ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「ヒャッハアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!」
深月「うるさいですよ」
布団「テンション上がって来たあああああーーーー!」
深月「・・・」
布団「WRYYYYYYYYYY!」
深月「当身!」ゴスッ
布団「)'▽')グブルアアアアアア!」
深月「さて、ウルでのお話がこれで終わります。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」








メイドでも驚きますよ?

~深月side~

 

・・・あの黒い四目狼は異質でしたね。先読に近い技能があったとはいえ、未来位置に置かれた攻撃を避ける身のこなしはオルクス迷宮でも中々居なかった筈です。オルクスとライセンでは見なかった事から推察するに、別の大迷宮の魔物の候補があります。ですが、この近場には存在しない事からそれも除外・・・もし、魔人族側に魔物を操る者が存在するのであれば、借り受けた可能性が大きい。お嬢様の推測通り、魔人族と繋がっているのは明白ですね

何処の世界でも捕虜となった人物をみすみすと逃す事はありえません。隙を見て排除は確実―――――畑山先生には申し訳御座いませんが、囮役として使わせて頂きましょう。その方が、お嬢様に対して危害が少ないのです

 

深月はいつもの様に気配を溶け込ませて周囲を警戒しながら索敵を行う。音も無く、気配も無く移動する深月は誰からも見つける事が出来無い。唯一発見出来る者が居るとすれば、同程度の技術を持った者にしか不可能だろう

ハジメ達を中心として、グルッと大きく円を描く様に移動しながら警戒する。無論、この時でも皐月の様子をジッと見ているのはいつもの事だ

ローブ男は敗残兵の如くズタボロとなって町外れに連れて行かれており、その場には愛子と生徒達の他、護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人か、それにウィルとハジメ達だけだ。二輪で引き摺られる様に連行された為、頭からすっぽりと被っていたローブは外れていた。ローブ男の正体は清水だった。畑山は戦場から直接連行して来られたという事実に、悲しそうに表情を歪めつつ、清水の目を覚まそうと揺り動かしている

 

本当に甘い。それでは人質として下さいと言っている様なものですよ?周りの騎士達も止めているのにも関わらず拒否して、拘束すらもしていない。確か・・・あれの名前は清水だったでしょうか?事前の調書では、中学ではイジメによって登校拒否。そこから二次創作物に興味を持ち、家族間の関係に溝が生まれて隠れオタクとして生活でしたね

異世界へ転移、魔法、一般人よりも高いステータス・・・今まで遠慮しがちな性格が歪む要因の一つでしょう。しかし、ど腐れ野郎と比較して、クラスメイトの死が身近にある事を実感した事から更に歪んだのでしょうね。まぁ、私達は死んでいませんが

 

深月は遠目で彼らの口の動きを観察して話の内容を見る

 

『清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません・・・先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんな事をしたのか・・・どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?』

 

『なぜ?そんな事も分んないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって・・・勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに・・・気付きもしないで、モブ扱いしやがって・・・ホント、馬鹿ばっかりだ・・・だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが・・・』

 

『てめぇ・・・自分の立場分かってんのかよ!危うく、町がめちゃくちゃになるところだったんだぞ!』

 

『そうよ!馬鹿なのはアンタの方でしょ!』

 

『愛ちゃん先生がどんだけ心配してたと思ってるのよ!』

 

畑山は清水を罵倒する生徒達を抑えて、再び清水に話し掛ける

 

『そう、沢山不満があったのですね・・・でも、清水君。みんなを見返そうというのなら、なおさら、先生にはわかりません。どうして、町を襲おうとしたのですか?もし、あのまま町が襲われて・・・多くの人々が亡くなっていたら・・・多くの魔物を従えるだけならともかく、それでは君の"価値"を示せません』

 

『・・・示せるさ・・・魔人族になら』

 

『なっ!?』

 

これで魔人族との繋がりが有ると自白した様なものですね。気付かれない様に迅速に動きましょう

 

深月は彼らの様子を見つつ、索敵を続ける

 

『魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな・・・その魔人族は、俺との話を望んだ。そして、分かってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと・・・魔人族側と契約したんだよ』

 

『契約・・・ですか?それは、どのような?』

 

『・・・畑山先生・・・あんたを殺す事だよ』

 

『・・・え?』

 

清水が企んでいた衝撃の事実に周囲は一瞬だけポカンとしたが、直ぐに激しい怒りを瞳に宿して清水を睨みつける。清水は、畑山やハジメ達以外の者達から強烈な怒りが宿った眼光に射抜かれて一瞬身を竦めるものの、半ばやけくそになっているのか視線を振り切る様に話を続ける

 

『何だよ、その間抜面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか?ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ・・・"豊穣の女神"・・・あんたを町の住人ごと殺せば、俺は、魔人族側の"勇者"として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし・・・だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに!何だよ!何なんだよっ!何で、六万の軍勢が負けるんだよ!何で異世界にあんな兵器があるんだよっ!あのメイドも何なんだよ!お前は、お前達は一体何なんだよっ!』

 

狂気で濁りきった眼ですね。ですが、そろそろ動く筈です・・・気配感知に反応が無い可能性が高い。ならば、別の手段で探し出すだけです

 

目を閉じて、五感を極限にまで高め始める深月。風が吹いて魔物達の血の匂いが充満する中、明らかに違う匂いが一つだけ感じられた。その場所に目を凝らして注視すると、今正に動こうとしていた人影を発見した。視線に感付かれない様に一瞬だけ見て、再び畑山達の方へと見やると、清水の手を握っている畑山の姿を見た

 

『清水君・・・君の気持ちはよく分かりました。"特別"でありたい。そう思う君の気持ちは間違ってなどいません。人として自然な望みです。そして、君ならきっと"特別"になれます。だって、方法は間違えたけれど、これだけの事が実際にできるのですから・・・でも、魔人族側には行ってはいけません。君の話してくれたその魔人族の方は、そんな君の思いを利用したのです。そんな人に、先生は、大事な生徒を預けるつもりは一切ありません・・・清水君。もう一度やり直しましょう?みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?』

 

肩を震わせ項垂れる清水の頭を優しい表情で撫でようと身を乗り出した畑山の手を逆に握り返しグッと引き寄せ、畑山の首に腕を回してキツく締め上げた。後ろから羽交い絞めにし、何処に隠していたのか十センチ程の針を取り出すと、それを畑山の首筋に突きつけた

 

『動くなぁ!ぶっ刺すぞぉ!』

 

では、参ります!

 

畑山達の方へ手を突き出している影に向かって急接近する。深月の踏み込みで砕けた大地の轟音に驚いて、全員がつい顔を向ける。影の人物も同じく音の方へと顔を向ける事で、姿形が露になる

 

魔人族―――――ですが、もう遅いです

 

魔人族が逃走用に待機させていた魔物は、深月が踏み込む前に投擲した夫婦剣によって頭部と胸部に突き刺さって崩れ落ちる。自身の逃走用の魔物が死んだ事に一瞬だけ目を逸らした魔人族。深月は更に地面を踏みしめて加速し、音の壁を突破して魔人族の傍を通り抜けた。深月が通り抜けて少しして、両腕両足が横にズレて魔人族はダルマとなった

 

「ぐ、ギ、ギャアアアアアアアアアア!?」

 

気配遮断が解けた魔人族の悲鳴が響き渡った

 

「なっ!?」

 

「魔人族!?」

 

「えっ!あれが魔人族なの!?」

 

周囲が驚愕する中、清水の表情は絶望に覆われた。自分を助けに来てくれたであろう魔人族がダルマにされて、逃走用の魔物も殺されたからだ。深月は、ダルマになった魔人族を魔力糸で拘束してハジメ達の元へと引き摺る

 

「さて、ちょっかいを掛ける者も居なくなりました。こちらはこちらで、このダルマから情報を引き出す仕事が御座いますので、続きをご自由になさって下さい」

 

「お、お前等俺に手を出すな!この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ!刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ!分かったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!それと、おい、お前等、厨二野郎共、お前等だ!後ろじゃねぇよ!お前等だっつってんだろっ!馬鹿にしやがって、クソが!これ以上ふざけた態度とる気なら、マジで殺すからなっ!わかったら、銃を寄越せ!それと他の兵器もだ!」

 

清水の無茶振り要求に嫌そうな顔をするハジメと皐月

 

「いや、お前、殺されたくなかったらって・・・どうやって殺すんだよ?」

 

「お迎えの魔人族は今現在進行中で情報を吐かせているのよ?」

 

ちらりと深月の方を見ると、肉を削ぎ、歯を抜き、片目をくり抜かれ、内臓を素手でかき回されている光景だった。ハジメ達を除くこの場に居る殆ど者達が顔を真っ青にさせ、生々しい光景を見たクラスメイト達は嘔吐したりしていた。清水は体が震えているが、畑山の拘束を解かずにそのままの状態を維持している

 

「ふむ、まだ情報を吐きませんか」

 

「ガボッ!ゴブッ!ゴボッ!わ"、我らの"不利にな"る"情報は絶対に"話さ"ん"」

 

「そうですか。ならば、今以上の苦痛を与えましょう」

 

深月が次なる一手を打とうとした時、シアの未来視が働いた

 

「ッ!?駄目です!絶対に避けて下さい!」

 

シアは畑山の元へ一気に接近して強引に引き剥がすと、光の槍が二つ襲い掛かった。一つは、清水ごと畑山を殺す為、もう一つは深月と魔人族を殺す攻撃だった。畑山はシアが強引に引き剥がした事で光の槍の難は逃れたが、清水が手に持っていた針に刺されてしまった。深月の方は魔力糸で軌道を逸らそうとしたが、光の槍が触れた瞬間、魔力糸が難なく切断されてしまった。このままでは直撃してしまうと判断した深月は、そのまま回避する事で事なきを得たが、魔人族は頭部を槍に貫かれて絶命した

 

「「「シア!」」」

 

「わ、私は何処も怪我をしていません!ですが、先生さんが針に刺されてしまいました!」

 

ハジメと皐月とユエの三人がシアの元へ駆け付けて心配をするが、本人は大丈夫な模様。しかし、畑山が毒針に刺されたのだ。見れば、畑山の表情は真っ青になっており、手足が痙攣し始めている。ハジメは躊躇う事無く、宝物庫から試験管型の容器を取り出した。その頃になってようやくハジメ達の元に駆けつけた周囲の者達が焦燥にかられた表情で口々に喚き出す。特に生徒達と騎士達は動揺が激しく、ハジメに対して口々に安否を聞いたり、様子を見せろと退かせようとしたり、効きもしない治癒魔法を掛けようとしたり・・・

 

「黙りなさい」

 

皐月の威圧を込めた一言に、一歩後退って押し黙る。何故ハジメが躊躇い無く神水を使おうとしたのかには訳があった

本来、あの光の槍はシアに直撃している筈だった。だったら何故無事なのかというと、深月の魔力糸で体を引っ張られたおかげなのだ。深月は遠い位置から魔力糸で逸らそうとしていたが、何の抵抗も無く魔力糸が切れた事から掠るだけでも危険と感じ取り、高速思考で無理矢理シアの体に巻き付ける様に魔力糸を操作して引いたからである。そのせいもあって、魔人族を殺されたのだ。無理矢理での行使で痛む頭を我慢して、敵に悟らせない様に警戒する深月。そのおかげか、追撃は来ず、姿を現す事も無かった

ハジメは神水を片手に持って、皐月に抱えられている畑山に近付いて神水を流し込んでいく。しかし、畑山の体は全体が痙攣を始めており思った通りに体が動かないようで、自分では上手く飲み込めずに気管に入ったのかむせて吐き出してしまった

ハジメは、愛子が自力で神水を飲み込む事は無理だと判断し、残りの神水を自分の口に含むと、何の躊躇いも無く畑山に口付けして直接流し込んだ

 

「ッ!?」

 

畑山は目を大きく見開き、ハジメの周囲で男女の悲鳴と怒声が上がった。だが、全てを無視して流し込む。すると、畑山は喉がコクコクと動き、神水が体内に流れ込む。先程まで体を襲っていた痛みや、生命が流れ出していくような倦怠感と寒気が吹き飛び、まるで体が熱を持ったかの様な快感を覚え、体を震わせる

口移しは終わり、ハジメが畑山から口を離す。皐月は畑山の体調を様子を見極めているが、畑山は未だボーとしたまま焦点の合わない瞳でハジメを見つめている

 

「先生」

 

「・・・」

 

「先生?」

 

「・・・」

 

「おい!先生!」

 

「ふぇ!?」

 

皐月の呼び掛けに答えない畑山を見て業を煮やしたハジメが、軽く頬を叩きながら強めに呼び掛けると何とも可愛らしい声を上げて正気を取り戻した

 

「体に異変は?違和感はどう?」

 

「へ? あ、えっと、その、あの、だだ、だ、大丈夫ですよ。違和感はありません、むしろ気持ちいいくらいで・・・って、い、今のは違います! 決して、その、あ、ああれが気持ち良かったということではなく、薬の効果がry」

 

「そうか。ならいい」

 

問題が一段落したハジメは、恐らく全員が忘れているであろう哀れな存在を思い出させる事にした。ハジメは、一番近くに居る騎士に尋ねた

 

「・・・あんた、清水はまだ生きているか?」

 

ハジメのその言葉に全員が「あっ」と思い出し、清水の方へと振り返る。畑山だけが「えっ?えっ?」と現状を理解しておらず、キョロキョロとして自分がシアに庇われた時の状況を思い出し、顔色を変えて慌てた様子で清水がいた場所に駆け寄る

 

「清水君!ああ、こんな・・・ひどい」

 

清水の胸にぽっかりと穴が開いており、出血が激しく大きな血溜まりが出来ていた

 

「し、死にだくない・・・だ、だずけ・・・こんなはずじゃ・・・ウソだ・・・ありえない・・・」

 

清水の片手を握り、周囲に助けを求めても誰もが目を逸らす。もう助からないし、助けたいとも思っていない表情だった。畑山は縋った。ハジメが持っていたあの薬に

 

「南雲君!さっきの薬を!今ならまだ!お願いします!」

 

ハジメは溜息を吐き、二人の元へ近づきながら畑山がどんな返答がなされるか分かっていながら質問する

 

「助けたいのか、先生?自分を殺そうとした相手だぞ?いくら何でも"先生"の域を超えていると思うけどな」

 

「確かに、そうかもしれません。いえ、きっとそうなのでしょう。でも、私がそういう先生でありたいのです。何があっても生徒の味方、そう誓って先生になったのです。だから、南雲君・・・」

 

「・・・仕方がねぇな。―――――――――おい清水。聞こえているな?俺にはお前を救う手立てがある」

 

「!」

 

「だが、その前に聞いておきたい」

 

「・・・」

 

「・・・お前は・・・敵か?」

 

清水はその質問に一瞬の躊躇いもなく首を振り、卑屈な笑みを浮かべて命乞いを始めた

 

「て、敵じゃない・・・お、俺、どうかしてた・・・もう、しない・・・何でもする・・・助けてくれたら、あ、あんたの為に軍隊だって・・・作って・・・女だって洗脳して・・・ち、誓うよ・・・あんたに忠誠を誓う・・・何でもするから・・・助けて・・・」

 

「・・・そうか」

 

ハジメは、清水の目に憎しみと怒りと嫉妬と欲望とその他の様々な負の感情が入り混じっていたのを確信した。もう誰の言葉も心に響かないし、改心する事も無い。皐月に視線を合わせて、最後に一瞬だけ畑山に合わせた。畑山はハジメが何をするつもりなのか察した様で、血相を変えてハジメを止めようと飛び出した

 

「ダメェ!」

 

ドパンッ! ドパンッ!

 

「ッ!?」

 

清水の心臓に一発、頭部に一発。・・・正確に撃ち込まれた弾丸に、体を一瞬跳ねさせ、確実で覆しようのない死を与えた。ハジメと皐月の放った弾丸―――――銃身からは白煙を上げており、二人は物言わぬ死体を見ている。静寂が辺りを支配し、誰もが動けない中、畑山からポツリと言葉がこぼれ落ちた

 

「・・・どうして?」

 

呆然と、清水の亡骸を見つめながら、そんな疑問の声を出す。畑山の瞳には、怒りや悲しみ、疑惑に逃避、あらゆる感情がごちゃ混ぜとなっている

 

「敵だからな」

 

「そんな!清水君は・・・」

 

「改心したって?悪いけど、それを信じられるほど俺はお人好しではないし、何より自分の眼が曇っているとも思わない」

 

「ハジメの言う通りよ。改心?そんな事が出来る人間の目は、後悔と懺悔に満ちた深い輝きを持っているわ」

 

「対して、清水はどす黒く濁った目だったよ。復讐、憎悪、憤怒、嫉妬を含んだそれだ」

 

「だからって殺す事なんて!王宮で預かってもらって、一緒に日本に帰れば、もしかしたら・・・可能性はいくらだって!」

 

「・・・どんな理由を並べても、先生が納得しないことは分かっている。俺達は、先生の大事な生徒を殺したんだ。俺達を、どうしたいのかは先生が決めればいい」

 

「・・・そんなこと」

 

「先生の言葉はとても綺麗で良いと思うわ。だけど、この世界での命の価値なんて薄っぺらなの。敵対した者には容赦しないという考えは変えられそうにもないわ」

 

「躊躇いと甘さが死を招く。いくら俺達でもそんな余裕は無い」

 

「二人共・・・」

 

「これからも俺達は、同じ事をする。必要だと思ったその時は・・・いくらでも、何度でも引き金を引くよ。それが間違っていると思うなら・・・先生も自分の思った通りにすればいい・・・ただ、覚えておいてくれ。例え先生でも、クラスメイトでも・・・敵対するなら、俺達は引き金を引けるんだって事を・・・」

 

「例えクラスメイトといえど、今は赤の他人に他ならないわ。私達と敵対をしない限りは手を出す事もないからそのつもりでね?」

 

唇を噛み締め、俯く畑山。"自分の話を聞いて、なお決断したことなら否定しない"そう言ったのは紛れもなく自分自身で、言葉が続かない。ハジメ達は、そんな畑山を見て、ここでのやるべき事は終わったと踵を返す。二人に静かに寄り添うユエとシアと四人の後ろに続く深月。ハジメと皐月の圧力を伴った視線に射抜かれて、ウィルも後ろ髪を引かれる様子で黙って付いて行く。町の重鎮達や騎士達が、ハジメ達の持つアーティファクトやその強さを目的に引き止めようとする。だが、二人の圧力以上の代物が一帯を覆う

 

「お二人は敵対しなければ攻撃はしないと仰いましたが、私は違いますよ?主の障害となる者を取り除くのもメイドの勤めですので――――――お忘れなき様、御願い致します」

 

主の皐月が止めない事から、これ以上踏み込むならば自殺と同義と感じた彼等は、先の戦いでの化け物ぶりを思い出し、伸ばした手も、発しかけた言葉も引っ込める事になった

 

「南雲君!高坂さん!・・・先生は・・・先生は・・・」

 

「・・・先生の理想は既に幻想だ。ただ、世界が変わっても俺達の先生であろうとしてくれている事は嬉しく思う・・・出来れば、折れないでくれ」

 

「深月も言ったけど、先生の考えは甘いだけ。・・・でも、その考えを持って行動する事には感心するわ。だから、折れずに頑張ってとしか言えないわ」

 

周囲の輪を抜けて魔力駆動二輪(※深月専用)と魔力駆動四輪を取り出し全員を乗せて走り去った。ハジメ達の後には、何とも言えない微妙な空気と生き残った事を喜ぶ町の喧騒だけが残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ウィルを連れて、ウルからフューレンへと魔力駆動四輪と魔力駆動二輪を走らせるハジメ達。運転は当然ハジメで、隣は皐月が座り、その隣にユエが座っている。シアは魔力駆動二輪に乗っている深月の後ろに乗っている。後部座席に乗っているウィルは、少々身を乗り出しながら気遣わし気にハジメ達に話し掛ける

 

「あのぉ~、本当にあのままでよかったのですか?話すべきことがあったのでは・・・特に愛子殿には・・・」

 

「ん~?別に、あれでいいんだよ。あれ以上、あそこにいても面倒な事にしかならないだろうし・・・先生も今は俺達がいない方がいい決断が出来るだろうしな」

 

「・・・それは、そうかもしれませんが・・・」

 

「お前・・・ホント人がいいというか何というか・・・他人の事で心配し過ぎだろ?」

 

「それが美徳でもあるわね。貴族特有の踏ん反りが無いのは市民から好印象を受けるわ」

 

「・・・いい人」

 

「うむ、いい奴じゃな」

 

男からの言葉なら嬉しいのだが、女性からの"いい人"というのは男としては何とも微妙な評価だ

 

「わ、私の事はいいのです・・・私は、きちんと理由を説明すべきだったのではと、そう言いたいだけで・・・」

 

「・・・理由だと?」

 

「ええ。なぜ、愛子殿とわだかまりを残すかもしれないのに、清水という少年を殺したのか・・・その理由です」

 

「・・・言っただろ。敵だからって・・・」

 

「それは、彼を"助けない"理由にはなっても"殺す"理由にはなりませんよね? だって、彼はあの時、既に致命傷を負っていて、放って置いても数分の命だったのですから・・・わざわざ殺したのには理由があるのですよね?」

 

「・・・貴方ってよく見ているのね」

 

ウィルの指摘はもっともで、図星である。クラスメイトであり、愛子の助けを求める声が響く中で、問答無用に清水を撃ち殺した二人の所業はインパクトが強く、二人が殺す必要は無かったという事実は上手く隠れてしまっている

 

「貴方の言う通りだけど、これは私達なりの気遣いよ。もしも、あのまま見殺しをしていたら先生は今以上に自分を責めるのは目に見えているわ。そして、心が壊れると感じたの」

 

「心が壊れて、完全に折れてしまえばそこで終わりだ。教会の良い様に使い潰される可能性が大きいからな」

 

皐月の予想通りに心が壊れてしまったとしよう。"自分のせい"でと追い詰めて、体を酷使するだろう。それ幸いと見て、教会は今以上に無茶振りをして仕事をさせるだろう。もしも拒否をすれば生徒を殺すと脅せば従うだろう。そうなってしまえばもうお終いだ

 

「人形が壊れてしまえば補充すれば良いと判断して、再度勇者召喚なんて事をするでしょうね」

 

「そういう事でしたか・・・」

 

「・・・二人共ツンデレ?」

 

「なるほどのぉ~、ご主人様達は意外に可愛らしい所があるのじゃな」

 

「・・・でも、愛子は気がつくと思う」

 

「分かっているわよ。それでも折れずにいてくれる事を祈っているのよ」

 

「・・・大丈夫。愛子は強い人。ハジメや皐月が望まない結果には、きっとならない」

 

「・・・」

 

(私と深月さんを放置して雰囲気になるなんてズルいですぅ~)

 

「こ、これは、何とも・・・口の中が何だか甘く感じますね・・・」

 

「むぅ~妾は、罵ってもらう方が好みなのだが・・・ああいうのも悪くないのぉ・・・」

 

三人の甘い雰囲気に当てられて居心地悪そうなウィル達。特に、シアは頬を膨らませ唇を尖らせいじけている

 

「それにしても、今回ばかりはシアに助けられたわ」

 

「・・・いい仕事をした」

 

皐月とユエはシアを見てからハジメに視線を向ける。ハジメも今回ばかりは二人が何を言いたいのか理解した

 

(・・・シア。その、何だ、今回は助かった。遅くなったが・・・ありがとな)

 

(・・・・・誰ですか?)

 

(怒るぞ?)

 

(そう思われても仕方がないでしょ?自業自得よ)

 

ハジメの額に青筋が浮かぶが、皐月の正論過ぎる一言で何も言えなくなる

 

(・・・まぁ、そういう態度を取られても仕方ないかとは思うがな・・・これでも、今回は割りかしマジで感謝してるんだぞ?)

 

ハジメのストレートな言葉に視線を激しく彷徨わせ、頬を真っ赤に染めて、ウサミミがピコピコと動き回っている

 

(え、えっと、いえ、そんな、別に大した事ないと言いますか、そんなお礼を言われる程の事ではないといいますか、も、もう!何ですか、いきなり。何だか、物凄く照れくさいじゃないですか・・・・・えへへ)

 

ハジメは苦笑いしながら少し疑問に思った事を尋ねる

 

(シア。少し気になったんだが・・・どうしてあの時、迷わず飛び込んだんだ?先生とは、大して話してないだろ?身を挺するほど仲良くなっていたとは思えないんだが・・・)

 

(そ、それは・・・ハジメさんや皐月さんが気に掛けている人だからです。私自身も先生さんを見て、色々と教えられましたから)

 

(・・・それだけか?)

 

(?・・・はい、それだけですけど?)

 

(・・・そうか)

 

これは、皐月やユエに言われるまでもなく何かしらの形で報いるべきだろうと、ハジメは未だテレテレしているシアに話しかける

 

(シア。何かして欲しい事はあるか?)

 

(へ?して欲しい事・・・ですか?)

 

(ああ。礼というか、ご褒美と言うか・・・まぁ、そんな感じだ。もちろん出来る範囲でな?)

 

いきなりの言葉に「う~ん」と頭を悩ませるシア。皐月とユエは優しげな表情でシアを見つめている

 

(決まりました!フューレンに戻ったら一緒にお買い物に付き合ってください!勿論二人っきりですよ?)

 

(・・・あぁ、分かったよ)

 

シアのお願いを聞いて少しして了承するハジメ。その後は、車内でティオが暴走して皐月に撃たれてビクンッビクンッと体を跳ねさせて恍惚な表情でおねだりをしたり、連れて行かなければ各町々にハジメが自身に行った行為を赤裸々に吹聴して回るなどと言って強引に仲間入りを果たしたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「作者さんは意識を戻していないので後書きは私で埋めましょう」
皐月「駄目よ。私だって出たいわ!」
深月「それではお嬢様と一緒に進めましょう(やったあああああああああ!)」
皐月「あの光の槍だけど・・・防げなかったの?」
深月「魔力糸が触れただけで千切られました」
皐月「魔力糸を多用しても良いけど、気を付けて使用してね?」
深月「心得ております」
皐月「それにしても・・・いえ・・・なんでもないわ」
深月「・・・気になります」
皐月「・・・深月特製麻婆豆腐で魔物を駆逐出来ないかしら」
深月「いくら何でも酷過ぎませんか!?」
皐月「評価、感想お気軽によろしくね♪」
深月「誤字報告も有難う御座います」
皐月「次回をお楽しみに!」


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