まあ、雪が降らないのでバイクに乗れていいのですが
──中央暦1639年12月6日正午、工業都市デュロ──
パーパルディア皇国最大の工業都市であるデュロ。多数の造船所や、鉄工所、魔石の精製工場が軒を連ねる町並みは第三文明圏の工場と称されていた。
本来は正午ともなれば、昼食を求める多く工員達が食堂や屋台にやって来るのだが、今日のデュロはそんな様子も無く閑散としていた。
そんなデュロの中心部にある一際大きな建物…デュロ市庁舎の市長室で二人の男が言い争っていた。
「貴様!皇軍の力を信用出来んのか!」
相手の胸ぐらを掴み、怒鳴り付ける強面の男。幾つもの勲章が付いた軍服を着ている、デュロ防衛軍の司令官であるアールダである。
そんなアールダから至近距離から怒鳴られ、彼の唾を浴びているのは人の良さそうな柔和な雰囲気のデュロ市長のシャアダであった。
「知っていますとも、皇軍は強い。しかし、私は知っているのですよ!エストシラントが敵艦隊により攻撃され、皇都防衛艦隊も港も甚大な被害を受けた事を!」
怒りに顔を歪ませるアールダに臆する事もなく、真っ正面から反論するシャアダ。
それに対し、アールダは痛い所を突かれたかのように若干怯む。しかし、市長室の窓から見える港に目を向けた。
「ぐっ…いや、それは奴ら蛮族が卑怯な奇襲を仕掛けてきたからだ!見よ、デュロ防衛の為に集まったこの大艦隊!大部隊!最新兵器!ルディアス陛下のご高配により、この地に最優先で配備された戦力だ!」
右手でシャアダの胸ぐらを掴んだまま左手で港を指差す。
港を埋め尽くす程の戦列艦750隻と竜母121隻、その数合計871隻。
その竜母の内の1隻に至っては、パーパルディア皇国が持つ造船技術の粋を集めて建造した最新鋭竜母『ヴェロニア』であった。
更にはヴェロニアにはムーのマリン戦闘機にすら対抗する為に開発された、ワイバーンオーバーロードも20騎配備されている。
「海上戦力だけではなく、陸軍にも100万人もの兵士と3000頭の地竜が居る!そうだと言うのに貴様は、市民を避難させるだと!?良いか、皇軍は強いのだ!奴らはデュロの街並みを見る事も無く死ぬ!それともあれか、貴様は我々が敗北するとでも思っているのか!?」
エストシラント防衛艦隊が壊滅した事を知っているにも関わらず、この言い様である。
あくまでも皇軍が敗北したのは相手から卑怯な手を使われたからであって、それさえ無ければ勝っていたという事である。
「卑怯な手を使われたから負けた!?ならば今回もまた、卑怯な手を使われるかもしれないのですよ!それを分かっているのですか!?」
そんなアールダに対し、シャアダはあまりにも真っ当な反論をする。
「ぐっ…だ…黙れ!軍人でもない貴様が心配するような事ではない!対策ぐらい立てている!」
「では、その対策とは何なのですか?」
「えぇい、くどいぞ!それは機密だ!」
逆上したアールダはシャアダの胸ぐらから手を離すと、ドスドスと足を鳴らして市長室の扉へ向かう。
「市民の避難をしたければ勝手にしろ!ただし我々が勝利し、デュロに何の被害も無かった場合、貴様を敗北主義者として報告するからな!」
──バタンッ!
そんな捨て台詞を吐いて市長室を後にするアールダ。
そんな彼の態度に、ため息をついて呆れた様子なシャアダは懐からハンカチを取り出して唾でベタベタになった顔を拭った。
「ポクトアール……無事だろうか…」
シャアダは窓に歩み寄ると、水平線を眺めた。
フェン王国へ懲罰攻撃を仕掛ける為にこのデュロから出撃し、異国の地にて囚われの身となっている友の安否を気にかけつつ、シャアダは市長の義務を果たすべく仕事に戻った。
──同日、皇都エストシラント第一外務局──
パーパルディア皇国の政府機関の中でも、エリート中のエリートが集まるとされている第一外務局。そんな者達を束ねる局長であるエルトは、局長室で頭を抱えていた。
「なんという事だ……」
普段、冷静沈着な彼女がすっかり憔悴している。その原因は、デスクに広げられた数枚の書類だった。
それは、ムーに駐留している駐在武官から送られてきた物だ。
「ムーゲ殿から飛行機械、先のエストシラント港襲撃では艦船の情報を得られたが…まさか、陸上戦力にこのような物があるとは…」
エルトが一枚の魔写を手に取る。
そこには、ムーの港の岸壁にズラリと並ぶ鉄の獣…ロデニウス連邦からムーへ輸出された『M4中戦車シャーマン』と『M3ハーフトラック』が写し出されていた。
「まさか、これは魔導砲か?ムーがこんな纏まった数を輸入するという事は…ムーすら認める程の価値がある兵器だと言う事だろうな…」
エルトは外交官であるため、軍事については明るくない。
しかし、世界第二位の国力を誇るムーがわざわざ遠くにあるロデニウス大陸から輸入…しかも、少数ではなく纏まった数を輸入しているという事は、ムーにとってはそれだけの価値がある物だという事だろう。
それを考えれば、ロデニウス連邦…そして、アズールレーンはムーに匹敵するか凌駕するような技術力を持っていると推測出来る。
「カイオスはこれを知っていたのか……」
先日、世界のニュースにて電撃的に報じられた『自由フィシャヌス帝国』建国のニュース。
その映像に映っていたカイオスについて殆どの者は、彼を裏切り者と罵った。しかし、エルトは違った。
カイオスは第三外務局という、最も多くの国家を相手にする省庁のトップでありながら、国家監察軍の総司令官も兼任していた。
そんな事もあって彼は多くを見聞きし、その観察眼や客観的視点を鍛えてきた。その点に関しては、エルトを始めとする他の外務局員では及ばないだろう。
そのカイオスが、皇国を捨ててレミールの妹を名乗る者の元へ行った。
「……負けるのか、皇国は。」
優れた観察眼と客観的視点を持つカイオスが、皇国を捨てた…つまり、カイオスは皇国の敗北を予見しているのだ。
少なくともカイオス自身は賄賂や目先の利益で動くような人物ではない。それについてはよく理解しているつもりだ。
「カイオス……何故、私達は…こうも離れてしまうのだろうか…」
そう言ってデスクの引き出しを開けるエルト。
そこには、書類に混じって一枚の魔写があった。
中性的な容姿の若い女性と、仏頂面で若白髪の男性が肩を寄せ合っている。
若かりし頃のエルトとカイオスを写した魔写だった。
まだ、若手の外交官だったエルトは慣れない仕事で四苦八苦していた時、同期だったカイオスに何度も助けられていた。
そうしていく内に、互いに意識し始め交際するに至った。
しかし、時が経つにつれて仕事量の増加ですれ違う事が多くなり、何時しか二人の関係は自然消滅してしまった。
だが、エルトが未だに独身であるのは尚もカイオスに対して思う所があるのだろう。
「……2…88…964…」
ふと、立ち上がり魔信に歩み寄り周波数を変えた。
それはエルトとカイオスが交際していた頃に、二人で使ってい個人用回線の周波数だった。
──ピーッピーッピーッ……
魔信の呼び出し待機音が鳴る。
カイオスがまだこの回線を使っているかは分からないし、応答してくれるかは分からない。
そもそも、応答してくれたとしても何を話せばいいか分からない。
だが、それでも無性にかつて愛した…あるいは、今でも愛している男の存在を感じたかった。
──ピーッピーッピーッ……
「……私は何をやっているのだろう。」
何だか自分のやっている事が馬鹿らしくなってきた。
こんな事をするなぞ、まるで初恋に浮かれた生娘のようではないか。
そんな自分を嘲笑するように苦笑すると、魔信の周波数を元に戻そうと手を伸ばした瞬間だった。
《……エルトか?》
周波数を調整する為のダイヤルに伸ばした手が途中で止まる。
まさか応答があるとは思わなかった。
予想外の事態にエルトは口を数回、パクパクさせるが意を決して言葉を紡いだ。
「……ひ、久しぶり…だな。カイオス。」
次回はドンパチパートにするか、番外編(転移前の話)にするか…
どっちがいいと思います?
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい