ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】 作:ぬくぬく布団
深月「麻婆です!」
布団「本編の後書きの伏線をようやく回収する事が出来る('ω')」
深月「麻婆!」
布団「・・・はい、戦闘シーンなんてほぼ無いに等しいです」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ!」
~追伸~
人によっては他原作の設定守れうんぬんかんぬん感想で書かれていますが、嫌ならブラックリストに入れるなりしてこの作品を見ないようにして下さい。ハーメルンを運営する管理者に迷惑です
~深月side~
深月とバーサーカーの戦いは正に神話の戦いと言っても不思議ではない様相だ。キャスターが結界を張って周囲の被害を抑えるが、数回のぶつかり合いで壊れるので疲労困憊している。そこで、ギルガメッシュが結界を張り続けさせる為に必要な補助の道具を渡してやらせている
「何という技量、未だ二十歳にも満たぬ少女がこれ程の力を有しているとは・・・末恐ろしいな」
「私としては何もせずに投降して頂きたいのですが?」
「それは出来ぬ提案だ。お嬢様の命令は絶対であり、抑止の介入もされている。理性のあるこの状態は何時まで続くか分からぬが、お前を倒すまではサーヴァントとしての制限はないと思え」
バーサーカーの武器は石斧、石で出来ているからと侮るなかれ。一振りの風圧で大地を抉り、直撃は巨大なクレーターを生む。前回戦った際に得た情報は全て不要、並みの英雄では一撃が即死級の攻撃だがそれ等は全て巧みな歩法ですり抜けて避ける。しかし、如何に上手く攻撃を避けたとしても衝撃波で肌に薄い切り傷が付く
「
超高速の連撃が叩き込まれる寸前に、深月が崩拳を石斧を持つ手に当てて武器の持ち手を両手で掴んで止めた
「ぐっ!重いっ!」
「何という膂力!ネメアーの獅子を絞殺した当時よりも力がある状態でこれとは!!」
徐々に深月がバーサーカーの力に押されていくが、如何せん相手は片手で石斧を持っているので片方は空いている。ヘラクレスの左手が深月の首を掴み、そのままへし折ろうとした。しかし、バーサーカーが力を入れようとした時に左腕に僅かな痺れを感じた
「む?」
「ようやく捕まえました」
バーサーカーは、掴んだ手がこれ以上握り込めない異常に気付き離れようとするのだが、それは叶わなかった。いや、それどころか身体中に超巨大な重しを乗せられたかの様に体を動かせなくなった。腕の痺れは徐々に広がり、足にまで到達して膝が折れて地面に着く
「な・・・にが・・・?」
「バーサーカー!?」
優位なのは己だと確信していたバーサーカーの思考は、困惑だけだった。身に覚えのない毒か?と疑問に思ったが、痛みが来ない事自体がありえない。己が師であるケイローンから教わったパンクラチオンとも違う何か―――、まるで地面から這い出た土の手が地面へと引きずり込むかの様な不気味さだ
「・・・ほう、パンクラチオンとはまた違う。魔術かと思いきや魔力反応が一切ない事から技で封じられているという事か。しかし、私を侮るな」
「グッ!?」
合気はバーサーカー相手に通用して動きを封じた―――が、バーサーカーとはいえヘラクレスであり抑止からのバックアップが想定を遥かに上回っていた。膝を着いていたバーサーカーが少しだけ足の位置を変えた事により、合気の力の流れがほんの僅かに乱れた所で首を掴んでいる手の握り力が強まった
本来は理解出来ない筈の合気を直感と剛力で打ち破ろうとしていた。超硬化と無色透明の魔力糸のインナーを着ているから直ぐに潰される事態は回避する事が出来た。例え大英雄の握力であろうとアザンチウム並みに硬くなったインナーを潰す事は出来ない。だが、バーサーカーが掴んだ手はこれ以上握り込めないが故に脱出する事が出来る。深月は、周囲一帯に伸ばした魔力糸をバーサーカーの手首の関節に巻いて自身の両手も関節に食い込ませる
「ふんっ!」
「何と面妖な技術か!」
深月がした事は、人体構造の把握と超接近した場合にのみ出来る技だ。人に限らず動物も対象のそれは、筋肉の筋を絞めるというごく単純な技だ。力を入れると筋肉の筋が伸びるのは当然であり、関節部を絞めると筋肉の筋が限界を超えて伸びる事を防衛して拘束力がほんの僅かながら緩むという事だ。バーサーカーの筋力の前では普通の圧では不可能だが、魔力糸の束の伸縮性と深月の力の二つが加われば可能だ。そもそも、小型版とはいえ勇〇王の最終兵器を振り回す腕力や握力があるという事を忘れてはいけない
だが、少し緩まるだけで脱出出来るかと問われると「いいえ」だ。だから、防御ではなく攻撃に転じる。深月が抵抗した瞬間にバーサーカーは直ぐに石斧を手にして振り下ろそうとした。直ぐに攻撃に転じたのは理解出来るが、この場合は最適解ではなく悪手だ。石斧は大きく、それでけでも視野を大きく塞ぎ深月の身体の後ろの情報まで正確に把握する事が難しく、男性には最強かつ最悪の一手が放たれた
「ぜあっ!」
「ゴアァァァァァアアアア!?」
皆もお分かりだろう。深月が放った蹴り―――金的が容赦なくバーサーカーの大事なアソコに直撃。ただでさえ神殺しの概念を持つ深月の攻撃は、神性を持つ者には攻撃力が増加する=金的の痛みは想像を絶する。これにはバーサーカーも攻撃の軌道が大きく逸れて力を入れる事すら出来ずに地面に膝を着いて出来た隙に深月は脱出して首を抑えながら距離を置く
これには男性陣全員が顔を青くしてバーサーカーへ同情の視線を送った
「おいおい・・・バーサーカーの金〇潰れたんじゃねぇか?」
「・・・男にとってあそこは硝子だぞ」
「勝負の世界にはどの様な手を使おうと勝者が称えられる―――が、あれは些か卑怯という他あるまい。しかし、大英雄には抑止の力の後押しがある故、相殺と言う所か」
深月の男性特攻の凶悪な攻撃は卑怯な手だと判断されたが、ギルガメッシュだけは抑止の介入が余程気に入らなかったのか辛辣なコメントだ。さて、ここまでなら皆は仕方がないと終わらせる。だが、命を狙われる当の本人はここで手を緩める選択肢はない
「私は!」
「グォウッ!?」
「自身より強い!」
「グハァッ!?」
「男性には!」
「 」
「急所だけを攻めます!」
「 」
理性があろうとなかろうと、連続の金的は男にとって意識を断ち切るには充分な攻撃だ。サーヴァント相手に金的という発想自体が想定外だ。時折ビクンッ!ビクンッ!と痙攣しているバーサーカーを死体打ちする深月は悪魔に他ならない
「もうやめてぇ!バーサーカーをこれ以上攻撃しないで!?」
バーサーカーのマスターは、痙攣して動かなくなったバーサーカーを見てこのままでは何かが駄目になると悟ったのか、深月のメイド服を掴んで必死に止めようとする。しかし、その力は微々たるものなので攻撃は止まらない
「令呪による戦闘の停止命令を実行してください。それまで私は―――や・め・ま・せ・ん・!」
執拗に蹴り続ける深月は、言われた通りにしなければ必ず続けると理解したバーサーカーのマスターは遂に折れた
「止まりなさい、バーサーカー!」
すると、令呪の効果によってバーサーカーは縛る事が完了。だが、完全に制御出来たのか?という不安が残るのでマスターを連れて距離を取り様子を窺う
「・・・・・」
バーサーカーの様子は先程とは違い、押し黙ったままだ。いや、正確に言うならばまともに喋れないと言ったところだ
「バーサーカーを止めるのに令呪を三画使って縛ったわ。バーサーカー、こいつ等に手は出さない?うん、これで満足?」
バーサーカーはマスターの問いに首を縦に振り肯定する。これ以上暴れたりはせず、完全に投降する意思を見せていた
「ふぅ、格上の男性殺しには急所の金的が一番でしたね」
「・・・バーサーカーは大丈夫なのか?ほら・・・深月の攻撃って神殺しの概念が付いているんだろ?」
「大丈夫じゃないですか?あそこで腰をトントンと叩いていますし」
巨体のバーサーカーが自分で腰を叩いたり見えない様にあそこに手を当てる等して優しく回復に努めていた。これには他の男性サーヴァント達もバーサーカーに同情してあれこれと応急処置を施して早急に回復するように努めている
真面目な戦闘のせの字もなく停戦へと持ち込んだ皆は、現状況の報連相をする。聖杯はアンリ・マユと呼ばれる邪悪な存在により呪いの願望器と変化し、本来の聖杯戦争とはかけ離れた結果を生み出すという事だ。ギルガメッシュは、始めは進化処か退化している人類に呆れ果て聖杯の呪いで人類の間引きという考えを持っていた。だが、深月の天然ファインプレーの軌道変更により難を逃れた。この時、抑止力が深月というイレギュラーどころかバランスブレイカー度合いを脅威として聖杯戦争のサーヴァントによる排除を試みる。しかし、その試みは全て跳ね除けられ、ギルガメッシュの判断に委ねられた結果―――違う世界とはいえ、どん底人生から這い上がり良縁を結ぶ事が出来て尚、腐らずに己を磨き続ける者を殺す事自体が人類の進化を止める事と同義とされ却下された
「はぁ・・・並行世界の住人というより、架空の世界の迷い人が二人なのね」
バーサーカーのマスターことイリヤスフィール・フォン・アインツベルンがいつかの遠坂同様に頭を抱え、現状の異常性を理解してどうこうする手立てが無い事が更に頭を痛めている
~ハジメside~
停戦から数時間後―――
「信仰による神性を得た神を殺したメイドなんて予想外過ぎるわ。低ランクの攻撃とか高ランクの攻撃のカテゴリに入らないからバーサーカーが飛び込まないのがよく理解出来たわ。神殺しの概念を持った人間が存在する事がありえないし、普通だったら器が耐えきれず木っ端微塵になっているわ」
「誰だってそう思うわ。それに・・・その・・・、男性の急所をああも遠慮なく執拗に攻撃なんてしようとも思わないどころか出来ないわ」
「・・・そうよね。普通はそうよね」
「ええ、普通はね」
遠坂とアインツベルンの両名がキチガイを見る様な目で深月を見つめる。そして、当の本人は野外用のキッチンにて言峰と共に新作麻婆を作っていた。二人して怖い笑みを浮かべながら嬉々として香辛料を砕いてオリジナルの配合を模索している。二人が作る麻婆が劇物だと理解している面々は遠く離れたり、夕食用の食材を確保しに行ったりと様々だ。この場に居るのは各マスター達とセイバーとキャスターとバーサーカーだ
「ハバネロも良いが、それではただ辛いだけか・・・。山椒の風味を活かした味付けには少し刺激が強すぎる」
「カレーに使う香辛料を少し加えて辛味のダブルパンチを」
「ならば、此度は肉を贅沢に使おう。解毒したヒュドラ肉を肉団子にし、その中にドロリとしたホウレン草のペーストにブートジョロキアを少量と青唐辛子と赤唐辛子をふんだんに使った特製ペーストを入れてみよう」
「水抜きした豆腐はハバネロ、ブートジョロキア、キャロナイラ・リーパーを混ぜ合わせた漬け込み汁で水気を戻して辛みを奥底まで染み込ませています」
「漬け込みとは美味しそうだ」
「魚介スープと混ぜ合わせた漬け込み汁なので風味も良しです」
「フフフ、完成が楽しみだ」
もうこれ以上何も聞きたくないと手で耳を塞ぎたいが、二人の口の動きで幻聴の様に笑い声が聞こえていたりするので完全に諦めている。だが、麻婆の被害に遭わない様に衛宮が夕食を作ると告げるがギルガメッシュが「雑種が作る料理を食べろだと?貴様は召使の調理技術を見て学び腕を磨かぬ限り厨房に入る事を禁ずる!」という正に暴君の如く禁止された。とはいえ、学ぶ為に見学は良いという事だ。だが、麻婆を作る二人の見学をしようとする気は全く起きない
「ねぇ、南雲君は何処に行ったの?」
遠坂の疑問は、深月の主であるハジメがこの場に居ないという事だ。危険を察知して逃げたのでは?と思っていたが、特別な用事が無い限りは深月と離れるのはデメリットが多い。抑止が介入しなくなったのは良い結果だが、もう二度とという事はない。それこそ、仮初の主であるハジメを人質に捕る事もありえるのだ
「あの坊やなら私が借りてるわよ。素材の魔物の特徴を知るには必要不可欠ですもの」
神代の魔獣も魔力を持っているが、ほぼ野生動物と変わらない。トータスみたいに特殊な技能を持つ個体というのは希少価値があり研究の対象となるが、そんな魔獣は殆ど見ない。幻想種ならば似た事が出来るが、それでも数が少ない。トータスの様に全ての魔物に特殊技能があるとは限らない
「絵と特徴を私の座に記録出来るように実験しているのよ。魔術的価値は幻想種並みなの」
ハジメはキャスターに連行されてスケッチと特徴を出来るだけ詳細に記録する仕事をしており、ひと段落付き伸びていた。キャスターの好奇心を刺激+言い知れぬ圧によるそれに抗う術が思いつかなかったというのもある
「それって見せてもr「見せないわよ」分かってたわよチクショウ!」
遠坂の行動はこの聖杯戦争が始まってから後手に回るばっかりだ。悪運は強くとも、この手の絶好の機会を手にする運はゼロに近しいだろう
「やりました!これで麻婆の完成です!」
「早速食べ比べをしようではないか!」
彼方は麻婆を美味しそうに食べているが、見た目がマグマみたいに煮え滾っていると錯覚する程の言い知れぬ熱量を感じ取れる。あれは最早人間が食べる食材ではない―――標的はこの場に居る皆だが、初めて食べる者を沼に引きずり込む為に三名をロックオン。だが、キャスターは自室という名の研究部屋に籠る事で奇跡的に助かる。アインツベルンも遠坂達に言われて距離を取っていたので食する事は無かったが・・・
「ささ、バーサーカー様も一口どうですか?」
「体に活力が湧く香辛料も入っているぞ?ピリリとした辛みが食欲をそそる品だ」
「・・・・・」
「あっ!?バーサーカーだm」
アインツベルンが二人の標的となったバーサーカーに麻婆を食べるのを止めようとするが一足遅かった。大きな手で小さいレンゲを持つ姿はシュールで、二人が美味しそうに麻婆を食べている事と狂化により正常な判断が出来なかった事が麻婆に対する警戒心を失くす後押しがあったのだ。結果――――
「■■■■■ーーーーーー!?」
両手で喉を抑え、弓の様に体が反り脱力して地面に大の字で倒れた。その光景を見ていた皆は悲鳴を漏らし、元凶の二名はとても残念そうにしていた。気絶してしまえば麻婆の沼に引きずり込むのは難しいという結果が生まれた
しばらくすると、バーサーカーが気絶から覚醒しての第一声が漏れた
「し、死ぬ・・・ヒュドラの毒より耐え難い劇物だっ!」
『えっ!?』
バーサーカーの狂化のレベルは高く、まともな言葉すら発する事が出来ない筈だが今は違う。しっかりとした言葉を発している
「イリヤ・・・バーサーカーって狂化で喋れなかったんじゃないの?」
「待って。今ステータスを・・・・・狂化が無くなってる!?」
「はぁっ!?麻婆食べただけよね!?」
麻婆で狂化が破壊された・・・・・。例え大英雄がほぼ不死身とはいえ、死なないレベルで胃に激辛というスリップダメージを与え続けるだけ。トータスの何でも分解する悪食をも悶絶させる深月特製麻婆は進化しており、今回は麻婆を愛する同志と共に研究に研究を重ねて生まれたヒュドラの毒が生易しいレベルとなっている
そして、何より深月が麻婆に賭ける情熱―――『麻婆による癒しをここに』という想いが強すぎて概念魔法が生まれたのだ。一人だけでは到達出来なかったが、同志による共同作業という工程が奇跡(※他人からは地獄)が成せる業だ。麻婆による癒しとは、麻婆を食べた者のバッドステータスを治療するという馬鹿げた概念食品である
「意味わかんねぇよ!?概念食品って何だよ!?」
ようやく合流して復活したハジメのツッコミは皆の気持ちを代弁した
「少年、疲れているのか?この麻婆を食べると元気になるぞ?」
「あ~んしてあげますよ?」
「ヒェッ!?」
ハジメは逃げようとしたが、リビン〇デッドの呼び声な手が自身の身体を掴んだと錯覚した事で避難が遅れて二人に捕獲され麻婆に引きずり込まれた
「 」
深月の麻婆を事故で何度も口にしている事で耐性が付いていたハジメですら、二人の合作麻婆の前には声も出す暇なく意識を刈り取られた
「むぅ・・・このレベルの辛さは同志以外に食べさせる事が出来ませんね」
「非常に残念だ。だが、少年が起きた時の体調次第では治療食品として広める手も一考だな」
「流石に傷の癒しまでは出来ませんね。しかし、内臓治療―――癌を癒す力があるとしたら」
「売れるな。そして、麻婆の素晴らしさを広める事も出来る」
皆が「誰かこの二人を止めてくれ」と心の中で叫んでいると、深月と言峰が歓喜の声を上げていた
「素晴らしい!実に素晴らしい!同志が増えたぞ!」
「まだまだありますよ!もっと食べますか?」
『食』
何処から湧いたのか、神秘的な少女が二人が作った麻婆を食べているではないか。目を宝石の様に輝かせながら食べるその様子はとても気に入っているようだ。アインツベルンよりも幼い少女が美味しそうに食べる光景は良かっただろう。それが"ただの少女"であればだ
「シロウ!」
「凛!」
「桜!」
「お嬢様!」
各サーヴァントが己のマスターを背に隠し、少女に向けて武器を構えた。しかし、少女は嬉々としてお代わりの麻婆を作っている二人の手元を覗き込んでいる。サーヴァントが武器を構えていても興味が一かけらも無いのか、無防備な状態だ
「召使!言峰!貴様等は何をしているのか分かっているのか!!」
頭上から聞こえた声はギルガメッシュだ。黄金の空飛ぶ船から降り立ったギルガメッシュは、深月と言峰を掴もうとした。だが、途中で手を止めてサーヴァントの皆が集まっている場所へと歩きながら胃の付近を手で押さえていた
「王様、どうかされましたか?」
ハジメが宝物庫から薬を服用しているギルガメッシュに率直な疑問を問う。あの少女が何なのか分からないのは皆が理解しているからこそ、正体を知っているであろうギルガメッシュに頼る事にした
「ちょっとどういう状況なの!?」
「おいおい、何が起きてんだ?」
アサシン以外のサーヴァントも集結し、この異常を尋ねる
「雑種、貴様の召使と言峰はとんでもない事をしてくれたな」
「えぇ・・・?」
「抑止すらどうする事も出来ぬ。最早、未来は蜘蛛の気分次第という事だ」
『蜘蛛?』
これを聞いた遠坂とアインツベルンは、心当たりがあり絶望した。そして、ハジメもまた絶望した
蜘蛛―――ギルガメッシュの告げた言葉は、あの少女について・・・ORTと呼称される型月最強の生物?だ
本来は巨大な蜘蛛の姿なのだが、どういう訳か今は少女だ。だが、姿を変えているだけで機能については変わらない
「だが、本来なら侵食固有結界によりこの一帯は結晶化するところがそうではない。つまり、蜘蛛にとって興味が惹かれる何かがあったという事だ。・・・まぁ、恐らくあの劇物がそうだろう」
ギルガメッシュですら劇物扱いする麻婆が、ORTの興味を惹いてしまったという事だ。何とも傍迷惑であり、核兵器や神造兵装すらも霞み抑止力が悲鳴を上げる事件だ
「そ、そんな・・・ORTって勝てるわけないじゃない!?」
「り、凛声量を落として。もし何かあったら標的になるわよ」
「うっ!そ、そうよね・・・。もう祈りましょう」
全ては深月と言峰が作る麻婆に託される事となった。もし、ORTの機嫌を損なえば人類抹殺コースが確定する。例えギルガメッシュの乖離剣であろうと無力化されるとなれば打つ手もない
「む?調理に興味があるか?」
『是』
「なら包丁を扱うよりも簡単な香辛料砕きを手伝っていただけませんか?こうしてすり鉢に入れてetc―――」
深月が少女もといORTに香辛料を砕く手順を説明する姿を見た皆は、接待しろよ!と声に上げたかったが黙って見守る
『工程把握 試行 効率化 成功』
香辛料を砕く手順を教えたら、機械で粉砕するのと同等かそれ以上の繊細さで細かくしていく。次から次へと粉砕していると、途中で言峰が手を出して制止させる
「ストップだ。この香辛料は、今までよりも荒く大きめにする事で食べた際に風味に変化が出る。一定の味を求めるのも吝かではないが、規則性なく当りを引くかの様な幸福を得る事もまた食の醍醐味だ」
『荒く・・・? 不明 理解不能』
「では、この二つの味見をしてみると良い。違いが分かる」
ORTが細かく砕いた香辛料を舐めた後、深月がお手本として砕いていた香辛料を舐めた
『不可解 目標到達に及ばず』
「そこまで深く考えず数回程度軽く叩いて砕けば良いだけですよ」
『了』
深月の言う通りほんの数回叩いて砕いた香辛料を舐めると、お手本よりも風味が飛んでいるがほぼ近しくなっていた
『摩訶不思議 工程手抜き』
「それよりも会話はどうにかなりませんか?」
「うむ、意見は多い方がより味の広がりを見出す。どの様にして知識を得るのかを知りたい」
『捕食』
これを聞いた二人は、少し難しい顔をして悩む。言語を話すなら人間が一番だが、捕食される事で情報を得るのであれば避けたい。少しだけ悩んだが、ここで深月は廃棄に困っていたある者を思い出した
「これの捕食は如何ですか?」
深月が取り出したのは、先兵の死体二つだった。神山での戦い以降、何かしらの役に立つと思っていたそれはメイド達の戦闘訓練で的当てにした程度だ。損傷は酷いが言語の情報を得て会話をする事が出来るなら有効活用するべきだ
「後は言語理解ですが、これはミサンガに付与するだけで問題ないですね」
ORTは先兵の死体に手で触れると死体が結晶化した。そして、結晶化した死体をそのまま齧って食べた。血が出ないのでスプラッタではないが、少女が成人女性を食べる構図は不気味だ。結晶化した死体を全て食べ終えたORTは、深月の言語理解が付与されたミサンガを付けて全ての処置が完了した
「声帯調整完了―――情報整理―――この香辛料は地球以外の物が含まれています。栽培方法は確立されているのですか?」
「そちらは言峰様に渡してあるノートに記しています」
「了解。引き続き香辛料を砕きます」
「香辛料の砕き方はお任せしよう。己が手で加工した物を食す事こそ、本当の美味を知る事が出来る」
こうしてORTが香辛料を砕き、配合し、言峰が炒め、深月が調理をする連携作業だ。次から次へと作る麻婆を食べては意見を出し合い、改良したり好みを探ったりしてノートに記していく。そうこうしていると日も暮れて夕食時に近くなる
「む?そろそろ夕食の時間か。同志はどうする?私がよく通う泰山という中華料理専門のお店があるのだが、来るかね?」
「そうしたいのですが・・・彼方にお腹を空かせている人達が居ますのでご一緒する事は出来ません」
「ふむ、少し残念だがまた出直すとしよう」
「私は同志深月の作る料理に興味があります」
言峰は少し残念そうにしながらも衛宮宅を去り泰山へと向かい、深月は通常の料理を作る。一方、ORTは深月に言われたままにハジメ達が集まるテーブルの椅子に座り、深月の方をじっと見つめている。だが、ORTの行動におっかなびっくりしているのは当人以外の者達だけだ
「蜘蛛よ、貴様は戦闘の意思は無いのか?」
「無い。同志深月の作る料理に興味がある」
ギルガメッシュの問いにORTは素直に答えた。そして、逆に言い換えれば深月を排除しようものならガチギレ案件まったなしという単純な反応が返ってくるという事が分かった。これで深月の後ろ盾にORTが付いたも同然である
「・・・これどうすればいい?」
ハジメが物凄く頭の痛い現状を鑑みて皆に問う。ORTが少し力を解放しただけで周囲が結晶化する=触るな厳禁という危険物をどう処理するかを悩んでいた
「・・・持ち帰れ」
「仮の主なら責任取りなさい」
「メイドが居なくなったら暴れるわね」
「嫌だぁっ!こんなのどうしろってんだ!?」
遠坂とアインツベルンからは責任を取れと告げられ、頼みの綱であるギルガメッシュからはお持ち帰りしろというありがたい?お言葉を貰ったハジメだった
「皐月・・・俺の胃はもうボロボロだぁ」
もう少しで真っ白になるかもしれないハジメの心労はとてつもないだろう。冷静に転移してからの事を考えてみて欲しい
「アニメの世界に入ったぞー!」とウキウキしたのもつかの間、「うっそだろ?王様がこんなに早く介入してくるのかよ?まぁ、生王見れたからテンション上げていくぜぇ!」かーらーの、宝物庫に入れていたアーティファクト全没収と、ついでで魔物の素材も没収。自身が思っていた以上の暴君っぷりにテンションが下がり、何時も予想外な事ばかりする深月が王様に気に入られる←そらそうだ
だが、深月の存在が抑止に目を付けられ排除されそうになるが、想定を上回る行動でそれ等を撃退。深月にとって癒しの麻婆を愉悦神父と共に作っていると人類即殺マシーンことORTが麻婆に惹かれて来日して麻婆の同志となり、麻婆の魅力に捕らわれたというよりも深月に胃袋?をがっちりと掴まれた事で責任を取って連れて帰れ←フッザケルナ!フザケルナ!バカヤロォォォーーーーー!!
元の世界に核兵器がミジンコ並みに感じる危険物を傍に置く←ヤメロォォーーーーシニタクナーーーーイ!
お、俺の責任なのか?どちらかというと深月の責任じゃねぇのか?そ、そうだ!深月の責任に決まっている!!
「雑種、この世界に流れ着いた原因は貴様のアーティファクトだと聞いたぞ?」
チクショウメェェェェェ!深月のやつ王様にチクりやがったなぁぁぁぁ!?
これでハジメの退路は全て絶たれ、引き取る選択肢だけとなった。深月は麻婆の同志が出来るという事で心労は何一つないだろうが、心労が酷くなるのは皐月だ
やべぇ・・・これって俺が責められるのか?言い訳無用のド正論武装した皐月の説教・・・あかん、終わった
「ふむ、ようやく本当の主が来るか」
ギルガメッシュが呟き、ハジメの数メートル隣の空間が虹色に輝き歪む。これを見たマスターやサーヴァントが臨戦態勢に移るが、ギルガメッシュが玉座で品定めをする様な目をしているので直ぐに敵対するという事はないだろう
「ぷはぁっ!魔力どんだけ食うのよ!?人工神結晶バッテリーを五つも使ってようやく起動するなんて冗談じゃないわよ!ハジメ、大丈夫!?」
「あ、おう・・・大丈夫。一応は・・・大丈夫・・・うん・・・」
歪んだ空間から現れたのは皐月で、続く形でユエ、シア、ティオ、香織、雫―――という戦闘が出来るメンバー達が流れ込んで来た。これを理解したハジメは、どうやって許しを乞おうか必死に思案した
布団「いや、ねぇ・・・。麻婆の同志を増やすなら、手出し不可能な奴を仲間にするしかないでしょ」
深月「麻婆美味しいですよねぇ~♪」
布団「蜘蛛ゲットだぜ!」