ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「や、やっと書けた( ;∀;)」
深月「お仕事の進捗状況は如何ですか?」
布団「雨の日だから一時お休みで久々に筆が進んだよ」
深月「左様で御座いますか。読者の皆様方もお待ちでしょう」
布団「それでは、はっじまるっよ~」
深月「ごゆるりとどうぞ」







王都と海底遺跡と神山
試練・・・メイドは問題なしです


~皐月side~

 

レミアの治療も終わり、メルジーネ海底遺跡への攻略を開始するハジメ達。ミレディから、事前情報で月の光をグリューエンの証に集める事が分かっていたので入り口は直ぐに見付けることが出来た。途中で襲い掛かる魔物達は、新型魚雷の餌食となったのである

 

「トビウオ擬きね」

 

「だな」

 

「・・・ミンチ」

 

「死んだ魚の様な目です」

 

「シアよ、死んでいる魚じゃぞ?」

 

「随分と凶暴なトビウオだね」

 

「そのトビウオ擬きを刺身に出来ますが・・・食べますか?」

 

「「「「「食べる(わ)(ですぅ)(のじゃ)!」」」」」

 

手早く解体して皿に盛りつけて出来上がり。その時間僅か三分

潜水艇を運転しながら醤油を付けて食べるハジメ。続く様に皐月達も食べる

 

「トビウオ擬き・・・やるじゃねぇか」

 

「青魚みたいな見た目だから特有の味があると思ったのだけど、意外と淡白でさっぱりした味わいなのね」

 

「地球でもトビウオの刺身は提供されていますよ?」

 

「そうなの?私見た事ないよ」

 

「スーパー等でもトビウオは売られていますが、刺身で提供される地域は限られています」

 

「・・・海辺?」

 

「美味しくなくなるんですか?」

 

「出来立てに勝るものはないからのう」

 

皆が刺身に夢中になっていると、いきなり海流の流れが変わって潜水艇を大きくグルングルンと揺らす。だが、新実装した船底の重力石で船体を安定させる事で落ち着きを取り戻した。しかし、それでもダメージはある

 

「うっ、このぐるぐる感はもう味わいたくなかったですぅ~」

 

「直ぐに立て直しただろ?もう、大丈夫だって。それより、この激流がどこに続いているかだな・・・」

 

洞窟内に流れ込む奔流に任せて進む。道中に居た魚群の魔物は魚雷でミンチに―――――変わり映えの無い景色を見ながら進んで行くと、見た事のある破壊痕とミンチされた魚の破片があった

 

「・・・ここ、さっき通った場所か?」

 

「迷路って感じゃなかったから、繋がっているのね」

 

「・・・ぐるぐる周ってる?」

 

「扉の鍵が必要となるのでしょうか?」

 

「もう一度周ってみた方が良いわね」

 

皐月の提案を採用して、探索する様にゆっくりともう一周りするハジメ達。ほとんど変わり映えの無い洞窟だが、それでも目印はあった

 

「あっ、ハジメくん。あそこにもあったよ!」

 

「これで、五ヶ所目か・・・」

 

洞窟の数ヵ所にメルジーネの紋章が描かれており、円環状の洞窟の五ヶ所

 

「まぁ、五芒星の紋章に五ヶ所の目印、それと光を残したペンダントとくれば・・・」

 

「ペンダントが鍵になるのはお約束ね」

 

ペンダントのランタンの光が紋章に伸びる。そして、光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした

 

「これ、魔法でこの場に来る人達は大変だね・・・直ぐに気が付けないと魔力が持たないよ」

 

「未だランタンに光があるって事は、残りの四ヵ所にも同じ様にしろって事ね」

 

再び周りながら紋章にランタンの光を当てて光らせる。皐月の予想通りランタンの光は徐々に少なくなってきていた。四つの紋章を光らせ、最後の紋章に光を注ぐと、円環の洞窟から先に進む道が開かれた。縦真っ二つ別れ、真下へと通じる水路へ潜水艇を進める。すると、突然、浮遊感を感じた瞬間に落下する

 

「おぉ?」

 

「んっ」

 

「ひゃっ!?」

 

「ぬおっ」

 

「はうぅ!」

 

「落下ですか」

 

六人の反応は様々だった。だが、一人だけインパクトが違う

 

「にゃああああああああああ!?」

 

それは、皐月である。乗り物による落下は超苦手で、グリューエン大火山のマグマ下りもそうだった。フワッと感じる瞬間に訪れる落下の衝撃。ズシンッ!と轟音を響かせながら潜水艇が硬い地面に叩きつけられたのだ

 

「皐月、香織、無事か?」

 

「もう嫌・・・こんなのばっかりなんて・・・・・」

 

「うぅ、だ、大丈夫。それより、ここは?」

 

「ドーム状の空洞ですね。恐らく、ここからが本番という事でしょう」

 

「魔物の反応も無いな」

 

「・・・全部水中でなくて良かった」

 

一行は潜水艇から出て、ハジメが宝物庫に戻すしながら奥の様子を見る。すると、天井にびっしりと生えているフジツボ擬きがあった

 

「ここから進んだらフジツボ擬きの攻撃が来るって事だろうな」

 

「恐らく、真上だけじゃなく斜めからの攻撃もあると考えた方が良いわね」

 

「私の出番」

 

ユエは障壁を展開。それを確認し終えたハジメ達は、迷宮へと第一歩を踏み出す。すると、頭上から水を圧縮したレーザーが降り注いだがユエの強力な障壁を貫通するまでの威力は無く、ハジメ達が動揺する事はない。しかし、香織だけはそうではなかった

 

「きゃあ!?」

 

香織は、突然の激しい攻撃にビックリしてよろめいて、ハジメが手を引っ張って傍に引き寄せる

 

「ご、ごめんなさい」

 

「いや、気にするな」

 

普段の香織ならここで赤面するのだが、ここは迷宮内部―――――表情は優れず、少しだけ落ち込んでいた。そんな香織の様子を見つつ、絶え間無い猛攻が続くこの場所を移動する。助けられた時から分かっていた事だが、今の自分が居る事で劣等感をより一層感じていたのだ

 

「どうした?」

 

「えっ?あ、ううん。何でもないよ」

 

「・・・そうか」

 

不甲斐ない――――香織が感じたのはその一つだけだ。ユエの魔法の技量は自分よりも上だとは分かっていた。しかも、予想よりも遥かに上回っているのと、いきなりの攻撃にビックリしてしまったという二つ。表層ではあるが、天之河達と攻略していたオルクス迷宮で培った技量なんて子供遊戯と同等に思える

 

「あのフジツボって食べれたりするのかねぇ」

 

「食に走るのは良いけど、今回は無しよ。ミレディの情報では、再生魔法を使う人の迷宮だから敵が復活する恐れがあるわ」

 

「・・・地球に帰ったら食べるか」

 

ハジメと皐月の二人は、しょうもない事を言いつつも警戒を一切解かずに歩を進めている。ティオは火炎で天井に貼り付いているフジツボ擬きを焼き払っている

フジツボ擬きを一掃し終え、奥へと続く道を進む。道中でハジメ達を襲う魔物達は居たが、全てを粉砕して苦も無く道のりを進んで行く。あまりにも不気味な迷宮の道のりを前にハジメと皐月はいつも以上に警戒している

 

「おかしいな」

 

「そうね」

 

「え?どこかおかしい所があった?」

 

香織以外は迷宮の様相に疑問点が尽きなかった。あまりにも呆気ない・・・これでは試練と呼べる物が何一つとして無い

 

「再生に司る魔物も居ないし、環境変化も無い。本当に大迷宮なのか疑いたくなるわ」

 

「入口のギミックは・・・まぁ分かる。だが、落ちた所からここまでの道のりで目印なり変化の一つも無いのはな・・・」

 

「・・・不気味すぎる」

 

「火山の魔物よりも弱いですね」

 

「何かしらの罠が設置されていてもおかしくはないのじゃが」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

しばらく進むと、広い空間へと出たが何一つ変化が起こらない。不気味さがより一層強くなった

 

「おいおい、流石にここまで苦も無くってのはありえないだろ」

 

「魔人族と言いたいけど、何一つ痕跡が無いからその可能性は限りなく低いわね。魔物の反応も全然無いし・・・いったいどういう事なのよ」

 

「広い場所に出ただけ」

 

「分かれ道なんて無かったですぅ」

 

「入り口は複数あったのかの?」

 

「あ、ちょっと待って。この下が空洞になっているわ」

 

「空洞か・・・だったらぶち抜くしかないな!」

 

ハジメは宝物庫からパイルバンカーを取り出して設置してチャージ。深月は、ぶちあけた穴に勢いよく流れ込むであろう海水と下層の現状が分からない事から全員の腰に魔力糸で結ぶ。これで余程の事が無い限りは大丈夫だろう。魔力糸がちゃんと縛られているか再度確認し終えたと同時にチャージも完了。ハジメは迷う事無く打ち込んだ。大穴が空いた事で足元に溜まっている海水が勢いよく流れ込み、ハジメ達も一緒に落ちていく

下層でハジメ達を下で待っていたのは、まるで嵐のような滅茶苦茶な潮流だった。噴き出たり流れ込んだりしている光景で、逸れたら間違いなくめんどい展開だった。だが、深月が事前に全員を魔力糸で繋いでいた事でこの難を逃れることが出来たのだ。深月が先頭となる様に結ばれているので、重力魔法で斜め下へと下っている場所に向かって方向転換をする。深月に続いて一人、二人、三人と流れ込む事で全員が一緒の場所へと流されて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

全員が芋づる式で流れ込む事に成功したハジメ達。先程の落下地点よりも流れが弱いものの、普通の人からすれば危険極まりない程の流れだ。しかし、その勢いも徐々に弱くなって、広い水溜まりでその勢いは完全に止まった

深月によって離散の危機を回避する事が出来た一行は、水溜まりから出て陸地へと移動。ずぶ濡れの服で風邪をひく事もあるが、深月が熱量操作で全員分の服を乾かす

 

「いやぁ~、落ちた先があそこまで入り組んでるとはなぁ」

 

「ユエの水流操作で大丈夫だと思っていたけど、あれ程の激流の入り乱れだと難しかった筈よね」

 

「凄い流れだった」

 

「ホントですよ!深月さんが全員分を結んでいなかったと考えるとゾッとします」

 

「試練の内容が個々となる様に造られていたと思うと・・・制作者には申し訳ないのう」

 

「深月さん、ありがとう」

 

「海底遺跡なので何処かしかに水が流れ込む場所が有ると予想は出来ていました。ちゃんと対処出来てなによりです」

 

服も完全に乾いた事で周囲の様子を観察すると海底遺跡の名の通り、周囲にはボロボロになった建物が幾つも並んでいた

 

「こんな所に建物か・・・住む環境から考えると絶対にお断りしたい場所だな」

 

「海面の上昇という事はありえないね。もしそうだったとしたら、先兵を送り込まれる可能性もあるし・・・」

 

「えっと・・・その先兵ってどのくらい強いの?」

 

香織は先兵の強さをあまり理解出来ていなかった。恐らくステータス的に5000~8000辺りだと予測しているのだ。ハジメが言葉を発しようとした瞬間、周囲の景色がグニャっと歪んだ事に気付いた一行はより一層警戒を高める

 

「景色が変わったわね。廃墟だった筈の建物が綺麗になっているわ」

 

ハジメ達は、皐月の視線の先を確認すると先程までオンボロの廃墟が綺麗に立っていたのだ

 

「再生魔法・・・という事は、ここから先が本当の試練って事か」

 

「全員気を引き締めて行動するわよ。再生する魔物が出てくる可能性が大よ」

 

「凍らせて動けなくする」

 

「ぶっ飛ばすですぅ~!」

 

「再生も出来ん程に燃やすだけじゃな!」

 

「回復は任せて!」

 

ゆっくりと全方位を警戒する様に歩を進めると、目先に一際大きい石の柱が立っていた。その石の表面には小さく文字が書かれており、石碑と判断して何かしらのヒントがあるかもしれないと思い近づくと

 

――――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

――――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?なんだ!?」

 

「皆!周りがっ!」

 

「迎撃準備!」

 

突然、大勢の雄叫びが聞こえた事に驚きつつも攻撃態勢へと切り替えたハジメ達。すると、ハジメ達が立つ石碑を中心に周囲に兵士が現れて魔法で攻撃を放ってきた。ハジメと皐月がドンナー・シュラークで迎撃をしたが、炎弾をすり抜ける形で攻撃を撃ち落とせなかった

 

「私が防ぐよ"光絶"!」

 

香織の光系初級防御魔法の障壁を出現させる。ハジメと皐月の放った弾丸がすり抜けた現象がこの障壁にも適応されると香織が怪我を負う可能性があるので、ハジメが壁になる様に前に出て金剛を発動させる。炎弾が近づき障壁にぶつかると、普通に防ぐことが出来たのでそこから予測をする皐月

 

「魔力は干渉するけど、レールガンの弾丸は素通り・・・純粋な魔力だけの攻撃や防御なら大丈夫という事かしら?」

 

ハジメは皐月の予測を元に、風爪で再び迫り来る炎弾を迎撃すると真っ二つにする事が出来た

 

「皐月の推測通りだな。これらの攻撃は実体を持っているが、魔力オンリーの攻撃でしか打ち消せないって事だな」

 

「・・・防ぐ?」

 

「いや、迎撃だ。この迷宮の試練がこの幻影?を打ち倒す事が前提なら意味がない」

 

「あの~、今回も私の出番が無いんですね・・・」

 

「シアは物理攻撃オンリーじゃからのう」

 

周囲から襲い来る魔法の礫を撃ち落とすハジメ達。すると、今度は人が現れて攻撃を仕掛けてきたのだが

 

「全ては神の御為にぃ!」

 

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

 

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

兵士達が眼を血走らせ、涎を垂らしながら狂気の雄叫びを上げながら襲い掛かって来たのだ。皐月は、ドンナー・シュラークを構えて発砲。本来なら弾丸が撃ち出されるのだが、魔力放射と魔力圧縮で作られた魔力の弾丸が兵士達を襲う。一発目で兵士の頭部を撃つ事で光の粒子となって消えた事を確認し終えると、衝撃波の派生技能の拡散を込めて一発一発の攻撃範囲を広げて撃ち込む事で殲滅力を高める

 

「まさか、お蔵入りとなったこの攻撃が使う時があるとはね」

 

「非殺傷だが、威力が弱いからな」

 

ユエとティオも魔法を使い攻撃を開始する。蹴散らしながら歩を進めていると、大怪我をしている青年が倒れており香織が回復魔法を行使すると光の粒子となって消えてしまった

 

「魔力オンリーなら何でも良いって事か」

 

「香織、範囲回復魔法で近づく敵を一気に倒せる?」

 

「取り敢えずやってみるよ!」

 

範囲回復魔法の回天でハジメ達を中心に十メートル程の距離に回復魔法を行使すると、近づく兵士達の悉くを光の粒子へと変えた。ハジメは、遠くの方で争っている兵士達を観察していると名前の違う神を信仰する者達が争っており、皐月もそれに気づいている様子だった

香織の魔力も限界に近く肩で息をしていた為、ユエとティオの二人と交代する。ハジメと皐月→深月→ユエとティオ→深月→香織のローテーションで押し寄せる狂信者の兵士達を倒す。だが、長時間に及ぶ狂信者達との交戦は慣れない者達の精神をゴリゴリと削っており、最終的にハジメと皐月と深月の三人の迎撃と化していた。表情には出ていないが、ハジメと皐月もかなり疲弊している。一方で、深月は疲れた様子が皆無だった。一帯の兵士達の殆どを倒し終えたハジメ達は、改めて狂信者達の歪さに気分を悪くする

 

「疲れた。・・・敵を倒すのはいいんだが、気持ち悪い奴等が大量だったから意気消沈だな」

 

「まさか、あれ程まで狂っているとは思ってなかったわ」

 

「う"っぷ・・・ごめん・・・ちょっと・・・・・」

 

R-18が生ぬるく感じる程の光景に、顔を青ざめて嘔吐する香織。ハジメ達と行動を共にする前までは、魔物相手と戦っていただけだ。しかも、日本という平穏な日々を送り、人の闇に一切触っていなかったから余計である

「エヒト様!我が心臓を捧げます!」と言って嬉々として自分の心臓を抉り取る者や、「アルヴ様ばんざああああい!」と言って自爆特攻する者、「エヒト様の為にいいい!」と言って物言わぬ死体を壁にして突撃する者と様々だった

 

「・・・香織よりマシだけど、それでもキツイ」

 

「怖すぎますよぉ~」

 

「妾もあれは怖いと感じたのじゃ」

 

「・・・だけど、ハジメと皐月と深月はすごい」

 

「本当に頼りになりますぅ」

 

「ご主人様達は流石の一言じゃな」

 

「いや・・・俺達だって気が滅入ってたぞ?」

 

「表情にあまり出さなかったけどね。・・・でも」

 

皐月が深月に視線を向けただけで全員が察した。思う事は唯一つで、「何故平気なんだ・・・」この一言に尽きる

 

「どうかされましたか?」

 

「いや、何でもない」

 

「深月のメンタルは超合金・・・いや、アザンチウムで出来ているんだな~って」

 

「私の心は硝子ですよ?」

 

「「「「「「絶対に硝子じゃない(ですぅ)(のじゃ)!」」」」」」

 

冗談交じりのやり取りを終えて、続いている道へ進む先には大きな建物があり、その門をくぐると変化が直ぐに出た。まるでお化け屋敷の様で、建物の内部は薄暗くガラスが所々欠けていたり、カーテンの一部が破れていたりと色々だ

 

「試練だよな?」

 

「お化け屋敷かしら?」

 

「・・・血の手形」

 

ユエの言葉と同時にバンバンバン!と血の手形が壁に沢山着いていく。しかも、血が滴り落ちるおまけ付きで――――ホラーに弱い香織が皐月に引っ着く

 

「・・・邪魔なんだけど?」

 

「む、無理無理無理!私怖いの苦手なの!」

 

「はぁ~」

 

必死の形相でしがみつく香織の姿に溜息を吐いて、空いている左手のシュラークを構えて警戒を続ける。その後も続くホラーに、叫び声を上げる香織。その様子を見る深月は、羨ましそうにしている

 

チッ、お嬢様にしがみつくなんて羨ましいですね!この程度のホラーで悲鳴を上げて引っ付――――――いえ、待って下さい。私も何か弱点があれば引っ付いても良い筈・・・希望が湧いてきましたよ!さて、私に弱点・・・弱点・・・弱点・・・・・あれ?もしかしなくても皆無じゃないですか?

 

あの手この手で、超メイドとして特訓してきた事が仇となってしまったのだ。"怖い物があれば体験して慣れよう""苦手な物があれば喰らって克服しよう"の努力をし続けて、完璧に克服してしまったから弱点や恐怖が無いのだ

 

何か一つでも苦手な物を残した方が良かったです・・・

 

心で泣いた深月は、少しだけどんよりとしていた

 

「深月さんが落ち込んでいますが・・・何かあったのでしょうか?」

 

「・・・この迷宮に飽きたとか?」

 

「歯ごたえが無さすぎるのではなかろうか?」

 

ユエ達は分からないご様子。だが、ハジメは気付いていた

 

「いや、あれはただ単に羨ましがっているだけだな。偶~に目を細めて皐月の腕をチラ見しているだろ?多分、皐月の腕の抱き心地を想像したが、その光景が全くもって見えなかったのさ。完璧な超メイドを目指して弱点とか諸々を克服した自分ではあんな事出来ないって絶望しているんだろうよ」

 

我ながら名推理と少しだけ胸を張るハジメを見て、ユエ達は小声でぶっちゃける

 

「・・・ハジメ、それはちょっと」

 

「絶対に自分では気づいていないでしょうけど、言っている事は変質者のそれですよ」

 

「やはり、ご主人様は深月に好意を持っているのじゃ」

 

ハジメの危険極まりない発言に頭を悩ませる三人は、深月の方を見て「はぁ~」と深く溜息を吐いた

室内を進むにつれてホラー要素が満載だったが、ハジメのヤクザキックと深月の掌底で襲い来る人形や死体をバッタバッタと吹き飛ばしながら進む。途中で真っ暗闇となった部屋で香織を襲った死体が居たが、皐月のシュラークが火を噴いて死体蹴りの形で倒し終えた所で魔法陣が浮かび上がった

 

「転移の魔法陣ね」

 

「今度はどんな試練が待ち受けているのやら」

 

「・・・皆で行く」

 

「私の出番が少ないですぅ」

 

「さてはて、どうなるのかのう」

 

「私だってやれば出来るもん!」

 

「じゃあ、行くわよ」

 

ハジメと皐月と深月の三人を先頭に全員が同時に魔法陣の上に立つと、魔法陣が輝き一行を転移させた。だが、一行が予想していた結果とは違い、転移場所は解放者の拠点だったのだ

 

「呆気ないですね」

 

「言うな・・・」

 

「意気込んでいたのにこの落差は・・・」

 

ハジメ達は、あれ以上の試練が来るだろうと予想していたのだ。しかし、蓋を開けてみれば試練は終了というなんとも締まりのない終わり方だった。全員が神代魔法を手に入れる為に魔法陣の上に立つと、この迷宮で体験した事を事細かく思い出させながら刷り込みが終了した。二回目の狂信者との戦いを強制的に思い出されたユエ達は、先程よりも顔色を青くしていた。ハジメと皐月も少なからず表情に変化があったが、深月に関してはいつも通りである

 

「再生魔法を手に入れたのは良いが・・・」

 

「あの狂信者達との光景をもう一度見せられるとは思っていなかったわ・・・」

 

「・・・酷かった」

 

「あれをもう一度体験するとは・・・なんともじゃのう・・・」

 

「うっぷ・・・耐えられないです」

 

「皆ごめん・・・私も・・・もう無理」

 

シアと香織が皆から離れる際に深月がハジメお手製の宝物庫からバケツを二個取り出して手渡し、受け取った二人は壁際に行って胃の中身をバケツの中にぶちまけた。中身を殆ど出し終えた二人を見つつ、水・塩・砂糖の三つで出来る超お手軽経口補水液を飲ませる事で少しばかり表情が回復した

 

「うぅ・・・ありがとうございます」

 

「耐えられなくてごめんなさい」

 

「いや・・・普通の奴なら耐えられないから気にするな」

 

「私達は奈落で培った価値観があるからマシなだけよ」

 

全員の体長が回復し終えると同時に、床から小さな祭壇がせり上がって淡く輝き光が人の形を形成する。輪郭がはっきりすると、一人の女性―――――メイル・メルジーネが映し出された。エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳から察するに、彼女は海人族と関係のある女性と分かった。オスカー同様、自己紹介と解放者達の真実を語り最後は攻略者達に向けての言葉だった

 

「・・・どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

 

光は霧散して、彼女が座っていた祭壇の上の小さな魔法陣からメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれた

 

「証の数も四つですね、ハジメさん。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」

 

「ハジメさんとお嬢様の訓練でヒャッハーとしていると思いますよ?」

 

「デスヨネー」

 

死んだ目で、懐かしの家族の光景を思い出すシア。穏やかで温厚だった家族はもう居ない

ハジメは、宝物庫にコインをしまい込むと同時に拠点が揺れる。すると、周囲から水が一気にせり上がり始めたのだ

 

「おいいいいいいい!おっとりしているから優しく退場じゃねぇのか!?」

 

「見た目に反して過激なのね。油断したわ!」

 

「・・・んっ」

 

「わわっ、乱暴すぎるよ!」

 

「ライセン大迷宮みたいなのは、もういやですよぉ~」

 

「水責めとは・・・やりおるのぉ!」

 

「変態は口を閉じていなさい」

 

「んんっ!そのゴミを見る目が堪らん!!」

 

「破裂させますよ?」

 

「いや・・・それだけは勘弁願いたいのじゃ」

 

「ティオさんには後程淑女としての訓練を致しましょう」

 

ハジメは、宝物庫から小型酸素ボンベを全員に手渡して、深月は全員を糸で繋げる。酸素ボンベを装着したと同時に、天井部分がスライド。グリューエン大火山の様なショートカットが開いて、下から上へと押し上げる様に猛烈な勢いで上方へと吹き飛ばす

迷宮から追い出される様な形で海の中へと排出されたハジメ達。宝物庫から潜水艇を取り出して、全員が乗り込む事で落ち着きを取り戻した

 

「ふぃ~。ミレディもそうだったが、解放者の女性陣はこうも過激なやつばかりなのか?」

 

「かなり混沌な時代だったからそうなる他なかったんじゃない?」

 

ハジメ達一行は、海上へと浮上しながらエリセンへと帰還した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「今回の迷宮攻略はライセン大峡谷と同じぐらい早かったですね」
布団「ボスかと思われる魔物を先に倒しちゃったし・・・」
深月「逆に考えましょう。ミュウさんと一緒に居られる時間が増えたと」
布団「取り敢えず、次話も頑張って書くぞい」



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