活動報告にも書きましたが、身内に不幸があったので投稿遅れました
それに伴い、勢いが削がれたのでクオリティー低めになってしまいました
勘を取り戻せるように頑張ります
──中央暦1639年12月25日午後7時、パラディス城──
「GO!GO!GO!」
「クリアリングは確実に行え!突入の前には、必ず手榴弾を投げ込め!」
「衛生兵、来てくれ!」
第三文明圏全ての富を集めた、と言っても過言ではない程に煌びやかで荘厳な皇宮パラディス城。普段であれば芳しい香が焚かれ、楽団による厳かな音楽が流れ、壁には美しい絵画や装飾が飾られているはずだ。
しかし、今は大きく様変わりしていた。
芳しい香ではなく鼻を突くような硝煙の臭いが充満し、厳かな音楽ではなく兵士の怒号と銃声が鳴り響き、壁の美しい絵画は血痕と弾痕により無惨な姿となっていた。
「構えーっ!撃て!」
──パパパパパンッ!
パラディス城の守りの要である衛兵達が磨き上げられた石材で作られた廊下で陣形を組み、マスケット銃を構えて発砲する。
白煙を纏った鉛弾が飛翔し、アズールレーン側の兵士達へ向かう。
──ガキンッ!ガキンッ!キンッ!
しかし、それは重装歩兵が構える大盾により容易く防がれた。
「クソッ!効いてないぞ!」
「銃ならば蛮族の盾なんて簡単に貫けるはずなのに!」
「文句を言う前に装填を……」
──タンッ!
「ぐっ……!」
「小隊長ぉぉぉ!」
皇国が持つ絶対的な力の一端である銃。それが効かない相手に対し混乱しそうになる部隊をどうにか立て直そうとする小隊長だったが、大盾の脇から突き出たサブマシンガンにより射殺された。
──パパパパパッ!
連続した軽快な発砲音と共にサブマシンガンの銃口が瞬き、マスケット銃の弾丸とは比べ物に成らない程の初速を持った9mmパラベラム弾が幾つも吐き出される。
「グアッ!」
「なっ…なんだ!…ぐっ!」
「ゴベァッ!」
衛兵達は自らが持つ銃よりも遥かに連射性、命中精度に優れるサブマシンガンを前に成す術もなく倒れて行く。
「クリア!」
「クリア!全員死んでる。」
「お三方、此方へ!」
兵士達が倒れた衛兵達に銃口を向けつつ、腹や頭を爪先で蹴って生死を確認する。
そうやって全ての衛兵が死亡しているのを確認した兵士達が、背後にある廊下の曲がり角の向こう側に声をかける。
「訓練の見学はしたが…いやはや、とんでもない兵器ばかりだ。」
大盾を持った重装歩兵に四方を囲まれるように護衛された三人の内の一人…カイオスが感心したように呟いた。
「こんな兵器を量産し、全面配備するとは…これはムーどころか、ミリシアルすら凌駕しているぞ…」
カイオスの後ろで若干の恐怖を滲ませながら呟くエルト。
「これが…戦争の現実…なのですね…」
カイオスとエルトに挟まれるような位置に居たファルミールが、息を飲んで震える声で告げる。
「ですが、これで城内の戦闘員は殆ど排除したと思われます。」
カイオスとエルトンとファルミールに付けられた護衛部隊の隊長、マーフィー少佐がファルミールの言葉に応えつつ廊下の向こうを指差した。
「カイオス殿。皇帝ルディアスの居室はこの先で間違いありませんね?」
「あぁ、この先にある広間の奥…そこにある扉がルディアスの居室だ。」
「よし、では行きましょう。」
マーフィー少佐が手招きして、先に進むように指示する。
「はい、行きましょうファルミール陛下。」
エルトが頷いてファルミールの肩を軽く叩く。
それに対しファルミールは力強く頷きながら応えた。
「はい、行きましょう。この戦争を…終わらせる為に!」
──同日、外務局監査室──
「誰かあの男を止めろ!」
「なんだアイツは!本当に人間なのか!」
「死神…死神だ!死神が俺達を殺しに来たんだ!」
外務局の不正や対応の不手際に対象する部署である外務局監査室。
エリート揃いの外務局を監督する立場であるため、この部署の人員は全員が皇族である。
故に警備も厳重であり、直ぐ近くに衛兵の詰所がある。
そんな外務局監査室に繋がる渡り廊下は、正に血の海と言った様相だった。
「おいおい…そんなにギャーギャー騒ぐんじゃねぇよ。人間、いつかは死ぬんだから覚悟決めなよ。」
詰所や近くの部屋から引っ張り出した家具で作られたバリケードの裏側に隠れている衛兵とは対称的に、堂々とした足取りで歩む男…クリストファー・フレッツァこと指揮官が笑みを含ませた口調で告げた。
「クソッ!撃て!撃て!」
衛兵がマスケット銃を構えて立ち上がる。
その数5名…いくら射程と命中精度の低いマスケット銃言えど、近距離から撃たれればひとたまりもない。
しかし、その5名がトリガーを引く前に指揮官の手が動いた。
「遅い。」
指揮官が腰に巻いたガンベルトに挿したリボルバー…シングルアクションアーミー、通称ピースメーカーを抜く。
左手でグリップを掴みつつ、親指でハンマーを上げる。
そうして銃口が前方を向いた瞬間、トリガーを引きつつ右手をハンマーの位置に持って行く。右手の親指から人差し指、中指、薬指と順番にハンマーの表面を撫でるようにして連続でハンマーを上げて行く。
──バァァンッ!
銃声が重なって一つに聴こえてしまう程の速さで5発の銃弾が発射される。
ファニングショットと呼ばれるガンプレイの一種だ。
「ぐあっ!」
「うっ…」
「がっ…!」
腰だめに構えて発砲したというのに全弾命中だ。
全ての弾丸が吸い込まれるように衛兵の眉間や胸に直撃し、彼らの命を刈り取った。
──ヒュンッ!
すると空気を切り裂いて何かが放り投げられた。
指揮官の目の前に落下した物体…鞘に収められた剣だった。
「ふっ…貴様、蛮族の分際で中々やるではないか!」
宝石で装飾された剣を持った男、衛兵隊長がバリケードを乗り越えて前に出てきた。
「貴様、目的と名と階級はなんだ!」
ヒュンヒュンと風切り音を鳴らしながら剣をまるで演舞のように振り回す衛兵隊長。
指揮官はそれに対し、ふっと溜め息をついて気だるそうに答えた。
「戦争、クリストファー・フレッツァ、アズールレーン総指揮官。」
なんとも簡潔な答え。
その言葉に衛兵隊長は驚いたように目を見開いた。
「ほう…よもや最高司令官が最前線に出てくるとはな。よかろう!皇国最高と謳われた私の剣技で相手をしてやる!」
まるで決闘だ。
一対一の剣を使った古き良き決闘…どうやら衛兵隊長はそんな状況に酔っているらしい。
演舞のような動きを繰り返す衛兵隊長。
しかし、それは唐突に終わりを告げた。
──バンッ!
「ガッ……!」
衛兵隊長に対し、指揮官は躊躇いもなくトリガーを引いた。
「……脳筋め。誰がお前に合わせるかよ。」
銃口から僅かに立ち上る硝煙をフッ、と吹きつつ肩を竦める指揮官。
「た、隊長が…」
「あいつ…人を殺してもなんとも思わないのか…?」
「殺される…殺される…」
頼みの綱であった衛兵隊長が、まるで紙くずを捨てるかのように殺されたのを目の当たりにした衛兵達はすっかり恐慌状態に陥っていた。
しかし、指揮官はそれに構わず歩みを進める。
「あ……あぁぁぁぁ…」
「命だけは…命だけは…」
「う……あ…」
戦意を無くし、命乞いをする事しか出来ない衛兵。
指揮官はエジェクターロッドで空薬莢を排出し、ローディングゲートから実包を装填し…
──バンッ!
「黙れ、全員殺す。」
あまりにも直接的な殺意。
崩れ落ちる衛兵。
その瞬間、衛兵達は悟った。
──自分達は最早、死の運命から逃れられない
その日、外務局監査室は最も凄惨な殺戮の舞台となった。
全ての衛兵、そして監査室の皇族…男女問わず全員が明確な殺意を持って殺された。
それは紛れもなく、かつてユニオン犯罪史上最悪と呼ばれた犯罪者『毒蛇』の手口そのものだった。
今さらですが、指揮官のイメージは毒蛇です