オークになった!   作:ナゾハリ

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第16話

ハル達が霧の中に突入した後ナツはアキを肩に担ぎ上げ大広間の扉を抜けた。そのまま地上の出口に向かおうとするとゴブリンが「そっちはだめ」と声をかけてきた。さっきまで一緒にきていたルドヴィカだった。

「今オークの集団がグリッテン砦に攻撃をかけようとしている。そっちの道は魔物でいっぱいよ」

 

(こんな時にグリッテン砦に攻撃をしかけてくるなんて!)

ナツはそう思って顔をしかめつつルドヴィカに「じゃあどうすれば」と尋ねた。

「上から出られる道があるわ」

そう言いつつルドヴィカは走り出した。ナツもアキを担ぎつつ追いかける。

途中神殿を徘徊する魔物がいたが皆異変を感じたのかゴブリンの姿をしたルドヴィカはもちろんナツにも何も反応しなかった。

それに気づいたのか「ああもう!これじゃ走りにくいだけじゃない!」とゴブリンの姿から人間の姿に戻ってゴブリンの時よりも走るのを早め「早く来なさいよ!」とナツを急かした。「こっちはアキを担いでいるんだからそんなに早く走れないよ!」と言い返した。

 

ルドヴィカもそれに気づいてか少し速さを落としながらも「早く早く!」と後ろを振り向きつつ先を急いだ。

なんとか屋上に出たルドヴィカとアキを担いだナツはそこからグリッテン砦の方向を見た。

そこにはオークと魔物の大群がグリッテン砦に向かって侵攻している様子が覗えた。

「なんてことだ・・・」

その様子をナツは息を飲むようにして眺めていた。ルドヴィカは何か振動を感じて足下を見た。なんとなく石床がぼやけいるように見えた。

 

霧を抜けたハルは少し前にツーユーのいた空間に出た。ツーユーとフーユーも続く。

目の前に大きな扉がさっきと同じようにある。一つ違うのは扉が少し開いていることだった。隙間全体から青黒い霧が流れ出している。

扉の前にドゥーヨーを乗っ取ったシキがいた。ハル達に気づき苦虫をかみつぶしたように顔をしかめ「まだ邪魔をするかオークども」と言いつつハルを見て気づいたように目を見はった。

 

「貴様、オークではないな」

「そうだ!だがそんなことより聞きたいことある!」ハルが応えさらにシキを問うた

「覚者になりたい者が何故グリッテン砦を破壊しようとする!」

「ふん、あんなもの私が覚者になったら必要ない!」

「なに!?」

「私が覚者になればグリッテン砦など無くてもオークはもちろん魔物を殲滅しレスタニアの平和は永久に守ってやる!」

「無力な無数の覚者も用無しだ!覚者は私一人でよい!私一人でレスタニアの平和は保たれる!」

「人々は私の功績を賞賛し、白竜も私を賛美するだろう、そして歴史の中でシキの名は永久に語り継がれるのだ!」

「そのための犠牲などたいしたものではあるまい!」

シキは両腕を上げ宣言するかのように叫んだ。

「私の栄光を邪魔する者は全て殲滅する!」

 

「白竜様が何故あなたを覚者にしないか理由がわかった」

ハルは低く響く声でシキに言った。

「あなたは全て自分のためでしかない。レスタニアのことなど全く考えていない」

「僕は覚者として何を為すべきかずっと考えていた、こんなにもたくさんの覚者がいて皆違うことをしている。覚者として為すべき事はなんなのかをずっと知りたいと思っていた」

「でもここにいるツーユーと会ってわかった」

「何を為すべきかは決めなくてもいい」

「決めないといけないのは<何を為してはいけないか>だ」

「あなたのしている事は覚者として為してはいけない事だ」

ハルは静かに、だが確信した力強さを持って言った。

「あなたは覚者になれない、なってはいけない人だ」

 

シキは狂ったよう笑い叫んだ。

「凡人に<為すべき事>などわかるはずがあるまい!」

「貴様のようなやつに私の偉大さはわかるまい!」

「私の知識はレスタニアをあまねく網羅し、力は比類無きものなのだ!」

「凡百の覚者どもに任せらるか!」

「このレスタニアを守っていけるのは唯一私だけなのだ!」

「私こそが・・・」

ウルウルルサアイゾオオ!

 

グシャ

 

白く巨大な左手が扉からシキの頭上まで突き出されそのまま振り下ろされた。

シキは気づくことなく潰され乗っ取っていたドゥーヨーの肉体は肉片となってあたりに飛び散った。

金色の杖も折れ曲がり先の六角柱状の膨らみの上部がはじけ飛んだ。中からきれいな心臓が転げ落ちる。

心臓は数回動いた後に止まり、きれいな色はみるみる茶色に変色し萎んでいった。

 

グググチャグチャト サエサエズルウウウヤツダアアア

扉の向こうから声が聞こえきた。左手はシキを潰した時に転がった白竜の角をつまんで持ち上げる。

角は光を放ち消えていった。

「ぐうう」

後ろでツーユーが呻き胸を押さえた。胸の傷の奥がハッキリ見えるほどに角が透けてきている。

ツーユーも気になるがハルは扉の方から視線を外せなかった。

 

扉から白竜の幻影が出てくる。

オークの背丈の三倍近くはある扉の上方から鼻先が出てきた。

前へ伸び少し角張った口元から顎まですっぱりと真横に割れ目が走りその隙間から尖った牙が見える。後頭部から顎の周囲には白い毛が生えている。

角は後頭部にきれいに両方尖ってそろっていた。そして何故か左の目の周囲は霧に包まれている。

顔の次は長い首、そして右腕、上半身が出てきた。左目と同じように身体のあちこちが霧に包まれている。

翼の部分が出てこようとしたがそこで止まった。幻影が進もうとするもそこから進めないようだった。

 

幻影がハル達の方を向く。

幻影が大きく息を吸い込み咆吼を放った。同時に幻影にまとわりついていた霧が晴れてきた。霧の中から出てきたのは・・

 

金色の板状のものだった。それが幻影の身体に張りついていた。

板状のものには何か杭みたいなものが突き刺さりそれが幻影と板をつなぎ止めているようだった。

それが幻影にまとわりついていた全ての霧の中から出てきた。

「黄金竜・・」

後ろのツーユーがかすれ声で呟いた。

「黄金竜」

ハルも同じように呟く。

ツーユーが幻影を睨みながらハルに説明した。

 

「おそらくセラー湖に黄金竜の欠片が落ちたのであろう。それが禊ぎの神殿に流れ着き大広間に留まったのではないか。そして300年かけて神殿の白竜様の残滓と結びついてあのようなモノが生み出されたのだろう。300年前はただの白竜様の幻影だった」

ツーユーがそう説明する間も“白竜と黄金竜の混ざった幻影”が

ソソノノノ ツノノノヲヲ ヨコヨコセヨコセセセエエエエ

ワエハ ハクオウグゴ ンンンンリュリュリュルウナルザゾゾ

と意味を捉えるのが困難な言葉を発した。

 

幻影はまともな会話が出来る状態ではなかった。

おそらく白竜と黄金竜の思考が混ざり正常な思考が出来なくなったのであろう。

扉から上半身しか出てこれない状態で離れていればこちらに危害は与えられないと思うが、扉からは霧が常に出ているのでおそらく禊ぎの神殿は異界化が進んでいくだろう。そうなればいずれ神殿自体が異界に飲み込まれ、それによりセラー湖の水がグリッテン砦に襲いかかることとなる。

なんとしても“白竜と黄金竜の混ざった幻影”を扉の向こうへ押し返し完全に閉めてしまわなければならない。

 

「ツーユーさん」

「なんですかな」

「あの幻影を扉の向こうへ押し返します。一緒に戦っていただけますか」

ツーユーが満面の笑みを浮かべ、左手に持った大盾を地面にガン!と打ち据えた。

そして声を張り上げて口上を述べるように言った。

「レスタニアの危機を救うは覚者の役目!」

「それがしツーユーと従者フーユーは覚者殿にご助力いたす!」

「先陣はお任せあれ!」

そう言ってツーユーはシールドセージの装備である人の腕ほどの長さのロッドを高く掲げ“白竜と黄金竜の混ざった幻影”に近付いていった。

ロッドのから放たれる光は相手の注意を引いた。

 

“白竜と黄金竜の混ざった幻影”は扉から上半身しか出せず動けないものの口から金色のブレスを吐いた。しかしツーユーはそれを素早くかわしていく。

ツーユーが気を引いている内にフーユーが反対側から手に取り付き剣を突き刺す。

ハルはツーユーとフーユーをいつでも回復できるよう二人の邪魔にならないように動いた。

やがて“白竜と黄金竜の混ざった幻影”が大きく咆吼した。明らかに怒っている。

「覚者殿、癒やしの力は同時に敵の弱点を明らかにする力にもなる!癒やしの力を我らに移してくだされ!!」

ハルは呪文を唱え回復の光でまず自分を包んだ。その光をツーユーとフーユーに移す。

 

するとフーユーが取り付いた部分が濃い藍色に光る。闇属性の弱点が見えた。素早くその弱点に効果的な属性の力をツーユーがハルとフーユーに与える。

見事な連携であった。各々が自分の役割を果たしていくことで“白竜と黄金竜の混ざった幻影”は徐々に弱っていった。

そしてフーユーが剣で弱点に強烈な一撃を与えると“白竜と黄金竜の混ざった幻影”はウオオオオオオオオという咆吼し地面に崩折れた。

そのとたん幻影は扉の向こうから引っ張られるように引き込まれていく。

 

グオオイヤダワレナゼコソシンノハクオウリュウ

意味のなさない言葉を発しつつ抵抗しようとするもむなしく“白竜と黄金竜の混ざった幻影”の姿は青黒い霧の向こうへ消えていった。

幻影が消えると同時に折れ曲がって転がっていた金色の杖から紫色の光の玉が拡散するように広がった。

青黒い霧を吐き出していた扉がゆっくりと閉じ始め、完全に閉じると霧も全く出てこなくなった。

 

ハルはかなり緊張していたのかふぅぅぅと一回息を吐き呼吸を整えた。

「やりましたな!」

ツーユーがハルに声をかけてきた。

「はい、役に立てたかどうかわかりませんが撃退できてよかったです」

「いや、見事な働きでしたぞ」

そして少し間をおいてツーユーが口元に微かな笑みを浮かべて話し出した。

それは微笑みという表現すら大げさに見える笑みだった。

 

「まさか覚者殿と肩を並べて戦える日がくるとは思いもせんなんだ」

「覚者の真似事が出来るとはいえ、それがしはこのフーユーと戦うのが関の山だと思っていた」

「それをそなたが来てくれたおかげでレスタニアを守るという役目に自分が関われた」

「これでもう思い残すことは無い」

ハルはツーユーの最後の言葉に驚き聞き返した。

「思い残すことは無い?」

ツーユーは頷きハルに周りを見渡すように促した。

「この空間が崩れ始めていますな」

確かに今まで気がつかなかったが何か振動のようなものを感じた。

「幻影が消えた今この空間は維持できなくなっておる」

ハルはツーユーに「なら早くここを出ないと」と言いながらツーユーの胸を見てハッと息を飲んだ。

 

胸の角が消えかけている。

「前にも言った通りそれがしの分身の方が力が強かったようだ。分身が消えた今、白竜様とそれがしを繋ぐ力は後わずかしか残されておらぬ。そして繋がりが消えるとそれがしの命も尽きるのも道理」

「そんな!やっとここから自由になれるというのに」

ハルは涙で頬を濡らしながらツーユーを見た。

「ハル殿悲しみなさるな。それがしは満足しておる。それもこれもそなたのおかげだ。ありがとう」

ツーユーはそう言ってハルの肩に手をかけた。

 

「と、ハル殿最後に一つわたしの我が儘を聞いてはくださらんか」

「何ですか」

「そこの」といいつつツーユーはハルの後ろを指さした。

「オーク達を連れていってもらえぬか」

ハルがツーユーの指した方を見ると倒れているオークが多数いた。

「どうやらあの霧に巻き込まれたようですな」

と言いつつ倒れてるオークに近付き手を首筋に当てた。

「うむ、さっき紫の光が広がっていったので、この者達に戻っていったのではないかと思ったがそのとうりであった。生きておる」

「覚者殿からみればオークは敵。ですがそれがしもオーク、見捨てる事はできんのだ」

 

ハルは頷き「わかりました、でもどうやってこんなにもたくさんのオークを連れて行っていいものやら・・」

「うむ、それなんだが・・・」と言いつつツーユーは倒れているオークの小袋から内側に紫色の光をたたえる玉を取り出した「あった、これでいけるかもしれん」

「この者達が倒れる前に光がここから黒ローブの杖に流れ込んでいったのを見ましての」

「これは命を竜力として取り出せる玉のようですな」

「その力を逆に利用してこの玉にこの者達の身体を竜力に一時的に変えて閉じ込めるのです」

 

「そんなことが出来るのですが」

「この」と胸の消えかけの角を指さし「白竜様の力を使ってみようかと思っておる」

「でもそんなことをしたらあなたの命がますます短くなってしまう!」

ハルは悲痛な表情で訴えた。

「もうそんなに変わらぬ。それならば全てをやりきりたいのだ」

ツーユーの全てを受け入れ決意した眼差しにハルも応えざるを得なかった。

「わかりました」

「ではやってみよう」

 

そう言うとツーユーは倒れているオークの上に玉を乗せそれに右手をかざした。

玉とオークの身体が光ったかと思うとそこには玉だけが残った。

「よし」とツーユーが言いつつそばの倒れているオークに近寄り同じ事をしていく。

次々とオークが玉に閉じ込められていく。その玉をハルはフーユーからもらった少し大きめの袋に入れていった。

全てのオークを玉に閉じ込め終えるとツーユーが大きく息を吐いた。

その後も呼吸が荒かった。かなりの力を使ったようであった。

ハルはその様子を見ても大丈夫かと声をかけなかった。覚悟を決めたおこないを唇を引きしめ目に焼き付けようとしていた。ただ目には涙が滲んでいた。

 

ツーユーはそんなハルを見て優しく声をかけた。

「それがしの役目はここで終わりだ。後はそなたがそれがしの分も白竜様のお役にたってくだされい」

「まぁ覚者の真似事をしていただけのそれがしが言うことではないがな」

そういうとツーユーはガハハハハと大声で笑った。

「はい」

ハルは涙を拭きながら笑顔を見せた。

「そう、笑ってお互い別れようぞ」

「さて、実は幻影を倒したことにより禊ぎの神殿への道が閉ざされてしまっておる」

「えっ」とハルは驚いたがツーユーは続けて話した。

「だから覚者殿はそれがしが異界の狭間を使って一番近い竜の礎までの道を開く。それを使って元の世界に戻っていただく」

「向こうへついたら玉をすぐに地面にばらまくようにしてほしい。そのままだと戻った時に折り重なるようになってしまう」

 

「わかりました」

「ではこれでお別れだ」

ツーユーはハルに右手を差し出した。ハルがその右手を力強く握った。

「活躍をお祈り申す」

「フーユーモ オイノリスルネー」

ツーユーから手を離すと「フーユー」と言いつつハルはフーユーに力強く抱きついた。

「ありがとう君のおかげでここまでこれた」

「フーユーヤクニタテター?」

「うん、とても助かったよ」

「ヤクニタテテウレシー」

二人で抱いている所にツーユーが入り三人でしばらくお互いを抱いたまま動かなかった。

 

ハルはこのまま動きたくなかったがやがてツーユーが押し出すように三人を離した。

「ではそろそろ戻ってもらおうかの」

ハルは笑顔を浮かべた。しかし目からは涙が途切れることはなかった。

「では息災での」

「はい」

「ジャーネー」とフーユーが手を振る。

ハルも手を振り替えした。

「よしでは送るぞ」

ツーユーがハルに向かって腕を伸ばし右手を広げた。

ハルの周りが光に包まれる。

 

そのときツーユーが思い出したように言った。

「あ、そうそう覚者殿、異界の狭間で亡くなった者の魂は狭間を漂いやがてポーンの姿をとることがあると聞いたことがある。もしかすると亡くなったオーク達とどこかでポーンとして会うことが出来るかもしれぬ」

その言葉を聞きつつハルは目の前が光に何も見えなくなった。

 

ハルを見送った後閉じた扉のそばに腰を下ろしツーユーがフーユーに頼んだ。

「フーユー」

「ナァニ マスター」

「これまでのおまえの冒険を聞かせてくれぬか」

「ウンイイヨー アノネー」

音の無い振動が激しくなっていく中、ツーユーはフーユーがうれしそうに話す冒険譚を静かに聞き入っていた。

 

ハルは異界の狭間の一本道を走っていた。空間はツーユーの力が弱っているせいか振動が常にしており石組みの道も崩れ始めている。

やがて目の前の階段の先に出口らしき光が見えた。

走るのが難しいくらいに振動が激しくなっている。登ろうとしている階段も階段というよりは瓦礫の山と言った方が良い状態になっていた。

ハルはそこを手足を使って這い上がるように登っていく。

掛けた足の石が崩れそのまま滑り落ちそうになる。

と、だれかがハルの手を掴んだ。

 

「大丈夫でスか」

目の前に光る人らしき存在がハルの手を掴んでいた。

「さア、モうすぐデす。がンばって」

横にも同じような存在がハルの背中を支えていた。

光の出口のそばにももう一人いる。

光る存在はハルの登るのを手伝い出口に立たせた。

改めてハルは三人を見た。どこかで会った気がする。

「さあ、ハヤくここをぬケてくださイ」

一人に促されハルは出口に足を入れた。

「お早い召喚をお待ちしております。マスター」

ハルは振り返り三人を見た。三人とも右目の部分だけハッキリと見えた。

知っている目だった。

「君たちは!」

そう叫びながらハルは光の出口に吸い込まれた。

 

左の頬が冷たい。

これで何度目だろうとハルは思い立ち上がった。

目の前にグリッテン砦が見える。どうやらバートランド側の礎に出たようだった。

夕方のようであった。朝日の明るさでは無く暗さを感じる赤い光だった。

「あ」とハルは思いだし袋から紫色の玉を辺りに散らすように巻いた。これでオーク達は折り重ならずに済むはずであった。

 

(これでよし)

ハルは一つ息を吐いた。

(無事に戻ってこれた)

いろいろあったがレスタニアの危機は防げた。ツーユーとフーユーとの別れは悲しかったが彼らの思いを果たすことが出来たのではないかと自らを納得させた。

後は自分のこの姿と魔導器のようなものの探索だがこれをどうしようかハルが考え始めた時ハルに大きな影が覆った。

日が落ちるにしては早すぎるとハルは影の理由を確かめるため振り向いた。

巨大なオークがいた。

赤黒い肌が夕日でさらに際立つ。顔や身体に模様なのか戦いの傷を目立たせるためかあちこちに白い筋が引かれている。

ハルはそのオークを知っていた。

呻きの涸れ井戸に入る前ルドヴィカに教えられたオークの首領。

ハルは思わずその名前を口にした。

「モゴック・・」

 

 

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