異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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アプセトネデブ様より評価9を、茜。様より評価8を頂きました!


やっぱり、時間が開くと勢いが削がれてクオリティーが下がりますね…

今回、低クオリティーかもしれません


60.闇に蠢く

──中央暦1639年11月12日午後11時、パーパルディア皇国エストシラント郊外──

 

「これで全員か…」

 

エストシラントの郊外にある峡谷に海水が流れ込んで出来た深く、小さな入り江の岸でカイオスがポツリと呟いた。

 

「いや~、何度も往復して大変だったよ~。これは指揮官から、特別休暇を貰わないとね♪」

 

手漕ぎボートで巨大な潜水艦に乗り込み、案内役の兵士によって艦内に入って行く亡命者達をカイオスと共に見守るシュルクーフ。

カイオスはそんなシュルクーフの方を向いて深々と頭を下げた。

 

「シュルクーフ殿、本当に感謝します。貴艦のお陰で3000名の命が助かった。」

 

「いやいや、私は指揮官の命令に従っただけだしね。感謝するなら、指揮官と大統領にしてよ~」

 

当初カイオスから亡命を希望された人数は500名だったが、傷痍軍人達の家族やカイオスの思想に賛同した者等も亡命させていたらシュルクーフ率いる潜水艦隊だけで3000名をロデニウス連邦に脱出させていた。

アルタラス王国やシオス王国を経由して脱出した者も合わせれば、合計7000名にもなる。

それだけパーパルディア皇国の腐敗が進んでいるのだろう。

 

「……しかし、あやつはまだ来ないのか?ゆっくりする余裕は無いというのに…」

 

そわそわした様子で辺りを見渡すカイオス。彼が重用していた隻腕の密偵、彼がまだ来ていないのだ。

昨夜から「どうしても必要なモノがある」と行って出掛けたのだが、一向に戻る気配が無い。

 

「シュルクーフ殿、5分…あと5分だけ時間を貰えぬか?」

 

「ん~…まあ、いいけど。」

 

「感謝する。」

 

最後の亡命者がハッチからシュルクーフ艦内に乗り込んだ瞬間だった。

 

──ピーヒュルルルルルルル…

 

エストシラントの方向から鳥の鳴き声のようなものが聴こえた。

兵士がライフルを鳴き声がする方に向け、シュルクーフも甲板上の機銃を動かす。

 

「待ってくれ!あれは……」

 

カイオスは、その鳴き声に聞き覚えがあった。それは、文明圏外でも二線級の航空戦力として認識されている生物…火喰い鳥の鳴き声だ。

しかも、漆黒の夜空を飛ぶ火喰い鳥と言えば南方より伝わった特別な訓練を積んだ個体に限られる。そして、その火喰い鳥を操る者は…

 

「カイオス様、申し訳ありません。少々手間取りました。」

 

そう言って、火喰い鳥…正確には大柄な体を持つ大型火喰い鳥を着陸させたのは、カイオスが待っていた隻腕の密偵だった。

 

「おぉ、何をしていた?まあ、後で聞く。早くシュルクーフ殿……に…?」

 

密偵に歩み寄り、早くシュルクーフに乗り込むように促すカイオスだったが、密偵の背後に気付いた。

 

「……誰だ?」

 

彼の背後に居たのは、簡素なベージュ色の毛皮のコートを身に纏った女性だった。

長い白髪に、白い絹の仮面で顔を隠している。

 

「カイオス様、このお方もロデニウス連邦にお連れして頂けないでしょうか?」

 

「ん~?誰、それ?」

 

密偵がカイオスに頼んでいると、シュルクーフがその女性に歩み寄りそのうつむき気味の顔を覗き込んだ。

 

「いえ…やはり私は……」

 

「お嬢様!貴女は生きなければなりません!」

 

シュルクーフの視線から逃れるように密偵の背に隠れた彼女に、密偵は強い口調で言い聞かせる。

そんな密偵は、カイオスに向き直り頭を下げた。

 

「カイオス様…実は私は、このお方に命を救われました。私が貴方に拾われるまでの間、食事や寝床を恵んで下さったのです。……彼女は私の恩人です。どうか…どうか、彼女を…」

 

必死に頼み込む密偵のこれまでにない態度に驚きつつも、頷くカイオス。しかし、カイオスにもやるべき事がある。

 

「分かった。ロデニウス連邦には私から言っておこう。しかし…その女性の素顔が分からねば…」

 

カイオスの言葉の途中、その女性が自らの手で仮面を外した。

 

「どうです?これでも私を…この醜い私を逃がしますか?」

 

「なっ……!」

 

「おっ…おぉ?」

 

女性の素顔に、カイオスとシュルクーフが驚く。その顔は二人も知っていた。

カイオスにとっては自らを失脚させた人物、シュルクーフにとってはサモア人を殺して指揮官を傷付けた張本人…レミール、彼女と瓜二つだった。

 

「レミール……いや、違う…?」

 

驚愕に目を見開くカイオスだが、レミールとは明らかに違う点を見付けた。

それは、口元…上唇と鼻の間にある溝である"人中"と呼ばれる部分が縦に真っ二つに裂けており、前歯と歯茎が露出している。はっきり言って、口元だけ見れば化け物のようだ。

 

「私の名は、ファルミール。先帝陛下の姉君が私の母上…つまり、現皇帝ルディアス陛下の従姉となります。そして…私の双子の姉はレミール…私はあの凶行に及んだ者の妹なのです。」

 

「このお方…ファルミール様は生まれつきこの口を持っておられ、その為に表舞台に立つ事が出来なかったのです。故にエストシラント郊外の小さな屋敷に…」

 

女性…ファルミールが自らの立場を説明し、密偵が彼女の身の上を話す。

カイオスはそれを聞いて悩んだ。

 

(まさか、皇族とは…しかも、あのレミールの妹だと?ロデニウス連邦に受け入れられるか…)

 

「はいは~い、それじゃあ皆乗って乗って!」

 

そんなカイオスの悩みもどこ吹く風、シュルクーフはあっさりとした態度で密偵とファルミールをボートに乗せようとする。

 

「えっ…?あ…あの…?」

 

ファルミールが戸惑った様子でシュルクーフを見るが、シュルクーフはそれに対し笑顔を返した。

 

「まあまあ、指揮官なら大丈夫でしょ。少なくとも殺したりはしないと思うよ~」

 

戸惑いつつも、ボートに乗せられる密偵とファルミール。その様子にカイオスは苦笑した。

 

「そうだな…私が悩んでも仕方ない。ロデニウス連邦が決める事か…」

 

カイオスとファルミール、密偵を艦内に、ついでに密偵が乗ってきた大型火喰い鳥を水上機の格納庫に収容したシュルクーフは暗い海上をアルタラス王国へ向かって進んだ。

 

 

──同日同時刻、旧クイラ王国『ザラーフ・クレーター兵器実験場』──

 

岩や荒い砂で覆われた荒涼とした大地、そこに巨大な窪みがあった。

直径85km深さ200m程もある巨大なクレーターである。

草木の一つも無いクレーターの中心、そこにはこの場にそぐわない構造物が屹立していた。

トラス構造の7つの柱により空中に固定された金属製の多面体。何枚もの鉄板を溶接して作られたそれは、なんとも言えぬ不気味な雰囲気を漂わせている。

 

「上手くいくのか?」

 

そんなクレーターから30km程離れた分厚い鉄筋コンクリートで囲われた地下室で指揮官が問いかけた。

目の前には幾つものモニターが並んでおり、クレーターの各地点に置かれたカメラから送られた映像が映し出されている。

 

「何度もシミュレーションを重ねました、問題は一切ありませんよぉ!」

 

その問いかけに答えたのは、鉄血の名物技術者『ドク』だった。

自信満々に答えるドクは、地下室に持ち込まれた黒板にチョークで様々な数字や図形を書き込んで行く。

 

「先ずは我々が開発した高純度生成魔石、これにレーザー刻印機により高精度の爆裂魔法陣を施すのですっ!」

 

ロデニウス連邦が開発したパーパルディア皇国の、『風神の涙』すら凌駕する魔石…『イタクァの腕』の開発が可能となったのは高純度の魔石を生成出来るようになった為だ。

簡単に言えば砕いた魔石を遠心分離機にかけ、分離された粉末状の魔石を金型に入れてプレス成形する事で高純度魔石の生成に成功したのだ。

その高純度魔石にレーザー刻印機で高精度の魔法陣を刻印する事で、高効率の魔法を発動出来るという魔導技術と科学技術の融合こそがロデニウス連邦の魔石なのである。

 

「中心部に純度98%以上の魔石を置き、爆裂魔法陣を施した魔石を球状に配置します。そして、爆裂魔法を発動し魔石を圧縮します!」

 

「そうすると、魔石が溜め込んでる魔素とやらが熱と光になって一気に放出される…だったな?」

 

そう、実は高純度魔石の生成実験途中で、一定の純度と密度に達した魔石から高熱と閃光が発生した。

それを新たな炸薬として使えないか?と研究を続けた結果、高威力爆弾として完成したのだ。

 

「よし、では始めてくれ。」

 

「承知しましたぁ!」

 

6つのレンズが付いた奇妙な眼鏡を光らせて、ドクが異常に長い指でパソコンのキーボードを叩く。

すると、一つのモニターにカウントダウンが表示された。

 

──5…4…3…2…1…0

 

全てのモニターの表示が真っ白になり、次の瞬間には砂嵐になった。

 

──ズゥゥゥゥゥゥン……

 

地下室が揺れ、その威力の凄まじさを物語る。

 

「おぉっ!実験は成功です!」

 

ドクが歓声を上げて手を叩く。

そんなドクの横で、指揮官はポツリと呟いた。

 

「……『トラペゾヘドロン』」

 

「はい?」

 

指揮官の呟きにドクが首を傾げた。

 

「トラペゾヘドロン、そう名付けよう。」

 

魔導爆弾『トラペゾヘドロン』。それは、直径約30kmの範囲の土砂を熱線によりガラス化させた。

 

 

──同日、神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス『対魔帝対策省』──

 

世界最強の大国、神聖ミリシアル帝国の帝都ルーンポリスの中心地に建ち並ぶ各省庁。その内の一つ、『対魔帝対策省』の一角で仮面を被った男性が小さく震えていた。

 

「なんだ…この異常な魔力波は…」

 

彼の名はメテオス、古の魔法帝国が遺した遺物を解析し運用するための部署である『古代兵器戦術運用対策部運用課』の職員である。

彼の手にあったのは大きなジグザグが描かれた細長い紙だった。

古の魔法帝国、通称『魔帝』。かつて世界を蹂躙し、神にすら弓を引いた傲慢なる帝国…神聖ミリシアル帝国は魔帝の復活を恐れ、復活の予兆を察知すべく様々な探知方法を試していた。

その内の一つ、『広域魔力探知機』に反応があったのだ。

 

「東……東にあるのはパーパルディア皇国か…しかし、あの国にこんな強烈な魔力波を発する術があるとは思えない。」

 

広域魔力探知機は、強力な魔法や魔導兵器の駆動により発生する魔力波と呼ばれる力場を世界規模で探知するものだ。

しかし、余程強力な魔力波でなければ探知出来ない上、大体の方向しか分からないという不完全なものだった。

 

「そう言えば…」

 

メテオスはふと思い出した。

パーパルディア皇国があるフィルアデス大陸の更に東、文明圏外にロデニウス大陸と呼ばれる大陸があったはずだ。

そこには、かつて『魔王ノスグーラ』を撃退した『太陽神の使い』の伝説があるとされている。学生時代に読んだ文献にそのような記述があったため、その考えに行き着いた。

 

「ロデニウス大陸…そういえば、ロデニウス連邦という新興国がパーパルディア皇国に宣戦布告していた…まさか、太陽神の使いなる者が再び現れたのか…?」

 

一人、頭を抱えるメテオス。

神聖ミリシアル帝国のエリートである彼ですら、ロデニウス連邦が魔帝の兵器である『コア魔法』を知らず知らずの内に開発した事なぞ思いもよらなかった。

 




次回も遅れるかもしれません

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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