異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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私ですね、スマホを使って執筆してるんですよ
で、アズレンにアークナイツにFGOをやってると執筆出来ないんですよ

なのでゲーム用にiPhone11買いました
ずっとAndroid使いだったのでiOSに慣れません


66.エストシラント近海海戦・上

──中央暦1639年12月1日早朝、エストシラント近海──

 

「急げ!皇都の危機だぞ!」

 

誰かの怒声が響く中、多数の戦列艦がエストシラント港を出港した。

その数、第一艦隊と第二艦隊合わせて丁度700隻。戦力比は100対1、負けるはずもない戦力差だ。

しかし、兵士達の表情は切羽詰まったものだった。

 

「なんてデカイんだ…」

「あんな船、ムーでも見た事がないぞ!」

「まさか…第三艦隊をやったのはアイツらか!?」

 

帆に風を受けて進む戦列艦の甲板上で兵士達は、目の前の水平線上に鎮座する巨大な影を見ていた。

200m程ある巨艦だ。それが7隻…しかも、長大な砲身を持つ大口径砲を備えている。

第一艦隊は外交において他国、主に列強国へと派遣される事が多々ある。そんな彼らは、相対する巨艦の姿がムーの戦艦やミリシアルの魔導戦艦と重なって見えた。

 

「くそっ!せめて竜母があれば…」

 

そう嘆くのは第一艦隊よりも先行する第二艦隊の提督、バンデルである。

エストシラント防衛を任された三つの艦隊の内、竜母を保有するのは第三艦隊しかない。

基本的な皇都防衛戦略は第三艦隊が沖合いにて敵艦隊を撃滅、その取り零しや敵別動隊を第一艦隊と第二艦隊が陸上基地との連携で殲滅する…というものだった。

つまり第三艦隊が消失した今、皇都防衛艦隊には竜母が居ない。

勿論、陸上基地から飛来するワイバーンロードの存在は心強い。しかし、彼はどうも嫌な予感がした。

 

(もし、奴らが第三艦隊を倒したとするなら…皇都防衛部隊でも荷が重いかもしれんな…だが、この数に襲い掛かられれば無事では済まんだろう。確実な勝利の為には、さらに数が必要となるな。)

 

全速力で敵艦隊に向かって行く戦列艦と、陸上基地より飛び立ったワイバーンロード。

戦列艦よりもワイバーンロードの方が圧倒的に優速であるため、あっという間に敵艦隊に接近してゆく。その数300騎、それだけでもそこらの文明圏外国を易々と滅ぼせる戦力だ。しかも陸上基地には400騎以上が待機しており、やや遠くなるがエストシラントの北方の都市『アルーニ』や聖都『パールネウス』にも合計1000騎程が配備されている。

これ程の航空戦力と700隻もの戦列艦…これらの猛攻を如何に巨大であれど、たった7隻に耐えられる筈もない。

だが、バンデル以下多数の将兵の考えは無惨にも打ち砕かれた。

 

──ドンッドンッドンッドンッドンッ

 

敵艦に小さな爆炎が見えたと思った次の瞬間だった。空に幾つもの黒煙と炎の花が咲き、その近くにいたワイバーンロードが全身から鮮血を噴き出しながら墜ちて行く。

 

「なっ…なんだ!?」

 

バンデルがその光景に驚愕している間にも、次々とワイバーンロードが撃ち落とされて行く。

全身から噴き出した鮮血により線を描き墜ちる者、炎の花が目の前で咲き木っ端微塵になる者、半身が千切れて腸を空中にぶちまけながら墜ちて行く者。

空の王者ワイバーンロードが容易く、無惨に死に逝く。

 

──ギャオォォォォォォォン!

 

直ぐ様、低空飛行に移った数十騎のワイバーンロードが一直線に敵艦へと向かって行く。

それでも幾つもの炎の花が咲き、ワイバーンロードを絡め取る。しかし、先程より撃ち落とされる数は少なくなっている。

 

「よしっ!行けるぞ!」

 

誰かがそう歓声を上げた瞬間だった。

敵艦の至るところがチカチカッと瞬き、海面に小さな水柱が上がる。

 

──ギャオォォォォォォォ……

 

──パパパパパパパパパッ

 

幾つかの光弾にワイバーンロードが貫かれ、海面に叩き付けられる光景が見えた。

次にワイバーンロードの断末魔と、一拍遅れて連続した小さな乾いた破裂音が聴こえてきた。

 

「なんだあれは!?」

「どうなってる!ワイバーンロードがあんな簡単に!」

「アイツらはいったい何なんだ!?」

 

次々と、容易く撃ち落とされて行くワイバーンロード。その光景に半ば恐慌状態に陥っている兵士達。

だが、バンデルは敵艦の攻撃に見覚えがあった。

 

「まさか…対空魔光砲!?」

 

パーパルディア皇国に1基だけ存在する対空魔光砲。神聖ミリシアル帝国から密輸入したそれの試験を見学した事があるバンデルには、敵艦の攻撃が正に対空魔光砲そのものに見えた。

 

「バンデル提督!第二艦隊、全艦戦闘可能状態です!」

 

「よ…よしっ!全艦突撃!数は此方が上だ、必ず勝てる!」

 

バンデルの元に通信士が駆け寄り、報告する。それに対し、バンデルは不安を圧し殺しながら指示を飛ばす。

帆に風を受けて敵艦隊へと突撃する第二艦隊、戦列艦400隻からなる大艦隊の物量はそうそう防ぎきれるものではない。

 

(敵艦はワイバーンロードに気を取られているはずだ…その隙に敵艦隊の懐に……)

 

バンデルが即席で戦術を立てていた瞬間だった。

 

「敵艦発砲!」

 

「来たか!」

 

まだ敵艦隊とは3kmほど離れている。

だが、仮にムーに匹敵する艦砲を持っているのであれば届いても可笑しくはない。

そんなバンデルの考えを裏付けるように、第二艦隊の前方に幾つもの水柱が上がり、それに巻き込まれた戦列艦が木っ端微塵になる。

 

「戦列艦『ボーマ』『トリグアス』『サヴァクァン』『ドグリル』……ダメです!20隻以上が轟沈しました!」

 

「なんて威力だ!だが、あれだけの巨砲だ。連射は出来まい!今のうちに突撃せよ!」

 

バンデルの指示に従い、残った戦列艦が突き進む。

射程や威力は負けているだろうが、それでも数は圧倒的に優位だ。

多少の損害には目を瞑り、接近戦を挑む…それが現状とれるベストな戦術だった。

しかし、それはあっさりと否定された。

 

「バンデル提督!敵艦が…敵艦が光っています!」

 

「なんだと!?」

 

通信士の言葉にバンデルは勿論、多くの兵士が敵艦の方を見る。

7隻の敵艦、その黒鉄の巨艦から金色の粒子を伴った光がユラユラと揺らめいている。

 

「なんだ…?」

「何の魔法だ!?」

「魔力を感じない…違う、魔法じゃない!」

 

兵士達がざわめく最中、その揺らめく光の中で踊る粒子が虚空で一つに集まって行く。

上空100m程の所で、それは細長い雲のような形となって行く。

 

(なんだ…?)

 

バンデルが怪訝そうな目を金色の雲に向ける。

その金色の雲は回転し、細く長く…そして鋭くなる。

 

「や……槍?」

 

それは金色の光槍となった。

数を数える事すら馬鹿らしくなる…空を埋め尽くす程に、無数の槍が空に浮いている。

一本一本は細い。しかし、戦列艦を上回る程に長い。

 

(まるで……神の裁きだ…)

 

あまりにも荘厳な景色に、そんな考えが浮かんでくる。

しかし、そんな考えは次の瞬間には消し飛んでしまった。

 

──キュインッ

 

聞き慣れない音と共に、空を埋め尽くす多数の槍がその切っ先を下方に向ける。

その槍が向いた先…そこに、自分達が居る事に気付いたバンデルは一気に顔を青ざめさせつつも、力の限り叫んだ。

 

「たっ…待避ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

だが、もう遅い。

 

──キュィィィィ……ドドドドドドドドドドドドドドッ!

 

無数の光の槍が、第二艦隊に向かって降り注いだ。

 

──ズガァンッ!ズガァンッ!ドンッ!ズドォォォンッ!

 

その光景は正に神の裁きであった。

光の槍は戦列艦を甲板から竜骨まで貫き、瞬く間に残骸へと変えて行く。

V字型にへし折れ、弾薬庫に収納していた砲弾が誘爆し、爆炎と共に多数の命が散って行く。

不運にも、光の槍の雨に打たれたワイバーンロードが串刺しとなり、戦列艦に叩き付けられ運命を共にする。

そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中、バンデルは力無く膝から崩れ落ちた。

 

「ば…ば……」

 

バンデルが乗る旗艦『ローロンズ』に光の槍が降り注いだ。

金色の光に包まれる中、彼は最期の言葉を告げた。

 

「化け……物……」

 

エストシラント港から1km、正に皇都の喉元で第二艦隊は文字通り"全滅"した。

 




1日1話更新していた勢いを取り戻さねば…!

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