ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「少し遅れてしまい申し訳ありませぬ」
深月「次回は余裕をもって行動しましょうね?」
布団「はい」
深月「では読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」






メイドは山登りをします

~皐月side~

 

「それじゃあ行くか」

 

「まぁ・・・一応ね」

 

「先生はどこまで行っても先生だからな」

 

「この世界の事実の一端を知るのは、大人のあの人だけが良いと思うわ」

 

「何時ものか?」

 

「そ。何時ものよ」

 

夕食を食べ終えたハジメと皐月は、誰も居ない時を見計らって畑山に世界の真実の少しだけを知らせる事にした。流石に全部を教えてしまえば、先ず間違いなく旅に着いてくる可能性が大きいからだ

この神は今度は地球に手を出そうとする可能性が大きい→私たちも強くならないと!南雲君の旅に着いて行って鍛えます→足手纏いが増える

と、こういう事になり得るのだ

気配遮断を使って、抜き足差し足忍び足であっという間に畑山の部屋の前まで到着。錬成で鍵を創って素早く開錠して中に入ると、鍵が開いた音にも気付かずにうんうんと表情を変える姿がそこにあった

 

「なに百面相してるんだ、先生?」

 

「ッ!?」

 

ビクッと体を震わせて体を振り向ける畑山

 

「な、南雲君?それに高坂さんも?な、なんでここに、どうやって・・・」

 

「どうやってと言われると、普通にドアからと答えるしかないな」

 

「えっ、でも鍵が・・・」

 

「俺達の天職は錬成師だぞ?地球の鍵でもあるまいし、この程度の構造の鍵くらい開けられるさ。なぁ皐月?」

 

「シンプルすぎて一呼吸する前に創れるわ」

 

「高坂さんを連れているとはいえ、こんな時間に、しかも女性の部屋にノックもなくいきなり侵入とは感心しませんよ。わざわざ鍵まで開けて・・・一体、どうしたんですか?」

 

ありもしない妄想が頭を過るが、それは無いと頭から追い出して冷静になって考えるも、二人が何故わざわざここに来る理由が分からない

 

「まぁ、そこは悪かったよ。他の連中に見られたくなかったんだ、この訪問を。先生には話しておきたい事があったんだが、さっきは、教会やら王国の奴等がいたから話せなかったんだよ。内容的に、アイツ等発狂でもして暴れそうだし」

 

「話ですか? 南雲君は、先生達のことはどうでもよかったんじゃ・・・」

 

「えぇ、どうでもいいわ。・・・ですが、これから話す内容は騎士達にも内密にして下さい。もし、口を開けば異端認定されて処刑されるのは容易に想像がつきます」

 

皐月の重々しい言葉が畑山の思考を鈍くさせる。誰にも知られてはいけない程の内容。二人は、反逆者と呼ばれた解放者達がどうして神と戦ったのかを話した

何故畑山なのかというと、彼女は生徒中心で行動を起こしているからである。この世界の為ではなく、生徒を思っているからだ。これがもしも、ご都合解釈主義の勇者(笑)の天之河にでも話してみたとしよう。間違いなく否定するからだ。これ以上の説明のしようがない

例えば、皐月が天之河に言ったとしよう。そうすれば、『南雲は死んだんだ。きっと魔族が南雲に化けて何か良からぬ事を吹き込んで洗脳したに違いない。この世界を救おうとする神様とその使者である俺達を陥れる為に魔族が俺達の絆を弄んでいるんだ!』と言い出すと深月が予想したのだ。・・・うん。間違いなく言いそうだと感じた二人は、偶然にも再会した人格者の畑山に話す事にしたのだ

 

「まぁ、そういうわけだ。俺が奈落の底で知った事はな。これを知ってどうするかは先生に任せるよ。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにしてくれ」

 

「な、南雲君は、もしかして、その"狂った神"をどうにかしようと・・・旅を?」

 

「先生は本気でこの世界を救おうと思っているのですか?違いますよね?先生の目的は地球への帰還ですよね」

 

「・・・はい。生徒が欠ける事無く地球へ帰りたいです」

 

「まぁ、私たちが大迷宮を攻略する間に死人が出なければいいですね」

 

「大迷宮・・・そこに、帰還のあてがあると踏んでいるんですか?」

 

二人は知っていた。深月がミレディの思い出話を聞きつつ、各大迷宮の神代魔法を聞き出していたから

 

「あぁ。情報通りの神代魔法が手に入れば―――――だがな」

 

「そう・・・ですか。私達を連れていくというのは出来ませんよね・・・」

 

「それは無理です。着いて来たが最後です」

 

「護る事なんて無理だからな。最低限、自分の身は自分で守れ―――――――だ」

 

沈黙が続き、これ以上話す事は無いと踵を返そうとした二人に、畑山は思い出した様に話す

 

「白崎さんと八重樫さんは諦めていませんでしたよ」

 

「ふーん」

 

「皆が貴方達は死んだと言っても、彼女達だけは諦めていませんでした。特に白崎さんは、自分の目で確認するまで、君の生存を信じると。今も、オルクス大迷宮で戦っています。天之河君達は純粋に実戦訓練として潜っている様ですが、彼女達だけは貴方達を探す事が目的のようです」

 

「・・・二人は無事か?」

 

「は、はい。手紙のやり取りではありますが、順調に実力を伸ばして、攻略を進めているようです・・・・・恐らく大丈夫だと思います」

 

「・・・ねぇ先生。出会った時の反応から先生は私達が事故で奈落へと落ちたと感じたのだけれど、今は違うわ。どうしてですか?」

 

「・・・実は、神楽さんと園部さんの独白で何があったのかを初めて知りました。あれは事故では無く、故意だったと。それと天之河君が赦して無罪放免になったとも・・・」

 

ハジメと皐月は深々と、それはもう深々とため息を吐いて頭を抱える

 

「はぁ~・・・本当にあり得ねぇ」

 

「どうしようもないわ。先生、誰一人も欠ける事無く地球へ帰還は不可能です。諦めて下さい」

 

「あいつらと再会したら間違いなく死人が出るわ」

 

「こ、高坂さんは神楽さんの主人だから止めれますよね!?」

 

「「無理」」

 

二人の即答に畑山は固まる

 

「先生は知らないと思うから先に言っておくぞ?俺達・・・ユエとシアも含むんだが、深月に一回も勝てた事ないんだわ」

 

「えっ?」

 

「四対一なのに無傷で分殺されてるのよ。多分・・・いや、確実に手綱が千切られるわ」

 

「えっ?・・・えっ!?」

 

「最初の爪熊の時ですら理性はあったからなぁ」

 

「理性が吹き飛ぶ・・・・・逆に一周回って、冷静になって対処しそうね」

 

「あり得るなぁ~。その場合だと合掌だな」

 

「せめて苦しまずに死ねたら良いわね」

 

「それ絶対に不可能だわ」

 

「やっぱり?」

 

「俺達は皐月がどうでもいいと思っているのは知っている。だがな?深月の奴は別物だ。自分の全てを捧げる程の忠誠心となると、主が止めようとしても無駄だって事だ。正直、俺自身がド頭をぶち抜きたい気持ちがある!だが、深月のそれと比べると小さいからなぁ。・・・檜山ドンマイ!来世はまともになる事を祈る!」

 

二人の頭の中で、檜山の運命は"死"。どの様に深月に処刑されるかを色々と想像しているが思い浮かばないのだ。異様ともいえるその二人の姿を見て畑山は心が痛んだ

 

「お二人は・・・檜山君が死ぬのをどうとも思わないのですか?」

 

畑山の率直な思いだった

 

「ん?いや・・・自業自得だとしか言えない」

 

「そもそも、あの四人には予め釘を刺しておいたわ。ハジメに何かしたら殺すって」

 

「で、でも!人殺しは良くないです!」

 

「「そう言われても・・・」」

 

畑山の声が徐々に大きくなる

 

「愛子、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「一応顔を見せて下さい。貴女の手前で言うのも心痛みますが、あのメイドの言から気分を暗くされていますので」

 

騎士の声が扉の奥から聞こえて返事を返すが、それでも畑山の事を心配しているか顔を見せるように促す

 

「そんじゃあ俺達はここまでだな」

 

「先生、おやすみなさい」

 

二人は畑山に一言残して窓を開けてそそくさと退散していった。畑山は騎士に一度顔を見せてから部屋に戻り、開かれた窓から吹き込む夜風が入り込む。ハジメ達からもたらされた多大な情報に悩み、なかなか眠れない夜を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の輝きが薄れた夜明け。ハジメ達五人は旅支度を終えて北門へと向かう。今回の依頼は早さが命のものだ。魔力駆動二輪で飛ばしておよそ二~三時間で着くだろう。今日の天気は快晴で、捜索するにはベストコンディション

五人が北門へ到着すると、門の傍に複数の気配――――――畑山と生徒六人の姿だった

 

「・・・何となく想像つくけど一応聞こう・・・何してんの?」

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね?人数は多いほうがいいです」

 

「却下よ。一緒に行って私達に何のメリットがあるの?」

 

「その様子から見るに、先生達の移動は馬だろ?単純に足の速さが違う。先生達に合わせてチンタラ進んでなんていられないんだ」

 

ハジメと皐月は、「こいつら乗馬出来るの?」と真っ先に疑問が思い浮かんだが、至極どうでもいいのでスルーする事にした。そんな二人の様子にカチンと来たのか、園部が強気で食って掛かる

 

「ちょっと、そんな言い方ないでしょ?南雲が私達の事をよく思ってないからって、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ」

 

ハジメは「はぁ・・・」とため息を吐いて、宝物庫から魔力駆動二輪を二台取り出す。突然、何もない所から大型のバイクが出現し、ギョッとなる畑山達

 

「理解したか?お前等の事は昨日も言ったが心底どうでもいい。だから、八つ当たりをする理由もない。そのままの意味で、移動速度が違うと言っているんだ」

 

マジマジと魔力駆動二輪を見ている畑山達の中の一人、バイク好きの相川が若干興奮したようにハジメに尋ねる

 

「こ、これも昨日の銃みたいに南雲が作ったのか?」

 

「まぁな。それじゃあ俺等は行くから、そこどいてくれ」

 

しかし、畑山はそれでもハジメに食い下がる。理由は色々とあるが、一つは深月をどうにかして止める為の説得と、二つ目は現在失踪中の清水という生徒の安否だ

 

「南雲君、高坂さん、先生は先生として、どうしても二人からもっと詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし、逃げれば追いかけます。二人にとって、それは面倒なことではないですか?移動時間とか捜索の合間の時間で構いませんから、時間を貰えませんか? そうすれば、二人の言う通り、この町でお別れできますよ・・・一先ずは」

 

「・・・本当に先生って教師なのね」

 

因みに、皐月は畑山に敬語で話す事は基本的にしない。する時は、何かしらの大事な事を伝えたりする時だけにしたのだ

ハジメは尚も食い下がる畑山の視線から逃れる様に空を見上げると、徐々に明るくなってきていた。これ以上の門答は時間の無駄だと判断して、諦めて畑山に向き直る

 

「わかったよ。同行を許そう。といっても話せることなんて殆どないけどな・・・」

 

「構いません。ちゃんと二人の口から聞いておきたいだけですから」

 

「はぁ、全く、先生はブレないな。何処でも何があっても先生か」

 

「当然です!」

 

ハジメが折れたことに喜色を浮かべ、むんっ!と胸を張る畑山。どうやら交渉が上手くいったようだと、生徒達もホッとした様子だ

 

「・・・ハジメ、連れて行くの?」

 

「ああ、この人は、どこまでも"教師"なんでな。生徒の事に関しては妥協しねぇだろ。放置しておく方が、後で絶対面倒になる」

 

「ほぇ~、生徒さん想いのいい先生なのですねぇ~」

 

ハジメが折れた事に驚くユエとシア

 

「でも、このバイク二台じゃ乗れても六人でしょ?どうするの?」

 

園部がもっともな事実を口にする。しかし、ハジメは慌てる様子無く魔力駆動二輪一台を収納して魔力駆動四輪を取り出す

 

「それじゃあ、さっさと行くぞ。深月は二輪で移動してくれ。魔物が出たら俺が撃つよりも早く処理できるだろ?」

 

「かしこまりました。お嬢様は車内でお願いします」

 

「乗れない奴は荷台な」

 

呆然とする畑山達を傍目にして、そそくさと運転席に移動するハジメ。助手席にはユエとシア、後部座席に皐月と畑山達女性陣で、男子は大人しく荷台へと座り出発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前方に山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を、ハマーに似た魔力駆動四輪と深月が乗る魔力駆動二輪が爆走する。ハジメの隣に座るユエは気分が良く、時々調子に乗ってハジメにちょっかいを掛けようとするシアを制裁したり、お話をしたりとしている。皐月に関しては、女性陣同士でハジメの関係性について根掘り葉掘り聞かれたりしている

 

「どうして私がハーレムを容認しているかを聞きたいの?」

 

「そうよ!南雲がハーレムが良いって言ったからそれを尊重したのかどうかよ!」

 

「それよりもどこまで進んだのかよ!やっぱりキスは済ませた感じ?」

 

「そ、そうですよ!あのユエさんが側室って言っていましたが、どういう事ですか!?」

 

ハジメのハーレムについて物凄く気になる男子達も聞き耳を立てる

 

「はぁ。・・・何故って、決まってるでしょ。私一人だと駄目だと思ったからよ」

 

「えぇ~どうゆう事~?」

 

「何があったのよ」

 

「ハジメとやった(意味深)って事よ」

 

「高坂さんってオープンなんですね」

 

「それにしても・・・ゴクッ。体が保たないねぇ~」

 

「あわわわわわわ!?」

 

女子は色めき立ち、畑山は生々しい告白に顔を真っ赤にさせる

 

「生々しすぎんだろっ!」

 

「南雲の息子は化け物か!?」

 

「あそこか!あそこが強くないとハーレムは無理なのか!!」

 

男子は南雲に嫉妬の視線をぶつけるが、当の本人は知らんぷりして運転に集中する

 

「それにしても・・・話を聞いていると神楽さんの投擲が凄まじいんだけど」

 

「百発百中って話?投擲士の優花にはマネ出来ないの?」

 

「だって・・・あれ見て出来ると思う?」

 

園部が視線を外へ向けると、魔力駆動二輪に乗ったままナイフを投擲し魔物を一撃で仕留めている光景だった

 

「・・・ごめん」

 

「深月と比較しない方が良いわよ。私達、未だに深月に勝てた事無いんだから」

 

『ん?今なんて・・・?』

 

事前に知っていた畑山はともかく、残りの面子は初めて知り呆然としていた。本日何度目の呆然かはお察しである。そしてハジメの追加情報が投下される

 

「正直言うぞ。俺達に戦闘訓練をつけているのは深月だ。はっきり言って勝てん。・・・メイドって何だっけ」

 

「優秀なのは知っていたけど・・・はぁ・・・戦闘訓練が嫌になるわ・・・・・」

 

「・・・深月は理不尽の権化」

 

「もうお説教は嫌ですぅ・・・」

 

四人は遠い目をしてそれぞれの感想を漏らして、更なる事実を漏らす

 

「もう・・・四人でもキツイ。・・・この倍の人数は欲しい」

 

「例え増えたとしても、直ぐに順応して対処しそう」

 

そこで園部は気付いた。いや、気付いてしまった

 

「え・・・ちょっと待ちなさいよ。その言い方だと一対一じゃなくて四対一って事なの?」

 

「園部。だから俺達は遠い目をしてんだろ」

 

「いやいやいや!南雲達は銃を持ってるんだろ!?それでも勝てないのか!?」

 

「「全部叩き切られる」」

 

『えぇ・・・』

 

「な、なら魔法は!?強力な魔法なら大丈夫だろ!?」

 

「・・・全部当たらない。・・・当たったとしても利用される」

 

『えぇ・・・』

 

「力技なんてもっての外よ。受け流されるが関の山よ」

 

もう何も言えない。沈黙が車内を支配する中、園部は皐月が手に持っていた包みからパンを取り出した所を見た。見てしまった。飯テロの様に取り出されたそれを見れば、違いが一目瞭然。園部達が王国で食べたパンは柔らかい部類に入るが、彼等からすれば硬いパンだ。だが、皐月が包みから取り出して、ハジメ達に手渡している時に見えてしまったのだ。パンを受け取った時に弾力のあるそれを

 

「ちょっと待って高坂さん、そのパンどうやって作ったの!?」

 

「あぁ、これは深月が作ったのよ」

 

「神楽さんが・・・?」

 

園部以外の者達は、皐月がハジメ達に手渡していたパンを注視していなかったので「何事?」と頭に?を浮かべている。家が喫茶店を営んでいる園部だからこそ気が付いたのだった

 

「そうですよ~。深月さんの作ったパンは柔らかいのですう~」

 

「・・・深月の作ったパンは世界一」

 

「といっても、深月が作ったパンを食べたのはこれで二回目だがな」

 

「イースト菌が無いのに良く作れたと思うわ」

 

「いやいやいや!イースト菌じゃなくても作れるからね!?多分、天然酵母のパンよね。・・・でも、種を作るのには数日掛かるし・・・どうやって?

 

園部が一人の世界に入り、ブツブツと独り言を呟いていると

 

「・・・深月が言うには、酵母や種とか諸々は技能で時間短縮しているらしいわ」

 

「料理人泣かせか!全世界の手間暇かけている料理人に謝れ!!」

 

「そ、園部さん。落ち着きましょう!?」

 

その後もウガーと色々と唸っていたが、落ち着きを取り戻して考える事を止めて皐月からパンを一つだけ恵んでもらい事なきを得た

 

「美味しい・・・本当に美味しいよぉ・・・」

 

園部の素直な反応からクラスメイト達は一口ずつ分け食べて、「うめぇ・・・うめぇよぉ・・・」「柔らかいパン美味しいよぉ・・・」「南雲達はこんなに美味しいご飯を毎日食べているのかよ」といって涙を流しながらモソモソとパンをじっくりと噛みしめながら食べたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、食って偉大よね・・・」

 

「奈落で深月が居なかったらと思うと絶望しかないな」

 

「・・・心が壊れているかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍事もあったがハジメ達は、麓に四輪を止て、しばらく見事な色彩を見せる自然の芸術に見蕩れた。女性陣の誰かが「ほぅ」と溜息を吐く。ゆっくりと鑑賞したい気持ちはあるが、その気持ちを抑えて四輪を宝物庫にしまい込んで八機の鳥型の模型を取り出した。六機を皐月に手渡して、二人は模型を空に飛ばすと山の方へと飛んで行った

 

「あの、あれは・・・」

 

「無人偵察機よ。現代風に言うならドローンが良いわね」

 

「処理能力は俺よりも皐月の方が良いから多く操れるんだよ」

 

「今回は集中したいから頼むわよ深月」

 

「では、失礼致します」

 

深月は、皐月をお姫様抱っこをして準備完了。ハジメ達は、冒険者達も通ったであろう山道を進む。魔物の目撃情報があった山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りをドローンを先行させて重点的に捜索する。ハジメは念の為に手前側を、皐月は奥側という感じで手分けをして探しながらハイペースで山道を進んだ

約一時間程で六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる。そしてもう一つは・・・・

 

「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか・・・けほっ、はぁはぁ」

 

「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか・・・愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」

 

「うぇっぷ、もう休んでいいのか?はぁはぁ、いいよな?休むぞ?」

 

「・・・ひゅぅーひゅぅー」

 

「ゲホゲホ、南雲達は化け物か・・・」

 

畑山達の休憩の為だ。彼らをこの世界の一般人と比較すると、普通であればこの程度では息切れはしない。だが、ハジメ達の進行速度が予想以上に早かった為に、気がつけば体力を消耗しきってフラフラになっていたのである

四つん這いで息を整えている彼等を放置して、周辺状況を確認をするハジメと皐月。ユエとシアは、近くに流れている小川で軽く休憩を取っている。素足になってパチャパチャと遊んでいる。各自が川で水分補給していると

 

「これは・・・鉄の臭いがしますね。恐らく、この上流に何かしらの手掛かりが有ると思われます」

 

「流石ね。川に沿って広く飛ばしてみるわ」

 

迷う事無く、上流へと飛ばす皐月。ハジメも近場の川に何か落ちていないかを確認しに行く。少しして、皐月が反応した

 

「これは・・・砕けた盾に鞄かしら?しかも、真新しいわね」

 

「当たりだな」

 

「急ぐわよ!」

 

皐月と深月は先行して、ハジメは休憩している者達を立ち上がらせて後を追った。ハジメが皐月の元へと到着すると、遺留品と思われるロケットペンダントを手に持っていた

 

「遺留品で間違いないが、肝心の死体が見付からないって事は・・・生きている可能性は少なからずあるって事か」

 

「魔物との戦闘跡からして上流か下流に沿って移動しか考えられないわね」

 

「体力や精神面から予想すると、下流の探索が宜しいかと」

 

ハジメ達はドローンを上流へと飛ばして、下流へと降りて行く。すると、大きな滝を発見した瞬間に深月が反応した

 

「この滝壺の奥に一つの気配があります」

 

「一つか・・・だが、何にしても生き残りに間違いないな」

 

滝横の崖を急いで降りて、ユエに一言掛ける

 

「ユエ、頼む」

 

「・・・ん。"波城" "風壁"」

 

滝と滝壺の水が、紅海におけるモーセの伝説のように真っ二つに割れ始め、更に、飛び散る水滴は風の壁によって完璧に払われた。ユエの魔力を無駄に消費させる訳にはいかないので、呆然としている畑山達を促して中へ入り奥へ続く道を進んで行くと、横倒しになっている男を発見した

寝ているのか、ハジメ達が近づいても気付く様子がない。さっさと確認を取る為、ハジメは男の額にデコピンをした

 

バチコンッ!!

 

「ぐわっ!!」

 

あまりの痛さにのたうち回り、涙目になる男性。ハジメは、そんな事を気にせずに近づいて尋ねる

 

「お前が、ウィル・クデタか?」

 

「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに・・・」

 

「質問に答えろ。答え以外の言葉を話す度に威力を二割増で上げていくからな」

 

「えっ、えっ!?」

 

「お前は、ウィル・クデタか?」

 

「えっと、うわっ、はい!そうです!私がウィル・クデタです!はい!」

 

どうやら、ハジメ達が探している張本人で間違いないそうだ

 

「そうか。俺はハジメだ。南雲ハジメ。フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。(俺の都合上)生きていてよかった」

 

「イルワさんが!?そうですか。あの人が・・・また借りができてしまったようだ・・・あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

寝惚けも覚めたのか、ハキハキと答えるウィルに何があったのかを要約して聞き出す

彼等は五日前にハジメ達と同じ様に山道に入って、中腹辺りでブルタールというオークの様な魔物と遭遇して戦闘。倒しても倒しても増え続けるブルタールの群れ。包囲網を突破する際に二人の冒険者が犠牲になり、森を抜けた先に黒い竜が居たとの事。開幕早々のドラゴンブレスで一人が消されて、ウィルは川へと吹っ飛ばされた。残った二人の冒険者は、挟撃される形で亡くなった。一人残されたウィルは、流されるままこの滝まで下り、この滝壺の奥へと身を隠したのだという

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで・・・それを、ぐす・・・よろごんでる・・・わたじはっ!」

 

誰も何も言えなかった。顔をぐしゃぐしゃにして、自分を責めるウィルにどう声をかければいいのか見当がつかなかった。生徒達は悲痛そうな表情でウィルを見つめ、畑山はウィルの背中を優しくさする。ユエは何時もの無表情、シアは困ったような表情だ。だが、ここで意外な―――――ハジメが動いた

 

「生きたいと願うことの何が悪い?生き残ったことを喜んで何が悪い?その願いも感情も当然にして自然にして必然だ。お前は人間として、極めて正しい」

 

「だ、だが・・・私は・・・」

 

「それでも、死んだ奴らの事が気になるなら・・・生き続けろ。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けろ。そうすりゃ、いつかは・・・今日、生き残った意味があったって、そう思える日が来るだろう」

 

「・・・生き続ける」

 

「誰しもが生きたいと思うのは当たり前の事なのよ。死んだら最後――――――生きて欲しいと願っている人達も傷つくのよ」

 

「そう・・・ですよね・・・」

 

ハジメは、ウィルの自らの生を卑下した言葉が、まるで「お前が生き残ったのは間違いだ」と言われているような気がして、つい熱くなってしまった。ハジメの心情に気付いた皐月はウィルの生存本能を正当だと言って、陰ながらハジメのフォローもする

少しばかり暗い雰囲気が漂うが、ずっと静観する訳にもいけないので早々に下山する事にした。ユエが再び魔法で滝壺から出ると、一行を熱烈に歓迎するものが居た

 

「グゥルルルル」

 

漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で見つめる竜だった

 

 

 

 

 

 

 




布団「ありふれの作品が増えてきて嬉しいです」
深月「何故です?」
布団「他の作者さん達が頑張っているから、自分も頑張ろうと思えるんだよ」
深月「成程。・・・私の様にメイド作品が増えろと言いたいのですか?」
布団「(*'▽')」
深月「その表情だけで何を思っているかは理解出来ました」
布団「いやいやいや!新しいジャンルが増えているから嬉しいな~っとね?(;^ω^)」
深月「そうですか」
布団「そうなのです!それと、誤字報告有難うございますー」
深月「感想、評価等、お気軽にお願いいたします」
布団「次はいよいよ黒竜戦だ!」
深月「ドラゴンスレイヤーですね♪」
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