ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「誤字報告ありがとうなんですうううううう!」
深月「忙しい中頑張りましたね」
布団「作者のモチベは感想で出来ているんです!」
深月「おふざけもこの辺にしてパパッといっちゃいましょう」
布団「いつの間にかお気に入りが1000超えていた事に驚きを隠せない作者でした。そして読者の皆様!麻婆神父は宝石爺によってやって来た伝道者なんだ!」
深月「作者さんも麻婆を食べましょう?」
布団「そんな物を食べたら作者が失踪しちゃう」ガクブル
深月「モッキュモッキュ。では、処理も済みましたので行きましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」





メイドは進化し続ける

~皐月side~

 

残念ウサギ共を制裁し終えた私達は、亜人達とフェアベルゲンへと歩いていると、霧が少しだけ晴れた一本の道が有って其処を辿っているわ。まるで霧のトンネル・・・道の端に誘導灯のように青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められてるわね。何かの境界線の様な物なのかしら?

私とハジメが結晶に注目している事に気が付いたのかアルフレリックが解説を買って出てくれた

 

「あれは、フェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落も、この水晶で囲んでいる。まぁ、魔物の方は"比較的"という程度だが」

 

「なるほど。そりゃあ、四六時中霧の中じゃあ気も滅入るだろうしな。住んでる場所くらい霧は晴らしたいよな」

 

「ふ~ん。・・・街の中は霧に覆われていないって事ね」

 

話しをしながら歩いていると、巨大な門が佇んでいた。太い樹と樹が絡み合ってアーチを作っており、其処に木製の十メートルはある両開きの扉が鎮座していた。天然の防壁は高さが最低でも三十メートルはあり、亜人の"国"というに相応しい威容を感じれた。門番の亜人族に合図を送り、重たそうな扉がギギギッと音を立てながらゆっくりと開いて行く。この間に突き刺さる様な視線は恐らく亜人族達だろう。前例の無い人間族の訪問は何かしらの一悶着を呼ぶのだが、それを察して長老自らが出て来たのであろう

門を潜ると、そこは別世界の様だった。巨大な樹が乱立しており、その樹の中を住居としているのだろうか――――ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人規模で渡れるであろう極太の樹の枝が絡み合い空中回廊を形成し、樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路まで存在していた。ハジメと皐月とユエの三人はその美しい街並みに見蕩れて、深月は生活風景を観察していると、ゴホンッと咳払いが聞こえた。どうやら、気がつかない内に立ち止まっていたらしくアルフレリックが正気に戻してくれたようだ

 

「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

「ああ、こんな綺麗な街を見たのは始めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だな」

 

「まるでお伽噺に出て来そうな光景・・・」

 

「ん・・・綺麗」

 

「私としては、亜人族の方々がどの様に生活しているのかを拝見したいですね」

 

ありのままの称賛。そこまで褒められるとは思っていなかったのか少し驚いた様子の亜人達。・・・やはり故郷を褒められたのが嬉しいのか、皆、ふんっとそっぽを向きながらもケモミミや尻尾を勢いよくふりふりしている。ハジメ達は好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を向けられながら、アルフレリックが用意した場所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

「・・・なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か・・・」

 

四人はアルフレリックと向き合い、オルクス迷宮で知った事を話していた。その他にも、迷宮を創り上げた解放者や神代魔法、故郷に帰る方法等諸々だ。アルフレリックから教えられた事は少なかったが、重要な点と言う事は間違い無いだろう。フェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟――――それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった

ハルツィナ樹海の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、迷宮攻略者の脅威を踏まえての口伝だった事が分かった。そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ

 

「解放者ハルツィナは心優しいわね。普通そういう事は伝えないと思うのに」

 

「本当にそうだな。だが、残虐な奴等には意味無いだろうがな」

 

「その様な者は目を見ずとも、雰囲気だけで分かるものだ」

 

「・・・気配が独特」

 

「ですが、問題が幾つか有りますね。口伝の中に含まれる"気に入った者"―――――恐らくこれが鍵でしょう。お嬢様の勘はこれに反応したのではないでしょうか?」

 

「そうよねぇ・・・やっぱりそうなるよねぇ・・・・・」

 

「あー。・・・迷宮に関してなのか?」

 

「予測ですが、ハルツィナ大迷宮を攻略する際に亜人族が必要かと・・・」

 

「マジかよ」

 

「確定ではありません。ですが、可能性は大きいかと思われます」

 

迷宮攻略の鍵は亜人族の可能性が出て来た事を知ったハジメは落ち込むが、皐月の一言でそれは吹き飛ぶ

 

「こうなったら最終手段よ。深月が徹底的に亜人族の一人を鍛えたら問題が全て解決するわ!」

 

「おっ、そうだな。生け贄を一人連れて行けば良いのか」

 

「・・・深月と特訓は地獄」

 

「アルフレリックさん。特訓してみますか?」

 

「い、いいや・・・遠慮させて頂く。歳には勝てんのでな。恐らく何処かが駄目になってしまう」

 

「話を変えまして―――――後程、亜人族の方々の生活風景を見せて頂けませんか?」

 

「私と一緒に行動してくれるのであれば構わないが・・・宜しいかな?」

 

「では、その様に」

 

ハジメとアルフレリックが今後の予定を確認し合おうと話し出そうとした時、階下が騒がしくなった。階下にはシア達ハウリア達が待機しているので、何かしらのトラブルが起きたのだろう。ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、同時に立ち上がって下へ降りて行くと、様々な亜人族達が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまるシアをカムが必死に庇っており、シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。ハジメ達に気が付いた熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言した

 

「アルフレリック・・・貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど・・・返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

「何が口伝だ!そんなもの眉唾物ではないか!フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

 

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 

「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか!敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

この亜人族の長老の方々は口伝を守らないのですか?もしや、アルフレリックさんの様な厳守派が珍しいのでしょうか?この流れから察するに強硬手段に出ますね。ハジメさんの前に出ておきましょう

 

誰にも悟られずに気配を溶け込ませて移動、そして案の定深月の予感は的中しており

 

「・・・ならば、今、この場で試してやろう!」

 

いきり立った熊の亜人が突如、ハジメに向かって突進した。余りにも突然の出来事に周りも、アルフレリックも反応が出来無かった。だが、熊の拳はハジメに直撃する事は叶わなかった。深月がいきなりハジメの目の前に居たことに驚愕した亜人族だが、熊の亜人はそんなもの知った事か!といわんばかりに、豪腕を振り抜いた

 

「力尽くでどうにか出来るとでもお思いですか?」

 

深月も動く。豪腕を受け止める為に左の掌で受け止めると同時に、右手を相手の胸部手前に突き出すと――――――相手がトラックに衝突したかの様に大きく吹き飛んだのだ。これには皆が唖然とした。壁を突き破る程の勢いで吹き飛んだ熊の亜人はそのまま下へと落下、様子を見るからにそれ程の怪我では無いのは間違いないだろう

 

「因みに、私からは攻撃していませんよ?」

 

「嘘だ!」と叫びたい一同だが、感覚の優れている亜人族は深月が攻撃していない事実は知っている。だが、何故熊の亜人が吹き飛ばされたのかが理解出来無いのだ。右手は胸部に当たらない程度で止めていた事を見ていた・・・だが、何かに飛ばされたのは事実だからだ

 

「答えは――――――攻撃の衝撃を相手にお返ししたからです」

 

『は?』

 

「私はオルクス迷宮での苦戦から学んだのです。受け流せないのであれば、返せばいいと!」

 

『いや、その発想がおかしい』

 

全くもってその通りである。深月の行ったことについて説明しよう!

左手で相手の攻撃を受け止めた時に生まれた衝撃を右手に流したのだ!人間の身体に限らず、生き物の身体は殆どが水分で出来ている。衝撃を気で包みこんで水の中を移動させて放出・・・深月といえど無理なのだが、この世界に転移した時に魔力の存在に注目を置いたのだ。「気だけで駄目なら魔力も使おう!」――――――気は身体の循環に充てて、魔力は衝撃を包む膜としたのだ。結果はご覧の通り。魔力で包み込んだ衝撃を、気の循環で放出したい場所へ素早く持って行きポイしちゃった!である

 

「万〇の杖じゃねぇぞ・・・」

 

「知識無しで此処まで出来るってぇ・・・」

 

「・・・もしかして魔法も対象?」

 

「魔法も試してみましたが、無理でしたよ?」

 

「・・・なら問題な――――」

 

「ですが、取り込んで纏う事は出来ました」

 

『  』呆然

 

「あっ、何時もの事なので気にしちゃ駄目よ?」

 

『何時もの事なのか!?』

 

いつも通り、意味不明な技術をいつの間にか体得しているのである。もう、「深月だから」という事で割り切った方が色々と楽なのだ

 

「で?お前らは俺の敵か?」

 

ハジメの威圧が全体に広がり、その言葉に頷く者は誰一人居ない

深月が熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックが執り成す事で威圧は解かれ戦闘・・・では無く、蹂躙劇を回避する事が出来たのは亜人族達にとって幸いだっただろう。熊の亜人は胸部を複雑骨折と足首の脱臼だけだった。深月は、吹き飛ばす際に魔力糸を片足に巻き付けていたからだ。もしも、地面に落下となればこれだけでは済まなかっただろう

現在、当代の長老衆がハジメと向かい合って座っていた。ハジメの傍らには皐月と深月とユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ?俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが・・・亜人族(・・・)としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう?あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

「こちらの仲間を倒しておいて、第一声がそれか・・・それで友好的になれるとでも?」

 

「え?何言ってるの?先に攻撃して来たあの熊さんを深月が返り討ちにしただけ。再起不能になって無いだけマシでしょ?ハジメが処理していたら、あれ以上の怪我になっていたのよ?」

 

「き、貴様!ジンはな!ジンは、いつも国の事を思って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは!しかし!」

 

「勘違いするなよ?俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。深月は俺を護る為の正当防衛だ。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ?なら、そこの所、長老のあんたが履き違えるなよ?」

 

「深月の攻撃というよりも、自分の攻撃が自身に返ってきただけよ。それをとやかく言われるのは間違いよ。話し合いの場で攻撃するなら普通寸止めするわよ?」

 

頭ではハジメと皐月の言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、二人はお人好しではない

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

長老衆は互いを視線でやり取りした後ハジメ達に代表としてアルフレリックが伝える

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さん達と敵対はしないというのが総意だ・・・可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。・・・しかし・・・」

 

「絶対じゃない・・・か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな・・・」

 

「それで?」

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「「えぇ・・・」」

 

ハジメと皐月はいかにも面倒くさそうな表情を浮かべる

 

「殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

「そうだ。お前さん達の実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちは分かるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のない物だ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

「・・・まぁ、私は別に良いわ。但し!再起不能になっても文句は言わせ無いわよ?私達は奈落で培った経験は、"敵対者は殺す"という事よ。四六時中狙われ続ける日々を送っていたから、"つい"殺っちゃっても文句は聞か無いわ」

 

しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

「いや、ハウリア達に道案内を任せているから要らねぇよ」

 

「そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

虎人族の言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ

 

「長老様方!どうか、どうか一族だけはご寛恕を!どうか!」

 

「シア!止めなさい!皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが?どうする?運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

こちらの要求を飲めと言外に伝えてくる虎人族。他の長老衆も異論は無いようだが、ハジメ達は特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せる事も無く、何でもない様に軽く返した

 

「お前、アホだろ?」

 

「な、なんだと!」

 

「そこのハウリア達は私達の物なのよ。彼等と契約した内容は、"大樹の元まで案内する事""その間は守る"という事なの」

 

「俺達は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。こいつらを奪うって事は、結局、俺達の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが」

 

ハジメは泣き崩れているシアの頭に手を乗せた。深月はほんの少しだけ皐月の雰囲気が悪くなった事を把握した

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら・・・覚悟を決めろ」

 

「ハジメさん・・・」

 

はぁ・・・ハジメさん。女誑しを此処でも発揮しますか。シアさんの心拍が僅かに上昇、そして落ち着きを取り戻しましたか・・・惚れましたねこのウサギは。まぁ、全てはお嬢様方が決める事ですので私は口を出しませんよ?但し、"口を出さない"だけです。今の立ち位置は、ハジメさんを狙うウサギですから

 

「本気かね?」

 

「当然だ」

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「何故、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

 

「・・・約束か。それならもう果たしたと考えても良いのではないか?峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう?なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう」

 

「問題大有りだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ・・・」

 

ハジメは一度、言葉を切って三人を見て、目が合うと僅かに微笑む。それに苦笑いしながら肩を竦めたハジメはアルフレリックに向き合い告げた

 

「格好悪いし、筋が通らねえだろ?」

 

ハジメ達に引く気がないと悟り、アルフレリックが深々と溜息を吐く。他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した

 

「ならば、お前さんの奴隷という事にでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰って来なかった者、奴隷として捕まった事が確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬ様に死亡と見なして後追いを禁じているのだ。・・・既に死亡と見なしたものを処刑は出来まい」

 

「アルフレリック!それでは!」

 

「ゼル。分かっているだろう。この少年達が引かない事も、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対する事になる。その場合、どれだけの犠牲が出るか・・・長老の一人として、その様な危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん!力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが・・・」

 

色々と面倒事が多いのですね・・・仕方がありません。妥協案を出しましょう

 

「口伝に従うのであればシアさんを見逃す程度気にしなくても宜しいでしょうに・・・」

 

「何?」

 

深月は魔力操作で纏雷を使い、指先にスパークを発生させる。長老衆は、その異様に目を見開いた。そして、詠唱も魔法陣も無く魔法を発動した事に驚愕を表にする

 

「私達四人は直接魔力操作を行う事が出来ますし、固有魔法も有しております。口伝では"それがどのような者であれ敵対するな"と申された筈です。掟に従うのであれば私達も含めてですので、そこに一人加わるだけです。落とし処としては十分だと思いませんか?」

 

長老衆は、顔を見合わせヒソヒソと話し始めた。そして、結論が出たのか、代表してアルフレリックが・・・それはもう深々と溜息を吐きながら長老会議の決定を告げる

 

「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする・・・以上だ。何かあるか?」

 

「いや、何度も言うが俺達は大樹に行ければ良いんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「・・・そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが・・・」

 

「気にしないでくれ。全部譲れない事とは言え、俺達の方こそ相当無茶言ってる自覚は有るんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難い位だよ」

 

ハジメは立ち上がり、呆けているハウリア達を促してこの場をさっさと離れて行く。少しばかりボーッとしていたハウリア達も気が付いたのか、ハジメの後を追う様に小走りで付いて行った。アルフレリックを含め、他の長老達は渋く、疲れた様な表情だ

最後にその場を離れようとした深月は、長老達に一言だけ忠告する

 

「本当に手を出さないで下さいね?ハジメさんがあの様に宣言されたのであれば、"死"を覚悟して下さい。私からの忠告はこれだけです」

 

ハウリア達の後ろにから付いて行く深月の背を見て、長老達は再び大きいため息を吐いた

 

念には念を入れて忠告しましたが、反応から察するに何人かは仕掛けて来そうですね。この数日の間でハウリア達の価値観を変えなければ、全滅するでしょうね

 

背中から伝わる不快感や憎悪の視線に、ため息を吐く深月。勿論、ハジメ達三人もこの視線に気付いている

フェアベルゲンから離れ、ハジメがさり気なく盗ん・・・貰ってきたフェアドレン水晶を使って、簡易的な拠点を作り一息ついているハウリア達にハジメは

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けて貰おうと思う」

 

切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた

 

この方達は本当に現状を理解出来ていないのですね・・・

 

ハジメの牙がハウリア達に襲い掛かるまで後少し――――――

 

 

 

 




布団「アンケートの時間だ!」
深月「私の願いが叶うのですね」ヤッター♪
布団「R-18アンケートだ☆」
深月「私の勝利は確定ですね♪」
布団「ま、まぁ・・・予想以上にって言うか・・・・・続きを所望されたというか」
深月「赤バーですからね。・・・何故に人気があったのでしょうか?」
布団「ありふれR―18が物の見事に少ないからじゃない?」
深月「あぁ成る程。・・・・・と、それは置いておきましょう」
布団「そ、そうだった!作者は頑張って書いていくよ!」
深月「感想、評価宜しくお願い致します。アンケートも宜しくお願い致します!」
布団(メイドさんの予想通りとはいかないけどねぇ~)
深月「何か仰いましたか?」
布団「イイエケフィアデス」

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