ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「・・・・・」
深月「・・・・・」
布団「え~、この度は申し訳ございませんでした!」
深月「"この度は"ではなく"この度も"です!」
布団「長い長いスランプに逃げてモンハンワールドにハマってました」
深月「へぇ~ほぉ~。そ・れ・で・?」
布団「・・・・・他のソシャゲにも逃げました」
深月「天誅ッ!!」
・・・作者は・・・メイドに・・・叩かれました・・・無事\(^o^)/オワタ
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるり『まだだ、まだ終わらんよ!』フンッ!!・・・・・おほんっ、それではごゆるりとどうぞ」


メイドさんとお嬢様によるやらかし勇者(笑)の後始末

~ハジメside~

 

トータスから帰還したハジメ達は様々なイベントが自然と発生したが、穏便に事を進めたり強引に解決したりと様々だ。とはいえ、これはハジメ達だけの問題なのだ。それ以外の問題とは・・・天之河が過去にやらかした事件だ

 

「逃げんなよ天之河」

 

「・・・分かってる」

 

「南雲、光輝が悪いのは分かってるが相手の住所とか分かってんのか?」

 

「そこはほら・・・お義父さんの力のお陰さ」

 

電車を乗り継いで田舎まで来たハジメと天之河と坂上。そして、天之河の両親も同行している

 

「まさか自分の息子がこんな事をしていたとは思ってなかったよ」

 

「光輝、分かってる?私達も謝罪するけれど、一番重要なのは相手にどんな事をされても歯を食いしばって耐えなさい。二人の人生を狂わせたケジメはデカイわよ」

 

高坂夫妻が中心に各家庭へ連絡を入れて大きな会議室でクラスメイトや教師の全員を含めた説明会を開き、息子や娘から説明される内容よりも詳しい出来事をまとめた資料が配られた。その内容の殆どは王国で働くリリアーナ含むトータスで彼等の事を見ていた人達による各々の情報だ。なお、リリアーナとヘリーナは彼等に謝罪と説明をする為に来ていた

 

「リリアーナ王女は凄いとしか言えなかったよ」

 

「自分のご両親をこちらの生徒に殺されたのに恨みはあってもそれを私達のせいにせず受け入れているなんてね・・・」

 

恨みが全くないとは言えないが、後悔するよりも王国の復興作業で何も考えない様にしているとも言える。説明会でリリアーナに文句を言った親も居たが、深月が集めた教会上層部の発言とは違ってトータスに拉致した事を謝罪して前線に出さない為に陰ながら手を出したり自分が使える手札でクラスメイト達が死なない様に訓練や迷宮でのレベルアップを図ったりしていた事が明らかとなり文句を言う親は押し黙った

 

「俺達は何も考えてなかったけどよ・・・後になって姫さんがどれだけ俺達を死なせない為に出来るだけ安全に特訓をさせていたというのが分かったぜ」

 

「でも、そのせいであんな事になったんだ。これも俺が何も知らなかった事が悪かったんだ」

 

「まぁ、中村がストレートに天之河に好意をぶつけて強引にでも物にしていたら何か違っていたかもな。とはいえ、それはもう過ぎた事だ。お前は過去にやらかした事を謝罪しろ。フォローは皐月がしてやるとは言ったが、それが必ず成功するとは言い切れない。だからお前はとにかく謝罪だ。相手が殺そうとしない限りは止めねぇからな」

 

「・・・謝罪だけで済む問題ではないのは確かだな」

 

天之河の父親は頭を抱えながら今後の事について悩みに悩んでいる。自分の子供が犯した罪の責任は親にもある。トータスから帰還して高坂家主軸の説明会で知り得たやらかしを聞き、皆が居る前で話し合いをした。理想通りに事が進む事は素晴らしく当人からすればハッピーなもの。今まで失敗や批判的な声がなかった事により更なる歪さを生み、何時しか周囲を盛大に巻き込む危険物となった

 

「それにしても・・・深月が情報収集したのを見ると酷いな」

 

「・・・南雲、俺にも見せてくれ」

 

「お前は馬鹿か?知ったところで現状は変わらねぇよ。下手に「情報知ったので謝りに来ました」―――って言えば・・・うん、どのみち変わんねぇわ」

 

ハジメは考える事を諦めた。天之河が謝罪するのは大いに結構だが、それを赦す赦さないは当事者だけだ。赤の他人がとやかく言える筋合いはない

 

「坂上、この一件に俺達は関係ないから首を突っ込むなよ?無視して突っ込んだら余計に厄介になって被害が広がる。俺達は天之河のやらかしを聞いて謝りに来させただけってのを忘れるな」

 

「で、でもよぉ・・・。光輝とは一番仲の良かった男は俺だろ?一応謝っておいた方がいいんじゃねぇか?」

 

「被害者が加害者になる可能性がある。間接的に手を出してたら未だしも、お前でも知らなかったんだろ?ケジメは本人が付けねぇとスジが通らねぇんだよ」

 

被害者が激怒して冷静な判断が出来なくなった状態で坂上が謝ったら被害者は手を出してくるだろう。そうなれば天之河の友人で何も知らなかった坂上に暴力を振るったとして加害者となってしまう。それだけは絶対に避けなくてはならない

 

「皐月はまっくろくろすけなお前等の中学の母校に証拠を提出で動いている。警察にも前から届出を出しているから一斉に家宅捜索、学校内部にも入るそうだ。いやはや、学生には勉強中に申し訳ないと思うが仕方無しってやつだな。マスコミは表で待機しているが、マスゴミの方は義父さんの圧力で会社諸共睨まれて何時潰れてもおかしくないってな」

 

「高坂の親父さんって怖ぇな」

 

「俺達とは違う力を持ってるから大企業でも下手に手を出したくないんだ」

 

「あの説明会の時に見たけど気の良い親父さんだったぜ?」

 

「俺達が転移した後で各国との大きいパイプによって沢山情報を収集して探してくれてたんだ。その過程で大規模なテロ組織とかを幾つか潰したって言ってたぞ」

 

「・・・怒らせたらヤバイのは理解したぜ」

 

ハジメは坂上と色々話しながら手元の資料と地図を頼りにようやく目的地へと到着した。家は普通の一軒家だが、外からでも感じるドロドロな重苦しい雰囲気だ。そして、隣の家は目の前の家に比べたらほんの少しだけマシな雰囲気だ

 

「・・・関係ないのに胃が痛くなってきた」

 

「お、おう。この暗い・・・なんていうかジメっとした感じが嫌だぜ」

 

「こんな重苦しい雰囲気の家は・・・そうか、家族を殺された被害者宅の雰囲気に似ている」

 

当事者である天之河が家の門に入るのを躊躇していると、ハジメ達の後ろから何かが落ちる音が聞こえた。その瞬間、ハジメは数歩端に寄ってわざと通路を開けたと同時に人影が天之河に襲い掛かった

 

「てめえっ!てめえのせいでっ!!」

 

憤怒に駆られた青年が天之河の顔面を殴る。何度も殴るが、ステータスの差がある為に天之河にダメージが全く入らない。ハジメは「チートを手に入れた代償はあまりにもデカいな」と、呟きながら青年の動向を見守る事にして坂上の首根っこを掴んで間に入らない様に保険を掛けている

 

――――一時間後

 

青年はゼェゼェと言いながらも天之河を殴り続けていた。尚、その拳に力は入っていない。それでも続けるのは積年の恨みを通り越した諦められない意志があると感じられる

 

「何でっ!何で傷一つ無いんだよっ!ふざけんなよ!!どんな事をしても許されて挙句の果てには神様に選ばれただけで力を手に入れて何様だ!!俺達が今までどんな思いで今まで過ごして来たかなんて一度も考えた事なかっただろ!」

 

「・・・すまない」

 

「謝罪なんて要らねえんだよ!二度とその面を見せんじゃねえ!!」

 

青年のあまりの剣幕に天之河はたじろぎ、言われた通り立ち去ろうとしたところでハジメのラリアットが天之河に直撃して十数メートル吹き飛び間抜けなシャチホコの格好となった

 

「おうこらクソ之川、てめぇたったそれだけで帰ろうとしてんじゃねえよ。ぶっ飛ばすぞ?」

 

「いやいや南雲ぶっ飛ばしてるだろ!?」

 

「坂上、こんな一時的な感情の言葉を聞いて「分かりました」って帰る奴の方が馬鹿なんだよ。そりゃあ、一度間を置きたいかもしれないが次がある可能性なんて限りなく低いだろ。天之河はそんな事を考えていないかもしれないが、被害者からすれば今まで無視してた奴がもう一度謝罪しに来るなんて絶対にないって思う筈だ」

 

ハジメが被害者の方に視線を向けると、まるで苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。彼の気持ちは分かるが、全ては分からない。手元にある資料の情報だけでも酷いと断言出来るが、当人達の苦しみは当人達だけにしか分からない

しかし、被害者は感情が昂って一時的な判断しか出来ていないのは確かだ。そこで、一旦落ち着かせる事とある意味被害者なハジメが説明?する事にした

 

「あー・・・取り敢えず感情任せに言うのは止めて落ち着こう。天之河には何言っても良いし殴っても構わない。だが、それを踏まえた上で一度話そう」

 

「・・・あんたは関係者か?」

 

「う~ん・・・関係者と言っても友達とかそういうのではないと言っておこう。無関係な奴は引っ込んでろと言いたい気持ちも分からんでもないが、俺は帰還者の一人で天之河のやらかし被害者の一人だ」

 

ハジメは天之河にジト目を向け溜息を吐く姿は苦労した者の姿と酷似していた

 

「あんたも大変だったんだな」

 

「あいつは異世界行ってもやらかしのオンパレードだったからな」

 

あまり言い触らしたくもないが、被害者の彼に天之河のやらかしをざっくりとだけ説明。かなり端折っている部分もあるがそれは仕方がない。これは他言無用という事を約束させ、これからの事について提案をする。これは皐月とも相談して相手の意思表示次第という事で決定している

 

「そういや名前を聞いてなかったな。すまん!一応は調べて分かってはいるが自己紹介しなきゃ分からないよな」

 

「あぁ、クソ野郎のせいで全然気にしてなかったから大丈夫だ」

 

「俺の名は南雲 ハジメだ」

 

「・・・近藤 拓也(こんどう たくや)だ」

 

被害者改め、近藤の様子は先程までよりも落ち着いてきている。ここで天之河が茶々を入れる前に本題へと切り込む事にした

 

「正直言うが、天之河の謝罪はどう思った?」

 

「今更だよ。そいつが色々したせいで俺は中学を退学して高校を進学する事も出来なくなったからな。噂が独り歩きで誇張された影響か雇ってくれる所なんて何処にも無かったよ」

 

「まぁ、それについては周囲の奴等がどす黒い悪党だったって事だ。それよか本題なんだが・・・・・うん、天之河。絶対に茶々入れるんじゃねえぞ?テメェのそれは全てが解決したら改めて対応しろ」

 

ハジメは手持ちの資料に再度目を通し、近藤に渡して状況説明を求めた

 

「話が変わるが、俺の彼女は高坂皐月―――高坂家の人間だ。近藤には悪いが、被害に遭った二家族の詳細を纏めたものになるがこの情報は合っているか?」

 

「・・・大財閥なら何でもありかよ」

 

近藤は警戒をしたが、家族やその状況等を事細かに記された資料に寒気がして体を強張らせていた。それに関しては無理もないだろう。一般家庭が国家権力に圧を掛ける事が出来る高坂家に逆らうという事がどれ程危険で無謀なのか分かり切った事だ

 

「近藤の警戒は当たり前だが、これは脅しじゃねえ。普通なら『脅しだろ』と言われてもおかしくないが、片方の家庭の状況を鑑みて何があったのか調べる必要があった。改めて尋ねるが、虐めが原因の自殺未遂で意識不明の重体というのは本当か?」

 

「・・・ああ。俺が退学してから学校でずっと虐められていた。それを『何でもない』『気にしていない』と間に入る事を嫌っていた。でも、無理矢理でも入るべきだった」

 

資料に書かれているのは、虐めが原因による首吊り自殺を図ったとある。近藤の説明によると、何故かその日だけは気になり幼馴染の自室に強引に入り助けたという事だ。急ぎ救急車を呼び近所の病院へと入る前に息を吹き返したのは良かったが、それからずっと目が覚めていない。原因は不明―――、この三年間ずっと目を覚ます事はなかった

 

「入院費用だってただじゃないんだ!俺だって稼ぎがあったら費用を負担したい!でも現実は残酷なんだよ!」

 

「・・・そうか」

 

ハジメは小卒で中学中退というデメリットを抱える事がどれだけ社会に受け入れられない事を理解しきれていない。それこそ、門前払いは当たり前である事が容易に想像がつく

 

「さて、過去についてはあらかた分かった。そして、俺は今と将来の事について提案をしに来た」

 

「提案・・・だと?」

 

「これは自画自賛になるんだが、こっちには異世界に居た魔法のスペシャリストが家族に居る。そして、異世界では定番の治癒魔法も存在する」

 

「・・・対価は何だ」

 

タダで治療されるという事はありえない。例え試験的であったとしても重病患者が優先される可能性が高いので何かしらの要求がある事は容易に理解していた。だが、近藤はこのチャンスを見逃さず手にしたいと―――。ハジメは皐月の計画するそれの手助けと支えを探しており、近藤が見事に目標へと変わったのだ

 

「将来の夢はあるか?」

 

「・・・幼馴染―――朱里(あかり)と一緒に居たい。ただそれだけだ」

 

「よし、ならこの書類に署名しろ。内容はしっかりと読めよ?後で破ろうものなら地の果てに行こうと追いかけてやるからな」

 

「はっ!可能性があるなら何だってやってやるさ」

 

近藤は書類の条件に納得して署名した。これで契約は完了―――、ハジメは携帯を取り出して皐月に連絡をする

 

「皐月、渡された書類に署名を確認した。これから該当の病院へ移動するがそっちはどうだ?」

 

『こちらも要件が丁度終わったわ。患者が入院している病院へ向かうけれど、親族はそちらに居るなら一緒に連れて来て。深月とユエと香織の三人を集めているから大丈夫とは思うけれど、契約したという事は既にこちら側よ。神水を使ってでも引き込むわ』

 

書類に署名した時点で彼の運命は決定したのだ。ならば、雇い主として将来を捧ぐ為の報酬もしっかりとするのは当然である

準備を手早く済ませ、目的地の病院へ直行するが天之河は近藤宅の庭に穴を掘って首だけ出る様に埋めて放置する事になった。同行すれば厄介この上ないので致し方ない処置だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ハジメが近藤宅へ移動している中、皐月は深月のチートを全力全開に活かしてまっくろくろすけな教員達を社会的に抹殺する為の証拠を動画にしてマスコミに郵送。その証拠の中に手紙でこちらの合図があるまでは静観かつ情報の流出を禁止。これを破れば会社諸共制裁するという脅しのニュアンスを添えた

このやり方も真っ黒ではあるが、会社からすれば黙っていれば最高の売り上げを確約された情報を流出させてまで他社の売り上げを上げる事は絶対にしない。大人しく待っていれば最高の蜜を吸い上げれるのならばニコニコ顔で待機するのは必然だ

 

「深月、証拠の回収は済ませた?」

 

「痕跡を残さず回収致しました。郵送時に添えた手紙とコピーされた物、監視カメラの映像等々誰も違和感を持たない様に致しました」

 

「パーフェクトよ深月。残る標的は目の前の中学校と私達が通っていた中学校の二つよ」

 

「既に書面をお送りしております。相手は此方を如何にして穏便に事を収めるかを模索していることでしょう」

 

「苦し紛れの言い訳がポンポン出てくるか、此方を持ち上げて小さく収めるつもりでしょうね」

 

一時の共同作戦とはいえ、弱点となる物をいつまでも残して置く事はしない。普通では不可能だが、便利な概念魔法を思いついたら創ってしまう深月の前には不可能なんてあんまりない

 

「それじゃあ、サクッと終わらせるわよ」

 

その後の展開は説明するまでもないが、この事件に関与した教員や校長は全員僻地に飛ばされ被害者達に慰謝料を払う事が義務付けられ結婚していた者は離婚され自殺もする事が出来ない監視体制の中毎日働くという内容。慰謝料を払いながら一人で生きていける範囲内での仕事だが、返済するには己の人生を全て使う事だ。だが、それに同情する者は誰一人として居ないのは当然だ

粛清を終えた皐月達は、行先を被害者が入院している病院へと向かった。出来るだけ集めた情報だけを見ても酷い内容ばかりだ。入院費用で生活が困窮し、闇金の方に借金をする手前まで来ているとの事

 

「一般社会人が入院費を払い続けるなんて到底出来ないわよね。周囲には噂されて白い目で見られ、職場にも影響が出る。役職が最底辺になる事による収入低下に加えてとなると、貯金を切り崩して生活するしかない・・・か」

 

皐月は、如何に己が良い境遇であるか理解していた。しかし、これの資料を見ればそれは甘い考えであった事を理解し、外国で知る貧困が日本でもあるという事を知る事が出来た。何より、噂による仕事への影響は特に響く。負のイメージが強ければ強い程酷いものとなる。ましてや、嘘に塗れた出鱈目な噂程質が悪い

 

「本当ならすぐに動いてこちら側に引き込みたいけど、情報が曖昧なのがネックなのよねぇ~。他者の失敗の擦り付けやら何やらで自主退職に追い込まれる一歩手前・・・」

 

「心身疲労している状態での失敗は誰にでもあります。挽回しようと頑張れば他者の失敗の押し付け先となり負の連鎖一直線で御座います。早急に対処する事が望ましいですが、下手な同情での手の差し伸ばしはこちら側にも不利益を被ります。しかし、こちらは執事長が動いて頂いておりますので半日もあれば実績や長所を見出せます」

 

「という事は、今日の間でスカウト出来る可能性はあるという事ね」

 

数手先を予測し実行するまでに至る過程の下地を作り、何事も予想外な事態は付き物であるがその小さな物も摘み取る。転職する場合はこちらが退職から引っ越し等を全てサポートする手筈を整えており、各個人の意思次第となる

皐月が書類全てに目を通して不備がないかをチェックし、深月に手渡してダブルチェックをする

 

「記載に変更等は御座いませんか?」

 

「無いわ。強いて欲しいというなら・・・いや、やっぱり要らない。何か嫌な予感がしたわ」

 

「それは勇者(笑)で?」

 

「そうよ。何て言ったらいいのかしら・・・、部下にしようものなら会社が潰れるみたいな?」

 

「理由を付けて社会的排除をされますか?」

 

深月は何処からともなく携帯電話を複数台取り出した。無骨でありながらも頑丈さを意識した形は、何処かしらのコネに繋がるのは明白である。それこそ、国の重要人物にあたるかもしれない

 

「違う違う。勇者(笑)だけが巻き込まれる事件が~―――という感じよ」

 

「では、これ等は不必要ですね。勇者(笑)には何かと苦労させられましたので、その分のお返しとして助力はしないという方向で計画を進めます」

 

皐月の嫌な予感は的中する事になるのは言うまでもないだろう。だが、これはしばらく先の話であるので割愛する

ハジメ達よりも先に病院に到着した皐月達は、転移門でユエと香織を招集してハジメ達が到着するまで病院近くで待機する

待つ事数十分―――、二台の乗用車と一台のワゴン車が連なる様に来るのが見えた。二台の乗用車はそのまま病院へ入り、ワゴン車は皐月達が待つ場所で一時停止をして運転していたハジメが降りて天之河家と坂上が一緒に降りる。車は宝物庫に入れ、先に入って行った二家族と合流して当人が居る病室へと移動した

 

「そういや、あいつ等はどうなったんだ?」

 

「それはお父さんに任せているから分からないわ。でも、一生を捧げるかもしれないわね」

 

「・・・御義父さんに何かしらのお礼をしておくか」

 

後日、書類仕事で多忙の為を想いユエと香織の魔法職に頼りつつ回復機能付きアーティファクトのマッサージチェアを送り届けたりする

話は戻って個室へと案内された先には該当の少女が眠っており、点滴をしているものの何時死んでもおかしくない状態まで酷く痩せている。イジメにより不登校かつ拒食症に陥り、首吊りからの入院となれば長らく食事を摂っていない事を考えると妥当だろう

 

「ユエ、香織。二人から見てどうだ?」

 

ユエと香織は、少女の親族に許可を取って近づき再生魔法を使って目に見えないであろう神経系を中心に治療する。粗方回復を終えた後に、香織の回復状態の確認の鑑定では傷は無いとの事だ

 

「首の圧迫で潰れてた神経の損傷は回復したよ」

 

「・・・後は目覚めるのを待つのみ」

 

「私の見立てでは四~五時間で目が覚める筈だよ」

 

「ほ、本当かっ!?」

 

香織の言葉に拓也が興奮して近づこうとするのをハジメが落ち着く様に制する

 

「待て待て待て。損傷が治ったとはいえ重病人だからもうちょい静かに待ってくれ」

 

拓也もハジメの言葉を聞いてハッと気付き、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。ここは個室とはいえ、医療機関の中。他人に迷惑をかけるのはよくない

 

「香織の見立てであっても未だ起きるという確証が得られていないんだ。最終手段を持ち合わせているが、契約書にも書いてあった通り一生を使い切る事になる。出来うる手を全て使って誓約を少しでも軽くする方が良いだろう?」

 

神水を使う手段も含まれており、使用した場合は自由が全て無くなる程の契約だ。だが、それはあくまでも最終手段であり手の打ちようが無い場合のみだ。皐月の計画であるメイド育成学校は女子限定だが、この先を見据えて使用人の育成学校に変える予定であり実験的な導入のいけn・・・先駆者となるだけだ

 

 

 

 

 

 

治療から数時間が経過したが、朱里は未だに目を覚まさない。原因は不明であり、香織の治療による鑑定でも損傷は回復していると出ている

 

「・・・なぁ、本当に大丈夫なんだよな?朱里は目を覚ますよな?」

 

拓也の不安な声が静かな病室に響く。途中でティオを召喚して魂魄魔法による魂の定着や揺さぶりをかけたもののそれ等も駄目だった

 

「大丈夫だ。ある意味で専門家にどうにかしてもらう」

 

「深月、来なさい」

 

「お呼びとあれば即参上です」

 

皐月が深月の名前を呼んだ瞬間に転移門で現れた深月を見ると演出しているのかと疑いがあり、先程ハジメが言った専門家と呼ぶには相応しくないメイド服・・・

 

「メイドじゃねぇんぐっ!?」

 

拓也の叫びも理解しているが、ハジメが手で拓也の口に蓋をして静かにさせる。何度も言うが、病院内は静かにしましょう

皐月は、治療して数時間が経過しても目を覚まさない朱里の事を深月に説明。簡単に説明するなら、レミアの足の感覚を取り戻させた時と同じ感じで朱里の覚醒を促すという事だ

 

「雫という手もあるけれど、熟練度と応用は深月の方が上でしょ?それに実績もあるから余計にね」

 

気功が使えるのは深月と雫を除くと執事長ぐらいしか扱えないし何よりも前者二人は後者よりも練度が違う。雫は深月に劣るとはいえ、戦闘用の気功術ならば問題ない。しかし、補助系は苦手であるならば―――残りは実績のある深月ただ一人となるので選ばれるのは必然だ

 

「成程・・・。患者の衣服を脱がせて触診しますが宜しいでしょうか?」

 

「娘が目を覚ます可能性があるならお願いします」

 

保護者からの了承を得た深月は、手慣れた様に衣服を脱がせて全裸状態にする。患者服を着ているので脱がすのも簡単でテキパキと作業を進め、朱里の全身に清潔を施して微細な汚れも全て取り除きアームカバーを外して手を合わせて集中する

臀部を中心にして四肢に向かって手で押さえながら這わせて筋肉や血管の位置を調べる。四肢を調べ終えた後、心臓から頭に向けて辿る途中、首筋で一度止まった後に頭部全体を手で覆う様に少しの間触れ続ける

 

(首の神経が圧迫した事による損傷の回復は確認しましたが、心臓の鼓動の微弱は血流の流れからしたら不自然ですね。計器は正常でありながらとなると・・・何かが覚醒の妨げをしているという事ですね)

 

覚醒の妨げとなる原因の予想は多岐に渡るが、以前お世話になった悪魔関連は痕跡が無いので除外する。残る原因としては何処からか圧力を掛けられ病院側が何かしらの細工をしたか、生きる気力を大きく欠如して目覚めを閉ざしているかの二択となる

 

(二択の内で言うなら後者が一番可能性が高いでしょうね。男子の虐めよりも女子の虐めの方が陰湿で長く続きますから)

 

生きる気力が欠如しているのならばその気力を補う必要があるが、個人で気力を復調させる事は困難である。だが、この場には彼女を想う者が居る

 

目覚めて欲しい―――

 

また一緒に―――

 

様々な感情を抱きながら見守る彼等彼女等の想いが大きい。ならば、その想いをエネルギーに変換して気功と混ぜて脳に直接叩き込むだけだ(※絶対に真似しないで下さい)

 

(極細の魔力糸を螺旋状に形成して頑強さを維持しつつ、額に冷え〇タを貼って準備完了です!)

 

傍から見ればここで冷え〇タが出てくる時点でふざけているのかとツッコミを入れるだろう。本来ならMRIやらエコーやらと機器を使うだろうが、病院内で専門家でない者が扱う事は叶わない。そこで、意識の覚醒を促す為の代用品が冷え〇タである

 

「・・・なぁ、冷え〇タなんてどうするつもりなんだ?」

 

「普通に貼りますよ?」

 

深月は当たり前のことを聞くなと呆れ果てた言葉をハジメに送り、これ以上のツッコミを封殺する

 

「自然物ならば氷嚢が良いのでしょうが、気功の指向性が分散してしまいます。そこで他の方もイメージし易いこの冷え〇タです。問―――この製品は何処を冷ましますか?」

 

「熱が出た時等に使うから頭を冷やす時に使います」

 

「知恵熱等も含まれてるよな?前頭葉を冷ます事で痛みを和らげたりするって」

 

これだけ簡単に説明出来るし、なによりパッケージにも絵図を描かれているので認識の誘導もされているという点も大きい

 

「・・・ん?もしかして複雑な機器よりも単純明快って事になるの?」

 

「専門家ならばそれぞれの分野に合った機器の説明が出来るでしょう。しかし、一般人・・・というより専門知識がない方達のイメージを頑強にして送り込むにはこれが手っ取り早く危険も少ないのです」

 

各々がイメージについて納得している最中も深月は作業を続けて五本の糸を彼等に伸ばして渡す

 

「さて、私が先程説明により頭の中で冷え〇タの冷却イメージが出来た事でしょう。次はとても簡単で、お渡しした糸を握って目覚めて欲しいと手を合わせてお祈りをして下さい。祈りの形式は各々が最初に思い付いた形式にして頂く事で気の息吹を送り易くなります」

 

日本人である為、全員が両手を合わせる人が殆どだ。だが、糸を両掌で挟んだり指に絡めたりと統一はされてないが一番最初に思い付いた形がかなり良しとされる。イメージをより強固にする為の形と言っても良いだろう

五人が祈り出して病室は静かになり、ほんの数十秒で変化が現れた。各々に渡した糸の手元部分が淡く光り始め、徐々に朱里に付けている糸を辿り全ての糸が光った瞬間に深月が朱里の額にチョップした

 

「痛っ!」

 

声が聞こえた瞬間、光は消えて家族達皆が顔を上げる。朱里は深月にチョップされた額に手を抑えており、周囲を見れない形だ

 

『朱里(ちゃん)!』

 

皆が顔を覗き込む姿はそれだけ心配されているという事で安心出来る。ここで重たい言葉を突き付ける様で悪いが契約は成立した事になる

 

「さて、感動の対面に水を差す様で悪いがこちらも仕事だ。近藤 拓也、一週間後に迎えが来る。その間に出来る準備しておけ」

 

伝えるタイミングは本来なら後でも良いのだが、これからの計画をより盤石にする為には必要な事なのだ

 

「分かっている。約束を違える事はしない」

 

ハジメ達は病室を後にする。これから先は彼等がゆっくりと説明するだけだ

外では天之河夫妻が待っているが、患者が目を覚ました事と時間を置いて相手方が決めるべきだと思い連れて帰る事となった

そして、約束の一週間後。近藤宅の前にリムジンが停まり、皐月と深月が降りる前に玄関前で待機していた拓也が旅行鞄一つを転がして戸に近付く。リムジンの戸は開き、拓也を中へ入れて今後の方針について記載された書類を渡す

 

「使用人育成の検証人って・・・実験動物か何かなのか?」

 

「高坂家に仕える使用人としての育成でございます。そちらの書類に記載されてある通り、守秘義務が多くありますが拓也様の人間性なら大丈夫でしょう」

 

「・・・俺が使用人になるのか。覚える事沢山ありそうで不安だ」

 

使用人と聞いた第一印象は、休暇が無いという事だ。まぁ、深月は皐月に褒められる=休息という精神構造をしているので精神的疲労は殆どない。唯一の例外としては、ハジメと一緒に政界に大打撃を与える様な実験をする事についてであったりする。尚、無くなる事は絶対にない

 

「検証人として成果が出る事によって後続の育成を目標としております。是非とも気合を入れて頑張って下さい。後続の育成が成功すればする程ローテーションの回数が増える=休養の日が増えるという事です。高坂家の使用人の募集こそしておりましたが、"帰還者"という異世界で力を付けた事による各国の圧力や暗躍に目を光らせないといけない状態ですので打ち切りました。自家で育成する方が優秀な人材が出来る可能性があるという事です」

 

「って事は育成された使用人としての顔になるのか?」

 

「ご理解が早くて助かります」

 

拓也は少し頭を抱えたが、最初よりも覚悟を決めた眼をする

 

「朱里を助けてくれたんだ。俺が出来る事なら何だってやってやるよ」

 

「成長した暁には勇者(笑)をサンドバッ・・・・・失礼。天之河さんをタコ殴りにする計画を立てましょう」

 

「グローブを造ってほしいなら任せなさい。試作品の試運転もしてみたいし」

 

「その時は喜んで参加させてもらいますよ」

 

拓也は自身が成長した暁として天之河を合法的に殴れる機会が与えられる事に心を躍らせたが、所詮目の前にニンジンをぶら下げられた馬である事を後々嫌でも理解する事となる。検証人とは試行錯誤をしながらという意味で、限界ギリギリのラインを設ける為の実験なのだ。天之河を殴る云々を考える暇もない程魔改造を施されるのは決定事項である

この育成の最中、拓也は何度も逃げ出そうとしたが叶わず――――。臨死体験をした回数は五十を超えたあたりで数えるのを止めたりしたのは開始から一年も経たなかったりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「取り敢えず強化プランとしてマンツーマン指導ですね。重力室を作って限界ギリギリまで追い込めば覚醒するでしょう」
こうして拓也の地獄の強化トレーニングが開始され、天之河の謝罪はスルーされるのであった。庭のオブジェとなっていた天之河は、坂上が責任を持って回収しました。ご安心ください
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