異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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吾妻の着せ替え…あれL2Dなん…?やべぇよ…


61.Avenger

──中央暦1639年11月19日午後2時、サモア基地共同墓地──

 

霧雨が降る日だった。

綺麗に整えられた芝生の上に幾つもの墓標が建ち並んでいる。

そんな中、一人の女性が二つの墓標の前に傘をさして立っていた。

 

「この方々が……」

 

真新しい花輪が掛けられた二つの墓標、そこにはこう刻まれていた。

 

──偉大なる悪党『グレッグ・ボルドマン』異世界にて眠る

 

──穏やかなる剣士『倉本 徳二郎』異世界にて眠る

 

その二つの墓標の下で眠っているのは、パーパルディア皇国で殺害されたユニオン人と重桜人だった。

傘を畳み、墓標の前で跪き祈りを捧げる女性…その二人を含む11名を殺害した張本人レミール。その双子の妹であるファルミールだ。

そんなファルミールの背後から声が掛けられる。

 

「お前が、あの女の妹か?」

 

その声に、立ち上がり振り向くファルミール。

そこには、右目を包帯で覆った大男…クリストファー・フレッツァ、通称指揮官である。

 

「はい、私はレミールの双子の妹…ファルミールと申します。」

 

「挨拶するってのに面も見せんのか?パーパルディアらしいな。」

 

嘲笑するような指揮官の言葉に、ファルミールは少し躊躇うような様子を見せるが、絹の仮面を剥ぎ取る。

指揮官にとっては憎悪の対象であるレミールと瓜二つな顔付きに、人中が裂けた醜悪な口元…はっきり言って、マイナス要素しかない顔だ。

 

「その顔を見るのは胸くそ悪い。」

 

「そう…ですよね…」

 

あまりにも辛辣な指揮官の言葉に、顔を曇らせながら再び仮面を被ろうとするファルミール。

しかし、指揮官がそれを止めた。

 

「顔を隠すな、気分が悪い。」

 

「…はい。」

 

理不尽な言葉。しかし、ファルミールはそれも仕方ないと思っている。

自分は関係無いとは言え、身内がしでかした事だ。追放されたとはいえ皇族である事に違いは無い、指揮官の心情を汲めばこのような扱いも当たり前だ。

しかも、自分が反抗的な態度をとって亡命者の立場が悪くなる可能性もある。それだけは避けなくてはならない。

 

──ガチリ

 

そんな事を考えていたファルミールの耳が重々しい金属音を捉えた。

その音を辿ると、指揮官が金属の塊を手にしてそれを彼女に向けていた。

 

「グレッグ…アイツは、俺と一緒にこのサモアにやって来た17人の死刑囚の一人だった…初めはそれこそ殺し合い寸前のケンカをしたもんさ。だがな…ある日、島に自生してたバナナで酒を作ってやったらそりゃ喜んでな。あぁ……アイツは好きな酒を二度と飲めない。」

 

ファルミールはそれを知っていた。

共に亡命したカイオスが、それは何だ?と質問していた。

『拳銃』と呼ばれる小型かつ、連発出来る銃らしい。

それが自分に向けられている…それも仕方ない話だ。

 

「徳二郎はなぁ…重桜って国で剣術を習ってたらしい。だが才能が無く、仕方なくサモアに来たらしい。それでも…それでも、諦めきれなかったんだろうな。毎晩ずっと木刀を振ってたよ。でも、シリアスって奴から別の流派を教えられてからメキメキと上達してな…いつか、同門の奴らと対戦したいって言ってたよ。……もう叶わんがな。」

 

ファルミールは指揮官の目に宿る感情が見えた。

濃厚な、重い泥のような殺意…口だけの殺意ではない。本物の殺意だ。

そんな濃密な殺意を向けられた事の無いファルミールの心臓が早鐘を打つ。息が荒くなり、口の中がカラカラに渇く。

 

「確かに、グレッグは殺されても仕方ねぇかもしれねぇ!だがな、俺にとっちゃ悪人も善人も、出来も不出来も…このサモアで生きる奴は仲間だ!家族だ!」

 

指揮官の指が拳銃のハンマーを上げる。後はトリガーを引くだけだ。

 

「こんな小悪党な俺を受け入れてくれたKAN-SEN…アイツらが守るべき人々を殺し、悲しませるような奴らは許さん!それに…俺は、仲間や家族を殺されても理性的でいられる程大人じゃないんでな!」

 

指揮官の指がトリガーに掛かる。

ファルミールは覚悟した。だが、その前に言わなければならない。

 

「フレッツァ殿。貴方の怒りは理解出来ます…だから、私の命が貴方の慰めになるのであれば…」

 

再び跪くファルミール。

 

「ですが…どうか、カイオス殿達…亡命者の命だけは…」

 

「……」

 

無言の指揮官。

その指に力が少しずつかかり……

 

──バンッ

 

霧雨の降る湿った空気の中、乾いた破裂音が響いた。

芝生に、ポタリと鮮血が滴る。

 

「…31人。」

 

「え……?」

 

耳から伝わる鋭い痛みに顔をしかめながらファルミールが掠れた声で聞き返す。

それに指揮官は、背を向けながら答えた。

 

「俺が直接殺した人数だ。だが、見境なしに殺した訳じゃない。俺の命やら品物を狙ってきた連中を返り討ちにしてたら、この人数さ。」

 

「……私を…殺すのでは?」

 

ファルミールから発された震えた声に、肩を竦めた。

 

「お前は、俺を殺そうとしてない。それに…俺の仲間を殺したのはお前じゃない。理性的な大人じゃないが、それぐらいの分別はあるさ。」

 

拳銃をホルスターに収めると、一歩踏み出し思い出したように告げた。

 

「あぁ、後でヴェスタルって奴の所へ行きな。……何、悪いようにはせん。」

 

そう言って手をヒラヒラと振って、霧雨の中へ消えて行った指揮官。

ファルミールは、その背中を見送る事しか出来なかった。

 

 

──同日、パーパルディア皇国属領クーズ──

 

かつて『豊かと繁栄の象徴』と呼ばれていたクーズ王国。しかし、20年程前にパーパルディア皇国の侵攻を受け陥落し属領と成り下がっていた。

パーパルディア皇国より派遣されたクーズ統治機構からは、『クズのクーズ』などと呼ばれ、クーズの住民は日々重労働を強いられている。

そんなクーズ住民の一人が廃坑に入って行った。

曲がりくねった廃坑は熟知した者でなければ直ぐに迷ってしまうだろう。

 

──コンコンッ

 

「碧き航路に?」

 

たどり着いたのは半ば朽ちた木箱が積まれた一角だった。

そんな木箱の一つを叩くと、人の声が聴こえた。

それに対し、ここまで来た男…ハキは答えた。

 

「祝福を。」

 

すると、木箱がスライドして下へ行く梯子が見える。その梯子の終端には一人の男が立っていた。

 

「少し遅かったな、ハキ。」

 

「すまない、イキア。統治機構の連中が彷徨いててな…」

 

「尾行されてないだろうな?」

 

「大丈夫だ。かなり遠回りしてきたからな。」

 

梯子を降りて、天井の低い通路を歩いていると音が聴こえてきた。

 

──パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

歩き続けるとその音は段々と大きくなってきた。

そうして、最終的にたどり着いたのは天井から月明かりが射し込む巨大な空間だった。

落盤により出来た空間であるが、天井部分はネット状に生い茂った蔓植物により上空から見えづらくなっている。

そんな空間には、数十人の男女が金属の筒が付いた木の板を肩に当てていた。

 

「ヴァルハル教官、ハキ到着しました!」

 

「よし、もうじき行動を起こすからな…最後の訓練だと思えよ。」

 

「はいっ!」

 

そう言って金属の筒…銃を手に取るハキ。

これはロデニウス連邦より提供されたレジスタンス向けのライフルだ。

M1903の銃身に施されているライフリングを深くする事で、発射ガスのロスを大きくして初速を落とし、マガジンを持たない単発式に、ストックは簡素な合板製といったモンキーモデルだ。

ただし、そんなライフルでもパーパルディア皇国のマスケット銃よりも遥かに高性能である。

 

「しかし…アイツも人使いの荒い…」

 

ポツリとヴァルハルがぼやいた。

今のヴァルハルは、パーパルディア皇国の属領となっている地域のレジスタンスを訓練する任務に就いていた。

初めはパーパルディア人である事から警戒されていたが、ライフルを手土産にし自らがフェン王国を防衛したアズールレーンの者だと明かすと、一転して歓迎された。

もちろん、ヴァルハルだけではなく数十名が各属領のレジスタンスに武器を供与したり、教育を行っている。

アズールレーンと第四文明圏参加国が外から、そしてレジスタンスが内から攻撃を加えてパーパルディア皇国の継戦能力と軍事力を徹底的に擂り潰す…それが、対パーパルディア戦の基本戦略だ。

 

──パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

銃声の響く中、ヴァルハルは自らもライフルを手に取りレジスタンスと共に訓練を行った。




レミール閣下……やるべきか!?

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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