ガン、ガン、とドアから鈍い打撃音が聞こえる。空しく反響するだけであったその音は次第に衝撃度合いが増し、ガシャン、と何かが壊れる音がした直後に大きな衝撃と共にドアが倒れた。
空いた空間の先では、菖蒲色の男と桃色の男が刀を抜いていた。
「全く手のかかる……素直に開けばいいものを」
「そうですね。現実の法則が適用されないなら、僕等が開けたい時に開けばいいんです」
――歌仙と宗三という、ある意味最もこの空間に一緒にしてはいけない二振りは、そう言いながら倒れ伏したドアを睨んでいた。
小さな部屋で目を覚ました二振りは、探索らしい探索を全くせずに他の隊員達との合流を優先した。宗三は「お小夜と薬研が心配です」と二振りの心配しかしていないし、歌仙も小夜が心配という言葉に同意した為だ。
どこまでもマイペースを貫く二振りは、納刀しドアを踏み付けながら文句を垂れる。
「ああ、お小夜、薬研……何事も無いといいのですが」
「こんな風流さの欠片も無い場所、一分だっていたくないよ! 早く他の刀と合流して脱出しないと……」
部屋の中をろくに調べもせず、片方は部屋をぼろくそにこき下ろし、片方は部屋に言及すらしない。自由過ぎる二振りは自分がいた部屋を顧みる事無く廊下を歩き出した。部屋を開けては誰もいないのを確かめると、ドアを開けっ放しにして次の部屋へ踏み込んで行く。
嵐が通り過ぎて行くが如く仲間を探す二振り。――そんな彼等に業を煮やしたのだろうか。
「……薬研!?」
「お小夜の声もしなかったかい!?」
二振りは馴染み深い声を聞きつけて駆け出す。声が聞こえた先のドアを開け、中に踏み入る。
左手にガラス張りの壁と長机がある、あまり大きくない部屋だ。中では数人の白衣を着た男女の影がゆらゆらと揺らめいている。
「薬研はどこに……!」
「お小夜はいそうに無いね……あれ? でもさっき声が……それに彼等は誰だ?」
目を大きく見開き薬研を探す宗三と、小夜がいない事に気を取られながらもこの状況の不審さに気が付いた歌仙。そして立ち上る影から薬研と小夜をはじめとした刀剣男士達の声がした事で、宗三も異変に注意を向けた。
「……お小夜と薬研の声を使っている!?」
「……二振りだけじゃないみたいだね」
影はゆらめきながら刀剣男士達の声を使い、何かを話している。歌仙はそれに耳を傾けた。
「……はい、それじゃあ241番から260番。『実験』を開始します。制限時間は一時間、ブザーが鳴ったら攻撃を始めて下さい」
ビー、とブザーが鳴り響いてから影の一つが伸びをする。それからざわざわと声が行き交い始めた。
「さーて、今日は誰が生き残るかな」
「また賭ける? 今日のランチの五割負担を賭けて」
「いいねぇ。俺は256番が生き残るに賭ける」
は、と耳を疑った。――生き残るのは誰かと言ったか。ガラスの向こうを覗いて見れば、今度は目を疑った。
そこにいたのは、短刀ではない正真正銘の子供達だった。子供達は刀を握り、互いを殺そうと振るっている。その顔は大多数が無表情か恐怖に染まっており、誰も彼もが「死にたくない」という悲痛な願いを刃に乗せて斬り結んだ相手を殺そうとしていた。
生き残る為に、相手を殺す。子供達にとってはあまりにも負荷が大きい事だろう。ガラスから影に目を向けると、影達はまるで競馬を見て勝ち馬を決める様に楽しそうだった。
「うーん、私は243番かなぁ。なかなかしぶといでしょ、あの子」
「しぶといで言ったら259番じゃないかな。今日までこうしている訳だし」
「じゃあ俺は大穴狙いで247番!」
実に、楽しそうだった。――子供の生死を賭けているとはとても思えない、軽々しい声だった。
何が楽しいのか、理解出来ない。理解したくない。よりにもよって刀剣男士の声を使ってこの様な言葉を吐かせるとは。この状況を生み出している者はとんでもなく悪趣味だと、歌仙は拳を握った。
影の一つがあっ、と声を上げる。ガラスの向こうを見ると、逃げ出そうとする子供が一人いた。涙と鼻水で濡れている顔をくしゃくしゃにして、必死にドアを開けようとしている。
影は、間違えてカップを落とした様に残念そうな声を出し、そして軽々しい声のまま無慈悲に言い放った。
「あー、260番はやっぱり駄目だったかー。処理する? させる?」
「する方が真剣にやるんじゃないのかな」
「右に同意」
「それじゃあ260番の処理を開始しまーす」
直後、ガラスの向こうから耳をつんざく爆発音が響き渡った。音のした方向を恐る恐る見る。
――逃げようとした子供の上半身が消失していた。周囲には焦げ跡と肉片が散らばっている。
残された下半身がゆっくりと床に倒れていくのを見て、子供達は恐怖で固まった。
「警告。脱走を図った者へ『処理』を執行しました。実験からの脱走は重大な規則違反です。これ以上の規則違反者が出さない様にして下さい。それでは、『実験』を続けます」
無機質な音声が流され、子供達は生き延びる為に怯えながらも刀を握り締め動き出す。
影はだらだらと会話を再開していた。――気分の悪くなる様な言葉を交わして。
「260番に賭けた人ー? ……何だあ、いないの」
「逃げるだろうって分かり切ってる奴に賭ける馬鹿はいないでしょー」
「ちぇー。せっかく競争相手が減るかと思ったのになー」
「ほらほら、次は誰が落ちるか見てないと。……それにしても、もっと楽しい事は無いかなあ」
「まあこんな所、これしか娯楽は無いしねえ」
違いない、と影は下品に笑う。歌仙は柄にかけた右手を動かさない様に左手で抑えていた。
ガラス一枚隔てた先では、子供達が必死になって戦っているのに。それを娯楽にするなど、子供達を踏み躙る行為を何故平然と出来るのか。影に対して斬りかからなかった自分を心底褒めてやりたいと、苛立ちが喉まで込み上げる中歌仙は思った。
再びブザーが鳴り、戦闘終了の合図を出す。生きている子供の数は四分の一まで減っていた。彼等は静かに刀を下ろし、鞘に納めた後その場に座り込む。
歌仙は生き残った子供の中に、気になる者を見つけた。
他の子供よりも長い、ぼさぼさの黒髪。――時折長谷部を塗り潰す幻覚で見た、あの少年だ。何故こんな所に、そこまで考えて意識を失う前に長谷部が漏らした言葉を思い出す。
――俺がいたから、か。
ならばこれは、長谷部に纏わる記憶と見て間違い無いのだろうか。あの少年と長谷部に、一体何の関係があるのだろう。早めに合流して、彼に問い質さなければ。
「歌仙」
肩を揺すられて顔を上げると、宗三が気怠そうな表情に不快感を滲ませて影のいる方を見つめていた。ガラスから影に視線を移すと、影は煙の様に消えている最中だった。
「……面白く無い物を見せられましたね」
「ああ、そうだね……正直、抜刀しなかった自分を讃えたいくらいには不快な物を見せられた」
「僕も貴方を讃えましょう。僕は刀を抜いてしまいましたから……お小夜や薬研に似た声で、あの様な吐き気のする言葉を話さないで欲しかったですね」
宗三がそう吐き捨てる。それに心からの同意を示すと、宗三は息を吐きながら納刀した。
影は消えて、その場には歌仙と宗三だけが残る。ここに他の刀がいないかを改めて確かめてから、二振りは部屋を出た。
この階は全て調べ終わった(ドアの外から中を軽く見るだけの簡単な調査だったが)。階段を下りようとした歌仙に、宗三が問いかけた。
「歌仙、ギヤマンの向こうに何を見ました? 二回目の音が鳴ってからずっと見ていたでしょう」
「……」
「まあ、話したく無いなら話さなくていいですけど」
足を止めて言葉を探す歌仙への問いをすぐに撤回した宗三は、やはり気怠げな様子で階段を下りる。歌仙も階段を下りながら、宗三の隣へ移動する。
「……憶測が混じる話だけど、君には話した方がいいか。少し気になるのを見つけてね」
「はあ。一体何だったんです?」
「多分、長谷部の秘密に近い場所にいる少年の姿を」
踊り場でピタリと足を止め、宗三は不審そうに眉をひそめる。
「……長谷部の? 確かにあの長谷部は少し様子がおかしいですが……少年とは?」
「僕は時々、長谷部に被さる様な幻覚を見ている。それが、ギヤマンの向こうにいた少年の姿だったんだ」
は、と宗三は小さく声を出す。歌仙は言葉を選びながらも語った。
長谷部が違う誰かに見える事、鯰尾が長谷部に肩入れし過ぎている事、薬研も長谷部を少し疑っている事、長谷部が狭霧隊で迫害されていた事、疑っている自分を棚上げしてそれに腹を立てた事――
後半は歌仙の感情が大いに混ざっていたが、宗三は黙って聞いていた。そして歌仙が語り終えると、ぽつりと言った。
「……あの長谷部は、ほとんど昔の事は語りません。ですよね?」
「え? ああ、そういえばそうだね。ごめんなさいとか、もう心残りは無いとか、そんな事ばかりだ」
「……もし、貴方が気になったという子供や長谷部の立場だったら。貴方は、心を許し始めた相手に全てを吐き出さない自信がありますか?」
宗三は、何を言いたいのだろうか。そう疑問に思いながらも、歌仙は想像する。
気を緩める時間も無く、身内で殺し合う日々。もしかしたら、昨日仲良くしていた相手が掌を返してこちらに斬りかかって来る事もあるかもしれない。
誰も彼もを疑ってかかる日々。――例え殺しの道具であっても、心が消耗してもおかしくは無い。
そんな日々の中で、身内では無くこちらと仲良くなろうとしている、話を聞いてくれそうなひとがいたなら。歌仙は、吐き出してしまうかもしれない。雅じゃないとか風流じゃないなどと言って、思いっ切り愚痴ってしまうのだ。
「……あの長谷部は、余程の事が無ければ昔の話をしなかったそうですね。それが強さなのかただの痩せ我慢なのかは僕には分かりませんが……少なくとも、この状況を生み出している相手よりかはマシです」
「どういう事だい?」
「……まだ憶測の域を出ませんが。元凶は、僕等に先程の風景を見せたかった様に思えてなりません。無差別にこちらへ引きずり込んで、自分の境遇を見せつける。ええ、ええ、確かにあの様は胸糞悪い物でしたよ。でも、だからと言って僕等にどうしろと? 僕等をお小夜や薬研の声で釣っておいて、もし改善を求めるで無くただ同情されたいだけなら――反吐が出ますね」
その両目に怒りを滾らせ、宗三は冷たく言い捨てた。
「そんなによしよし可哀想と言われたいのなら、好きなだけ身内と傷を舐め合っていればよろしい。少なくとも僕を巻き込んで欲しくありません。僕に優しい言葉をかけて貰えそうだと思ったら大間違いですよ。不幸自慢程、聞いていて嫌な物もありませんから」
ふん、と鼻を鳴らし階段を下りる宗三の後を、歌仙は少し遠い目になりながら追う。
「……憶測でよくそこまで言えるね……」
「なら歌仙、貴方は不幸自慢を延々と聞いていられますか?」
「いや無理だけど。……流石にあの子供達は少し可哀想だと思ってしまってね」
「まああれで心が痛まないのはただの鬼ですがね。それを延々と話されたらたまったものじゃありませんよ。……それに」
階段を下り切ると、歌仙の耳にまた声が流れ込む。――小夜の物も混ざったそれを聞いて、宗三ははあ、と苛立ちのまま足音荒く歩き出す。
「今聞こえた内容からして、憶測じゃなさそうな予感がしますしね」
「……確かに」
――嗚咽と罵倒が混ざった声の内容を聞いて、歌仙はいよいよ気が滅入って来た。
*
声が聞こえて来た先は渡り廊下に繋がる大きなドアの前だった。影は少年達を率いて、どこかへ連れて行く途中らしい。
「さっさと歩け愚図共、こっちは次の予定が詰まってんだよ!」
影が子供達に向かって罵声を飛ばす。少年達は出来るだけ早く移動しようと足を動かす。その光景は、本で見た奴隷達とそれを指揮する人間の様だ。
しかし、そんな中でもどうしたって足の遅い者は出てくる。最後尾の少年は必死に列を追いかけているが、少し距離が開いてしまう。
すると影が最後尾の少年の腹に鋭い足蹴りを食らわせた。最後尾の少年は吹っ飛ばされ、壁に当たり動かなくなる。
「次の予定があるって言ったよなぁ!? 何で
影は更に最後尾だった少年に蹴りをかます。蹴られ、罵倒されている小さな体と心が苦痛に呻いていたのは一目瞭然だった。
吐瀉物や血を口から流し、最後尾だった少年が頰に涙を伝わせる。影は少年の胸倉を掴み、罵倒を重ねた。
「何泣いてやがんだ! そんな余裕があるならさっさと体を動かせってんだよ! ……てめえらもだ、足止めてんじゃねえ! 痛い目見たくなかったらさっさと別棟に移れ!」
蹴飛ばされていた少年の様子を怯えながら窺っていた列は、影に怒鳴られた事により再びゆっくりと動き始める。渡り廊下へと列が姿を消しても、影は罵倒と暴力を止めなかった。
奥の方で別の列を動かしていた影が、手前の影に呆れた響きを滲ませて声をかける。
「その辺にしときなー。駄目にしちゃったらそれこそ上に怒られるよ。腹立つのは分かるけど、鬱憤を晴らす為に被験者潰したら更に腹立つ事になるでしょ?」
そう言われた手前の影は舌打ちし、最後尾の少年から手を離す。最後尾の少年は無理矢理体を動かし、渡り廊下へと姿を消した。
やれやれ、と首を振り奥の影は再び整列させ始める。手前の影はぐちぐちと不平不満を並べていた。
「くそ、何で俺が餓鬼共の世話なんてしなきゃならねえんだ。俺は研究者だぞ? 保育士になった覚えはねえっての!」
「はいはい、気持ちはよーく分かるよー。でもこれだって立派な研究に繋がると考える事は出来ないかね?」
「餓鬼共の世話の研究なんぞ、教育研究家に任せときゃいいだろうが! 俺は遺伝子研究を志したんであって、餓鬼の世話の研究を志した訳じゃねえぞ!」
「子供の研究だって遺伝子研究の一環だと思わない? 今ぶつくさ言っても現状は変わらない訳だしさ、プラスに考えてみようよ」
手前の影はまだぶつぶつと不平を述べている。奥の影ももう相手にするのは止めて、少年達の別棟誘導を再開させた。
奥の影が誘導している列の中に、あの長いぼさぼさの黒髪の少年がいた。俯いた先に感情を落として来た様な無表情で、列に並び足を動かしている。
「……あの子、またいる」
「どんな様子ですか?」
「いや……列に並んでいる子供達と同じ感じだよ。無表情で、足だけが生きているみたいな」
そう話している内に再び影と少年達の姿は搔き消え、静寂が訪れた。姿の名残を追って歌仙はじっと渡り廊下の向こうを見つめる。
口に手を当てて何かを考えている宗三は、歌仙に顔を向け自分の思考を告げた。
「……その子供、この状況に大いに関係あるでしょうね」
「うん、そうだろうね」
「でも、何の関係が? 僕達は狭霧隊の本丸を調査していた筈なのに。そもそも、何故僕達だけが巻き込まれたのでしょうか。その子供が、何か関わっているのか……」
うーん、と唸ってから、宗三は肩の力を抜いて零した。
「こんな考え事、本来僕がすべき事では無いんですよ。何故僕がこんな小難しい考えを巡らせなくちゃならないんですか」
「あ、考察は宗三に投げっぱなしだった。すまないね、一緒に考えなければならないのに」
「いえ、歌仙を責めている訳ではありませんよ。……僕の知る長谷部がいれば、頭を回して色々考えるんでしょうがね」
「あの長谷部は少し違うからね。そういえば、彼はどこに――」
「――トシキ、トシキ! どこにいる!?」
聞こえて来た声に二振り共が勢いよく振り返った。どこからか荒い足音も聞こえる。
今の声は、へし切長谷部の物である筈だ。しかし、自分の知る長谷部の声とは、雰囲気が大きく異なっていた。声が大きく、真面目そうな棘のある声。――それは本来の長谷部の声なのだろう。
しかし、何故今になって? あの性格は猫を被っていたという事だろうか。
いや、長谷部は誰かを呼んでいる。誰かは分からないが、話を聞いた方がいいだろう。
宗三と頷き合い、歌仙は声を張り上げた。
「長谷部! どこにいるんだい!?」
「……! その声、歌仙か!? 下にいるのか、今そちらに行く!」
「僕もいますよ! 詳しく話を聞かせて貰いますからね!」
宗三も大きな声を出し、自分の存在を示した。
階段を駆け下りる音がした後、こちらに向かって紫色の装束を纏った男が駆けて来る。歌仙と宗三の前でブレーキをかけ、はあ、はあ、と息を荒くしている。
――勝気な眼光を向けるへし切長谷部が、汗を拭いながら息を整えていた。
「お前達、トシキを――ぼさぼさの長い髪をした少年を見なかったか!?」
「えっ、あの子の名前トシキって言うのかい? 幻覚の形で何度か見たけど……」
「実物は見ていませんね」
「くそ、何事も無ければいいが……」
焦燥感に顔を歪め今にも走り出さん長谷部に、宗三が気怠さを極力少なくした声で尋ねる。
「……ここはどう考えても、トシキという少年に関係する場所でしょう。貴方は、彼とどう関わっているのですか? 場合によっては彼にも話を聞かなくてはなりませんが」
ぐっ、と長谷部が言葉に詰まる。話せるのなら話したいが、全て話していいのか悩んでいる事がまざまざと伝わって来る。宗三と歌仙は何も言わずに長谷部の返事を待つ。
止めてやってくれ、と長谷部の口から絞り出された言葉は、頼り無く宙を漂った。
「あいつは、充分苦しんで来た。更に傷付ける様な事はしたくないんだ。話なら話せる範囲で俺が話すから、あいつにだけは――」
「でも、本人にしか分からない事もあるでしょうし……」
宗三が遠回しにトシキに尋ねる事を匂わせると、長谷部は首を思い切り振って焦燥感に満ちた声でそれを遮った。
「駄目だ! あいつがまた世を儚む事になって、
徐々に声を震わせ俯いてしまった長谷部に、歌仙は疑問を抱く。消える、とはどういう事だろう。それに、長谷部が主以外の人間にここまでの感情を抱いているのも不思議だ。
歌仙は長谷部に、抱いた疑問をそのままぶつけた。
「長谷部、随分トシキという子に肩入れしているみたいだけど。改めて聞くよ。彼は――君と彼は、一体どういう関係なんだい?」
歌仙の言葉に拳を握り、強く閉ざしてから開いた目には、小さくはない悲しみが湛えられていた。
「あいつは、俺の――」