ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「投稿なんだよ~」
深月「多数の誤字報告有難う御座います」
布団「読者の皆!」
深月「ごゆるりとどうぞ」



















ゴールデンウィーク期間は色々と暇になる方も居る事でしょう。その間は頑張って短い間隔で投稿する様に頑張ります。コロナ影響で気分消沈な皆様の活力の為に作者やっるぞ~
















メイドは治癒師を酷使します

~深月side~

 

白い人の傍に到着したハジメ達。香織は急いで、倒れ伏している人を仰向けにして顔を隠しているフードを捲った

 

「!・・・これって・・・」

 

年齢は二十代の青年だったのだが、香織が驚いたのは年齢の方では無い。青年の容態・・・彼の顔は大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早く、服越しからでも分かる程高熱を発していたのだ。しかも、血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もして明らかに尋常な様子ではない

ハジメと皐月は耐性を持っているから問題は無いが、ユエ達はそうではない。ウィルス感染の可能性が否めないが、治癒の専門家が診察しているので大人しく様子を見る。深月は遠目から青年の様子を観察して、経験則から一つの可能性を思い出した。香織も"浸透看破"で青年の様子を把握して同時に発する

 

「・・・魔力暴走?摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」

 

「これは・・・体内に入った毒が原因?」

 

「香織、何が分かったんだ?」

 

「う、うん。これなんだけど・・・」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可

症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血

原因:体内の水分に異常あり

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おそらくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているみたい・・・しかも、外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない・・・このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も・・・天恵よ ここに回帰を求める "万天"」

 

香織は冷静に診断して、回復魔法を唱える。中級回復魔法の一つで、効果は状態異常の解除。石化を解いた術なのだが、効果が表れた様子が無かった

 

「・・・ほとんど効果がない・・・どうして?浄化しきれないなんて・・・それほど溶け込んでいるという事?」

 

万天では治療では無く、進行を遅れさせる程度の効果だった。青年は今も尚苦しそうにしており、苦しそうに呻き声を上げて粘膜から出血も止まらない。香織は治療法も分からないこの現状に歯噛みして応急措置を採る

 

「光の恩寵を以て宣言する ここは聖域にして我が領域 全ての魔は我が意に降れ "廻聖"」

 

光系の上級回復魔法"廻聖"。一定範囲内における人々の魔力を他者に譲渡する魔法で、仲間の魔力枯渇を防ぐ為の魔法である。また、譲渡するだけでは無く、領域内に居る者から魔力を吸収する事が出来るドレイン系としても使えるのだ。だが、少しずつ吸収する事しか出来ないので実戦向きとは言えない

純白の光が、青年を中心に広がり蛍火のような淡い光が湧き上がる光景を見て、魔法に精通するユエやティオなど年長組が思わず「ほう・・・」と感嘆の声を漏す。ミュウは、シアに抱っこされながら、「きれい・・・」とうっとりしながら香織を見つめている。ドレインで吸収された魔力は、香織の腕に装着された神結晶印の腕輪に蓄積されていく。どうやら、上級魔法による強制ドレインでの蓄積は成功

青年の呼吸も落ち着きを取り戻し、不調も徐々に回復したようだ。続いて、廻聖の行使を止めて天恵で青年の傷ついた血管を癒す

 

「取り敢えず・・・今すぐ、どうこうなることはないと思うけど、根本的な解決は何も出来てない。魔力を抜きすぎると、今度は衰弱死してしまうかもしれないから、圧迫を減らす程度にしか抜き取っていないの。このままだと、また魔力暴走の影響で内から圧迫されるか、肉体的疲労でもそのまま衰弱死する・・・可能性が高いと思う。勉強した中では、こんな症状に覚えはないの・・・ユエとティオは何か知らないかな?」

 

なんとか青年の危機は脱する事に成功した香織は、知識の深いユエとティオに病気の有無を尋ねる。二人共記憶を探る様に視線を彷徨わせるが、該当知識が無かった。結局、原因不明である事には変わりない。皐月は、深月の呟きを聞いていた為、追及する

 

「深月、可能性は多い方が良いわ。予測でも良いから深月が思った事を言いなさい」

 

ティオ、ミュウ、香織を除く四名は深月の予測を聞くのもありと―――――殆どの出来事を的中させていたので、今回も何かしらのヒントを得る事が出来る可能性があると思い至ったのだ

 

「深月の予測を聞くのも良い手だな」

 

「・・・名探偵深月」

 

「またしても深月さんのぶっ壊れが頼りです!」

 

知らない三人は「えぇ?」と、信じられないと言わんばかりの目で深月を見つめる

 

「大きな可能性としては毒です」

 

「深月さん、毒だったら私の万天で治るよ?」

 

「そう、正にそれが疑問点なのです。香織さんの石化すら解除出来る魔法でも駄目・・・恐らく長期に及ぶ毒だと私は思います」

 

「長期に及ぶ毒・・・もしかして中毒症状?」

 

「もし、深月の予測通りの中毒症状なら危険だな。アンカジ公国内での補給は不可能だと考えた方が良いだろう」

 

ハジメ達は、深月の予測を考慮しつつこの先にあるアンカジ公国について考える。深月は一人離れて、青年の体を見て清潔鑑定で状況を見る

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

清潔場所:体全体

原因:体内水分に毒素

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

おや、これはまた・・・清潔鑑定とはここまで便利なのですか。・・・ハジメさん達は見ていないので実験をしてみま―――――

 

「み~づ~き~」

 

深月の様子に一早く感付いた皐月だった。ジト目で深月を見ている皐月に気付いて、全員深月の方を向く

 

「何用でしょうか?」

 

「何用じゃないでしょ!一体何をしようとしたのか答えなさい!!」

 

「・・・人体実験といった物騒な事はカンガエテイマセンヨ?」

 

「最後!カタコトになってるだろ!説得力皆無だろ!」

 

「チッ」

 

「舌打ちしない!―――――で?何かしようとしたのであれば何か分かった筈よ。ちゃんと報告しなさい」

 

深月は皐月に従って青年を清潔鑑定して、ステータスプレートを渡す。全員で覗き見ると先程の説明文を見て、ハジメ達は深月と香織を交互に見て一言

 

『清潔の意味って何だっけ?』

 

回復師の香織よりも分かりやすく、ピンポイントで症状が書かれていたからだ。香織に至っては物凄く落ち込んでいるのはいつも通りのお約束である

 

「それで?・・・清潔出来るのか?」

 

「魔力吸収せずに異常を治せるなら・・・」

 

「・・・深月が治す?」

 

「また深月さんですか。ヤバイですね☆」

 

「瞬間清潔とは・・・一瞬で毒状態を治すという事じゃの」

 

「深月お姉ちゃんすごい!」

 

「やっぱり私・・・深月さんの下位互換なんだね」

 

「いや違うだろ」

 

「深月は傷を治す事出来ないからね?香織は香織にしか出来ない事があるでしょ?」

 

「この方には悪いですが、実験台になって頂きます」

 

ハジメ達は内心で「絶対に悪いと思っていないだろうなぁ~」と呟く。深月の清潔が行使されて、青年の様子が先程よりも良くなった事が分かった。息苦しさも無くなったのだろう。青年は瞼をゆっくりでは無く、カッと見開いてガバッと状態を起こした

 

「こ、ここは・・・私は砂漠を歩いて・・・」

 

彼は意識が混濁しているのだろう。目を覚ましてキョロキョロと周りを見て、自分の様子を観察して体調の良さに驚いているのだ。ハジメ達は青年に説明をする。香織は神の使徒、ハジメ達は金ランク冒険者である事を

すると、ハジメ達が命の恩人であると理解し、頭を下げて礼を言うと自身の事を述べる

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと・・・アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」

 

それからビィズが自国で起こっている出来事を事細かに話し出す。現在、アンカジ公国では原因不明の病気が蔓延しているとの事。四日前、高熱を出す症状の患者が二万人、意識不明者が三千人という事だ。しかも、それは初日での出来事であるのが驚きだ。日に日に多くなる患者・・・公共施設等を解放して仮設病院を設置して、医療機関の者達も全力で対処した。しかし、香織と同様で進行を遅らせる程度しか出来なかったのだ。そして、遂に医療機関関係者の中でも倒れる者達が出始め、治療が受けられなかった人々の中から死者が出てしまったのだ。発症から二日という早さの事実に絶望が立ち込めている

そんな中、一人の薬師が、ひょんな事から飲み水に"液体鑑定"を掛けた。すると、その飲み水は魔力の暴走を促す毒素が含まれている事実が発覚したのだ。その事実を受けて調査チームが最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスを調べると、案の定、オアシスが汚染されていたのだった。だが、警備は厳重なのでオアシスに毒素を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではない

そんな彼らの頭を悩ませるのはそれだけでは無かった。水の貯蓄が二日分しかない事と、既に汚染された水を飲んでしまった患者を救う手立てが無いという事だった。しかし、全くの方法が無い訳ではなく、"静因石"と呼ばれる鉱石を粉末状にして服用すれば体内の魔力を鎮める事が出来るとの事。だが、その鉱石はグリューエン大火山で少量しか採取出来ず、往復の移動に一ヵ月、迷宮に潜れる程の手練れの冒険者は病に倒れて実力のある者が居らず、安全な水のストックが圧倒的に足りない状態だったのだ

 

「それで貴方は、王国に救援を求めに行く最中だったと」

 

「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。だから、私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。その時、症状は出ていなかったが・・・感染していたのだろうな。おそらく、発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に・・・動揺していたようだ。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに・・・情けない!」

 

護衛に頼んでいた者達はサンドワームに襲われて全滅。そのことも相まって悔しくてならないのだろう。幸運だったのは、体に含まれる毒素を察知して捕食に躊躇った事だ。その結果、ハジメ達に助けられて病気を治してもらえる可能性がある人物と出会う事が出来たのだ。正に一生分の運を使い切ったと言っても過言ではないだろう

 

「・・・君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

とても深く頭を下げて必死にお願いをするビィズ。公国領主代理としては軽々しく頭を下げる事では無いと分かっているが、この降って湧いた奇跡を絶対に逃がさないという必死さが伝わる。深月とユエとティオはハジメと皐月の二人に任せるといった視線を向け、残りのシア達は、助けてあげて欲しいという意思が含まれている視線だ。もっとも、ミュウは直接的で

 

「パパー、ママー。たすけてあげないの?」

 

ミュウの目は純真だ。二人はヒーローで、どこか期待するような眼差しを受けて、ハジメは「しょうがねぇな」と苦笑い気味に肩を竦めてビィズに了承の意を伝えた。元々、グリューエン大火山を攻略する際にミュウとティオと香織は置いて行くつもりだったのだ。流石に幼い子供と、戦力として低い香織の二人を連れて行くとなれば大変である

 

「申し訳ないハジメ殿、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

 

「まぁ、香織とミュウ以外は扱えるが・・・わざわざ王都まで行く必要はない。水の確保はどうにか出来るだろうから、一先ずアンカジに向かいたいんだが?」

 

「どうにか出来る?それはどういう事だ?」

 

ハジメが色々と掻い摘んで説明するが、最初は信じられないといった表情をしていたビィズ。しかし、"神の使徒"の香織の説得もあってアンカジに引き返す事を了承した。ビィズは、滑る様に高速で走る四輪に驚きながら一縷の希望に胸の内を熱くするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンカジへと到着したハジメ達一行。フューレンを超える外壁囲まれた乳白色の都で、外壁も建築物も軒並みミルク色で、外界の赤銅色とのコントラスト。ただ、フューレンと異なる部分は不規則な形で都を囲む外壁の各所から光の柱が天へと登り、上空で合わさりドーム状の形を形成している事だ。町の中は砂が無く、あのドーム状のが結界の役割を果たしていると判断した

光り輝く巨大な門から入る。門番は初めて見る魔力駆動四輪を見て驚いていたが、現在のアンカジの影響を受けて暗い雰囲気と覇気が無かった。しかし、四輪の後部座席に次期領主が座っている事に気付いて、兵士らしい直立不動の姿勢になり覇気を取り戻した

町の光景はオアシスの名に恥じない素晴らしい物だったのだが、今は暗く陰気な雰囲気が覆い包まれていた。通りに出ている者も少なく、ほとんどの店も営業をしておらず町全体を静けさが支配していた

 

「・・・使徒様やハジメ殿達にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は、時間が無い。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせていただこう。一先ずは、父上の元へ。あの宮殿だ」

 

一行はビィズの案内の元、原因のオアシスを背に宮殿へと進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上!」

 

「ビィズ!お前、もう王国へと救援を頼んだのか!?」

 

「いいえ違います。私は砂漠を横断している最中にサンドワームに襲われましたが、ハジメ殿達に助けられました。ただ・・・護衛の者達は全員・・・」

 

「・・・そうか」

 

ビィズは国を出てからの事を領主ランズィに簡単に説明すると、報告の内容を聞いて驚愕を露にした

 

「それは本当か!彼等が病を治したと!?」

 

「あ~・・・勘違いしないで欲しいが、大本を治したのは深月と香織だ」

 

ハジメは深月と香織に視線を向けると、ランズィは更に驚いていた

 

「驚くのは良いけれど、さっさと行動に移るわよ。聞いた限りでは早く手を打たないと物凄く危険よ?」

 

刻一刻と切迫する状況。皐月に言われてランズィは、ハッと我に返る

 

「じゃあ、動くか。深月と香織はシアを連れて医療院と患者が収容されている施設へ。一応魔晶石も持って行け。俺達は、水の確保だ。領主、最低でも二百メートル四方の開けた場所はあるか?」

 

「む?うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが・・・」

 

「なら、深月と香織とシア以外は、そっちだな」

 

ハジメは、魔力の溜まった腕輪を二つ取り出して深月と香織に手渡し各自は行動に移ろうとしたが

 

「私が施設に行くのは良いのですが・・・後程オアシスを"清潔"すれば問題は無くなるのでは?」

 

『あっ』

 

ハジメ達は、よくよく考えればそうだったと思い出した表情をしていた。だが、問題はまだまだある

 

「い、いや・・・人数が多いだろ?適材適所だ!」

 

「深月ばかりに負担を掛ける訳にはいかないわ」

 

「少々確認をしたいので」

 

『またかよ・・・』

 

国が危機に陥っているランズィからすれば、深月が国民を人体実験すると聞こえていた

 

「我が国の民を実験の対象にするのであれば・・・それ相応の対処をさせてもらうぞ?」

 

「父上。深月殿の言う事を信じてみましょう」

 

殺気立つランズィだが、ここで意外な事にビィズが深月の援護に入る。ランズィは息子の言葉に異を唱えるが、ビィズは引かなかった。一向に引こうとしないビィズに、遂にランズィは折れて条件を付けた

 

「・・・・・そこまで言うのであれば良いだろう。だが、失敗すればどうなるか分かっているな?」

 

「失敗はありえません。既にビィズさん"一人"に試しています。そして、香織さんの回復魔法を参考にさせてもらっています」

 

「えっ?私何か参考になる様な事した?」

 

香織は全く気付いていない様子だが、"ある"回復魔法を行使している香織の姿を見て習得している技能を十全に扱って魔法の"魔力の流れ"を把握した。これはぶっつけ本番ではあるが、魔法の構造を理解して出来ると確信を持っているからの発言なのだ

 

「深月が出来ると言うのなら出来るわね。失敗する可能性が少しでもあるなら絶対に提案も何もしないわ」

 

「皐月の言う通りだ。ここは深月の言う通り、全員で施設に行くか」

 

こうしてランズィの案内の元、ハジメ達一行は患者達が入っている施設へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

ランズィに案内をされた施設に入ったハジメ達が見た光景は、人々が密集して苦しんでいる光景だった。予想していたよりも切迫している状況であると判断出来た。ここに来る途中に教会と思わしき場所で棺が沢山あったので、恐らく亡くなった患者達と理解した。幼いミュウでも、この光景を見て暗い表情になっている。ハジメ達がヒーローと感じていても、流石にこの大人数となれば少なくとも死者が出る可能性があると思ったのだろう

 

これは予想以上の人数・・・流石の深月でもキツイと思うが、問題無く解決しそうだな

 

ハジメは皐月に視線を向けると、顎に手を当てて何かを考えている姿だった。深月は香織を連れて重篤患者の場所を医療関係者から聞き出し、そちらへと進んで行く。ハジメ達も後を追う様に付いて行く

案内された場所では、血を流して体を震わせている患者達だった。少なく見積もっても万は超えている。深月は奥に居る最も危険な状態の患者の元まで移動した。最初に目に入った重篤患者よりも容態が悪いと分かる程の光景で、穴という穴から血を垂れ流している。この光景を見てミュウはハジメの胸元に顔を埋めた。誰もがこの患者はもう駄目だと感じていた

 

「・・・この方が今現在、最も重症な患者です。正直に言います。この方は助からないでしょう」

 

「そうですか。では、邪魔ですので退いて下さい。香織さん、先ずは一人で実践光景を皆様に見せますよ」

 

「うん。私頑張るよ!」

 

深月は患者に手を当てて、香織に一瞬だけ視線を向けて合図を送る。香織もそれに頷き詠唱を開始

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を――――」

 

「清潔」

 

「"焦天"」

 

香織の詠唱に合わせて清潔を行使。体中の毒素が一瞬で取り除かれたと殆ど同時に回復する。一瞬で患者の様子が変わった光景を見て、その場にいた関係者全員は「これは・・・奇跡か?」と口漏らす

 

「次は"複数人の清潔"をしましょう」

 

「「「「「「待て(って)(つのじゃ)」」」」」」

 

深月から初めて聞く単語に、一旦待ったを掛けるハジメ達。ランズィ達は一縷の光どころか、太陽の様な光の深月を止めるハジメ達を不思議そうに見つめる

 

「お前はそんな技能持ってないだろ!」

 

「ステータスプレートを見せなさい!」

 

「・・・無謀」

 

「深月さん、無理な物は無理なのですよ~」

 

「派生技能とは大本となる技能を如何にして扱うかによって生まれるのじゃ。無論、出ていない技能を使う事は出来んぞ」

 

「深月さんって意外と抜けているんだね」

 

酷い言い様である。深月はステータスプレートを渡して、まじまじと見ているハジメ達を無視して目を閉じ集中―――――魔力の散布をイメージして、範囲を周囲に居る三人の患者に絞って行使する

 

「清潔」

 

その言葉と同時に彼等の近くに居た三人の容態が一変、中毒症状による呼吸の乱れと震えが収まった。それを呆然と見るハジメ達。皐月は一早く我に返り、先程まで覗いていたステータスプレートを覗くと

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神楽深月 17歳 女 レベル:???

天職:メイド

筋力:34500

体力:51000

耐性:42050

敏捷:54500

魔力:36000

魔耐:35000

技能:生活魔法[+完全清潔][+瞬間清潔][+清潔操作][+範囲清潔][+清潔強化][+清潔鑑定] 熱量操作[+蒸発][+乾燥][+瞬間放熱][+放熱持続][+冷蔵][+冷凍] 超高速思考[+予測] 精神統一[+明鏡止水] 身体強化[+魔力吸引補強][+全属性補強][+全属性性能向上] 魔気力制御[+放射][+圧縮][+遠隔操作][+複合][+憑依][+魔気力展開] 気配感知[+特定感知] 魔力感知[+特定感知] 熱源感知[+特定感知] 気配遮断[+透化][+断絶] 家事[+熟成短縮][+魔力濾過][+魔力濾過吸引] 節約[+気力][+魔力] 裁縫[+速度上昇][+精密裁縫] 交渉 戦術顧問[+メイド] 纏雷[+電磁波操作] 天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光][+無音加速][+音越え][+無間] 幻歩[+幻影][+認識移動] 風爪 衝撃波[+収束][+拡散][+並列] 夜目 遠見 魔力糸[+伸縮自在][+硬度変更][+粘度変更][+着色][+物質化][+振動伝達] 胃酸強化 超直感[+瞬間反射][+未来予測] 状態異常完全無効 金剛[+超硬化] 威圧 念話 追跡[+敵影補足][+識別] 超高速体力回復 超高速魔力回復 魔力変換[+体力][+治癒力] 心眼[+見極め][+観察眼] 極致[+武神][+絶剣] 限界突破[+覇潰][+極限突破] 生成魔法 重力魔法 忠誠補正[+成長補正][+技能獲得補正] 言語理解

称号:メイドの極致に至る者

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

明らかに増えている派生技能を見て皐月は、頭を抱えてハジメにステータスプレートを預ける。ハジメも渡されたステータスプレートを見て頭を抱えた。ユエ、シア、ティオ、香織と渡って深月に返却した。白崎は、あまりにもぶっ飛んだステータスと派生技能の数に頭が真っ白になっていた

 

「前も言ったけどよ・・・自重しろよ」

 

「しかも、ステータスも若干上昇しているし・・・」

 

「・・・深月は異常」

 

「ほんっと~にぶっ壊れですね」

 

「習得していないのに使えるのは異常じゃ。しかも一度使っただけで習得は更にありえないのじゃ」

 

「  」(呆然

 

今回覚えた派生技能は六個

[+範囲清潔][+清潔強化][+冷蔵][+冷凍][+電磁波操作][+振動伝達]

これらである。前者二個はつい先程で、後の四個はフューレンで確認した後からのものだ

 

「香織さん?呆然とするのは構いませんが、清潔を終えたそちらの三名の治療をお願いします。流石の私でも、回復魔法は使えませんので」

 

「あっ・・・う、うん。回復魔法いくよー」

 

香織は範囲回復魔法の回天を行使して治療をする。終われば次へと移動――――

 

「今回は一気に五十人程いきますよ」

 

「ごっ!?」

 

「清潔」

 

あっという間に毒素をキレイキレイされた者達の呼吸は落ち着き、香織が回復魔法を行使する。これの繰り返しである

 

「それでは、次は五百人ですよ」

 

だが、香織から待ったの声が掛かる

 

「ま、魔力の回復が落ち着かないから待って!?」

 

深月はニッコリと笑い、腕にはめていた神結晶印の腕輪を香織に装着。そして、香織が身に着けている腕輪を外して自身に装着した。ハジメ達は察した

 

「今、私が渡した腕輪に魔力は十分溜まっています。交換を繰り返して半日以内で全員を回復させましょうね?」

 

「   」

 

香織はブリキの人形の様にギギギッと動かしてハジメ達の方に振り向くと、全員が合掌して黙祷を捧げていた。香織は、これから自身の身に何が起こるのかをようやく理解した

 

「行きましょうね?」

 

「さ、流石に精神的に疲れそうだな~とおも――――」

 

「限界を超えれば良いだけです。それでは逝きましょう?」

 

「待って!?字が違うよね!?た、助けてハジメくん!?」

 

「俺は香織に逝って来いとしか言えない。大丈夫だ!人間誰しも限界を超えて動ける!・・・・・多分」

 

「皐月助けて!?」

 

「助けたいと最初に言い出したのは香織よ?これは運命だったと思って諦めなさい」

 

「・・・がんばれ」

 

「香織さん!頑張ってくださいですぅ!」

 

「頑張るんじゃぞ」

 

「香織お姉ちゃんがんばってなの!」

 

香織は全員に見送られ、深月にドナドナされて行った。少ししてハジメ達の耳に香織の泣きの声が聞こえたが、"人間はその程度では死にません"という深月の言葉が聞こえたのだった

こうして、たった半日でアンカジ国内の患者は全回復したのだった。これで残る問題は一つだけとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「人間はそう簡単に死にません。個人の限界ギリギリは見極める事が出来ますので安心して下さい!」
布団「治癒師さん涙目ですわぁ~」
深月「ハジメさん達に着いて行くのであれば頑張りましょう♪」
布団「餌を吊るされた馬ですわ」
深月「次回も頑張って行きますよ!」
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