異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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L田深愚様より評価9を頂きました!


時間があったので連続投稿です


91.地獄の釜

──中央暦1639年12月25日午後6時、エストシラント市街──

 

──タタタターンッ!ターン…ターン…ドンッ!ヒュルルルルルル……ズドォォンッ!

 

パーパルディア皇国の皇都、第三文明圏最大の都市エストシラント。

だが、現在のエストシラントにそう言った呼称は相応しくないだろう。

今のエストシラントに 相応しいのは、地獄の釜、殺戮と断末魔の都…という言葉かもしれない。

 

「リロード!」

「了解、カバーする!」

「グレネードを投擲する!」

 

アズールレーン側の兵士達は射程、威力、連射性に優れた銃火器を用いて皇軍兵を圧倒して行く。

 

「クソッ!奴らは蛮族じゃなかったのか!?俺達の銃より強い銃を持っているじゃないか!」

「あぁぁぁぁあ!撃たれた!イテェよぉぉぉ!」

「回復魔法を使える奴が居ないんだ!我慢してくれ!」

 

一方、圧倒されている皇軍兵側は悲惨な有り様だった。

彼らの持つ前装式滑腔銃身マスケット銃は命中率も連射性能も、マシンガンやサブマシンガン、ボルトアクション式ライフルとは比べ物に成らない程に劣る。

それ故、皇軍兵達は射程外から一方的に撃たれ、間断無く撃たれるため装填する事すら出来ない。

つまり、彼らは圧倒的な兵器の性能差に成す術もなくバリケードや建物に隠れる事しか出来なかった。

 

──シュポンッ!ヒュルルルルルル……

 

「な…なんだ…?」

 

民家から引っ張り出した家具で作られたバリケードに隠れながらも、マスケット銃を装填していた兵士の耳に聴き慣れない音が届いた。

シャンパンのコルクを抜いたような音の後に聴こえた風切り音…それが段々と近付いてくる。

上から聴こえてくるようだ。

 

──ドンッ!

 

その音を確認すべく上を向いた皇軍兵だったが、視界の端に黒い塊が写った次の瞬間には轟音と共に彼は命を散らした。

ほぼ垂直に降り注ぐ81mm迫撃砲弾は、正面からの攻撃しか想定していないバリケードを易々と飛び越えて多数の皇軍兵を殺傷した。

しかし、皇軍兵の悩みの種はそれだけではなかった。

 

「自由フィシャヌス帝国万歳!」

「もう、お前達の言う事なんか聞けるか!」

「横暴なる皇国に鉄槌を!自由フィシャヌス帝国こそ、我々の救世主だ!」

 

反乱を起こした一部の衛兵や皇軍兵、そして市民達…反乱軍だ。

土地勘がある彼らは、細い路地や建物の影に潜んでマスケット銃や弓矢、投石で攻撃を仕掛けてくる。

それだけではなく、建物に火を放ち退路を塞ぐような事をする者まで出て来た。

 

「くっ…クソッ!売国奴共め!」

「貴様ら皇国の臣民だろう!」

「我々に協力…グベェッ!」

 

そんな、反乱軍に足止めされていた皇軍の部隊があったが次々と飛来する礫から身を守るので精一杯だ。

大した防具もない彼らは、投げ付けられる礫により皮膚が裂け、骨が砕けてゆく。

 

「うるさい!お前達が好き勝手したせいでこうなったんだ!」

「兄貴が死んだのも、お前達のせいだ!」

「もう、皇国は終わりなんだよぉぉ!」

 

彼ら反乱軍は謂わば、勝ち馬に乗りながら鬱憤を晴らしている状態だ。

しかし、逆に考えればアズールレーン側が目に見えて勝っている状況であれば皇軍側を妨害させる"障害物"とする事が出来る。

これにより皇軍側はアズールレーンと反乱軍、両方の相手をせざるをえない状況に陥っていた。

 

 

──同日、エストシラント沿岸部──

 

戦線が押し上げられ、すっかり静かになったエストシラントの沿岸部。

そこに乗り上げた揚陸艦の一隻に近付く数名の人影があった。

 

「私だ、第一外務局のエルトだ!」

 

それは、パーパルディア皇国第一外務局長でありながら反乱軍の首謀者となったエルトと、彼女を案内するアズールレーンの兵士達だった。

 

「エルト…久しぶりだな。」

 

大きく開いた揚陸艦の艦首、その先に広がる暗闇から元第三外務局長カイオスが現れた。

久方ぶりにカイオスの姿を目の当たりにしたエルトは思わず駆け寄ろうとした。

しかし、ここは戦場だ。逸る気持ちを抑えて敢えてゆっくりと歩く。

 

「あぁ…久しぶりだな、カイオス。…そちらの方が?」

 

カイオスの元へ歩み寄るエルト。その途中、カイオスの背後に若い女性の姿が見えた。

動きやすい女性用軍服を着た美女…レミールの双子の妹、ファルミールだった。

 

「初めまして、エルトさん。ご存知とは思いますが、改めて自己紹介を…」

 

そう言って深々と頭を下げるファルミール。

その姿は、高慢なパーパルディア皇族とは思えない程に奥ゆかしいモノだった。

 

「パーパルディア皇族の末席…現第三外務局長であるレミールの妹、ファルミールと申します。現在は、自由フィシャヌス帝国の皇帝を名乗っております。」

 

「い、いえ!どうか頭をお上げ下さい!」

 

その態度に面食らったエルトだったが、彼女の態度は好印象なものだった。

 

「あんたがエルトか?ほー…美人だな。年は行ってるが…」

 

カイオスとファルミールの背後から、そんな男の声が聴こえた。

 

「初見となる、アズールレーン総指揮官をやっているクリストファー・フレッツァだ。」

 

「っ!貴方が!」

 

エルトの顔が驚愕に染まる。

それも無理は無いだろう。これ程の戦力を持つ軍隊の総司令官が、まさかこんな戦場に出てくるなんて思わなかったからだ。

そんなエルトの驚愕なぞ知ったこっちゃない、と言わんばかりに夕日に照らされるパラディス城を指差した。

 

「あんたには、カイオス氏とファルミール"陛下"…あと、我々の指揮下にある護衛部隊を連れて皇帝ルディアスの確保に動いてもらう。あの古臭い城に突入するんだ。」

 

「陛下を捕らえるのか?」

 

「そうだ、エルト。」

 

エルトの疑問にカイオスが答える。

 

「陛下…いや、ルディアスから退位と降伏の言質をとり、この戦争を終わらせる。そうでなければ、戦争が長引き多くの人が死ぬ。」

 

「エルトさん、私からもお願いします!」

 

カイオスの言葉に続いて、ファルミールが勢い良く頭を下げて懇願した。

 

「戦争が長引き、多くの人が死ぬ事となればこの国は二度と立ち直れません!私は…私は皇位を簒奪し、新たな国を作る事で多くの人々を救いたいのです!例え、簒奪者…売国奴と罵られようとも、せめて皇族としての義務を果たさせて下さい!」

 

カイオスとファルミールから伝えられる確固たる意志。

 

(自らの利益ではなく、人々の為に…か。)

 

二人の決意に胸を打たれたエルトはゆっくりと頷き、口を開いた。

 

「分かった…皇国が滅ぼうと、多くの罪無き人々の生活は守らなければならない…どのような罵りを受けようとも、それだけは果たさなければな…」

 

「話は纏まったか?」

 

エルトが決意を口にしていると、指揮官が腕時計を見ながら問いかけた。

 

「あぁ、もう毒を食らわば皿までだ。陛下を捕らえ、この戦争を終わらせよう。」

 

「ありがとう、エルト。」

 

「エルトさん…本当に…本当に、ありがとうございます。」

 

カイオスとファルミールがエルトへの感謝を口にしていると、揚陸艦内にアナウンスが鳴り響いた。

 

《エストシラント市街地の制圧は90%完了、パラディス城の城門を突破した模様!》

 

「速い…これが、アズールレーンの力か!」

 

本格的侵攻から半日程でエストシラントの殆どが制圧され、強固な防備を誇るパラディス城の城門さえも突破された事に驚くエルト。

しかし、カイオスとファルミールはアズールレーンの軍事力を熟知している為、大して驚いてはいない。

 

──ブロロロロ…

 

そんな4人のもとへ車輪と履帯の両方が付いた車輌…『M3ハーフトラック』が車体を寄せてきた。

 

「コイツに乗って城まで行く。マスケット銃ぐらいなら防げる装甲があるから安心してくれ。」

 

「こ…これは…ムーの自動車のようだな…」

 

おっかなびっくりハーフトラックに乗り込むエルト。

それに続いてカイオスとファルミール、指揮官が乗り込む。

 

「あぁ、そうだ。」

 

指揮官が、ふと思い出したように呟く。

 

「戦場に出たら、家族や色恋沙汰の話は絶対にしないように。」

 

「フレッツァ様、何故ですか?」

 

「戦場でそういう話をする奴は、大体死ぬ。命が惜しかったら、そういう話は戦後まで我慢しな。」

 

「そういうものですか?」

 

指揮官の言葉に首を傾げるファルミール。

一方カイオスとエルト、二人の頬は若干赤くなっていた。




アンケート、4が多いですねぇ…
1も中々ドラマチックな展開でいいと思ってたのですが

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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