──中央暦1639年11月12日午前9時、アルタラス王国北東130km沖合い──
──ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!
腹の底から響くような発砲音が鳴り響く。
綾波の12.7cm連装砲3基が、ラフィーの5インチ単装砲4門が、ジャベリンの4.7インチ連装砲3基が、ニーミの150mm単装砲4門が火を噴く。
その度に、戦列艦が巨大な水柱に包まれ木材の残骸と化する。
「綾波ちゃん!竜母が逃げそうになってる、お願い!」
彼女達を率いる旗艦であるルミエスがフラフラと西方へ逃れようとする竜母を発見し、綾波に指示を出す。
《了解…です。》
ルミエスの指示に従い、綾波が竜母に砲弾を叩き込む。
20mm弾により甲板が穴だらけになり、浸水によって傾いた竜母がそれを避けられる筈もなかった。
──バギッ!ゴガァァァン!
12.7cm砲弾が甲板を貫き、艦底付近で炸裂した。爆圧により甲板が跳ね上がり、竜骨を叩き折った。
その結果、パーパルディア皇国の造船技術の粋を集めた竜母はあっさりと海の藻屑となった。
《ルミエスちゃん、旗艦をお願い!》
ジャベリンが艦橋上から携えた槍で敵艦隊の中心部に陣取っている一回り大きな戦列艦…ディオスを示す。
「分かったわ!伊勢さんと日向さんから教わった三次元戦法を……」
ルミエスが後甲板に意識を集中させる。
コバルトブルーと黄色のジグザグ模様をエンジンカウルに描いた瑞雲が格納庫から現れ、カタパルト上に固定される。
「饅頭さん、お願い!」
コックピット内で2体の饅頭が短い腕で敬礼すると、瑞雲がカタパルトの火薬の爆発力により急発進した。
250kg爆弾を抱えた瑞雲が飛び上がると、それに続いて2機の瑞雲が発艦した。
上空で合流した3機の瑞雲は、アルタラス王国空軍の奮戦により掌握された空を敵旗艦に向かって飛んで行く。
──同日、アルタラス王国海軍旗艦アグレッサー級フリゲート『ル・ブリアス』──
「撃て!射程も精度も此方が上だ!」
アルタラス王国海軍長、ボルドが艦隊に檄を飛ばす。
片舷12門の76mmライフル砲が火を噴き、後方に展開するアズールレーン艦隊から逃れようとする敵艦隊を釣瓶撃ちして行く。
有効射程は凡そ8kmであるが、確実に命中させる為に4kmまで接近して砲撃している。
「はっはー!面白い程当たりますな!」
砲甲板へ指示を出す為のヘッドセットを着けた砲術長が、次々と沈み行く敵艦を見て手を叩く。
しかし、そんな状況でもボルドは油断しなかった。
「油断するな、相手は列強国の艦隊だ!そして、陛下と殿下が御覧になっている。皆、無事で帰るぞ!」
「「「「了解!」」」」
アルタラス王国海軍向けにカスタマイズが施されたアグレッサー級は、前後甲板に40mm砲を追加装備されている。それにより敵艦の喫水線やマストを破壊し、足止めされた敵艦に76mm砲を叩き込んで沈めて行く。
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
──ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!
圧倒的な爆発力を持つ榴弾が戦列艦の対魔弾鉄鋼式装甲を打ち砕き、大穴を開けてしまう。
ある戦列艦は大量に流入した海水により転覆し、ある戦列艦は砲弾の誘爆により巨大な火の玉となる。
制空権を抑えられ、火砲の射程も威力も装填速度も劣るパーパルディア皇国艦隊は、一矢報いる事すらも許されずアルタラス海峡の藻屑となった。
──同日、パーパルディア皇国第三艦隊旗艦『ディオス』──
《戦列艦『バーケン』轟ち…戦列艦『グライヴ』……駄目です!轟沈ペースが早すぎ……》
──ドガァァァァァン!
報告を続けていた通信士が乗っていた戦列艦が真っ二つになって轟沈した。
アルタラス王国侵攻の為に動員された合計280隻もの大艦隊は敵艦を沈める事はおろか、手傷を負わせる事すらも出来ないまま90%以上が水底に没した。
残存艦は最早20隻程しか残っていない。
「ま…まさか、フェン王国へ向かった艦隊はコイツらに…!」
ダーズが何かを察したように、悲鳴混じりに告げる。
それはアルカオンにも察する事が出来た。
これ程の戦力が相手では、300隻以上の艦隊も形無しであろう。寧ろ、よく四人生き残れたものだ。
「こ…皇国は何を敵に回してしまったのだ…」
そうしている間にも包囲は狭まり、次々と生き残った数少ない戦列艦が集中砲火に晒され沈む。
アルカオンは決断した。
「降伏だ!今すぐ降伏せねば皆殺し…」
──ブゥゥゥゥゥゥゥウン!
アルカオンには理解出来た。
それは紛れもなく、自らの首を落とす処刑人の足音だ。
音のする方を向く暇も無かった。
──ズドォォォオン!
250kg爆弾の炸裂により生じた閃光と轟音の中、アルカオンもダーズも…そして、ディオスの乗組員全てがこの世から退場した。
──同日午前10時、アズールレーン艦隊旗艦『ルミエス』──
ルミエスは自らの名を冠した艦の甲板上で海を眺めていた。
そこに、パーパルディア皇国の大艦隊の姿は無かった。
あるのは砕け散った木材や、虚ろな顔で波間を漂う死体…紛れもない壊滅だ。生き残りなぞ一隻も居ない。
「勝った…」
海を眺めるルミエスの目に、アルタラス海軍のフリゲートが僅かに生き残ったパーパルディア兵を救助している。
しかし、殆どは溺れ死ぬか攻撃に巻き込まれて既に死んでいたかだ。
それを目にした彼女の喉が熱くなった。
「うっ……」
急いで甲板の端に駆け寄り、海に頭を突き出す。
「うぇぇぇぇぇぇっ…」
食べた朝食を全て吐き出してしまった。
彼女は強い。たった一人でパーパルディア艦隊を相手に出来る程には強い。
しかし、心は"人"なのだ。
照準を合わせ、発砲する…それだけで戦列艦が沈む。それだけで数百の人間が死ぬ。
今までは戦意が勝り自覚出来ていなかったが、戦闘の熱が冷めた今になって自覚が出てきたのだ。
──『人を殺した。』
国を守る為とは言え…いくら敵とは言え、人を殺した事に違いは無い。
口元からボタボタと海面に落ちる胃液と唾液の混合液を歪む視界で見ながら、力なく落下防止の鎖にもたれ掛かる。
「ルミエス、大丈夫…?」
そんな彼女に、ほわほわとした声が掛けられた。
声のした方を見ると、ラフィーの姿があった。
よく見れば、周囲に集まる4隻の駆逐艦…ルミエスの新たな4人の友人が集まっており、自らの艦体から此方へ飛び移ってきた。
それに対し、ルミエスは笑顔を作る。
「う…うん、大丈夫。ちょっと船酔い……」
「ルミエス、嘘…下手。」
言葉の途中で、ラフィーがルミエスの唇に自らの人差し指を当てて言葉を遮った。
「ルミエスさん、一人で抱え込まないで下さい。」
ニーミがしゃがんで、優しく語り懸ける。
「そうですよ~、ルミエスちゃん。一人で考えてると悪い方にいっちゃいますよっ。」
そんなニーミの頭頂部に顎を置くジャベリン。
「大丈夫、綾波も…ラフィーもジャベリンもニーミも…ルミエスの友達…です。」
綾波がルミエスの手を取り、力強く握る。
「大丈夫、指揮官も初めて人を撃った時吐いたって…言ってた。」
「えぇっ!本当ですか!?」
ラフィーの言葉に、勢い良く立ち上がるニーミ。
そうなればもちろん、ジャベリンの顎とニーミの頭頂部が衝突する訳で。
──ゴチンッ
「あうっ!」
「きゃうっ!」
「ラフィーも詳しくは知らない…ロングアイランドなら、知ってる。」
ニーミとジャベリンが各々、頭と顎を押さえている間にもマイペースに話すラフィー。
「ジャベリン、ニーミ大丈夫…です?」
ルミエスの手を離し、二人に歩み寄る綾波。
そんな四人の姿を見たルミエスは、何時もと変わらぬ彼女達に…
「ふふっ…」
思わず笑みが溢れた。
この海戦は後に『アルタラス海峡海戦』と名付けられた。
アルタラス王国に侵攻したパーパルディア皇国第三艦隊は全滅。戦列艦と竜母合わせて280隻は全てが沈み、生き残りは僅か20名だった。
フェン王国侵攻艦隊と合わせて、戦列艦430隻、竜母50隻、揚陸艦120隻…将兵50万を失ったパーパルディア皇国海軍は4割以上の戦力を失う事となった。
少し忙しくなりそうなので、次回の投稿は遅れるかもしれません
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい