ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「ゲームしたいけどぉ・・・執筆しなきゃ・・・・・」
深月「最低限のノルマだけでも良いのでは?」
布団「・・・暗い話は切り上げだぁ!今回は魔人族とメイドの戦い」
深月「そして、神代魔法の習得です」
布団「個人的にはこの魔人族さん好きよ?」
深月「・・・処分します」
布団「・・・・・では、この辺りで止めておきましょう」
深月「読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」














魔人族よ、メイドの壊れっぷりを刮目せよ!

~深月side~

 

極光に直撃した深月の体は痛々しく、腕の肉が溶けて殆どが骨だけとなっており全身火傷状態であった。奥歯に仕込んでいる神水の容器を噛み砕いて飲むが、傷の治りが非常に遅い。何かしらの阻害があると判断した深月は、清潔で体中をキレイキレイすると傷はあっという間に塞がって完全回復した。気配を溶け込ませて、ハジメ達が攻撃しているフリードの様子を見ていると、何かしらの詠唱をしていた

 

詠唱・・・恐らく神代魔法。ミレディさんから聞き出した情報では、グリューエンでの神代魔法は空間魔法だった筈

 

様子を見ていると、輝く膜の様な光に入って行く光景が見えた。深月は、無音加速でハジメ達の後方全体を見渡せる位置に待機。すると、シアから警告が発せられた

 

「ッ!後ろです!」

 

先程の極光の威力は凄まじい物でした。ですが、それをお嬢様達に向ける事は叶いません。私が徹底的に叩きのめします

 

ハジメ達が後ろに振り返った時には、無音加速と無間で一気に距離を詰める。武器を盾にする二人にブレスを放とうとする竜の側頭部に向かって最大威力の打撃を繰り出す

 

「わざわざ近くまで来て頂き感謝です。 无二打(にのうちいらず)

 

頭部を大きく仰け反らされて、ブレスを吐く竜。明後日の方向へと放たれたそれは、マグマの海を穿った。驚愕している魔人族は隙だらけで、一気に肉薄しようとする深月。だが、途中で赤黒い障壁にぶつかって止まる

 

「ッ!まさか生きているだと!?貴様は白竜のブレスに直撃した筈だ!!」

 

深月の無事に安堵するハジメ達。深月は、安堵しているハジメ達に視線を向けずに障壁に手を付けて、体全てを使って一撃を放つ

 

「ふぅーーー、―――――はあっ!!」

 

足から腕にかけての連動。深月を中心に波紋が広がり、障壁を砕く

 

「この障壁を素手で破るだと!?」

 

亀形の魔物が素早く障壁を幾枚も出現させて、深月の行く手を阻む。しかし、その都度攻撃して砕く。一方深月の地となっている白竜は、背から腹に突き抜ける様な衝撃が何度も襲っている。地にしっかりと足を付けた状態でしか最大限の効果を発揮しないオリジナル発勁の威力は、貫通力に特化しているのだ

 

「くっ!撤t―――――」

 

「させるとお思いですか?お嬢様達を害そうとした貴方は私の敵。――――抹殺対象です」

 

周囲の者達全員が心臓を鷲掴みにされた錯覚に陥る程の底冷えている声。オリジナル発勁だけでなくても障壁の破壊が出来ると直感した深月は、止まる事を知らない。一発毎に地(白竜の背)を踏みしめて連撃を放ち、詠唱をしているフリードに近づいて行く。フリードは、止まらない深月を見て先程よりも素早く詠唱する

 

「邪魔、邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!全て邪魔!!」

 

深月が前眼に迫るが、フリードの詠唱の完了が先だった。最後の障壁を砕いたと同時に、白竜が降下して一瞬だけ宙に浮いた深月

 

「界穿!」

 

白竜の下に膜が広がる。フリードは、白龍と共に下に落ちて空高い場所へと避難した。冷や汗を掻きながら一番の脅威を深月と理解し、白竜のブレスをもう一度放とうと判断したと同時に展開された障壁。フリードを狙った攻撃は、ハジメ達のものだった

 

「くそっ!やっぱりあの亀の魔物がうっとうしいな!」

 

「それより、冷や汗を掻いたわよ!深月が助けてくれなかったら直撃していたわ!」

 

「ゆるさない!」

 

「うぅ~、あんな場所に居たらぶっ叩けないですぅ!」

 

白竜の周りに、灰竜が再び集まり始める

 

「危険だ。貴様達はここで死ね!」

 

フリードは、ブレスの合図を出す。再び小型ブレスの雨が降り注ぎ防御するハジメ達をその場から動けなくすると同時に、白竜の口内に魔力が充填されていく。魔眼石を持つ皐月が一早くそれを察知して焦る

 

「ちょっ!?この動けない間に白竜のブレスの溜めって事は、止んだらあれが来るって事じゃない!」

 

「やばいな。この動けない状態であのブレスを受けると盾が保たないぞ!」

 

「ぐぅっ!」

 

「ユエさん頑張って下さい!」

 

絶体絶命――――ハジメ達の脳裏に敗北の文字が過った。フリードは、動けずに攻撃を防ぎ続けるハジメ達を見ながらある違和感を感じた

 

(何故だ?今はこちらが優位の筈だ。だが、この言い知れぬ悪寒は何だ。私は何かを見落としている・・・?)

 

ドンッ!

 

ハジメ達やフリードにも聞こえる音が響き渡る。フリードは、その音が自身に近づいている事に気付いてそちらを見てみると――――ブレスの弾幕が薄い場所を狙って、深月が空力を行使して途方もない勢いで接近している姿だった。ブレスの雨の中を突き進むという頭のネジが吹っ飛んだ行動に恐怖を感じ、灰竜のブレスを深月だけに集中させる指示を出した

 

「う、撃て!あのメイドを集中攻撃しろ!!」

 

一歩一歩、加速する様にこちらへと接近する深月に恐れたからだ。ブレスの雨が深月に降り注ぐ瞬間、深月の体が紅い光の奔流が溢れ出す

 

「限界突破」

 

深月のぶっ壊れたステータスでの限界突破だ。数多のブレスの内一発でも直撃すると踏んでいたが、その悉くを紙一重で躱して突き進む

 

「化け物がっ!」

 

深月だけを見ているフリードだが、ドパンッ!!という音と同時に一体の灰竜の頭部が粉砕された。慌ててハジメ達の方を見ると、深月を援護する様に灰竜だけを狙って攻撃している。普通の攻撃ならば障壁を突破できないが、深月のオリジナル発勁を見た皐月は、貫通力に特化させた攻撃なら当たると予想して一ヵ所に弾丸を集中させると予想通りの結果となった。ハジメもそれを悟り、皐月と同じ様に灰竜だけを狙撃する

 

「チッ、これ以上のリスクは危険か。同族の事を思うと勿体ないが―――――――やれ!!」

 

いつの間にかフリードの肩に乗っていた小鳥の魔物に合図を出した。その直後、空間・・・いや、グリューエン大火山全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた

 

「うおっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

「んぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「まさかっ!?」

 

フリードは少し残念そうな表情をしながらも、深月を見て口角を上げていやらしい笑みを浮かべた

 

「時と場合は見極めているという事ですか!」

 

「チッ!」

 

魔力糸で創った槍を物質化させて、全力で投擲。狙いはフリードだったが、深月の狙いを知っていた為寸前で避ける事に成功したが体勢は崩れた。槍がその後ろに居た亀形の魔物は粉砕して遠くの彼方へと飛んでいき、フリードが体勢を整えている間に深月はハジメ達の元へと合流していた。脇目にそれを見て、さっさと火山から脱出したフリードだった。一方ハジメ達は、何があったのかが理解しておらず混乱していた

 

「ハジメさん!水位が!」

 

「何が起こっているんだ!?」

 

「あの魔人族が何かをした?・・・一体何をしたの?」

 

「・・・危険?」

 

何が起きているかさっぱり分からないハジメ達の元に深月が到着して、四人の体を有無を言わさず魔力糸で拘束。そして、せり上がる水位に舌打ちをしながらマグマドームが無くなった中央の島まで一気に駆け抜けて漆黒の建物の傍まで近づいた。大迷宮を示す文様が刻まれている場所の前に立つと、音も無くスッと壁がスライドして駆け込むと扉は閉まった。時間的にマグマが到達しても侵入して来ない事を確信した深月は、拘束を解いて地面にへたり込んだ

 

「一先ず安心ですね・・・」

 

「お疲れ様」

 

「・・・助かった」

 

「もしかして・・・深月さんが居なければ、私達はマグマに飲み込まれていたかもと思うとゾッとします」

 

「お、おう。取り敢えず何が起きたのか説明してくれる・・・って、気絶?」

 

「これは・・・疲労で寝ている?」

 

皐月に体を預ける様に眠る深月。呼吸等は普通で、大きな怪我もしていない

 

「・・・深月大変だった」

 

「そうですね。あの白竜のブレスを直撃した後であの動き・・・普通じゃ無理ですよ。それに・・・最後の私達全員を持っての移動が響いたのかと」

 

ハジメと皐月は、グリューエン大火山に来てからの深月の仕事内容を思い出してみるといっぱいあった

 

「常時熱量操作で快適空間を作って、敵の動きを阻害して・・・あれ?俺達深月を酷使し過ぎじゃ・・・」

 

「深月がぶっ壊れだからずっと疑問に思っていなかったけど、私達と同じ人間なのよね・・・。火口に近づくにつれて熱量操作を変えてという事を思うと・・・ブラック企業も真っ青な事をしていたのね・・・」

 

「しばらく休ませるか」

 

ハジメ達は、深月が起きるまで休息を取る事にした。その間、ハジメは装備の点検と弾丸の作成、皐月は深月を膝枕で寝かし、ユエはオリジナル魔法を試案、シアは身体強化の制御をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん・・・私は眠っていたのでしょうか。体の疲労が予想以上だったのですね。しかし・・・この頭に当たる柔らかな物と温かさは・・・・・ハッ!?この匂いはお嬢様の!しかも、側頭部が下となっているので匂いが濃いです!熱で掻いた汗を吸った服が堪りません!!ここは寝たふりをしてこの楽園を楽しみます!!バレない様に・・・クンカクンカスーハースーハー!お嬢様ニウムが私の脳を汚染しています!グヘヘヘヘ!!しかも――――しかもしかもしかも!最近はハジメさんと致していませんのでヤバイです♪この場所は譲れません!

 

皐月のにお―――――膝枕を堪能する深月。深月の思考を読める者が居たら、ドン引きする事間違いなしである

 

「深月、起きてるでしょ?」

 

「オキテマセン、オキテイマセンヨー」

 

だが、ここ最近ご無沙汰だったのが仇となっていた。ポーカーフェイスが得意な深月でも、この楽園の前では頬が緩んで笑顔になっていたのだ。当然、深月を見ていた皐月にバレてしまう

 

「起きないとお仕置きするわよ?」

 

「お嬢様からのお仕置きなら――――いえ、起きます」

 

少し考えた後に、素直に起き上がる深月

 

(ちっ!あのまま頷いていたら良かったのに!)

 

(危ないです。・・・あのまま返事をしていたらハーレムに加えられていましたね)

 

深月の予感は正しく、本能のままに了承していればハーレムに加入させられていたのだ。受け入れようとした瞬間に感じた嫌な予感に従った事でピンチを切り抜ける

 

「深月が起きたのか?」

 

「はい。少しだけ疲労を感じますが戦闘に支障をきたす事はありません」

 

「・・・そうか」

 

「え?どうされたのですか?・・・空気が重いですよ?」

 

四人の様子が暗いと直ぐに感じ取れた深月。本当に理由が分からないので、少しばかり焦っている

 

「いや・・・な。・・・俺達って深月を酷使していたと理解したんだよ」

 

「この大迷宮でほとんど休み無く動いていたのは深月だし・・・」

 

「・・・働きっぱなし」

 

「頼り過ぎと改めて思い知りました・・・」

 

はて?私は働き過ぎなのでしょうか?お嬢様の為を思い動いているのですが・・・そこまででしょうか?

 

前世の社畜精神と、今世の忠誠心の融合によって生み出されたハイブリッドは伊達ではない。働き過ぎで少しばかり疲れる事があるのだが、その場合は皐月の匂いをクンカクンカスーハースーハーのドーピングによって回復しているのだ

本当に心あたりが無い深月は、首を傾げて身に覚えが無いといった表情だ

 

「マジで無自覚かよ・・・ヤベェだろ」

 

「う、う~ん。これは私が一番の原因よね・・・」

 

「・・・忠誠心が限界突破している」

 

「さ、皐月さんの為になる事が癒しなんじゃないですか?」

 

「「「ありえないだろ(でしょ)」」」

 

シアの冗談交じりの意見にハジメ達は否定するが

 

「シアさんの言っている事は正しいですよ?」

 

「「「えっ?」」」

 

「・・・冗談交じりで言ったんですが、マジですか」

 

「お嬢様の為ならば身を粉にして働きますよ!」

 

ドヤァッと胸を張り、誇らしく宣言している。しかし、一般常識?を持っているハジメ達はそれは駄目だと深月に言うと

 

「私の癒しを奪うのですか!?酷過ぎます!」

 

だが、ハジメと皐月の言う事はこれだけ―――――

 

「「一週間の一日でもいいから休んで体調を完璧にしておけ(しなさい)」」

 

「そ、そんな・・・・・」

 

四つん這いで目に見えて落ち込んでいる深月。とても悪いとは思うが、危険な旅なので、この決定だけは譲れなかった

落ち込んでいる深月を連れて神代魔法を手に入れる事が出来る魔法陣を発見したハジメ達は、迷う事無く魔法陣の中へと踏み入れると、脳内に直接神代魔法が叩き込まれる

 

「・・・空間魔法か」

 

「あの魔人族が使ったやつね」

 

「・・・瞬間移動のタネ」

 

一応ミレディからの情報収集で把握していたが、空間魔法での転移は凶悪極まりない魔法だった。知っていれば対処は可能だが、知らない者からすれば初見殺しに他ならない

神代魔法を手に入れたハジメ達。これからの行動は一つだけ

 

「・・・さて、魔法も証も手に入れた。次は、脱出なわけだが」

 

「・・・どうするの?」

 

「何か、考えがあるんですよね?たぶん、外は完全にマグマで満たされてしまってますよ?」

 

「マグマの中を突き進むわよ!」

 

「「え?」」

 

何言っているの?と言いたげな目でハジメと皐月を見ているユエとシアは知らなかった。ハジメと皐月が創ったアーティファクト――――潜水艇がある事を

 

「ここのグリューエン大火山を攻略した後のメルジーネ海底遺跡用に造ったんだよ」

 

「潜水艇の装甲板の一部をマグマの上に落としたけど、溶けなかったから大丈夫よ」

 

「後は上昇して天井のショートカットで大迷宮を脱出という流れだ」

 

「・・・なるほど」

 

「流石ですぅ!」

 

「潜水艇が溶けないのでしたら、早急に乗り移りましょう。私が気を失っていた間で何かしらの急変はある筈です。下手をすれば、マグマが溢れ出ている可能性もありますので」

 

活火山ならば、刻一刻と状況が変わる。拠点内部では、外の様子が分からないのでそれを知る必要もあるのだ

 

「ユエ、障壁を頼む」

 

「ん!」

 

ユエは、念には念を入れて聖絶を三枚重ねにして五人を包み込む。全員の準備も完了し、扉の前に立ってマグマで満たされた外へと扉を開く。扉が開くと同時に部屋の中にマグマが入り込んで、あっという間に視界全てが紅蓮に染まる。ハジメ達は急いで外へと出て、ユエに頼んで潜水艇を出せる程の大きさまで障壁を広げて宝物庫から出現させる。このまま乗り込もうとしたハジメ達だが、深月から静止の声が掛けられる

 

「待って下さい。ユエさん、障壁は今の状態――――潜水艇を包み込んだままにして下さい。マグマ一色で分かりにくいですが、マグマの流れが出来ています」

 

「ちょっと待て。上か下のどっちだ?」

 

「下ですが、とにかく今は乗り込みましょう。ユエさんの魔力を無駄に消耗させるのはいけません」 

 

「そう・・・ね。先にマグマの流れが分かっただけでも良しとしましょう。乗り込むわよ!」

 

ハジメ達が潜水艇に乗り込み終えたと同時に障壁を無くすと、マグマが勢いよく潜水艇を飲み込んで揺らす

 

「おわっ!?」

 

「ひゃあっ!?」

 

「んにゃ!?」

 

「はぅ!?い――――痛くない?」

 

「皆さん大丈夫ですか?」

 

深月が出した粘性のある魔力糸で、ハジメ達を壁に叩き付けられる前に張り付けたので怪我はない。潜水艇の揺れは凄まじく、運転席の元まで行くのは難しい。しかし、ここでユエが絶禍を応用した魔法を発動。深月は魔力糸を解くと、ハジメ達が黒い渦の球体にゆっくりと引き寄せられる事でシェイクされる事を防ぐ

 

「たすかった。ありがとな、深月、ユエ」

 

「危うく周囲にぶつかって怪我するかと思ったわ」

 

「ですぅ~。揺れで胃の中身を出さずに済みました」

 

ユエは絶禍を移動させてハジメと皐月を運転席の方まで運ぶ。二人は、魔力を流して潜水艇のコントロールを試みるがマグマの流れが激しいのと、粘性が強くて思うように舵が取れなかった

 

「クソッ!予想以上に流れが速い!」

 

「サラサラのマグマじゃなくて、ドロドロ―――――粘り気のあるマグマね」

 

「体感からして斜め下に流されていますね」

 

「特定石を組み込んだクロスビットを外に出していなかったのが痛いな。これじゃあ方向が分からねぇ」

 

ハジメの懸念点は場所についてだった。潜水艇がマグマの中を耐えうるのはいいのだが、アンカジに待機させているティオ達が心配なのだ。恐らく、火山の爆発の如き噴火は外からでも見える筈。どう考えても生存が難しいと思われる

 

「ここまで離れていると念話も出来ないし・・・」

 

「ミュウが心配しているだろうな」

 

「・・・どうする?」

 

「どうしましょう?」

 

「アンカジ方面に向かって伝言を書いた槍を投擲しましたが、問題は槍そのものが通り過ぎていなければよいのですが・・・」

 

「「「「え?」」」」

 

深月がフリードに向けて放った槍・・・魔力糸を物質化させた物を投擲している。実は、アンカジ方面へと全力投擲した槍なのだ。深月のステータスとはいえ、100km以上離れた場所までは投擲出来ない。出来たとしても30kmが限度。これだけでも十分化け物レベルなのだが、瞬間的に極限突破をすれば造作もない

 

「え?ちょっと待って。ん?槍を投擲?」

 

「・・・いつの間に」

 

「あっ!あの魔人族に向けて放ったやつですか!?」

 

「それが本当ならどこまで見通していたのよ・・・」

 

「ですが、これはあくまでも運が良ければの話です。"超高速思考"の"予測"を頼りに飛ばしたので確実とは言い切れません」

 

「「「「・・・アンカジ大丈夫(かしら)(でしょうか)?」」」」

 

四人が心配する所は、槍が届くかどうかではなくアンカジの結界の心配をしていた。深月の全力に近い投擲で、結界が破壊されないかだけが心配であった

 

「多分大丈夫です。王国にあった結界は、アーティファクトそのものが破壊されない限りは破れないとの事です」

 

「お、おう・・・取り敢えず流されるままに行くか」

 

「そ、そうね・・・アンカジについては追及しない様にするわ」

 

「・・・深月のやらかし?」

 

「大丈夫ですよ~・・・キット・・・・・タブン」

 

これ以上の追及をしない現実逃避をして、これからの事について考える事にしたハジメ達。五人を乗せた潜水艇は、マグマの奔流に流されて行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ティオside~

 

ご主人様達がアンカジを出立してからこの町を見ておったが、住民達はほぼ全員が回復したのう。特に深月と香織の二人を神聖視しておる。ん?違う?メイドではなくその主であるご主人様じゃと?メイドが主を崇めよと言っておったのか。ん?それも違う?どうしてじゃ?――――――ほう、深月は昔ご主人様に助けられてご主人様を神聖視をしておるのか。お主らも深月が神聖視するご主人様を神聖視するという事じゃな。ふむ、色々と理解したのじゃ

・・・・・ご主人様、深月はやらかしているのじゃ。下手をすれば新しい宗教が生まれるやもしれん

 

グリューエン火山がある方角を見ながら、どこか諦めた様な表情で見つめる

 

「ティオどうしたの?」

 

「ティオお姉ちゃんだいじょうぶなの?」

 

「だ、大丈夫じゃ。少し考え事をしていただけじゃ」

 

「ハジメくん達の事を考えていたの?」

 

「うむ。あそこで何が起こっておるのか分からんからのぉ」

 

「そう・・・だね。本当は一緒に行きたかったけど、私は足手纏いになっちゃうからね・・・」

 

「それが分かっているだけでも十分じゃ。下手に行動すれば何が起きるか分からん。それに、今も回復魔法の特訓を続けておるのじゃろ?ご主人様もそこら辺りはしっかりと見る筈じゃ」

 

香織が陰ながら凄まじい努力しているのは知っている。だが、それはあくまで普通の者からすればだ。ハジメ達の様な特異な者達からすれば当たり前。だから白崎は、今までしていた努力を更に煮詰めた超スパルタで訓練をしている。特に、深月が言う息をする様に何時でも回復魔法が行使できる様に頑張っているのだ

 

「香織お姉ちゃん頑張ってるよ?」

 

「確かに頑張っているよ?・・・でも、ハジメくんや皐月がした努力と比べたらまだまだだよ。特に深月さんと比べちゃうと、月とスッポン処じゃないしね」

 

「月とスッポン?」

 

「比較するのが失礼にあたる位、努力の種類が違うっていう事なの。深月さんって中学生の時からメイドさんだったから・・・それに至るまでの努力は私達の想像を遥かに超えているの」

 

「確かに。妾の里にも従者は居ったが、深月と比較してしまうと霞んで見えてしまうからのう」

 

ハジメと皐月とユエ以外の面子は深月が体験してきた事を全くもって知らない。オルクスの住処で初めて聞かされたハジメ達は物凄く驚いていたので、それ以外の者達も驚くだろう。いや、顔を青ざめる可能性は特大だろう

アンカジの町の中を歩きながら、回復魔法の可能性を模索する香織。その様子を見つつ歩いていると

 

ガィィィィン!!

 

上から何かが弾かれる音が大きく響き渡った。アンカジ国内に居た全ての者達が上を見上げると、棒状の影が正門の方へと転がり落ちて行った。アンカジに向けての攻撃だと感じ取ったミュウを抱いたティオや香織、アンカジ兵士達が走る。正門へとたどり着いた彼等が見た物、それは一本の槍だった

 

「槍?」

 

「何でこんな物が空から・・・」

 

「魔人族の攻撃か?でも、姿は無いぞ・・・」

 

門番をしていた兵士達が、結界に直撃して転がり落ちた槍を囲む様に見ている

 

「ちょっと失礼するのじゃ」

 

「すいません。ちょっと見せて下さい」

 

アンカジの民達を救った香織とその仲間であるティオを見て、門番の兵士達が道を開けると同時に凄まじい音が響き渡った

 

ドォオオオオオオオン!!

 

顔を上げると、槍が飛んできた方向―――――グリューエン大火山が爆発した光景だった。何が起きたのかを察した者達は、嫌な予感が脳裏を過った

 

「う・・・そ・・・ハジメくん?」

 

「パパ?ママ?」

 

困惑する中、ティオだけは一人冷静になって考える

 

この槍が飛んできた方向は火山があった方向・・・何者かの攻撃?いや、それはありえないのじゃ。周囲に人影は無い。唯一考えられるのは槍の投擲。しかし、火山からここに向かって投擲できる人物など・・・・・一人だけ居たのじゃ

 

心あたりは一人。ティオは、問題の槍に異常が無い事を確認して手に持って全体を見る。すると、中央の一部分だけが黒い文字が描かれていたのだが、全く読めなかった

 

「何じゃこの文字は?長き間生きた妾でも見た事が無いのじゃ」

 

「ティオどうしよう・・・ハジメくん達が――――――えっ?これって日本語?」

 

ティオが手に持っていた槍に書かれている文字を見て、不安げにしていた香織の表情が少し明るくなった

 

「知っておるのか!一体何と書かれておるのじゃ?」

 

「"必ず帰ります"って書いてる」

 

「成程・・・何が起こったのか理解したのじゃ」

 

「ど、どういう事!?ハジメくん達に何があったの!?」

 

ティオに勢いよく詰め寄る香織。ティオは、香織を一旦落ち着かせて周囲の者達にも聞こえる様に説明をする

 

「これは深月が創った槍―――――恐らく火山の頭頂部から投擲したのじゃろう。しかも、槍に付いているこの色は魔物の血じゃ。何かしらの襲撃があったのは確実・・・恐らく魔人族の襲撃があった筈じゃ。戦いが激しさを増し、何かしらの理由で火山が爆発すると悟った深月が限界突破を使ってここまで投げ飛ばしたのじゃろう」

 

槍の細部を見るティオの推理は殆ど正解だった

 

「じゃあ」

 

「恐らく無事じゃ。深月がこの様な物を飛ばしてくるとなれば、少しばかり帰りが遅くなるという事じゃろう」

 

「そっか、なら大丈夫だよね」

 

「うむ、例え傍から見れば絶望的な状況でも、ご主人様達なら普通にひょっこりと生還する。無条件にそう信じられるのじゃ・・・」

 

「うん・・・ハジメくん達なら大丈夫。だから、私も私がやるべき事をやらないとね」

 

「そうじゃな。もちろん、妾も手伝うからの」

 

「パパとママを迎えに行くの?」

 

「今はまだ無理じゃ。爆発の影響で何が起きるか分からんからの」

 

「だから、ミュウちゃんは一旦本当のママの所に行こうね?ハジメくん達と合流したらもう一回行くから」

 

「・・・うん」

 

ティオ達の方針は決まった。一度、ミュウをエリセンへと送り届ける事にした

 

「ふむ、それが妥当じゃろうな・・・よかろう。ならば、妾の背に乗っていくがよい。エリセンまでなら、急げば一日もかからず行けるじゃろう。早朝に出れば夕方までには到着出来よう」

 

少しだけ返事を渋るミュウを見て、ハジメと皐月は本当に実母並の親になっているなと苦笑いをする二人。アンカジの皆にミュウの実母が居るエリセンまで行く事を伝えると、悲しそうな顔をしながらもお見送りをする。竜化したティオの背中に香織とミュウが乗り、エリセンへと旅立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「チッ!フリードなる魔人族を処分出来ませんでした」
布団「まぁまぁまぁ、メイドさんはお嬢様の膝枕を堪能したからいいでしょ?」
深月「・・・危うく暴走してしまうところでした」
布団「メッキが剥がれ落ちて、お嬢様にバレるのを期待しています」
深月「バレません!いえ、隠し通してみせます!」
布団「おっ、そうだな(以前からフラグ回収してますねぇ~)」
深月「それでは、次回も期待?して下さい?」
布団「まぁ・・・頑張るよ」
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