アーミヤいい子やで…ほんま…
あと、ダイドー級はエロ要員なのですか?
──中央暦1639年12月1日早朝、エストシラント港──
空が白み始めた早朝、パーパルディア皇国の皇都エストシラント。第三文明圏最大の都市である、この地を護る皇都防衛艦隊の根拠地に停泊する戦列艦の見張り台で一人の兵士が見張りに着いていた。
「くあぁぁぁ~…まったく、アズールレーンとか言ったか?連中のせいで寝不足になっちまった。」
アルタラス王国に侵攻した第三艦隊が壊滅してからというもの、艦隊の再編成までの間は厳戒体制を維持するように命令されている。
その為、兵士達は昼夜問わず警戒していた。
「……ん?」
兵士が望遠鏡を覗きつつ首を傾げる。
「人……?」
その兵士が見たのは人影だった。
エストシラント港からおよそ4km程だろうか?静かな海面に、長い黒髪の小柄な少女が立っていた。
その背には小さな櫓のような物を背負っており、頭には長めの獣耳が生えている。
見た目は亜人の少女だ。しかし、船に乗っている訳でも無いのに海面に立っている。
その光景に目を擦る兵士。再び望遠鏡を覗くが…
「うっ……!な、なんだ!?」
望遠鏡から閃光…いや、海面に立つ少女から目映い光が発せられた。
その光が少しずつ弱まって行く。
それと入れ換わるように東から太陽が昇ってきた。
「なっ……なんだ…あれは!」
思わず声を上げる。
そこに居たのは少女ではなかった。
朝日に照らされる200m程もある黒鉄の船体、天を衝くような艦橋。箱形の回転砲塔からは、重厚長大な砲身が生えている。
戦列艦が小舟に見えるような巨艦が7隻、エストシラントの喉元に何の前触れも無く現れた。
その巨艦のマストにはためく、3つの星と錨を描いた旗。
「まさか……アズールレーン!?」
見慣れぬ旗に、見慣れぬ船。こんな時にエストシラントに来る未確認船なぞ、現在皇国が戦争をしている相手…アズールレーンしか居ない。
あの巨艦はなんだ?どこから現れた?等々、疑問は尽きなかったが兵士は自らの責務を果たす為に魔信を手にした。
だがそれを、無駄だと切り捨てるようにその巨艦の砲口がピカッ、と光った。
「てっ……敵襲……」
──ズゴァァァァァァン!
彼の悲鳴のような報告は、足元から沸き上がる爆炎によって掻き消された。
上空高くに放り投げ投げられる木材や帆布…重量があるはずの魔導砲すら、風に巻き上げられた木の葉の如く宙を舞う。
そして、これが世界で最も凄惨な海戦『エストシラント近海海戦』の幕開けとなった。
──同日同時刻、エストシラント襲撃艦隊旗艦『長門』──
「ふむ…これ程近ければ当てる事は容易であるな…」
アルタラス王国より出港した7名のKAN-SEN、その旗艦である『長門』が艦橋内部で呟いた。
長門からエストシラント港までの距離は凡そ4km。それに比べ、戦艦の交戦想定距離は20~30kmだとされている。
それを前提とすれば、4kmなぞ至近距離と言ってもよい。
普通の戦艦であれば、ここまで接近する前に察知されてしまうだろう。
しかし、彼女達はKAN-SEN…人型である『機動戦形態』により秘密裏に接近、目標近くで艦船型である『重火力形態』となる事で敵地の懐へ艦隊を送り込む事が出来るのだ。
《長門姉、わたしも撃っちゃっていい?》
通信で彼女の妹、『陸奥』が問いかける。
「陸奥、まだ待て。指揮官からの指示をだな…」
自慢の41cm砲を撃ちたがる陸奥を押し留める長門に、別の通信が繋がる。
《ふんっ、アイツはそういう嫌がらせのような作戦ばっかり!》
《姉様、それでも指揮官の作戦に間違いはありませんでした。今回も上手く行きますよ。》
鼻を鳴らしてご機嫌斜めな様子の『ネルソン』と、それを宥める『ロドニー』。
《指揮官には感謝しなければな。私たち、戦艦に花を持たせてくれるのだからな。》
《ハハッ!帆船と港が相手なら、速力も関係ねぇな!》
《あの日受けた屈辱…この16インチ砲弾に乗せて返してやろう!》
目を閉じ、指揮官への感謝の念を口にする『コロラド』。今までの鬱憤を晴らすようにギラついた目をエストシラントに向ける『メリーランド』と、静かな闘志を燃やす『ウェストバージニア』。
「…流石は列強国と言ったところか。兵士の動きは良いな…だが、重桜の民…力無き人々を虐げる者を野放しにはしておけぬ。」
パーパルディアの兵士が、大慌てで戦列艦に乗り込む。また、ワイバーンロードもエストシラント市街地の向こう側から此方に向かって飛んで来る。
──ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
おそらくムーから輸入したのであろうサイレンが鳴り響き、市街地も港も蜂の巣を突っついたような騒ぎが巻き起こる。
ワイバーンロードが雄叫びをあげ、戦列艦が帆を目一杯に張り出港する。
「…恨むが良い。」
戦艦7隻で艦砲射撃すれば戦列艦は出港する事無く、ワイバーンロードは飛び立つ事無く市街地ごと焼き払われていた事だろう。
しかし、それをしなかったのは指揮官の指示によるものだった。
──「連中の目の前で、ご自慢の艦隊を叩き潰してやれ。……あぁ、ついでに港も使い物にならなくしておけ。」
つまり奇襲ではなく、正面から圧倒的に叩き潰す…それにより敵軍の士気をへし折り、市民の反戦感情を揺さぶる。
艦隊の殲滅や、港湾設備の破壊はその為の手段でしかない。
そんな指揮官の策略を思い返しながら、長門は重々しく口を開いた。
「余は長門…」
ある者は、民の誇りを背負いながらも悲劇的な最期を迎えた。
ある者は、欠陥品と呼ばれながらも幾多もの海戦に挑んだ。
ある者は、死の淵から甦り新たな力を手にした。
16インチ砲を搭載した7隻の戦艦。
彼女達を上回る艦はあれど、誇りは未だ潰えてはいない。
「重桜の長門である!」
『ビッグセブン』、世界最強を謳われた7人の乙女が挑むは第三文明圏の覇者パーパルディア皇国。
合計58門の16インチ砲が今、その力を傲慢なる皇国に叩き付ける。
前書きの通り、アークナイツやりながらなので遅れます