やっとましまろな女の子たちを出せました。
朝から蝉の声がうるさい。
そして、裏の家もうるさい。
二階にある窓が全開な俺の部屋では、扇風機が全力稼働して部屋の中に生温い風を巡回させている。
別にエアコンが無い訳でも壊れている訳でも無いんだが、エアコンの電源を入れないのには訳がある。
って言っても、俺の妹の小町が夏休みに入って全く家から出ない俺に対して、エアコン禁止令を出して来ただけである。そしてそれに従わざる得ない俺の弱さ。
ああ、小町よ。裏隣のお家がとてもうるさいので、エアコン付けたいなぁ。
窓を閉めれば、外の音も少しはシャットダウン出来るが代わりにサウナ室の出来上がり。
ならば、うるささと暑さを天秤に掛ければうるさい方がましだ。
下のリビングでは、小町が友達を呼んで勉強会という名のお喋りをしているので、下の階へ降りる事も出来ない。ちなみに小町からも降りて来るなと言われてしまった。
小町よ。お兄ちゃんは悲しいよ。
と言う訳で、他家の五月蠅さは気にしないようにしつつ、本を読んで時を過ごす。
「しゅたたたたた!すたっ!
八兄、くそ真面目なちぃちゃんに宿題写さして貰えるように一緒に頼んで!」
うちの裏に建ってる伊藤家の伸恵の部屋から美羽が屋根伝いに走って来た。
今の時刻は丁度3時のおやつ時で夏休みに入って1週間目といった辺りだ。
「おい!窓から入ってくるなといつも言ってるだろう!
部屋が汚れるし危ないだろうが!って裸足かよ、歩き回るな!!!
今ウェットティッシュで足拭いてやるからそこ座ってろ!」
「良きにはからえぃ。ってかこの部屋暑いな!」
……一気にうるさくなった。
美羽が素直に座ったので、汚れた床をウェットティッシュで拭き、汚した犯人の足も拭く。
「あひゃひゃひゃ。八兄ちゃんくすぐったい。」
「もう終わる。んで、千佳がクソ真面目なんだって?」
そんなの分かり切った事だろうに。
「違わないけど違うよー。ちぃちゃんがもう夏休みの宿題ほとんど終わらしてるっていうから、写してあげようって言ったのに嫌だって言うんだよ?だから一緒に頼んで?」
美羽は両足を放り出して座っており、上目遣いで俺を見上げながら言ってくる。
こいつは、自分の可愛さを分かってやってるのが立ち悪いよな。ウザいけど。
でも、宿題は自分の力でやるべきだと俺は思うなぁ。俺はそうしてきたし。
べ、別に俺には宿題を写させてくれる友達がいなかった訳ではない事もないんだからね。
って、どっちなんだよ。いや、いなかったんだけどさ。
「自分でやるっていう選択肢は初めからないのな。
でも、あっちに行くにも俺は下のリビングを通らないといけないんだが、なんと今は小町が友達を呼んで占領しているので、通れません。」
「なぬ!それは潜入みっちょんか!ってか、この窓から行けばいいじゃん。」
「ミッションな。 まぁそれしかないか。お前も向こうに送らないとだしな。
俺の家と伸恵の家の間も隙間があまり無いとはいえ、お前の家から伸恵の家よりかは隙間空いてるんだし、落ちると怪我じゃすまないんだ。
次からはちゃんと玄関から来いよ。」
美羽に説教をしつつ、屋根歩き用の靴を出して窓から外に出る。
屋根歩き用の靴がある時点で俺も人の事は言えない。
「ほれ、おぶってやるから早く来い。
それと、千佳との交渉だけどな、程よく間違えて写すから写させてって言ってみろ。
あいつ、前にお前が宿題丸写ししたせいで先生に怒られたって言ってたからな。」
なんだかんだ言っても俺も甘ちゃんだ。
背中に熱を感じたので伊藤家へ進みだす。こいつ軽いなぁ。
「……ありがと、八兄ちゃん。
はいよー。シルバ-!はよいけー!」
「うるせぇよ!俺は馬じゃねぇ!落とすぞ!」
伸恵の部屋の窓から侵入した俺達は小さくお邪魔しまーすと声に出し、千佳の部屋へ向かう。
なんかいつもの事だからさらっと伸恵の部屋に入っているけど、凄い事してるな俺。
千佳の部屋のドアを開て中を見れば、自分の机に着いてヘッドホンで音楽を聞いてる伊藤千佳、小学6年生。
姉の伸恵いわく、特徴が無いのが特徴のお菓子作りが得意な女の子。
俺の家とは裏隣で、その隣が美羽の家だ。
サタケという犬を飼っている。
そして、ベットの上で両手に花の状態で座っている千佳の姉、伊藤伸恵、高校1年。
未成年のくせに、酒・煙草・無免許運転とやりたい放題の女子高生。
残念な事に俺の幼馴染だ。ちょっと前までは金髪ロングだったがいつの間にか、黒髪セミロングになってた。
その残念な幼馴染に捕まって、涙目でこっちを見て来た天使は桜木茉莉、小学5年生。
純真無垢なドジっ娘でここの近所に住む女の子。結構な泣き虫。
ペットにジョンっていうフェレットがいて大いに可愛がっているみたいだ。
幼馴染に捕まっているもう一人の女の子は、金髪碧眼のアナ・コッポラ、小学5年生。
日本が好きすぎて、日本人より日本語が達者で英語がダメな日本通のイギリス人。
お人形みたいな見た目で、とても可愛い。
時折、美羽と言い争いになるが、あれと張り合えるだけあって、内に獣を飼っていそうだ。
彼女はフルシアンテという大型犬を家で飼っている。
そんな部屋で真っ先に千佳のヘッドホンを取り宿題~っと拝み倒している松岡美羽、小学6年生。
基本的にボケ担当のトラブルメーカーで自称美少女。まぁ実際美少女だけど。
よくアナにコッポラちゃんと言って揶揄い、茉莉にいたずらして泣かせ、伸恵に余計な一言を言ってどつかれ、千佳にどつかれている。
伊藤姉妹怖ぇな、どつきまくりだ。
「でも、俺はそんな超絶美少女の美羽様の事がとても大好きでなんでもいう事を聞くまである。」
「おい美羽!あたかも俺が言ってるような感じで喋るんじゃねぇ。なんだ美羽様って!」
「あっ、お兄ちゃん。やっほー。」
「おう八幡、そんなとこに突っ立ってないで入れ。そしてドアを閉めろ。冷気が逃げる。熱気が入る。」
「こんにちは。八幡お兄ちゃん。」
「こんにちはですわ。お兄様。」
部屋の中に入ってドアを閉める。エアコンって偉大だな。人類の生み出した最大の発明かも知れん。
冬にはこたつの事をそう思ってた気もするがな。
あと、こいつらは俺を見ても全く嫌な顔をしない。実は密かに毎回安心していたりする。
絶対言わないが。
「よっす。美羽に連行されてきた。お前らもいつもここにいるけどよく飽きないな。」
俺は部屋の隅に腰掛けポケットからラノベを取り出し読み始める。
「なんか居心地いいんだよね、千佳ちゃんの人柄のおかげかなぁ?ね?アナちゃん。」
「そうですわね。放課後になると自然と足が赴きますものね。さすが千佳さんですわ。」
5年生組が褒め出せば当の本人は片手を頭に置いて悶えている。
「も、もう二人とも、やめてよー。クッキーあるよ?食べる?持ってくるね。」
千佳は顔を赤くして足早に下へと降りて行った。
「逃げたな、ちぃちゃん。」
「でもちぃのやつ、顔にやけてたぞ。」
いや、今のお前らの顔をニヤけてるっていうんだ。てか美羽も伸恵も何企んでんだ?
ん、部屋の外からスー、ハー、と息を整える音が聞こえた。
俺の座ってる場所ドアに近いから聞こえちゃったよ。
千佳も結構ああいう不意打ちは動揺するんだな。
そして、ドアが開かれた。
「おまたせー、今日のもいい感じに焼けたから、食べて食べて。」
テーブルの上に甘い香り漂ういろんな形のクッキーが盛られた籠が置かれた。
「わぁ!千佳ちゃんありがとう。」
「とても美味しそうですわ!」
「さすが私のちぃちゃん。茉莉ちゃんの言う通りここが居心地良いのはちぃちゃんのおかげだね。」
「あぁ、そうだな。ちぃがいるから皆ここに集まるんだよな。さすがちぃだな。」
いきなり千佳を褒め出す二人。普段お前らそんなこと言わないだろ。
さては……そういうことだな。
「え?急にどったのみっちゃん、お姉ちゃん。熱でもあるの?」
「いやいや、普段あたし達は口に出さないけどいつもそう思ってるって事だぜ☆」
「ちぃが頑張ってるのはあたしも近くで見て来たからな。感謝してるよ。」
伸恵は千佳の頭にポンっと手を置きニコッと笑う。
千佳の顔がボンって効果音が鳴りそうな程に急に真っ赤になり、あわあわしだした。
「そうだな、千佳だからこそこんな俺でも気兼ねなく来れるんだ。
こんな可愛くて家庭的な女の子、もし俺が同い年なら一目見て好きになって告白して振られるまである。愛してるぜ☆」
シューっと頭から煙を出しそうな状態の千佳の頭を伸恵と一緒に撫でる。
千佳はもう、なんかいっぱいいっぱいだな。なんか。
「可……好……こ……」って聞こえた気がしたが、かすこ?なんだろ?
その時、伸恵の顔を見ればまたもニヤって顔をしたので、俺もニヤってしてやった。
伸恵・美羽発案のちぃちゃん恥ずかしめ計画は一応の大成功だ。
こら!そこの茉莉ちゃん、いくらなんでも俺がニヤってしたの見てビクッて涙目になるのは
可哀そうじゃないですか?俺が。
「千佳さん、とても美味しいですわ。ありがとうございます。」
「うん、千佳ちゃん。今日もとっても美味しいよ!」
「あ、あぅ、うん。どういたしまして。じゃんじゃん食べてね。」
「うん。あと、今の千佳ちゃん、とっても可愛いよ!」
「へ、へぁ。」
アナにより少し持ち直した所での茉莉からの予期せぬ一撃によって言葉にならない言葉を発する千佳。
「「あっはっはっはっは。」」
「真っ赤になっちゃってしどろもどろ。こんなちぃは私初めてみたわ。」
「ちぃちゃん。とっても可愛いぜ☆きゃるーん
照れちぃちゃん。略して照れ照れちぃちゃんだね。」
千佳はゆっくりと立ち上がって、俯きがてら両手をプルプルさせてる。
あ、これはキレたかも?
「お前らぁ~!コラ~!
しかもみっちゃん!略せてないし、文字数長くなってるし!」
おとなしく千佳に一発ずつ貰った伸恵と美羽。……と俺。
なんで俺まで。
「お兄ちゃんも調子に乗ってたでしょ!」
「はい。すみません。
しかしだな千佳よ、俺はあの二人とは違って嘘は言って無いからどうか減刑をば!」
しーん。
ん?あれ?なんか、無機質なエアコンの音が聞こえるくらいに静まり返っているのですが。
俺なんか変な事言ったか?
「そうか、八幡は千佳の事を誰よりも愛しているのか~。
てっきり冗談だと思ってたけど、そうか~。」
「八兄、酷い、あたしの事は遊びだったのね。」
「八幡お兄ちゃん。千佳ちゃんと結婚するの?私、嬉しいはずなのに悲しいよ……」
「えっ?皆さん?急にどうなさったのですか?」
おぉ、なんか伸恵がスゲェ笑顔で超怖ぇ。誰よりもなんて言ってねぇ。
美羽、お前はあまり意味わからず言ってるだろそれ。
茉莉よ、話が飛躍し過ぎだ!結婚ってどっから出て来た!
それに、近い人の結婚を悲しんでると平塚先生みたいになっちゃうぞ。
アナ、俺もその意見に激しく同意だ。
って、千佳は……。
なんか幸せそうな顔で気絶してるじゃねぇか!!!
結局、千佳をベットに寝かせ、伸恵には今度買い物に付き合う約束を取り付けられ、
美羽と茉莉の頭を撫でる事になり、アナの勉強を見てやった。
なんでこうなった……。
ちなみに、アナは学校では日本語が分からない設定らしく、ノートが取れずに微妙に授業に付いていけていないらしい。
……いや、何やってるのん?自分が困ってまでそんな設定続けるなよ!
やはり、俺が伊藤家にいるのは間違っているのだろうか?
次話の伸恵とのデートをほんの少し書き出しているけど、
もう満足しかけてる俺がいる。
物書きさん皆スゲーなぁ。どうやったら書けるの?
でもやっぱ千葉村くらいまでは書きたいなぁ。
次話は全然できてないのでホント時間が掛かると思います。