あれ、ベルファストと吾妻のロード絵よりも、龍鳳と駿河のロード絵の駿河の尻のエロさが半端ないですよね
──中央暦1639年11月10日午後10時、アルタラス海峡──
フィルアデス大陸の南、アルタラス王国との間の海峡で波に揺られる船があった。
「ん~?」
その船…潜水艦のセイル上で双眼鏡を覗いている人物が居た。
赤い髪に露出度の高いピッチリした服装のKAN-SEN『シュルクーフ』が暗い海を滑るように進む影を発見した。
「あー…パーパルディアの船かぁ~…」
欠伸を噛み殺しながらハッチを開けて艦内に戻る。
本来KAN-SENの艦内は無人であり、少数の饅頭が配備されているのみだが今回は違った。
「シュルクーフ殿、どうかされましたか?」
一人の男…両目を隠すように布切れを巻いた男性が話しかけてきた。
彼は、カイオスが保護していた傷痍軍人の一人だ。
パーパルディア皇国各地の沿岸に潜水艦で直接乗り付け…あるいは、アルタラス王国やシオス王国を経由してロデニウス大陸へ脱出させているのだ。
「大丈夫大丈夫~、定時連絡するだけだよ~」
そう言って操舵室に向かい、無線機を手にする。
「Salut~プリンス・オブ・ウェールズ、聴こえる?」
《あぁ、聴こえているぞ。この回線を使うという事は…》
「そうそう、パーパルディア皇国の軍艦がそっちに行ってるみたい。」
シュルクーフの交信相手はアルタラス王国に大使として駐留しているKAN-SEN『プリンス・オブ・ウェールズ』だった。
《貴女の居る海域からして…明後日には此方に来るか…》
「かもね~どうする?」
《指揮官が予め立案していた迎撃作戦の準備を行う。……貴女はそのまま、亡命者の護送を頼む。》
「はいは~い、私にお任せっ!」
交信を終えたシュルクーフは、潜水艦らしからぬ巨体を闇夜に隠しながら経由地であるシオス王国へ向かって行った。
──中央暦1639年11月11日午前9時、アルタラス王国王都ル・ブリアス、アテノール城──
文明圏外国の中でも最も発展していると言われているアルタラス王国、その中心であるアテノール城で国王ターラ14世は怒りに身を震わせていた。
「パーパルディア皇国め…見境なしか…っ!」
ターラ14世の怒りの理由、それはパーパルディア皇国より送られてきた要請文だ。
・アルタラス王国の魔石採掘場、シルウトラス鉱山をパーパルディア皇国に献上せよ。
・アルタラス王国は王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出せ。
・以上を可及的速やかに実行せよ。
アルタラス王国最大の魔石鉱山であるシルウトラス鉱山の献上、そして王女の奴隷化なぞ明らかな挑発だ。いや、挑発どころの話ではない。
明らかに此方の怒りを引き出し、戦争に持ち込む為としか思えない。
「宰相!あれを用意せよ!」
ターラ14世は自らの右腕である宰相を呼び出すと、一通の書状と銀色の物体を用意させる。
それは、ロデニウス連邦の力を知った時から用意していたものであり、傲慢なパーパルディア皇国の態度が度を越した時に使おうと考えていたものだ。
そんな二つの秘密兵器を携えたターラ14世は、ロデニウス連邦より友好の証として贈られたサスペンション付き馬車に飛び乗り王城を出発した。
──同日、パーパルディア皇国第三外務局アルタラス王国出張所──
お供の外交官と共にターラ14世が向かったのはパーパルディア皇国第三外務局のアルタラス王国出張所…つまりは、大使館のような場所である。
そんな大使館の大使室に足を踏み入れた瞬間だった。
「待っていたぞ、ターラ14世!」
椅子に座り、脚を組んだまま一国の王を呼びつけたのは大使であるカストだった。
小太りで短い脚、低い身長は冴えない中年といった風貌だ。
そんな偉そうな態度のカストに対し、ターラ14世は冷静を装って問いかける。
「あの文書の真意を伺いに参りました。」
「内容の通りだが?」
その問いかけに、カストはわざとらしく両手を挙げて答える。
「シルウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です。」
「それが何だ?鉱山は他にもあるだろう?」
ニヤニヤとした嫌らしい笑みを浮かべるカストの態度に爆発しそうになる怒りを抑えながら、再び問いかける。
「では、我が娘…ルミエスの事ですが、何故このような事を?」
「ああ、あれか。ルミエスはなかなか上玉だろう?俺が味見をするためだ。」
「「はぁ?」」
カストの言葉に今まで沈黙を守っていた外交官すら声をあげた。
「俺が抱き心地を確かめてやろうというのだ。まあ、飽きたら淫所にでも売り払うがな。」
ターラ14世は激怒した。
この大使はあまりにも無礼…いや、蛮族とはこのような者を言うのだろう。
しかし、まだ冷静を装っていた。
「これは、皇国の…ルディアス陛下の御意思なのですか?」
「なんだぁ…その反抗的な態度は。皇国の大使である俺の意思は即ち、ルディアス陛下の御意思だぞ!」
それを聞いたターラ14世は懐から書状を取り出してカストの顔面に叩き付けた。
「ぶべっ!」
「もう貴国のような野蛮な国とは断行だ!その断行宣言書を持って国に帰れ!」
顔面に張り付いた書状を剥がしながら、カストは顔を怒りに染めてターラ14世を睨み付けた。
「貴様…皇国の大使であるこの俺に対して無礼だぞ!」
「無礼は貴様の方だ!」
そうカストを怒鳴り付けたターラ14世は外交官を引き連れて大使室を後にした。
「俺様をナメるなよ、蛮族め!」
カストの怒声が投げかけられたが、彼らの歩みは止まらなかった。
──同日、馬車の中──
「我が国での皇国の資産の凍結をしろ。そして、ウェールズ殿に今回の件の報告を。」
余りにも怒り過ぎて冷静さを取り戻したターラ14世は、サスペンションにより揺れが軽減された馬車のシートに座って外交官に指示を出していた。
「はい、陛下。承知しました。」
「軍を召集し、守りを固めよ。アズールレーンに頼るばかりではいかん、あくまでも我が国が率先して動かなければならない。」
「しかし、そうなればルミエス殿下は…」
サモアへ留学していたルミエスだが、現在はアルタラス王国に帰省していた。
護衛として4人のKAN-SENが同行している為、戦争となってもルミエスの安全は確約されているようなものだ。
しかし、問題はルミエスの安全ではない。
「戦争となればルミエスは間違い無く、自らも戦場に行こうとするだろう。KAN-SENの力があるとは言え、ルミエスは王城育ち…人を殺めるような事は心に傷が出来てしまうだろうな。」
そう、どちらかと言えばルミエスが積極的に戦場に出向くであろう事が問題だった。
KAN-SENの力があればパーパルディア皇国の戦力なぞ鎧袖一触だろう。しかし、戦場に出るということ事は直接的にしろ間接的にしろ人を殺す、という事だ。
世間知らずの少女がそのような経験をする事は心に傷を負う事になるだろう。
ターラ14世としては、一人の父親としてそれが心配なのだ。
「それに関しては、我々が全力でフォローしなければなりませんな…」
「うむ。ともかく、今はこのボイスレコーダーをウェールズ殿に確認してもらわねば。」
そう言うターラ14世の手には銀色の長方形の物体…先ほどのカストの発言を確りと記録したボイスレコーダーが握られていた。
次回、アルタラス海峡海戦……だと思います