ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「投稿だよ!」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」
布団「あっという間に前書きが!?」








メイドは主と共に竜を叩きます

~深月side~

 

目の前に映るその竜の体長は七メートル程。翼をはためかせる度に強風が渦巻く。黒竜はウィルの姿を発見したのか、ギロリとその鋭い視線を向けて口内に魔力が集束し始めた

 

「ッ!退避しろ!」

 

ハジメが全員に向けて叫ぶが、畑山含むクラスメイト達は突然の事態に体が硬直して動けず、ウィルに至っては恐怖に縛られて視線すら逸らせていなかった

 

「チッィ!!」

 

ハジメは皐月とユエとシアに念話で指示を出しつつ縮地で畑山達と黒竜の間に割り込んで、宝物庫から二メートル程の柩型の大盾を取り出して地面に杭を打ち付けて固定する。直後、竜からレーザーの如き黒色のブレスが一直線に放たれた。徐々に後ろへとずり下がるハジメが、これ以上は拙いと感じると同時に皐月が放ったドンナーの弾丸が直撃して大きく仰け反らせた

 

「お前ら邪魔だからウィルを連れて奥に隠れてろ!ユエはこいつらを守ってくれ!」

 

「ん!"波城"」

 

高密度の水の壁を生み出して防ぎ、保険として氷の壁を追加する

 

「・・・死にたくないなら、私の後ろから動かないで」

 

ウィルは依頼の為に全力で守るが、生徒達に関してはどうでも良かったが、ハジメや皐月が畑山を気にかけている人物でもあるから一応、死なせないように声を掛けておく。もしも、この状態から動いて死んだ場合は自己責任という事という事をつけ足して釘を刺す。ウィルや畑山や生徒達は、ユエの傍にいるのが一番安全だと判断して身を寄せている

 

「いっけ~ですぅ~!」

 

身体強化で強化した跳躍で黒竜の背後から奇襲を掛けたシア。ドリュッケンを振りかぶって打ち下ろすが、その場で旋回した尻尾に直撃して弾かれてしまった

 

「ほらほら!こっちを無視しないでよね!」

 

こっそりとシュラーゲンに魔力を充填していた皐月に気付くが、迎撃のブレスを放つよりも早くに撃たれた。遅れながらもブレスを放出して弾道を逸らして牙の数本だけの犠牲に留めた

 

「皐月を見るのもいいが、俺を忘れてもらっちゃ困る――――――ぜっ!」

 

ハジメが自身の懐まで近づいた事に気付いたが、ブレスで硬直した体を動かす事は叶わずに豪脚を叩き込んで黒竜の体がくの字に折れる

 

「グルァアアア!!」

 

黒竜はハジメに噛みつこうとしたが、言い知れぬ悪寒が脳裏を過り首を引っ込めると同時に鱗が数枚切り裂かれた

 

「勘が良いですね」

 

黒竜は、音も気配も無く至近距離まで近づいた深月の一閃を運良く回避した

 

「狙い撃つわ!」

 

ズガンッ!

 

二発目の溜めを終えた皐月のシュラーゲンが再び火を噴き、黒竜の片翼を吹き飛ばした。空を飛ぶことが出来なくなり、悲鳴を上げながら錐揉みして地に落ちた。ハジメは黒竜に近づきながら、左腕がキィイイイイイ!!!と甲高い音を発する。皐月がシュラーゲンで黒竜を落とす前から溜を作っていたのでチャージも万端のそれを、地に落ちた事で低くなった頭部に向けて放った。大質量の岩石すらも粉砕するそれを受けた黒竜は、口から血が噴き出て頭が跳ね上がるものの、絶命には至っていない

 

「ちっ!まだ死なねぇか」

 

「私が行きます」

 

後ろから深月の声が聞こえたハジメは横に跳んで進路を開けると、深月が弾丸の様なスピードで黒竜の懐に飛び込んで攻撃した。発勁から始まり、肘打ち、裏拳、鉄山靠、止めのグルメ漫画の連続打撃。懐でクルクルと回りながら次々と勢いをつける攻撃は強烈の一言に尽きる。特に、最後の打撃は、黒竜の背から衝撃が突き抜けたかと錯覚させる程の威力だった

 

「クゥワァアア!!」

 

ハジメのドンナーと剛腕が頭部を、皐月のシュラーゲンは攻撃を邪魔しようとする尻尾を、シアは背中を、深月は鱗を削ぎ落とす

 

「すげぇ・・・」

 

ハジメ達の戦闘を安全圏から眺めていた玉井淳史が思わずと言った感じで呟く。他の生徒や畑山やウィルも同意する様にコクコクと頷き、戦闘の様子を唯々ジッと見ていた

 

「では、そろそろフィナーレと参りましょう」

 

深月の言葉を察した三人は攻撃を止めて深月の後ろへと移動した。直後、深月が両腕を引き絞ると、黒竜が動かなくなった

毎度お馴染みの魔力糸である。黒竜の体全体をグルグル巻きにして、周囲の木々を杭替わりとして固定させているのだ。動けなくなった黒竜を見て、ハジメはある事をふと思い出した

 

「そういやこの世界では"竜の尻を蹴り飛ばす"ってあったな」

 

宝物庫からパイルバンカーの杭を取り出して移動して、ある部分へとロックオンした。全員が 全員が、ハジメのしようとしていることを察し、頬を引き攣らせた。皐月達三人は「あぁ成程」と呟いて、深月に関しては「汚物を浴びないで下さいね?」とどこ吹く風状態だ

そして遂に、ハジメのパイルバンカーが黒竜の"ピッー"にズブリと音を立てて勢いよく突き刺さった

 

"アッーーーーーなのじゃああああーーーーー!!!"

 

杭を打ち付けて、殴ってぶち抜こうとしたハジメもこれはビックリ。拳を握り込んでいたが、驚愕して思わず握った拳を解いてしまった

 

"お尻がぁ~、妾のお尻がぁ~。ぬ、抜いてたもぉ~、お尻のそれ抜いてたもぉ~"

 

普通の魔物は人語を喋らない。だが、この竜は明らかに喋っているし、意味も理解している。可能性は二つ。この黒竜が、五つ目の山脈地帯よりも向こう側の完全に未知の魔物である可能性。そしてもう一つは

 

「お前・・・まさか、竜人族なのか?」

 

"む?いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ?凄いんじゃぞ?だからの、いい加減お尻のそれ抜いて欲しいんじゃが・・・そろそろ魔力が切れそうなのじゃ。この状態で元に戻ったら・・・大変な事になるのじゃ・・・妾のお尻が"

 

「それで?その竜人族が何故こんな場所に居るのよ」

 

「・・・普通は居ないはず」

 

ハジメと皐月は呆れているが、ユエは自分と同じ絶滅したはずの種族の生き残りとなれば、興味を惹かれるのだろう。瞳に好奇の光が宿っている

 

"いや、そんなことよりお尻のそれを・・・魔力残量がもうほとんど・・・ってアッ、止めるのじゃ!ツンツンはダメじゃ!刺激がっ!刺激がっ~!"

 

皐月とユエの質問よりも自分の要望を伝える黒竜に、ハジメが「皐月とユエが質問してんだろうが、あぁ?」とチンピラのような態度で黒竜のお尻から生えている杭を拳でガンガンと叩く

 

「は、ハジメさん!?それ以上はいけません!」

 

深月の言を聞くが、それでもハジメは叩くのを止めない

 

「滅んだはずの竜人族が何故こんなところで、一介の冒険者なんぞ襲っていたのか・・・俺も気になるな。本来なら、このまま尻からぶち抜いてやるところを、話を聞く間くらいは猶予してやるんだ。さぁ、きりきり吐け」

 

ハジメは、杭をグリグリしながら少し猶予して話を促す

 

「ほ、本当に駄目ですよハジメさん!これ以上は危険です!!」

 

"あっ、くっ、ぐりぐりはらめぇ~なのじゃ~。は、話すから!"

 

黒竜から語られる話はこうだ

異世界から来た人間達について調べる事だった。もしも、里に危害を及ぼす存在ならどうするべきか―――――話し合いの結果、調査する事が決定したらしい。山脈を超えて人化してからの情報収集を行おうとしたが、体調を万全に期する為にも休憩を挟む事にしたので、黒竜状態で睡眠していたという事だ。すると、睡眠状態に入った黒竜の前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れて眠る黒竜に洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった

普通ならそこで起きる筈なのだが、ここで竜人族の悪癖が出たのだ。例の諺の元にもなったように、竜化して睡眠状態に入った竜人族は、まず起きない。それこそ尻を蹴り飛ばされでもしない限りだ。竜人族は精神力においても強靭なタフネスを誇るので、そう簡単に操られたりはしないのだが、何故、ああも完璧に操られたのか。それは・・・

 

"恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった・・・"

 

「・・・それってつまり、魔法をかけられても気付かないぐらい爆睡していたって事?」

 

黒竜は明後日の方向を向き、何事もなかったように話を続けた。何故丸一日かけたと知っているのかというと、洗脳が完了した後も意識自体はあるし記憶も残るところ、本人が「丸一日もかかるなんて・・・」と愚痴を零していたのを聞いていたからだ

その後は、ローブの男に従って魔物の洗脳のお手伝い。そして、ある日、洗脳をしたブルタールの魔物を移動させていた際に山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇したのだ。目撃者は消せとの命令を受けていた為に追いかけていたのだ。で、気がつけばハジメ達にフルボッコにされており、ハジメの頭部への攻撃で意識を失い、尻に名状し難い衝撃と刺激が走って一気に意識が覚醒したのである

 

「・・・ふざけるな」

 

説明をし終えた黒竜に向けて、激情を押し殺した様な震える声―――――ウィルが発した声だった

 

「・・・操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを!殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

"・・・"

 

「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう!大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

 

"・・・今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない"

 

言い募ろうとするウィルに、ユエが口を挟む

 

「・・・きっと、嘘じゃない」

 

「っ、一体何の根拠があってそんな事を・・・」

 

「・・・竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は"己の誇りにかけて"と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに・・・嘘つきの目がどういうものか私はよく知っている」

 

"ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは・・・いや、昔と言ったかの?"

 

「・・・ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

 

"何と、吸血鬼族の・・・しかも三百年とは・・・なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は・・・"

 

ユエから明かされる自分の種族に畑山や生徒やウィルは驚いていた

 

「ユエ・・・それが私の名前。大切な人達に貰った大切な名前。そう呼んで欲しい」

 

ユエの竜人族に向ける言葉の端々に敬意が含まれている。ウィルの罵倒を止めたのも、その辺りの心情が絡んでいるのかもしれない

だが、それでも親切にしてくれた先輩冒険者達の無念を思い言葉を零してしまう

 

「・・・それでも、殺した事に変わりないじゃないですか・・・どうしようもなかったってわかってはいますけど・・・それでもっ!ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって・・・彼らの無念はどうすれば・・・」

 

頭では黒竜の言葉が嘘でないと分かっている。しかし、だからと言って責めずにはいられないし、心が納得しないのだ

 

「そういえば・・・あれがあったわよね?」

 

「ん?あぁ、あれか。ウィル、これはゲイルってやつの持ち物か?」

 

そう言って、ウィルに向けてロケットペンダントを投げ渡すハジメ。ウィルはそれを受け取ると、マジマジと見つめ嬉しそうに相好を崩す

 

「これ、僕のロケットじゃないですか!失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます!」

 

「あれ?それって貴方の?」

 

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

 

「マ、ママ?」

 

予想の遥か斜め上の答えに頬が引き攣るハジメと皐月。聞くところによると、「せっかくのママの写真なのですから若い頃の一番写りのいいものがいいじゃないですか」と、まるで自然の摂理を説くが如く素で答えられた。女性陣の殆どはドン引きし、その場の全員が「ああ、マザコンか」と物凄く微妙な表情をした

母親の写真を取り戻したせいか、随分と落ち着いた様子のウィル。だが、それでも恨み辛みが消えたわけではない。ウィルは、今度は冷静に、黒竜を殺すべきだと主張した

 

"操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。じゃが、それには今しばらく猶予をくれまいか。せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ・・・勝手は重々承知しておる。だが、どうかこの場は見逃してくれんか"

 

黒竜の魔物の大群の言葉を聞いて驚愕をあらわにする。自然と全員の視線がハジメに集まる。このメンバーの中では、自然とリーダーとして見られているようだ。そして、そのハジメの判断はというと

 

「はぁっ・・・分かったよ。本当は殺す予定だったが、ユエに感謝するんだな」

 

「本音は、竜人族と対立したら面倒だからよ」

 

ユエの頭を撫でるハジメと皐月の間にホワホワな空気を作り出される

 

"いい空気を作り出すのは構わんのじゃが・・・取り敢えずお尻の杭だけでも抜いてくれんかの?このままでは妾、どっちにしろ死んでしまうのじゃ"

 

「ん?どういうことだ?」

 

「ハジメさん。説明にもあった様に彼らは"竜人"族です。つまり、魔力が無くなれば人の形となりますので・・・あの巨大な杭を抜かなければ死んでしまいます」

 

"そのメイドの言う通りなのじゃ。想像してみるのじゃ。女の尻にその杭が刺さっている光景を・・・妾が生きていられると思うかの?"

 

その場の全員が、黒竜のいう光景を想像してしまい「うわ~」と表情を引き攣らせた。特に女性陣はお尻を押さえて青ざめている

 

"もう一分も保たずに魔力が尽きるのじゃ。新しい世界が開けたのは悪くないのじゃが、流石にそんな方法で死ぬのは許して欲しいのじゃ。後生じゃから抜いてたもぉ"

 

「そんじゃあ抜くぞ」

 

ハジメはで黒竜の尻に刺さっている杭に手をかけて力を込めて引き抜いていく

 

"はぁあん!ゆ、ゆっくり頼むのじゃ。まだ慣れておらっあふぅうん。やっ、激しいのじゃ!こんな、ああんっ!きちゃうう、何かきちゃうのじゃ~"

 

「これは・・・最早手遅れですね」

 

「深月どういう事?」

 

「・・・新しい扉を開いた変態が生まれ落ちたのです」

 

「え"!?それってつま―――――――」

 

皐月が理解すると同時に、ズボッ!!という音が聞こえ、黒竜の叫びがこだまする

 

"あひぃいーーー!!す、すごいのじゃ・・・優しくってお願いしたのに、容赦のかけらもなかったのじゃ・・・こんなの初めて・・・"

 

直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆う。徐々に小さくなっていき、黒き魔力が晴れたその場には、両足を揃えて崩れ落ち、片手で体を支えながら、もう片手でお尻を押さえて、うっとりと頬を染める黒髪金眼の美女がいた

 

「ハァハァ、うむぅ、助かったのじゃ・・・まだお尻に違和感があるが・・・それより全身あちこち痛いのじゃ・・・ハァハァ・・・痛みというものがここまで甘美なものとは・・・」

 

危ない表情で危ない発言をしている黒竜は、気を取り直して座り直し背筋をまっすぐに伸ばすと凛とした雰囲気で自己紹介を始めた。しかし、若干、ハァハァしているので色々台無しだが・・・

 

「面倒をかけた。本当に、申し訳ない。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

 

更に詳しく語られる内容に畑山達は驚愕した

黒いローブの男は魔人族だと思っていたのだが、ティオを配下にして浮かれていたのか、仕切りに「これで自分は勇者より上だ」等と口にしていたとの事だ。黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。ここまでヒントが出れば、流石に分かるだろう

すると、ハジメが山の向こうを見て一言呟く

 

「おぉ、これはまた・・・」

 

ティオの言葉を聞いたと同時に、ドローンでローブの男を探していたのだ。そこで、とある場所に集合する魔物の大群を発見したのだ

 

「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ?桁が一つ追加されるレベルだ」

 

「それ本当?この近くだったら面倒ね」

 

「この距離にこの進行速度だと・・・半日か一日で町に到着するな」

 

ハジメの報告に全員が目を見開いた

 

「は、早く町に知らせないと!避難させて、王都から救援を呼んで・・・それから、それから・・・」

 

事態の深刻さに、畑山が混乱しながらべきことを言葉に出して整理しようとする。万越えの魔物相手・・・戦力にならない畑山に、トラウマを引き摺っている生徒に、新人冒険者のウィルに、魔力が枯渇しているティオ。とてもではないが対処出来ない。最善策は逃げて王都に応援を要請するぐらいなものだ。皆が動揺している中、ふとウィルが呟くように尋ねた

 

「あの、ハジメ殿達なら何とか出来るのでは・・・」

 

全員が、ハジメ達にもしかしたらという期待の色に染めて向ける。しかし、それらの視線を鬱陶しそうに手で振り払う素振りを見せて、投げやり気味に返答する

 

「そんな目で見るなよ。俺達の仕事は、ウィルをフューレンまで連れて行く事なんだ。保護対象連れて戦争なんてしてられるか。いいからお前等も、さっさと町に戻って報告しとけって」

 

ハジメのやる気なさげな態度に反感を覚えたような表情をする生徒達やウィル。そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた

 

「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

 

「ん?いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」

 

「南雲君達は残れませんか?せめても、ローブの男性が清水君がどうかを確認したいです」

 

「却下よ。先生は死にたいの?いくら私達が強くても、護りながら戦うなんて無理よ」

 

「か、神楽さん!神楽さんなら出来ますよね!?お願いします!確認だけでも」

 

「却下です。事態は変化するもの――――――魔物が進行速度を上げてお嬢様達に危険が及ぶ可能性もございますので諦めて下さい」

 

畑山はハジメ達の言葉にまた俯いてしまう。それならば、一人で残って黒いローブの男が現在の行方不明の清水幸利なのかどうかを確かめたいと言い出した

 

「ねぇ先生?どうして魔物の大群が町に向かっているか理解してるかしら」

 

「え、えぇっと・・・分かりません」

 

「・・・戦争に一番必要な物って何か理解してる?勿論、人以外でよ?」

 

この場に居る全員に尋ねる様に皐月が質問する

 

「お金じゃないの?」

 

「武器だろ?」

 

「資源でしょ」

 

「医薬品じゃない?」

 

生徒達はこう口々にするが、すべて違う。この世界に居るウィルは分かると思っていたが、貴族様なので分からない模様

 

「・・・食料」

 

「そうよ。食料はどこの世界でも重要なのよ。先生の技能は食料生産系なのよ?魔人族が勇者なんかよりも、真っ先に狙うのよ。そして、この場には居ない一人の人間・・・闇魔法の適性を持った清水だったかしら?」

 

「はい・・・清水君が行方不明・・・です」

 

「そこのティオが言っていた事から踏まえると、彼は魔人族に寝返ったか、思考誘導されているわね」

 

「そ、そんな!?」

 

「大方、先生を殺せば魔人族の勇者として迎え入れよう――――――なんて、ベタな言葉に乗ったと思うわ」

 

それでも畑山は諦めずに説得をしようとするがいい加減、この場に留まって戻る戻らないという話をするのも面倒になったハジメは、愛子に冷めた眼差しを向ける

 

「残りたいなら勝手にしろ。俺達はウィルを連れて町に戻るから」

 

そう言いって、ウィルの肩口を掴んで下山し始めた。それに慌てて異議を唱えるものの却下する

 

「さっきも言ったが、俺達の仕事はウィルの保護だ。保護対象連れて、大群と戦争なんかやってられない。仮に殺るとしても、こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない。真っ平御免被るよ。それに、仮に大群と戦う、あるいは黒ローブの正体を確かめるって事をするとして、じゃあ誰が町に報告するんだ? 万一、俺達が全滅した場合、町は大群の不意打ちを食らうことになるんだぞ? ちなみに、魔力駆動二輪は俺達じゃないと動かせない構造だから、俺達に戦わせて他の奴等が先に戻るとか無理だからな?」

 

「何故この場所に貴方達が居るのかを理解しなさいよ。私達に無理を言って着いて来たのよ?だったらおとなしく従いなさいよ。決定権はこちらにあって、貴方達には無いの。これ以上ごちゃごちゃ駄々をこねるなら置いていくわよ?」

 

理路整然と自分達の要求が、如何に無意味で無謀かを突きつけられて何も言えなくなる

 

「まぁ、ご主じ・・・コホンッ、彼等の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何も出来ん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろう。妾も一日あれば、だいぶ回復する筈じゃしの」

 

押し黙った一同へ、後押しするようにティオが言葉を投げかける。若干変な呼び方をしそうにしていたが、気にしないでおこう。畑山も、冷静さを取り戻して、それが最善だと清水への心配は一時的に押さえ込んで、まずは町への知らせと、今、傍にいる生徒達の安全の確保を優先することにした

ティオが魔力枯渇で動けないので、深月の魔力糸でグルグル巻きにして引き摺って下山する事に。畑山達は猛抗議するが、ティオが恍惚の表情を浮かべていたのでそのままとなった

一行は急ぎウルの町へと戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「では改めてまして、誤字報告有難うございます」
深月「前書きで感謝出来ませんでしたね」
布団「メイドさんがいけないn」
深月「何か仰いましたか?」
布団「・・・ナンデモナインダヨー」
深月「そうですか」
布団「・・・メイドさんの人でなし!」
深月「お待ちなさい!」
布団「はやさg」
深月「速さが足りませんよ!」
布団「ヒェッ」
深月「次回、メイドの料理が炸裂です!」
布団「それは嘘よk―――――――ウワアアアアアアア!」
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