──中央暦1639年12月9日午前8時30分、デュロ沖──
パーパルディア皇国の生産能力を奪うべく編成された艦隊、航空隊、揚陸部隊。
各々が胸中に闘争心を、あるいは不安を抱きながらデュロへと向かっていた。
《諸君、おはよう。アズールレーン総指揮官のクリストファー・フレッツァだ。》
ある者は機上で、ある者は艦内でその通信を聴いた。
《あぁ、作業をしている者は手を止めなくてもいい。さて…諸君に聞きたい事がある。……文明人とはなんだ?》
その問いかけに兵士達が様々な答えを口にする。
「文明圏に住む奴だろ?」
「いや、文明国に産まれた人間だ。」
「違うな、結局はどんな風に生きるかじゃないのか?」
ざわめきが起きるも、スピーカーから流れる言葉を受けて静かになる。
《様々な考えがあると思う。しかし、私はこう思っている。真の文明人とは、"自由を愛し、優雅に生き、約束を尊び、時に神秘を奉じる"事だと…そこに産まれた国も住んでいる場所も関係無い。》
ほぅ…、と感心するような声が上がる。
《しかし現在、列強国と称されているパーパルディア皇国はどうだ。他国の者を奴隷とする者が自由を愛しているように見えるだろうか?他国からの搾取に腐心する者が優雅に見えるだろうか?平然と他国の者を殺害する者が約束を守るように見えるだろうか?そして、自らを神と称する者が神秘を奉る事が出来るだろうか?》
「そうだ!パーパルディアの連中こそが蛮族だ!」
「外交の場で他国の者を殺す…奴らの方がよっぽど野蛮だ!」
「そんな連中が列強国だなんて間違っている!」
指揮官の言葉に同意するように、兵士達が口々にパーパルディア皇国への批判を口にする。
《そうだ、そのようなパーパルディア皇国は列強として相応しくない。脅迫と搾取でしか運営出来ない国家なぞ、害悪でしかない。故に、我々アズールレーンはパーパルディア皇国を完膚無きまでに叩きのめし、この世界に新たなる秩序をもたらす!諸君らの活躍は、その新たなる秩序の先駆者として未来永劫、子々孫々と受け継がれるであろう!》
スッ…と静まりかえる。
しかし、それも一瞬。まるで地響きのような雄叫びが何重にも重なった歓声が、海上と上空に木霊した。
「「「「うおぉぉぉぉぉぉお!!」」」」
「そうだ!やってやる!」
「カミさんに格好いいとこ見せねぇとな。」
「腕が鳴る、ってもんよ。」
士気は十分、自分たちの行いが世界に大きな影響を与える事を再認識した兵士達は、歓喜した。
しかし、そんな兵士達に冷や水が浴びせられた。
《だが、忘れるな。我々は地獄に堕ちる。》
シーン…、と一気に静まりかえった。
《この作戦では多くのパーパルディア人が死ぬ。何万も…何十万も死ぬだろう。他でもない、我々が彼等を殺すのだ。》
指揮官の言葉に兵士達の歓喜は引っ込み、熱を持った感情が冷めて行く。
《確かに虐殺や略奪、強姦を嗜むどうしようもないクズも居るだろう。だが、多くは自らの祖国を護るために軍人と成った者だろう…そう、諸君らと同じ思いを抱き戦場に立つ者だ。我らはそんな純真な思いを持った者を、彼等より遥かに優れた兵器を使って一方的に殺すのだ。》
兵士達が各々が扱う兵器を改めて認識する。
このレバーを引けば多数の爆弾が降り注ぎ、デュロの街は廃墟となる。
この砲を放てば、戦列艦もろとも多くの人が死ぬ。
このトリガーを引けば、相手の射程外から一方的に殺せる。
巨大な爆撃機を操るパイロットから、ライフルを持つ兵士まで、皆が自分が操る兵器の力を再認識した。
《そうだ、多くを殺す我々は間違い無く地獄に堕ちる。だが…私は、こう思う。》
多くの兵士が息を飲んで言葉の続きを待つ。
永遠にも感じられる僅かな静寂。
それを破ったのは、どこか楽しげな声だった。
《諸君らと共に行けるのなら、地獄も悪くない。》
「……そうだな。理由がどうであれ、俺達は人を殺すんだ。」
「だが…どうせ地獄に堕ちるんなら、子供や孫が自慢出来るぐらいに暴れてやろう。」
「あぁ、違いない。俺達が地獄に堕ちるぐらいで、後の世代が平和で幸せに暮らせるなら…これ以上の事は無い。」
兵士達がこれから自らが行う事に対し、改めて向き合い覚悟を決めた。
その瞬間だった。別回線から通信が届いた。
《こちら、ラーテル4。敵ワイバーンと接触!なんて数だ……空がワイバーンだらけだ!》
《ラーテル1より各機へ!我々の任務は、対空兵器の破壊だ!ワイバーンへの攻撃は控えよ!》
先行していた対空兵器破壊部隊、ワイルドウィーゼル部隊からの通信だ。
どうやら、デュロ防衛隊のワイバーンロードとの交戦は秒読みといった段階のようだ。
《よし、少し予定より早いが始めよう。ラーテル隊、交戦を許可する。幸運を。》
《ラーテル1、了解!デュロ攻略の成否は俺達に懸かってる!ラーテル隊、エンゲージ!》
通信越しに、エンジン音とワイバーンロードの雄叫びが聴こえる。
それに対し、指揮官は声高らかに宣言した。
《『オペレーション・インフェルノ』開始!諸君らに、碧き航路の祝福があらん事を!》
──同日、パーパルディア皇国属領クーズ──
《…碧き航路の祝福があらん事を!》
廃坑に作られた隠れ家で、数名の男がポータブル無線機から流れる声に耳を傾けていた。
「インフェルノ作戦が始まったぞ。我々も作戦を開始しよう。」
無線機の前から離れ、立て掛けてあったライフルを手に取るヴァルハル。
そんな彼に従うように、ハキとイキアもライフルを手に取った。
「仲間の話では、統治機構には最低限の戦力しか残していないようです。具体的には、銃兵が30名ほど…」
「地竜も飛竜も、ついでに魔導砲もエストシラントやデュロに引き上げている…我々は連中の銃よりも優れた銃を持っている上、人数は200人程。勝ちましたね。」
そう、現在クーズ…と言うより多くの属領に配備されていた属領統治軍は、その戦力の多くがパーパルディア本国防衛の為引き上げられていた。
残っているのは、属領に残る統治機構職員の護衛や治安維持の為に残された歩兵のみだ。
農具や棍棒ぐらいしかなかった頃なら、それでも立ち向かえなかっただろう。
しかし、アズールレーンから武器を提供された今なら易々とパーパルディア人を追い出す事が出来るだろう。
「確かに勝てるだろうが…決して油断するなよ。何だかんだ言っても列強国の兵士だからな。それと……兵士ならいいが、統治機構の職員はなるべく殺すなよ。」
ヴァルハルは若干浮かれている二人に釘を刺しながら、アズールレーンから伝えられた指示を再度伝える。
「殺さず、捕まえず…わざとパーパルディアに逃がすんでしたよね?」
「何でそんな事を?その場でサクッと殺せば早いのでは?」
ヴァルハルの言葉に二人が首を傾げる。
一週間程前に伝えられた指示だが、未だに疑問に思っていた。
それに対し、ヴァルハルは肩を竦めた。
「分からん。分からんが…それ相応の報いを受けさせる為には必要な事、だそうだ。詳しい事は私も分からんよ。」
この指示をしてきた者…指揮官の顔を思い浮かべる。
(まあ、ロクな事は考えてないだろうがな。)
そう考えるが、今は自分の任務を全うすべく頭を切り替える。
「よし、属領大反抗作戦『オペレーション・プルガトリオ』を開始するぞ。」
「「了解!」」
バレンタインイベントが始まりますが誰からチョコを貰います?
私は綾波とDoYから貰ったので今年は、大鳳から貰おうかと…
あと、北連イベント来ますね
ソ連艦って…下手すればこのイベントで目玉艦を出し尽くしてしまうのでは?