

局長用のデスク…レミールが両手をデスクに叩き付けて、立ち上がっていた。

 

「そうか…奴らが強気だったのはムーが後ろ楯になっていたからかぁ……」

 

歯をギリギリと鳴らし、身体中から怒気を放つレミールは手近に居た局員を睨み付けた。

 

「おいっ!今すぐムー大使を呼び出せ!」

 

「はっ…はいぃぃぃぃ!」

 

レミールの怒気に当てられた局長は、涙目になりながらオフィスから飛び出す。

 

「おのれぇ……ムーめぇ…訳の分からぬ技術ばかり使って気でも狂ったか!」

 

そんな怒りに溢れたレミールは、怒りを冷ますように黄金の杯にワインを注ぐと一気に飲み干した。

 

 

──同日、サモア基地医療センター──

 

検査機器が並ぶ部屋の一角で、サモア医療班のリーダー格である工作艦『ヴェスタル』がモニターの前で眉をひそめていた。

 

「お疲れさん、どうだ?検査結果は。」

 

そんなヴェスタルの背後から、指揮官がカフェオレが注がれた真空断熱タンブラーを差し出す。

 

「あ…指揮官。ありがとうございま~す。」

 

振り向いてタンブラーを受け取ると、指揮官に笑顔を見せてカフェオレを小さく一口飲む。

 

「……これは、鉛か?」

 

指揮官が、さっきまでヴェスタルが見ていたモニターを覗き込む。

そこには、ギザギザした波形型のグラフが表示されており、Pbと書かれた部分が異常に高くなっている。

 

「はい、指揮官が偶然手に入れたレミールさんの髪の毛…その解析結果です。」

 

ヴェスタルがマウスを手に取り、カーソルでグラフの一番高くなっている所を示す。

 

「鉛の数値が異常に高くなってます。そのレミールさんは、かなり短気だったようですね?」

 

「あぁ、プライドが高いとかいうレベルじゃないな…その鉛の数値が高い事と関係が?」

 

「はい、鉛中毒ですね。主な症状の一つとして人格の変化があります。」

 

ヴェスタルの言葉に指揮官は腕を組み、考え込む。

 

「ふむ…鉛…ね。他には?」

 

「まだ詳細はわかりませんけど……」

 

マウスを操作して、タブを切り替える。

そこには、二重螺旋の3Dモデルが表示されていた。

 

「何か、遺伝子的に異常があるような…そんな感じですね~。精密検査には時間がかかるので、もう少し…」

 

「いいさ、ゆっくりで大丈夫だ。」

 

そう言ってヴェスタルの頭を乱雑に撫でる指揮官。

 

「ちょっと~指揮官っ!お姉さん、怒りますよっ。」

 

「おお…怖い怖い。泣いちゃいそうだ。」

 

頬を膨らませるヴェスタルに、肩を竦める指揮官。

二人はカフェオレとコーヒーをそれぞれ啜りながら、一時を過ごすのだった。




積みゲーを消化しつつ、次を書く…忙しい正月休みだ…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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