ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】 作:ぬくぬく布団
深月「麻婆は世界を救うのでs―――」
布団「今はそれどころじゃない!」
深月「・・・それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」
~皐月side~
これはハジメと深月が別世界へと転移した日まで遡る―――
この日、皐月は自室にてティオ達の書類仕事を手伝っていた。ハジメが立ち上げた通販限定装飾品販売会社を運営する際、大人の社会人として品性ある振る舞いが出来る女社長という形でティオとレミアが代表となっている。だが、どちらもトータス生まれなので地球のルールを覚えるのには一苦労した。それを補う形で皐月が補助をしている
「ティオ、レミア、丁度切りの良い所まで進める事が出来たから一度休憩しましょう」
「うむ、いつ見てもご主・・・ゴホン、皐月の手際は素晴らしいのじゃ」
「いっその事、皐月さんが社長の椅子に座っていただければ仕事が早く終わりそうなのですね」
「ヤメテ。私はメイド育成学校を立ち上げるスポンサー獲得でちょっと忙しいの」
皐月は子供の頃から両親と一緒にパーティーでセレブや国のお偉い方やその子供達と出会っているので、その伝を活かして"王宮で働いても違和感のない家のメイド達"を引き出しとして例を出す事で助力を得ようとしている。高坂家に配属している使用人達は、王室のプロまでとは言わないがプロから見ても相応の技量があるのでセレブ達が常時抱えるメイドとしてなら十分だろうと思っている
「深月みたいに戦闘メイドを育てる事も出来るけど・・・それはちょっとね」
「深月さんが主体となって教育すると思ったら大変ですね」
「こちらで言う所のパワハラに抵触するのう」
「まぁ、オールワークスの進化系であるという説明を添えて誓約書にサインが必須になるわ。まぁ、こんな酔狂なメイドを欲しがる所なんて・・・・・イギリス王室かしらねぇ~」
皐月は少しだけ遠い目をしていた。実は、トータスから帰還する前から女王から深月を引き抜き出来ないか?という手紙が毎年届いていたが、トータスから帰還してからは引き抜きよりも深月が徹底的に育成したメイドを紹介してくれないか?という内容に変わっているのだ。皐月が両親に相談していたメイド育成学校の話が女王にも伝わっていた事に頭を抱えたくなるが、過ぎた事を何時までも引きずるのはよくないと思い後ろ盾として利用してやろうとも考えている。というよりも考えた方が幾らか気が楽だったりする
「女王が深月を欲しがるとはのぉ~。観察眼は伊達ではないという事じゃな」
「中学の時から手紙が送られて来るのよ?あの時は生きた心地がしなかったわ」
一応青春真っ只中の学生にその様な手紙を送るのは冗談か何かだと思いたいが、悲しい現実を突きつけられた皐月に出来る事はやんわりと断る事だけだった
「はい、やめっ!もうこの話は終わり!という事で、深月を召喚してティータイムにしましょう」
「今日のおやつは一体なんじゃろうなぁ~♪」
「そういえば、深月さんはハジメさんの所に行きましたね。なんでも休憩を挟む様にと」
「あっ!そう言えばハジメと一緒にアーティファクト作ってたのを忘れてたわ」
アーティファクトを一緒に作っていた皐月だったが、書類の束を抱えていたティオをレミアを見て手伝いをする事でアーティファクト作りを完全に忘れていたのだ
「なぬ?どの様な効果があるアーティファクトなのじゃ?」
「加湿器よ。深月の清潔を付与したフィルターを通す事で、室内を定期的に除菌する効果があるわ」
「それは良いですね。密閉した部屋でのインフルエンザウィルスの拡大が危険ですので、その加湿器があるだけで予防が出来る事を思うと少し安心しますね」
「とは言っても、室内感染を防ぐというだけだから予防程度と思ってくれればいいわ」
皐月は加湿器の説明をしながら、深月を呼び出すベルを鳴らした。しかし、いつもなら数秒もしない内にノックされる筈の音が無い
「ん?おかしいわね・・・」
「もう一度鳴らせばいいだけじゃ」
皐月がもう一度ベルを鳴らして呼ぶが、一向に深月が来ない。常時二人体制の深月が現れない事に違和感を感じた皐月は嫌な予感がした
「・・・ちょっと待って」
魔力感知で深月の魔力を探るが何処にも居らず、外出かな?と思いハジメの魔力を探るが何処にも居ない。皐月は、急いでハジメが作業していた部屋へと入り違和感を探す
「これって・・・」
テーブルの上には粉が積もっていた。その粉の正体は、シュタル鉱石とアザンチウム鉱石と神結晶が粉状になった物だった。ハジメが何かしらの作業で鉱石を粉状にして使うかと思ったが、それだと神結晶が混ざっている事が不自然だ
「ティオはユエ達に緊急連絡。レミアは至急通販の一時停止措置と通知をして」
「あい分かった!」
「分かりました」
二人は部屋を出て行動に出た。皐月は現場の証拠が失われない様に粉状の鉱石を袋に入れ、机の上に置かれた宝物庫の指輪を確認する。掘り込まれたHの文字―――ハジメの宝物庫で、中には鉱石や魔物の素材が入っている方だった
最悪、素材の方の宝物庫が置かれてるならハジメ達の方からの帰還は不可能になるわね。武器が入っている宝物庫にはアンテナは入れていないし、深月の方は食料品や調理道具一式という生活専用だけとなると・・・サバイバルする分には問題はないという事ね
そうすると、転移門で来たのかユエ達も合流する。皆で作業部屋に違和感がないかを確認するが、何かしらの魔法が発動したという事以外には分からなかった。ユエが言うには「魔力濃度が高いから転移系の魔法が発動した可能性が高い」、という事が分かっただけでも良しとする
「ユエ・・・じゃなくて香織、再生魔法でこの数時間前の出来事を再生出来る?」
「任せて!」
「私は何をしたらいいの?」
「この粉状になっている物の再生をお願い。過負荷で自壊した可能性が高いし、錬成で直すよりも再生魔法で付与された魔法も知りたいから」
「復活させる」
ユエが再生魔法で粉状の物を復元すると、地球儀の様な形に復元された。そして、皐月が手に取って調べると驚愕の結果を知る事になった
「はぁっ!?並行世界へ干渉の魔法!?一体何時の間にそんなのを創ったのよ!?」
「・・・二人きりのデート」
ユエが青筋を浮かべながら理解した事を告げた瞬間、部屋の気温が氷点下にまで下がったかの様に凍り付いた
「へぇ~、深月さんからならともかくハジメさんからとなると~」
「許せんのう」
「ちょっと拘束しないといけないわね」
シアとティオと雫がハジメの処罰について話し合っていると、香織が再生魔法で現場の状況を知る準備が出来たとの事だ
「再生するよ!」
そして、上映される映像と音声を理解した結果―――
「ハジメはお説教ね」
「どうします?」
「正座させて石板を置く?」
「これは深月さんにお願いして一週間黒パン生活をさせるのは?」
「雫さんは甘いですね。深月さんに黒パンを作らせるのではなく、私達が作ればいいのですよ」
「ものすごく硬くした黒パンを作るという手もありじゃな!」
ハジメの罰は決まり、皐月が問題となったアーティファクトの耐久性を底上げする事となった。一度バラし、各鉱石を重ねて層にして壊れる原因となる可能性を一つ一つ潰しながら二日程度で完成した。そして、いざ起動しようとなったが起動させる事が出来なかった
「・・・皐月、これ魔力不足」
「ちょっと待って。ここに居る皆の魔力を使ってるのよ?どんだけ魔力食いなの!?」
「これは人工神結晶の出番ですね!」
「行きと帰りの分を確保しないといけないから二つは確実ね」
「大丈夫よ。いざという時の為に二個は常備してあるわ」
「流石皐月さんです。これで問題解決ですね」
皐月が人工神結晶のバッテリーを一つ取り出してクリスタルキーの接続部に繋げて魔法を発動する―――――事が出来なかった
「皐月・・・・・魔力不足」
「ねぇ本当に待って!人工神結晶一つで足りないってどういうことなの!?」
「皐月、人工神結晶バッテリー生成装置を持って来たよ!」
「香織ナイス!二つなら流石に大丈夫でしょ」
人工神結晶のバッテリーをもう一つ直結させて魔法を発動する―――事が出来なかった
「どんだけなのよっ!この人工神結晶のバッテリーはオリジナルよりも魔力を貯蔵する性能なのよ!?」
「皐月さん・・・嫌な予感がするんですが・・・」
「・・・何個かバッテリーを作る必要があるという事ね」
人工神結晶のバッテリーを一つ作る事が出来る時間はおおよそ二ヵ月。深月が魔力を込めると一週間まで短縮する事が出来るが、この場に深月は居ない。よって、自然エネルギーで溜めるのは却下だ。風力発電や太陽光発電は自然に左右されるが、ここで一つだけ案がある。しかし、これは深月が必要だと常々思っているので行いたくはない
「皐月、大丈夫。代案がある!」
「ユエさんどうするんですか?」
「少し前に暗黒界に捨てた縮退炉。あれを使う」
「ヤメテ。あれは試作だからすぐに暴走するの」
「・・・むぅ、私も使ってみたかったのに」
「本音はそっちなの!?」
改めて、代案を探す事にした。魔法を使う手もあるが、それなら直接魔力を注ぎ込んだ方が効率が良いのだ。要は効率の問題である。一の力で十・・・いや、最低でも百は欲しい。欲を言うなら千が一番だ。深月でも一週間掛かる代物を皐月達の力で短縮しなければならない
こういう時は、オタクの知識が役に立つ―――という訳で南雲家に行ってマンガやアニメから案を募ろう作戦だ。だが、それでも手掛かりは無かった
「これ本当にどうしよう・・・。一応深月も一緒だから数ヵ月のサバイバルに耐えれるとしてもねぇ・・・」
「それを言わないで下さい。これでも頑張っているんですよ?」
「シアの手料理も美味しい。だけど、深月の料理が恋しい」
「深月の料理は極まっておるから、それと同等を食べるとなるととんでもない金額が必要なのじゃ」
「スイーツ食べたい」
「和食食べたい」
まるで屍の様だ。胃袋をがっちりと掴まれており、無駄に清潔進化というぶっ壊れ技能のせいで贅沢を知ってしまっている状態なのだ。毎日が超高級な素材を使った家庭料理となると絶望するには充分だ
食のストレスもあってやる気が向上しないが、無理矢理にでも体を奮い立たせて情報を集める他ない。皐月達はどん詰まり状態に気が重くなり、モフモフに癒されようと中庭に出てポチに埋もれようとした
「ポチ~癒して~」
「ワン!」
超巨大なキメラが「ワン!」と犬の様に鳴くのはツッコミ所満載だが、今はそれが癒しでもある。日の光を浴びながら埋もれていたらいつの間にか寝ていた事に皐月は驚いたが、もっと驚いた事はいつの間にか手に見た事のない色の水晶が手に収まっていた
「・・・・・何これ」
見る角度を少し変えただけでオーロラの様に色が変幻自在。この様な水晶は見た事も聞いた事も無く、触れる手から伝わる魔力の反応。どう見てもオーパーツな水晶が何故寝ている間に手に収まっていたのかすら疑問だ。だが、この水晶の魔力量はバッテリーよりも多く感じ取れる
「天からの贈り物?・・・いや、使うけど・・・。使っていいのよね?」
この水晶が誰の物かも分からないし、使用時のデメリットも不明だ。しかし、この水晶の魔力をバッテリーに充電する事を決めた。それと、何故かこの水晶は壊したくないとも思った
急ぎ作業部屋に置いてある人工神結晶バッテリー生成装置に魔力を流し、魔力の流れを確認して異常が無いかどうかを確認して試験用バッテリーをセットして水晶を魔力伝道機に設置した。魔力感知で水晶が持つ魔力の充填が正常か確認し、試験用のバッテリーを外して魔道オルゴールにセット。魔道オルゴールは正常に動き、過負荷が掛かっていないかどうかを確認する為にしばらく放置しても問題はなかった
「よしっ!」
水晶の魔力をバッテリーに充填を開始する。この充填機ならばバッテリーに適合する魔力に変換しながら無駄なく充填出来るが、それでも時間は掛かる。皐月の見立てでは一個につき二日程掛かる推測だ
なので、生成装置を一つ増設する事にした。水晶が貯蓄する魔力は底が見えず、まるで無限のエネルギーを秘めたオーパーツか何かだと確信する。しかし、環境被害がないのなら早急に充填する
「並列による魔力の分散は見られない。神結晶みたいな無色の魔力ではないのにも拘わらずにほぼ無変換で充填出来ているというのが気になるけど、今はそんな事を気にしている場合じゃないわよね」
気になる点は沢山あるが、問題ないならその先を見据える。並行世界へ行くにはバッテリーがどれだけ必要か不明だが、水晶を手に取ってからはこれで足りうると勘が囁いている。バッテリーは十個の蓄えとなり、再びユエ達を招集してクリスタルキーの並行世界への移動準備に入る
「クリスタルキーが行先、地球儀のアーティファクトが並行世界。でも、それだけでは情報が足りないから皆でハジメと深月の事を強く念じるわよ。意志が強ければ強い程魔法の発動による消費魔力が減らせるわ」
「それじゃあハジメ君の写真と使用済みのシャ「それは洗濯しなさい!」ああ!?放り投げないでよ!?」
「香織・・・それはストーカーと同じよ」
「むっつりどころじゃないですぅ。ある種の狂気を感じます」
一応皆にも宝物庫を与えているのでその中に入れているのだろうがこれはいただけないと判断した皐月は、ハジメと深月を回収した後に香織の宝物庫の中身を確認する事にした
話を戻し、バッテリーを三個、四個と一つずつ増やして魔法を行使する。そして、切りの言い五個でようやく発動した。クリスタルキーの輝きが凄まじく、何処となく熱量を感じる
「繋げたわ。皆行くわよ!レミア、ミュウとお留守番頼むわ。ハジメの罰を書いたクジを作ってね」
「分かりました。ハジメさんをよろしくお願いします」
「ママ、行ってらっしゃいなの!」
非戦闘員であるレミアとミュウは安全な場所・・・ポチの傍でお留守番という形だ。ハジメと深月が迷い込んだ並行世界がどういったものかも不明となれば戦闘職と回復職である面子で迎えに行くのが一番安全とも言える。皐月達は、虹色に輝く歪んだ空間を抜けた
「ぷはぁっ!魔力どんだけ食うのよ!?人工神結晶バッテリーを五つも使ってようやく起動するなんて冗談じゃないわよ!ハジメ、大丈夫!?」
「あ、おう・・・大丈夫。一応は・・・大丈夫・・・うん・・・」
皐月達が空間から出て真っ先にハジメの事を心配するが、何故か当の本人は気難しい顔をしていた
~深月side~
お嬢様の匂いがします!半月は会えなかった分の匂いをここで補給しなければ!
深月の内心は色々とヤバイが、決して表には出さずに調理を一旦切り上げてハジメの首根っこを捕まえた
「さぁ、ハジメさん。存分にお説教をされましょうね?」
「・・・不幸だ」
「ハ・ジ・メ・?一体どの口が不幸って言っているの?私に内緒で並行世界を観測するアーティファクトを作っておきながら暴走させ、挙句の果てには深月を巻き込む。おいたが過ぎるわよ?」
「ごめんなさい」
皐月がもっと追及してお説教をしようとしたが、周囲を見れば誰かの住宅の庭だと気付いたのでお説教は後回しにして家主にお包みを渡す事を決めた。そして、人の気配が多い場所に視線を移して絶句
「え・・・あ・・・」
「・・・皐月、どうしたの?」
「大丈夫ですか?」
ユエとシアが皐月の様子がおかしい事にいち早く気付き声を掛けるが、皐月は目にした先の光景の情報量が膨大過ぎて思考停止寸前となっていた
「おい、召使の本来の主よ。王たる我の前に挨拶も無しか?その不敬b「きゅう」・・・む?」
遂には圧倒的なカリスマを放つギルガメッシュが傍に居る事に気付いて情報量がパンクして気絶してしまった。これにはギルガメッシュも予想外だったのか、少し考えて後に挨拶をさせる事を決めた。そして、皐月が持つ宝物庫の中身が気になりかなりご機嫌な様子だ。深月は気絶した皐月を支え、宝物庫からベッドを取り出してその上に寝かせた
「ハジメさん、何故お嬢様は気絶されたのでしょうか?」
「あぁ・・・最推しが目の前に居たからだろうな。皐月は王様を最強にする為に・・・いや、何でもない」
これ以上事細かに説明すれば、皐月は深月に説教をされるのだ。皐月の最推しのギルガメッシュを全てカンストさせる為に貯めていたお小遣いをリンゴカードに変えてガチャを回していた。ストーリーやイベントのボスはクラス相性が悪くなければごり押して倒す位に入れ込んでいる
皐月の表情は、それはもう安らかなものでしばらくは起きられないだろう。取り敢えず、深月は一時中断していた調理を再開する事にした
「さて、俺は―――」
「ハジメ君は何処に行くつもりなのかな?かなぁ?」
ハジメがこの場を離れようと振り返ると香織が鎖を持ち、香織の後ろには雫とティオが待機してユエとシアがハジメの背後に回り込んで香織が鎖を持って待ち構えていた
「・・・逃げるn「捕まえたですぅ!」なにぃっ!?」
ハジメは全力で空中へ逃走しようとしたが、シアが即座に反応してハジメの足首を掴んで地面に叩きつけ地に落とす。その瞬間、ユエが重力魔法でハジメの体の動きを鈍らせて香織は持っていた鎖をハジメに巻きつける。圧倒的な捕縛技術だ。その後、石の波板の上にハジメを正座で乗せて石板を一枚乗せる。言い訳をしたらもう一枚、黙り込んでももう一枚という逃走経路も何もない拷問が続けられた
「ハジメ君だけが巻き込まれるならまだマシだったよ?」
「・・・でも」
「深月さんを巻き込んだのはいただけないですぅ」
「もう一枚追加じゃな」
「一枚は生温いから二枚にするわ」
どんどんと積まれる石板の重みと脛に食い込む波板が非常に痛々しい。だが、ユエ達が怒る原因が深月の料理が食べられなかった事による恨みから来ているので仕方がない
「ハジメさんは自力で抜け出せない様にして食器や下拵えの手伝いをお願いします」
「「「「「はーい!」」」」」
胃袋をがっちり掴まれているユエ達は素直に深月に従う
一方、遠坂達マスターやそのサーヴァント達は呆然としている。空間が虹色に輝いて歪んだかと思ったら、現れたのは女性ばかりな点にツッコミを入れなかったが特に驚愕したのはウサミミのシア以外の保有魔力量が桁外れに多いのだ。分かり易く例えるなら、アインツベルンが最低でも五人分だ
「あっちの世界の人間は化け物ばかりなの?」
「あ~・・・凛の言いたい事は分かるわ。私よりも魔力が多いのは人間辞めてると思うわ」
「あ、あの・・・それよりもあのウサギの耳の女性に目が行きますね」
「ウサミミってどんなファンタジー生物なのよ!」
「魔術を使う時点で一般人からすればファンタジーですよ?」
深月の冷静なツッコミが突き刺さり、遠坂達は何処か諦めた様子だ
増えた人数分も追加となると食材の数が増える。よって、ギルガメッシュと皐月とORTの三人以外は手抜き料理で済ます事にした。とはいえ、各種調味料の配合や下拵えの素材の旨味の底上げ等はする。ただ、食材その物の品質が段違いで処理を普段より繊細にする事によって味を飛躍的に向上させるだけだ
「・・・深月、私達の料理手抜き?」
「酷いですぅ!深月さんの美味しい手料理を食べたいですぅ!」
「私の視点での序列が御二方が最上となります。そして、同志おーちゃんには美味しい料理を食べてもらいたいという私的な思いがあるだけです」
「嘘だっ!」
「えっ?あの麻婆を食べて平気なの!?嘘でしょ?」
ユエ達も深月の麻婆を劇物扱いしており、人の食べる物じゃねぇ!と食べる事を拒絶している物を美味しく食べるORTに引いた
「麻婆は美味、同志深月が作る他の料理も興味がある。わくわく」
「あ、あの~。不躾な質問ですが貴女のお名前は?」
「同志深月から名付けられたおーちゃんです」
『・・・・・』
これを聞いたユエ達は、深月のネーミングセンスの無さに頭を抱えた
「・・・深月、ネーミングセンスない」
「そうですよぉ~。流石におーちゃんは可哀相です」
「え?可愛いではありませんか」
どうやら深月は、可愛い名前だと思っていたらしい。この時、ユエ達の思考は宇宙になっていただろう。深月のネーミングセンスの無さを修正するのは諦めるしかない
「う、うぅん・・・お、推しの声が聞こえた?」
どうやら皐月が目を覚ました様子で、深月は再度手を止めて皐月に紅茶を持って行く
「お嬢様、お目覚めの一杯は如何ですか?」
「ありがと、いただくわ」
温かい紅茶を一口飲んで―――
「さて、召使の主よ。我に挨拶をせよ」
「・・・待って。ねぇ待って」
皐月は声が聞こえた方へ顔を向けるが、視線は下にしたまま変な汗を搔いている
「お嬢様?如何されましたか?」
「面を挙げよ。そして、我の問いに応えろ」
しかし、皐月は視線を下に向けたまま固まっている。深月は、皐月が頑なにギルガメッシュに視線を向けない理由が思いつかず、首を傾げて原因を探るが身体の障害等はなかった
「お、王様。一つ宜しいですか?」
其処に助け舟を出したのはハジメだった。今の皐月の状態をよく知るのは、この中でもハジメだけだが波板の上に正座で座らされて石板を乗せられている姿はあまりにも酷い
「ほう?雑種はこやつが面を挙げぬ意思を知っているという事か?」
「はい。皐月は、王様の大ファンです」
「ファン?それが何故面を挙げぬ理由なのだ」
「私達がこの世界に転移した理由はご存じの筈―――」
「言われずとも理解しておる。雑種共の世界では我等の住むこの世界が創作の世界だという事を」
「私達の世界では王様が様々な形で人気を博しています。それにより、王様のグッズも出ているのです」
「それの何処が関係がある。我の玩具を崇めるなら、本人であるこの我こそ崇めるべきであろう」
王様は聖杯から現代の知識を与えられているとはいえ、それは事細かくではなく常識程度の知識だけだ。オタクという者をよく理解していない
「王様を模した玩具とはいえ、毎日懇切丁寧に己の手で綺麗にして埃が付かない様にケースに入れて笑みを零す。それが皐月のオタク魂であり、今この場に居る王様に対し尊死しない為の行動なのです。どうか、皐月が慣れるまでもうしばらく寛容な心でお待ち下さい。流石に王様を前にして鼻血を流してしまうのは不敬になります」
「ほう、我を視界に入れる事で鼻血を流すと?」
ギルガメッシュは何やら良い笑顔を浮かべて皐月の前まで近づき手で顎を挙げて強制的に視界に入れさせた
「我を崇めるのは良い心がけだ」
「 」
皐月の時が止まり、アドレナリンが限界量を超えて生成され脳に過負荷が掛かる。そして、案の定鼻血を噴出してしまい深月がギルガメッシュに血が付かない様に布で防ぐが、鼻血の量が少しづつ増えて布が真っ赤に染まる
「ふっ、我のこの姿を見ただけでそれ程の血を流すか。よい、本来なら不敬とする所だが気が変わった。これからも我を崇め続けよ。貴様は元居た世界で誇れよ?この我に顎を上げさせたのだ。そして、脳に我の威光を存分に刻み広めよ」
「ひゃい・・・ひろめましゅ」
「そして、元の世界に帰還する為に必要なアーティファクト以外を我に献上せよ」
「しましゅ、こちらからおねがいしましゅ」
呂律が怪しくもどうにか尊死する事なく、この場を切り抜ける事が出来た皐月はギルガメッシュ限定の限界オタクとして頑張っただろう
「しかし、これでは少々我が貰い過ぎというものだ。何か欲するものはあるか?」
皐月はビクッと震えたが、少し冷静になってどうしても叶わなかった願いを告げる事にした
「欲する"物"は御座いません。ですが、ですが!ガチャでエルキドゥ様を引いて下さい!!」
「はぁ?」
これには流石のギルガメッシュも呆然とするが、少しして額に青筋を浮かべた
「貴様、よもやこの我の
「王様!それはゲームの話です!」
「貴様は阿呆か!この我を持ちながら親友を持たないとは万死に値する!!」
「フィギュアやグッズは持っています。でも、ゲームの方で出ないんです!」
ギルガメッシュはずっ親友であるエルキドゥを持っていない皐月に怒りを露にするが、ここで深月がふとした疑問をぶつけた
「お・嬢・様・?一体どれ程課金しましたか?」
深月の圧をぶつけられた皐月は蒼褪めて視線を逸らした
「我が親友を持つ為には限界まで絞ったか?そうでなければこの場で殺す」
どちらにしても退路が無くなった皐月は、大人しく深月に説教される事を選んだ
「今は怒らない?」
「金額次第です」
「・・・ゴジュウマン」
「王様、少々お待ち下さい」
深月はギルガメッシュにニッコリと笑顔を送るが、目が笑っていない事を理解したのか止めはしなかった。深月は皐月を持ち上げてハジメの隣に正座で座らせ、説教を小一時間程絶え間なく続けた
「ユルシテ、モウユルシテ」
「どうして俺まで」
「課金履歴を見ましたよ。同時期に課金していたのなら、一緒にしていたのでしょう?止めなかったハジメさんも同罪です」
深月は溜息を吐き、いっその事数ヵ月の間スマホの没収を考えたがそれはあまりにも不便な事と、息抜きのリフレッシュがない事による弊害を懸念して諦めた
「ふむ、ゲームか。ならば、この我が一発で引いてやろう」
「こちらで起動するのでしょうか?」
「アンテナを立てたから大丈夫!」
「・・・一体何処にその行動力があるのですか」
深月は、皐月のスマホを手に取ってアプリを起動してガチャ画面へと切り替える。しかし、ピックアップはされていない闇鍋ガチャで当てようという危険極まりないもので、召喚に必要な石も十一連分しかなかった
「これ以上の課金は駄目ですよ?」
「で、でもっ!?パーフェクトエルキドゥ様にするには最低六人必要なのよ!?」
「戯けっ!この俺を甘く見るな!」
ギルガメッシュが深月からスマホを奪い、躊躇う事なく十一連召喚のボタンをタップ。画面は切り替わり、初手から虹色の回転が出現した
「ほう?帯が虹色に輝いたぞ。これはどういうものだ?」
「レアリティは☆4から☆5のキャラクターの筈です」
「ならば、我が親友で確定だ」
クラスはランサーで、ギルガメッシュの予言通りエルキドゥだった
「フハハハハハハ!やはり我の元には親友が当然だ!」
「あら、次は金ですね。これも先程同様です」
「ふむ、ならば親友だな」
そしてギルガメッシュの言う通りエルキドゥだった。それから続く召喚も全てエルキドゥというチートだと疑いたくなる様なガチャ結果となった
「貴様はこれより我が親友を我の隣に立たせよ!分かったか?」
「王様ありがとうございますっ!」
先程までの意気消沈は何だったのかと疑いたくなる様なテンションの変化に遠くから見ていた遠坂達はドン引きしていた
「同志深月、料理は大丈夫?」
「あら、いけませんね。すぐに戻り再開しましょう」
ORTに促され、深月は調理を始めた。作る料理はフィッシュ・アンド・チップス。揚げるだけの簡単な料理と思うなかれ―――。魚の下処理や素材の良し悪しで味が変わり、油の汚れ具合で雑味等が変わってくる。とはいえ、これはあくまで手抜き料理の方である
皐月とギルガメッシュとORTには、高坂家がお世話になっている牧場から送られる最高級の黒毛和牛の丸々一頭分の肉を使う事にした。深月の手に掛かれば残る素材は何一つなく、今まで取得した技能をフルに活かせるのだ。他にもスープや野菜にソース等も作り、デザートのパフェを用意する事にしたのだった
深月「おーちゃんが楽しく美味しそうに食べて下さるので作り甲斐があります」
布団「そうですねぇ~。麻婆が普通の辛さだったら文句は無かったけど」
深月「作者さんの分もちゃんとありますよ?」
麻婆神父「食うか?」
ORT「食べる?」
布団「ウワァァァァァァァ!」