異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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とっくの昔に陰ってる、というツッコミは無しで


そうそう、やっと『日本国召喚』の6巻買いました
出来れば店舗で買いたかったんですが、何処にもなかったのでamazonに頼りました


85.列強の陰り

──中央暦1639年12月19日午前9時、エストシラント──

 

第三文明圏最大の都市にして、パーパルディア皇国の栄華と繁栄の象徴である皇都エストシラント。

本来であれば人々の活気ある喧騒で満ち溢れている筈の時間帯だ。

しかし、現在のエストシラントはどこか陰鬱な雰囲気に支配されていた。

通りに面した商店の店先に並んだ商品棚、そこにあるべき商品は殆ど無い。

特に悲惨なのが生鮮食品を扱う青果店や精肉店、鮮魚店だ。

それら生鮮食品は属領で生産していたのだが、属領で勃発した反乱と交易の要であるエストシラント港が破壊された事により入荷が出来なくなっていた。

その影響で市民の間では、こんな噂が蔓延っていた。

 

──あらゆる生活必需品が不足する

 

そんな噂を耳にしたエストシラントに住まう100万人もの人々は我先にと、それらを買い求めた。

先ずは確実に不足するであろう生鮮食品、次に日保ちのする保存食…そして、被服や石鹸のような物。

そういった物の需要に対し供給が圧倒的に不足した結果、僅か数日でエストシラントの物価は空前絶後のインフレーションを起こした。

今では主食である小麦の値段が、凡そ100倍程になってしまった。

第一次産業を属領に頼りきった歪んだ体制の皺寄せが一挙に押し寄せた形だ。

そんな陰鬱な街並みを一台の馬車がゆっくりと走っていた。

 

「……まるで死にかけの病人のようだ。」

 

ガタガタと揺れる豪華な馬車の中で呟くのは、憔悴した様子のレミール。

外見上はさほど変わり無いが、その疲れきったような雰囲気は隠せる物ではない。ついでに言えば、目の下には濃い隈が出来ているが厚化粧によりどうにか隠している。

レミールは連日連夜、悪夢にうなされていた。

悪夢にうなされ飛び起き、夢だと安心して再び寝てもまたもや悪夢を見る…その繰り返しだ。更には、恐怖を"与えられる事"に慣れていない彼女は睡眠の度に失禁していた。

この歳にもなって寝小便を繰り返す事に対する羞恥と屈辱は、彼女に多大なストレスを与えていた。

 

「……ん?何だ?」

 

港の復興作業へと向かう肉体労働者の列をぼんやりと眺めていたが、先の方から聴こえる騒ぎに気付く。

どうやらパラディス城を囲む城壁、その城門の方で騒ぎが起きているようだ。

馬車がゆっくりと…しかし、確実に騒ぎの方向へと接近する。

騒ぎの原因が分かった。

 

「小麦の値段が高過ぎる!どうなってるんだ!?」

「家には小さな子供がいるんです!お願いします!食べ物の値段を下げるように商人に命じて下さい!」

「高い税金を払ってきたのに、助けてくれないのか!?」

「話によれば、デュロが占領されたそうじゃないか!」

「息子は!?息子は無事なんですか!?デュロの工場で働いているんです!」

 

城門の前では、大勢の市民達が抗議の声を上げていた。

食料品の値上がり、デュロ陥落の噂、そして何より記憶に新しいエストシラント港襲撃…それら対し危機感を覚えた市民達の不満が爆発したのだ。

そんな不満を訴えて集まった市民に対応しているのは、パラディス城の警備を担っている衛兵達だった。

 

「現在、皇帝陛下を始めとした閣僚が対策しておられる!貴様らは何の心配もする必要は無い!」

 

衛兵隊長が声を大にして呼び掛けるが、暴徒化しかけている市民達の怒りを煽るだけだった。

 

「対策ってなんだよ!具体的な事を言え!」

「そうだ、そうだ!」

「皇帝陛下は、この頃お姿をお見せしないじゃないか!そんなお方の言う事なんて信じられるか!」

「俺は知っているんだぞ!パールネウスが壊滅したそうじゃないか!」

 

その言葉を聞いたレミールの肩が、ピクッと跳ねた。

その言葉を発した男は、一枚の紙切れを衛兵隊長に突き出す。

 

「そんなデマを信じるな!これは蛮族共の策略だ!」

 

衛兵隊長は突き出された紙を男の腕ごと払い除ける。

男は腕に走る痛みに堪えきれず、その紙を離してしまった。

紙切れは風に乗り、フワリフワリと宙を舞い…レミールが乗る馬車の窓から中に入って来た。

恐る恐る、と言った様子で紙切れを手に取るレミール。そこには信じがたい事実が書かれていた。

 

──パールネウス消滅、生き残りは無し

 

目を引く大文字の見出しと、魔写と思われる画像…そこには、瓦礫と消し炭だけが転がる大地が広がっていた。

そこにレミールの知るパールネウスの街並みは無かった。

情緒ある歴史的街並みも、中心部に聳えるネウス城も…何も無い。

勿論、そんな紙切れ一枚でパールネウスが壊滅したと考えるのは早計だ。

しかし、パールネウスへと向かう凶兆の蒼白い彗星…それを見てしまったレミールには、事実としか思えなかった。

 

「これは…正面から入るのは難しいですね。裏門から入りましょう。よろしいですか?」

 

城門の様子を観察していた御者は、裏門から入る事をレミールに提案する。

 

「……あぁ。」

 

だが、レミールは力無く頷く事しか出来なかった。

 

 

──同日午後9時、パラディス城大会議室──

 

その日行われた緊急帝前会議。

やはりと言うか、当たり前と言うか…絶望的な雰囲気に沈んでいた。

皇軍総司令官アルデは真っ青な顔で意味不明なうわ言をぶつぶつ言っているし、第二外務局長リウスは書類の前で頭を抱えている。

特に悲惨なのが経済担当局長ムーリと農務局長テモンだった。

エストシラント港の壊滅とデュロ陥落の影響で各国の大使は引き上げ、戦争の激化を理由に貿易は停止状態にある。更には、物価の上昇によりあらゆる経済活動がボロボロになっていた。

更には、属領が一斉に反乱を起こした事により穀倉地帯を失ってしまった為、食料不足が起きる…最悪、餓死者が出てくる可能性すらある。

 

「皇軍は寄せ集め、経済は壊滅、産業は喪失…この状況を打開出来る策がある者は居るか?」

 

皇帝ルディアスの言葉に会議の参加者は一様に俯く。

誰も打開策なぞ思い付かない。最早、降伏する以外に道は無い。

しかし、アズールレーンは皇族の一人を担ぎ上げて、彼女こそが正統なる皇帝である…と宣言し、現在のパーパルディア皇国政府を領土を不法に占拠する武装勢力だと批判している。

更には、皇国はアズールレーンに対し殲滅戦を宣言している。

こんな状況で降伏しても受け入れられず、殲滅…つまり、皆殺しにされる可能性は濃厚だ。

それが分かりきっているという状況で降伏なぞ出来る筈もない。

 

「はぁ…万策尽きたか…」

 

ルディアスはチラッと、レミールの方に目を向ける。

彼女は俯いて虚ろな目をしている。厚化粧が死化粧に見える程に生気が無い。

 

(さて…どうするか…)

 

口元に手を当てて思案するルディアス。

それと同時に思考している者が居た。

第一外務局長エルトだ。

 

(いかん…このままではなし崩し的に文字通りの殲滅戦になってしまう…アズールレーンはパールネウスの住人を全滅せしめる兵器を持っている。これをエストシラントに使われたら……)

 

エルトはかつての同僚であり恋人であったカイオスと密談を重ねていた。

その過程で、カイオスに同調する衛兵や兵士から様々な情報を手に入れていた。

その情報の中には、アズールレーンがパールネウスに"特殊兵器"を使った、との情報もあった。

現に、パールネウスとの交信は途絶している。事実であると受け止めるしかない。

 

(やはり、カイオスの手に乗るしか…)

 

思考を巡らせていたルディアスとエルト。

しかし、その思考は強制的に中断させられた。

 

──ドゥゥゥゥゥゥン!ギュィィィィィィィンッ!ティロティロティロティロティロ!

 

突如として響く聴き慣れない爆音、カーテン越しでも分かる程に強い光。

それを認識したと同時に、衛兵がノックもせずに大会議室に転がり込んできた。

 

「き、緊急事態です!皇都の目の前に、敵艦隊が!」

 

それを聞いたアルデがビクッ、と肩を跳ねさせた。

 

「な…目の前だと!?何故、察知出来なかった!」

 

「闇夜に紛れて接近したようで……」

 

たちまち混乱の渦に叩き込まれる大会議室。

そんな中、エルトは自分でも不思議に思う程に冷静だった。

 

(……始まったか。)

 




何が始まるか大体予想できますよね
まあ、それを言うのは野暮ってもんですよ

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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