ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「クラスメイトsideだけで終わると思っていたのかぁ?だがしかし、だーがーしーかーしー!予定外なサプライズをするのが作者の悪い癖なのです!」
深月「無計画投稿ですね・・・一日で二話ですか」
布団「流石に・・・クラスメイト側の話だけだと物足りないでしょ?」
深月「それでは、手早くいきましょう。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」









メイドは影の薄い人と再会します

~ハジメside~

 

「ヒャッハー!ですぅ!」

 

ライセン大峡谷と草原に挟まれた道を魔力駆動二輪と魔力駆動四輪が、太陽を背に疾走する

 

「・・・シアのやつご機嫌だな。世紀末な野郎みたいな雄叫び上げやがって」

 

「・・・むぅ。ちょっとやってみたいかも」

 

「駄目よユエ。シアは後で深月にお説教させるわ」

 

「パパ!ママ!ミュウもあれやりたいの!」

 

目をキラキラとさせておねだりするが、ドリフトしてみたりウイリーをしてみたりする危険運転をする行為をさせる訳にはいかない

 

「ダメに決まってるだろ」

 

「えぇ~!ミュウもあれやりたい!」

 

「ミュウ、シアお姉ちゃんを見ていなさい。とても危険だというのが分かるわ」

 

皐月がミュウにどれだけ危険か見せつける為に、シアには犠牲になってもらおうと画策したのだ

 

(ミュウの教育に悪いから―――――深月、やりなさい)

 

(かしこまりました)

 

その瞬間、魔力駆動二輪に急ブレーキが掛かり、ハンドルの上に立っていたシアが放物線を描きながら頭から地面に着地して数十メートル転がった。シアが乗っていた魔力駆動二輪は深月が魔力糸で隣接する様に固定させて走らせている

 

「ほらね?あんな事になったら怪我しちゃうから真似しちゃ駄目よ?」

 

「は~い!」

 

(・・・皐月容赦ない)

 

(ミュウが居なかったら大目に見ていたわよ。でも、今は違うでしょ?子供は私達にとって小さな事でも興味を持ってしまうのよ)

 

(・・・勉強になる)

 

シアは深月に回収され、走りながらお説教されている。恐らくホルアドに着くまでずっと続くお説教を見て、ミュウが絶対にマネしないと心に誓ったのは言うまでもない。だが、ミュウに甘いハジメと皐月なのでフォローは入れておく

 

「深月が怒っているのは心配しているからよ?シアは初めて運転するからあそこまで怒られているの。だから、運転に慣れたパパか私、もしくは深月お姉ちゃんなら大丈夫よ?」

 

「・・・本当?深月お姉ちゃん怒らない?」

 

ウルウルと涙目で尋ねるミュウの頭を優しく撫でながら「大丈夫」と落ち着かせる皐月

 

「あっふん!シアが羨ましいのじゃ!妾も激しく打ち付けられたいのじゃ!」

 

「ママ、ティオお姉ちゃんが何か言ってるよ?」

 

「あれは絶対に真似したらいけない大人の例よ。もしも真似したら・・・深月のお説教がもの凄~く長くなるわ」

 

「わかったの!ティオお姉ちゃんのマネはしないの!」

 

にっこりと笑って視線を前へ戻すミュウ。すると、お説教を終えた深月がシアを解放。危険運転しないように再度注意して、シアは黙って深月の言う通りに普通の運転に戻った

 

「これである程度ストレスが無くなったな」

 

「それじゃあ、今から深月にお願いしてみよっか♪」

 

「いいの!」

 

「さっきのシアお姉ちゃんみたいに危険な運転はしないから大丈夫よ」

 

「おねがいなの~!」

 

(深月~、ミュウを乗せて運転出来るかしら?)

 

(大丈夫ですが・・・先程のシアさんの様な危険運転はしませんよ?やったとしても、緩やかな蛇行運転までです)

 

(それで良いわ)

 

深月の了承も得た皐月。深月は四輪のすぐ隣まで近づいて並走して、助手席の扉が開かれてミュウを抱えた皐月を重力魔法と魔力糸で持ち上げて後ろに座らせる。ミュウは深月の前に魔力糸で作った椅子に座らせた

 

「あまり身を乗り出さないで下さいね?」

 

「はーいなの!」

 

深月は徐々にスピードを上げて、緩やかに右、左、と移動して景色を楽しませる様に走らせた

 

「ミュウはとても喜んでいるな」

 

「・・・うれしそうに笑ってる」

 

「いい笑顔じゃな。妾としては是非とも引きずってもらいたいがの!」

 

「変態は黙ってろ!」

 

「・・・きもい」

 

「あっふううううん!辛辣ぅ!じゃが、その対応がなんとも堪らん!!」

 

「・・・皐月・・・戻ってきてくれ」

 

「・・・私じゃ駄目?」

 

「ユエの癒しも含まれているんだが、・・・癒しよりもストレスが凄まじいんだ」

 

ユエだけの癒しでは変態のストレスを帳消しには出来ない。ハジメは、皐月に戻ってきて欲しいと切に願うが叶う事はなかったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ハジメには悪いと感じているけど、変態の傍から離れる事に成功して三人のツーリング。しばらく走らせると四ヶ月ぶりのホルアド・・・私個人の感覚だと数年も前の様に感じるわ

 

「ママだいじょうぶ?」

 

「・・・大丈夫よ。ミュウと一緒に何処を回ろうか迷っていたのよ」

 

「ミュウあそこの食べ物屋さんみたい!」

 

「あそこって食料品店よ?露店の食べ物じゃなくて?」

 

「えっとね~?深月お姉ちゃんが作ってくれた食べ物の方が美味しいの♪」

 

子供の純粋な感想。しかも、周囲に聞こえる程の透き通った声を聞いて、露店の店主は良い顔せずに睨もうとしたが、ハジメの威圧によって押し黙った

 

「素直な感想を有難う御座います」

 

「ミュウ。パン食べるか?」

 

「食べる!」

 

ハジメは宝物庫に常備しているパンが入ったバスケットを取り出して、各自に一つずつ手渡す。食べ歩きをしながら、露店で売っている小麦、果物、花、種を購入。種は、油分を大量に含む物を購入した。食べ物を売っている露店の前をパンを食べながら通ると、厳つい男がハジメ達の行く手を遮る様に立ちはだかった。ミュウが一瞬だけ「ひぅ!」と小さな悲鳴を上げ、その男を血祭りにあげようとしたハジメと皐月。だが、男の目的は皐月達では無く、ハジメ達が食べていたパンだった。ハジメ達が怒るよりも前に土下座して「そのパンを食べさせてくれ!そしてレシピを!製法を教えてくれ!!」と懇願してきたので、面倒になる前にパンを一つと製法を簡易的に書いたメモを添えて渡した

 

「製法を教えても良かったの?」

 

「大丈夫ですよ。製法を教えたとしても、味が違いますから」

 

「深月のパンを食べて、追い求める様に作るのか・・・とてつもなく遠い道のりだろうな」

 

冒険者ギルドに向かうハジメ達。後ろから「ウーーーーーマーーーーーーーイーーーーーーゾオオオオオオオオオオ!」と、叫び声が聞こえたが無視する事にした

ハジメ達が冒険者ギルドへ踏み入れると、彼等はピリピリとしていたのか一斉に視線をハジメ達に向けた。鋭い視線に、皐月に抱かれているミュウが再び「ひぅ!」と悲鳴を上げて、皐月の胸元に顔を埋める。まるで鬱憤を晴らす様な八つ当たりと、やっかみ混じりの嫌がらせを行っている事は明らかだ。が、最近めっきり過保護なパパとママになりつつあるハジメと皐月は額に青筋を浮かべていた

皐月はミュウを宥めて落ち着かせ、ハジメは威圧と魔力放射を冒険者達にぶつけた。ハジメの威圧に意識を辛うじて失っていない者も、大半がガクガクと震えながら必死に意識と体を支え、滝のような汗を流して顔を青ざめさせている。ハジメは少しだけ威圧を弱めて、ニッコリ笑いながら話し掛ける

 

「おい、今、こっちを睨んだやつ」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

「笑え」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

「聞こえなかったか?笑えと言ったんだ。にっこりとな。怖くないアピールだ。ついでに手も振れ。お前らのせいで家の子が怯えちまったんだ。トラウマになったらどうする気だ?ア゛ァ゛?責任取れや」

 

ハジメの眼光が鋭くなり、冒険者達は頬を盛大に引き攣らせながら笑って手を振る。ハジメが皐月の胸元に埋まるミュウにの耳元にそっと話しかけ、ミュウはおずおずと顔を上げるとそこには当然、必死に愛想を振りまくこわもて軍団

 

「ひっ!」

 

案の定、ミュウは怯えて皐月の胸元に再び顔を埋める。ハジメの眼光が再び鋭くなり、「どういうことだ、ゴラァ!」と冒険者達を睨みつけ、「無茶言うな!」と泣きそうな表情になって内心ツッコミを入れる冒険者達

 

「ハジメさん、無視してさっさと行きましょう。長い時間留まるのもミュウさんに悪いです」

 

「・・・それもそうだな。・・・次は無いからな?」

 

最後に、強めた威圧を冒険者達に浴びせてカウンターへと進む。ちなみに、受付嬢は可愛かった。ハジメ達と同じ年くらいの明るそうな娘だ。テンプレはここにあったらしいが、普段は魅力的であろう受付嬢の表情は緊張でめちゃくちゃ強張っていた

 

「支部長はいるか?フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが・・・本人に直接渡せと言われているんだ」

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼・・・ですか?」

 

ハジメから手渡されたステータスプレートに表示されている情報を見て目を見開いた

 

「き"金"ランク!?」

 

つい口に出てしまった個人情報に「あっ」と口を紡ぐが、既に聞こえていた為に、冒険者ギルドの中は騒がしくなった

 

「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」

 

「あ~、いや。別にいいから。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

 

「は、はい!少々お待ちください!」

 

受付嬢は奥に引っ込み、ハジメ達は呼ばれるまでしばらく待つ事にした。その間、子連れで美女・美少女ハーレムを持つ見た目少年の"金"ランク冒険者に、ギルド内の注目がこれでもかと集まる。多くの視線が集まるのに慣れておらず、怯えるミュウを総出であやすが怖いものは怖いのだろう・・・効果は全くと言って良い程無い。しかし、ここでもどうにかするのが深月クオリティー。ミュウの目の前で焼きリンゴ擬きを作り、出来立てを食べさせて落ち着かせた

 

「・・・食べ物でどうにかなるなんて納得がいかない」

 

「・・・仕方がないと割り切るしかないな。美味しいは正義だからな」

 

ミュウが美味しそうに食べる姿を見て、冒険者達は和んだ。子供の笑顔を見て自然に笑顔になった事で、彼等は怖くないよアピールをして問題は去ったのだ

すると、五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ!と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。何事だと、ハジメ達が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた

ハジメと皐月はその人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた

 

「「・・・遠藤(君)?」」

 

ハジメと皐月の呟きに気付いたのか、遠藤はキョロキョロと辺りを見渡し、それでも目当ての人物が見つからないことに苛立ったように大声を出し始めた

 

「南雲ぉ!いるのか!お前なのか!何処なんだ!南雲ぉ!生きてんなら出てきやがれぇ!南雲ハジメェー!」

 

「あ~、遠藤?ちゃんと聞こえてるから大声で人の名前を連呼するのは止めてくれ」

 

「!?南雲!どこだ!」

 

ハジメの声に反応してグリンッと顔をハジメの方に向ける遠藤。余りに必死な形相に、ハジメと皐月は思わずドン引きする

 

「くそっ!声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ!幽霊か?やっぱり化けて出てきたのか!?俺には姿が見えないってのか!?」

 

「いや、目の前にいるだろうが、ど阿呆。つか、いい加減落ち着けよ。影の薄さランキング生涯世界一位」

 

「!?また、声が!?ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ!自動ドアくらい三回に一回はちゃんと開くわ!」

 

「三回中二回は開かないって・・・透明人間か何かなのかしら?」

 

「こっ、この声は高坂さんか!?ど、どこに居るんだ!出てきてくれぇーーーー!」

 

そこまで言葉を交わしてようやく、目の前の白髪眼帯の男と女が会話している本人だと気が付いた。遠藤は、ハジメと皐月の顔をマジマジと見つめ、まさかという面持ちで声をかけた

 

「お、お前・・・お前が南雲・・・なのか?それに・・・そっちは高坂さんか・・・?」

 

「はぁ・・・ああ、そうだ。見た目こんなだが、正真正銘南雲ハジメだ」

 

「姿形はこんな事になっているけど、ちゃんと生きているわよ」

 

二人の姿をマジマジと見るが、記憶にある二人との余りの違いに呆然となっている

 

「お前等・・・生きていたのか」

 

「今、目の前にいるんだから当たり前だろ」

 

「何か、えらく変わってるんだけど・・・見た目とか雰囲気とか口調とか・・・」

 

「奈落の底から自力で這い上がってきたんだぞ?そりゃ多少変わるだろ」

 

「そ、そういうものかな?いや、でも、そうか・・・ホントに生きて・・・」

 

遠藤はクラスメイトの生存が嬉しかったのか、涙を流しながら喜んでいた

 

「っていうかお前等・・・冒険者してたのか?しかも"金"て・・・」

 

「ん~、まぁな」

 

「・・・つまり、迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな? 信じられねぇけど・・・」

 

「まぁ、そうだな」

 

「なら頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ、南雲!高坂さん!」

 

「ちょ、ちょっと待て。いきなりなんだ!?状況が全くわからないんだが?死んじまうって何だよ。天之河がいれば大抵何とかなるだろ?メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしないだろうし・・・」

 

遠藤の切羽詰まった尋常ではない様子に困惑するハジメ。皐月は冷静に考えて、ある一つの結論に思い至った

 

「もしかして・・・魔人族?」

 

「そうなんだよ!魔人族が俺達を襲って来たんだ!!メルド団長もアランさんも他の皆も!迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がす為に!俺のせいで!死んだんだ!死んだんだよぉ!」

 

「「・・・」」

 

ハジメと皐月はメルドと接点が少なかったが、錬成の特訓の折に少なからずお世話になった。奈落に落ちた日、最後の場面で"無能"のレッテルを貼られた自分達を信じてくれた数少ない人格者だ

 

「それで、他には何があったんだ?」

 

「それは・・・」

 

事の次第を話そうとする遠藤だが、静止の声が掛かった

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 

声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。恐らく彼がこのホルアドのギルド長なのだろう。全身から溢れ出る覇気がそれを物語っている。ギルド支部長と思しき男は、遠藤の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。遠藤は、かなり情緒不安定なようで、今は、ぐったりと力を失っている

 

「これは、また厄介な事になりそうだな」

 

「ほんっとうにトラブル続きね」

 

絶対に厄介事になるだろうと思いつつ、ハジメ達は後を付いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

「魔人族・・・ね。予想通りだとすれば・・・」

 

「神代魔法が目当てでしょうね。・・・恐らく、相手側にも迷宮攻略者が居ると見て間違いないわ」

 

ハジメ達の対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤が座っており、遠藤の正面にハジメが座っている。ハジメの隣には皐月とユエで、その隣にシアとティオが座っている。深月は皐月の後ろで立って待機している

魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされているのだが・・・ハジメの膝の上で幼女がモシャモシャと頬をリスのよう膨らませながらお菓子を頬張っている

 

「つぅか!何なんだよ!その子!何で、菓子食わしてんの!?状況理解してんの!?みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「ひぅ!?パパぁ!」

 

場の空気をことごとく壊すミュウに遠藤が怒声を上げて、ミュウが悲鳴を上げてハジメに抱きついた

 

「てめぇ・・・何、ミュウに八つ当たりしてんだ、ア゛ァ゛?殺すぞ?」

 

「遠藤君は死にたいのかしら?家の子供に当たり散らすなんて・・・殺して下さいと言っているのと同義よ」

 

「ひぅ!?」

 

ハジメと皐月から吹き出す人外レベルの殺気に、ミュウと同じような悲鳴を上げて浮かしていた腰を落とす遠藤。両隣から「・・・もう、すっかりパパ」とか「さっき、さり気なく"家の子"とか口走ってましたしね~」とか「果てさて、ご主人様達はエリセンで子離れ出来るのかのぉ~」と聞こえるが、全てを無視してミュウを宥める二人

 

「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まぁ、全部成り行きだけどな」

 

「手紙には、お前の"金"ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな・・・たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅・・・にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当な事をわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん・・・もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

「バカ言わないでくれ・・・魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」

 

「ふっ、魔王を雑魚扱いか? 随分な大言を吐くやつだ・・・だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「・・・勇者達の救出だな?」

 

「そ、そうだ!南雲!一緒に助けに行こう!お前がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

 

「断る」

 

「な・・・何でだよ!?俺達は仲間だろ!?」

 

「仲間?」

 

先程よりも濃密な殺気が皐月から溢れ出た。これにはハジメも驚き、ミュウは怖くなってハジメの胸元に顔を埋めた

 

「私達を奈落に落とした罪人を赦して、呑気に迷宮を攻略している貴方達の仲間扱いされるのは嫌よ。はっきり言わせてもらうけれど、私達が貴方達の事を唯の"同郷"の人間程度であって、それ以上でもそれ以下でもない。他人と何ら変わらないわ」

 

皐月の冷たい言葉に狼狽する遠藤。しかし、ハジメは一つだけ気になる事があった。それは白崎の言葉だった。異世界に来て"無能"だったハジメを最後まで心配して、今も尚諦めずに捜索を続ける彼女についてだった

 

「白崎は・・・彼女はまだ、無事だったか?」

 

狼狽する遠藤にハジメがぽつりと尋ねる。いきなりのハジメの質問にポカンと呆気にとられるが、もしかしたらハジメが協力してくれないのではと思い、慌てて白崎の話す遠藤

 

「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし・・・白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか・・・あの日、お前達が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな?こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて・・・雰囲気も少し変わったかな?ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか・・・」

 

「・・・そうか」

 

ハジメは頭をカリカリと掻いて、自分を見つめているパートナー達を見やった

 

「・・・・・」

 

「・・・ハジメのしたいように。私は、どこでも付いて行く」

 

「わ、私も!どこまでも付いて行きますよ!ハジメさん!」

 

「ふむ、妾ももちろんついて行くぞ。ご主人様」

 

「ふぇ、えっと、えっと、ミュウもなの!」

 

「皐月・・・悪いが付き合ってくれ」

 

皐月は深い溜息を吐く。本音は面倒事に首を突っ込みたくないのか、はたまた勇者(笑)と会いたくないのかは分からない。ハジメは皐月を抱き寄せて呟く

 

「白崎との義理を果たしに行く」

 

「はぁ・・・分かったわよ。・・・あの勇者(笑)とは会いたくないのだけれど、ハジメのお願いなら仕方がないわ」

 

これで全員参加が決定した。対面では、遠藤が愕然とした表情をしながら「え?何このハーレム・・・」と呟いている。遠藤の話を聞くと、既に戦った四つ目狼が出た様で、キメラ等にしても奈落の迷宮でいうなら十層以下の強さだろう。何の問題もない

 

「え、えっと、結局、一緒に行ってくれるんだよな?」

 

「ああ、ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしておきたいんだが・・・」

 

「上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

 

「そうだ。それともう一つ。帰ってくるまでミュウの為に部屋貸しといてくれ」

 

「ああ、それくらい構わねぇよ」

 

ミュウを冒険者ギルドに預けて、子守役兼護衛役にティオも置いていく事にした。離れると知ったミュウは物凄く駄々をこねたが、全員で宥めすかして出発する

 

「おら、さっさと案内しやがれ、遠藤」

 

「うわっ、ケツを蹴るなよ!っていうかお前いろいろ変わりすぎだろ!」

 

「やかましい。さくっと行って、一日・・・いや半日で終わらせるぞ。仕方ないとは言え、ミュウを置いていくんだからな。早く帰らねぇと。一緒にいるのが変態というのも心配だし」

 

「・・・お前、本当に父親やってんのな・・・美少女ハーレムまで作ってるし・・・一体、何がどうなったら、あの南雲がこんなのになるんだよ・・・」

 

迷宮深層に向かって走る一行。遠藤は仲間の無事を祈りつつ全力で走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「待ちに待った再会ですね」
布団「次回、奈落に落ちた無能達の無双!絶対に見て頂戴!」
深月「嘘予告のタイトルは不必要です。感想、評価、お気軽にどうぞ」



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