ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「やってやったぞ。投稿だ!」
深月「今回は私とハジメさんの出番です」
布団「神山へと向かった主人公とメイドさんを待ち構えていたのは、神の先兵だった!」
深月「という訳ですので、ごゆるりとどうぞ」
布団「誤字報告ありがとうなのです!」










先兵とメイドの激突です!

~ハジメside~

 

王国の神山。麓から山頂へと、素早い動きで登る影が一つ

 

皐月達と別れて先生を助ける為に深月と神山を登っているんだが・・・深月が登るスピードが速すぎて笑えねぇ。まるで蜘蛛の様に垂直な壁も登っているから、俺自身が人外という意識が薄くなっている

 

音も無くスススッと登るハジメと深月の存在に、教会関係者は誰一人として気付かない。手早く登頂し終えた二人は、気配遮断をしたまま二手に別れる。深月は内部から、ハジメは外からの二面捜索だ。深月は地下が存在するかどうかの確認で、ハジメは建物の最上部の窓から畑山を探す事にした

 

(深月、そっちはどうだ?)

 

(駄目ですね。地下倉庫はありましたが、食料備蓄倉庫でした。恐らく、畑山先生は最上階の幽閉かと思われます)

 

(了解だ。丁度最上階から探そうと思っていたから手間が省ける)

 

(こちらも気配を探りながら最上階へと向かいます)

 

深月との念話も終え、最上階の鉄格子の窓へと向かうハジメ。窓際に到着して中を覗き込むと、手首にブレスレットを付けた畑山が閉じ込められていた。周りに誰も居ない事を確認していると、畑山が呟きを漏らした

 

「・・・南雲君」

 

「おう?何だ、先生?」

 

「ふぇ!?」

 

この場に居る筈が無いハジメの声に驚いている畑山。キョロキョロと周りを見ているが、気付いていないのか外の方を見ていない

 

「こっちだ、先生」

 

「えっ?」

 

もう一度声を掛ける事でようやく気付いた畑山。窓から覗き込んでいるハジメを見てポカンとしている

 

「えっ?えっ?南雲君ですか?えっ?ここ最上階で・・・本山で・・・えっ?」

 

「あ~、うん。取り敢えず、落ち着け先生。もうちょっとでトラップがないか確認し終わるから・・・」

 

眼帯越しに部屋にトラップが無いか確認をし終えたハジメは、錬成で壁に穴を空けて部屋に入り込む。一方の畑山は、地上から百メートル以上離れているこの場所に、ハジメがどうやって立っていたのかが分からず頭が混乱している

 

「何そんなに驚いているんだよ。俺が来ている事に気が付いてたんだろ?気配は完全に遮断してた筈なんだが・・・ちょっと、自信無くすぞ」

 

「へっ?気付いて?えっ?」

 

「いや、だって、俺の名前呼んだじゃないか。俺が窓の外にいるのを察知したんだろ?」

 

畑山は、無意識でハジメの事を呼んだ事に気付いて顔を紅くしながら、話の方向を変える

 

「そ、それよりも、なぜここに・・・」

 

「もちろん、助けに」

 

「わ、私の為に?南雲君が?わざわざ助けに来てくれたんですか?」

 

「俺だけじゃないぞ。内部から深月が探しているが・・・そろそろ到着するぐらいか?」

 

すると、鍵の掛かった鉄製の扉が開き、深月が部屋の中に入って来た

 

「まさか、本当に頂上の部屋に監禁されていたとは思いませんでしたよ」

 

「か、神楽さん!?えっ?どうやって?鍵が掛かっていたはず・・・」

 

「ピッキング程度お茶の子さいさいですよ」

 

ハジメは、畑山の手首に付いているブレスレットをジッと見て、罠の類や外した際の魔法が無いかを確認する。罠が無い事を確認し終えた後、畑山の手を取る

 

「ひゃう!?だ、駄目ですよ南雲君!?そんないきなりぃ!?」

 

「ん?魔封じのアーティファクトを付けられていると面倒だろ?」

 

「え?あっ、そういうことですか・・・」

 

「畑山先生は何をご想像されているのか分かりやすいですね。しかも、何気に残念そうにしているとは・・・教師と生徒の線を越えたいのですか?」

 

「・・・先生よぉ」

 

「す、すみません。勘違いしていました」

 

それから、どうして誘拐されたのか、どうして助けに来たのかを互いが簡潔に説明する

 

「教会の異端者認定は些か強引過ぎると思いました」

 

「そして、銀髪の女に連れ去られた所を姫さんが発見して俺達に伝えに来たという事だな」

 

「ど腐れ野郎達に知らせると色々と厄介になりますからね。それこそ、ハジメさんが洗脳した等と言い出すでしょうね」

 

「天之河君が色々と独自解釈するのは分かりますが、南雲君がどうにかするとは言わないのでは?」

 

「勇者(笑)は、今の俺の状態を気に入らないだけだろうな。まぁ、その話は後だ。この状況は俺にも責任がありそうだし・・・先生は会いたくなかっただろうが・・・まぁ、皆と合流するまで我慢してくれ」

 

「君に会いたくなかったなんてこと絶対にありません。助けに来てくれて、本当に嬉しいです。・・・確かに、清水君のことは、未だに完全には割り切れていませんし、この先割り切れることはないかもしれませんが・・・それでも、君がどういうつもりで引き金を引いたのか・・・理解しているつもりです。君を恨んだり、嫌ったりなんてしていません」

 

「・・・先生」

 

「あの時は、きちんと言えませんでしたから・・・今、言わせて下さい。・・・助けてくれてありがとう。引き金を引かせてしまってごめんなさい」

 

「・・・俺は、俺のやりたいようにやっただけだ。礼は受け取るけど、謝罪はいらない。それより、そろそろ行こう。天之河達のところには姫さん達が行ってるはずだ。合流してから、これからどうするか話し合えばいい」

 

「わかりました。・・・先程も言った通り、教会が頑なに貴方達を異端者認定をしました。恐らく、あの銀髪の人も貴方達狙いかと思います」

 

「分かってる。どっちにしろ、先生を送り届けたら、俺は俺の用事を済ませる必要があるし、多分、その時、教会連中とやり合う事になる。・・・もとより覚悟の上だ」

 

すると、遠くから何かが砕ける音が響き渡り、皐月から念話で大結界が破壊されたと告げられた

 

「ちっ・・・予想はしていたよりも早いぞ」

 

「王国を守っていた大結界が砕け散りましたね。お嬢様達が対処されるとはいえ、この場に長く居続けるのも悪手です」

 

「先生、取り敢えず勇者(笑)達と合流するぞ。話はそれからだ」

 

「は、はい」

 

畑山を片手で抱えるハジメ。と、その瞬間、外から強烈な光が降り注いだ

 

「「ッ!?」」

 

急いで外壁の穴から飛び出すハジメと深月。急激な動きに畑山が悲鳴を上げるが、それを無視して隔離塔の天辺から飛び出したと同時に、畑山を捕まえていた部屋を丸ごと吹き飛ばすのは同時だった

 

ボバッ!!

 

轟音が無く、熱も無く、存在そのものが消えた様な消滅の仕方だった。直撃した部分は粒子となり、風に吹かれて消えて行った

 

「・・・分解・・・でもしたのか?」

 

「ご名答です、イレギュラー」

 

ハジメの独り言に、凛とした声が響く。だが、冷たい声・・・まるで感情が無い様な声だ。ハジメが声の下方向へと顔を向けると、ハジメ達を睥睨する銀髪碧眼の女達がいた。ハジメは頬を引き攣らせた

白を基調としたドレス甲冑で、戦いに支障をきたす事をしない様にデザインされた物。頭、胸、腰、腕、足、に金属製の防具、デザインや威圧感からアーティファクトであると想像出来た。そして、完全武装である。一人だけならハジメの頬は引き攣らなかったが、今居る人数は三人。明らかに殺しに来ていると理解出来た

 

「ノイントと申します。"神の使徒"として、主の盤上より不要な駒を排除します」

 

「私はスヴァール。イレギュラーの排除を開始します」

 

「サングリーズと申します。死に行く者には名前等無価値ですが、それも一興だと言われております」

 

宣戦布告――――三人から噴き出す銀色の魔力の威圧が空間を軋ませる。ハジメも紅い魔力の威圧を放つが、飲み込まれそうになる。完全に飲み込まれる前にドンナーで牽制をするが、弾丸をバターの様に難無く切り伏せられてしまう

 

「イレギュラー、貴方を排除した後に地上に居る者達も排除しましょう」

 

見て分かる挑発。本当なら怒って攻撃するハジメだが、三人を見てニヤケが止まらない

 

「クッ、ハッハハハハハハハ!」

 

無表情でハジメを見下ろす三人はただ黙って見ている

 

「舐めるなよ。俺はそう簡単に殺れないし、皐月達も殺れねぇよ!そして、お前達はあいつの禁句を言っちまったからご愁傷様ってやつだ」

 

「何を――――ッ!?」

 

「「グハッ!?」」

 

ノイントは後ろに佇む気配に気づき、大剣を振り向きざまで切り上げる。しかし、深月は完璧に見切って避ける。深月の強襲にやっと気付いたスヴァールとサングリーズは、振り向いた瞬間に首を掴まれて教会の信者達が集う建物へと叩き込まれた。神の先兵を分断に成功した深月は、ハジメから畑山を回収して吹き飛ばした先へと向かう。これでハジメとノイントの一対一となった。ハジメは、油断せず全力をもって目の前の敵を倒さんと襲い掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

教会の信者達が集う場所へと降り立った深月と、片手で抱きかかえられている畑山。第三者から見れば、妹分を守っている姉と見えるだろう

 

「ひゃあああああああああ!?」

 

「舌を噛みますので、あまり悲鳴を上げない方が宜しいかと」

 

「そ、そんなこといっひゃてぇ!?・・・噛んじゃいました」

 

「・・・第三者から見ると、どちらが大人か分かりませんね」

 

「わ、私は子供じゃありません!好きで背が低いんじゃないんです!」

 

他愛無いやり取りをしつつ、神の先兵の二人が落下して舞い上がった土埃から警戒と畑山をどうにかする為にティオに念話を送る

 

(ティオさん、至急神山へ来て下さい)

 

(ぬ?神の先兵と戦っておるのか?)

 

(そうです。標的を救出し終えたのは良いのですが、護りながら先兵二人同時に相手取るのは危険と判断しました)

 

(あい分かった。急いでそちらに向かうのじゃ)

 

(神山上空にはハジメさんが戦っていますので気を付けて下さい。私は神山の地に降りています)

 

(今直ぐ向かうのじゃ)

 

ティオとの連絡も終えた深月は、感知系技能で周囲を確認すると信者たちがウジャウジャと集まって来ている。このまま集まれば、神の先兵との戦いの余波で数が減らせるという鬼畜な考えも含まれている

 

「使徒様!ご無事ですか!」

 

「貴方達は邪魔です」

 

「使命を遂行しなさい」

 

『ハハァッ!』

 

集まって来た信者達は離れてしまった。深月の余波で間引く作戦も無くなったので、土煙が晴れて姿を現した先兵と口遊びをする事にした

 

「まったく、余計な事をしてくれましたね。あのまま集って戦ってくれれば、間引き出来ましたのに」

 

「イレギュラー、貴女の力が強い事は理解出来ました」

 

「そもそもの問題として、あの程度の者達では足止めにすらなりません」

 

「貴女方からすれば、彼等は消耗品という認識でしょう?それでも大切にしようとするとは、中々滑稽ですね。神は人間を玩具として認識している。本当に神の先兵なのですか?」

 

「神の使徒様を馬鹿にするなぁあああ!」

 

狂信者の一人が、深月の言に堪忍袋の緒が切れて襲い掛かる。しかし、振り向かずに黒刀を一閃して真っ二つにする。気付かない内に絶命、幸い畑山からは見えない位置だったので嘔吐する事は無かった

 

「沸点が低い。言葉遊びをしただけでこれとは・・・相手の力量を良く知らない者の末路ですね」

 

「この者達を殺して挑発は無意味です」

 

「素直に思った事を口にしただけですよ」

 

「貴女との口遊びも終わりにしましょう。この状況で逃げられると思わない事です」

 

「逃げる?冗談もそこそこにしてほしいですね。お嬢様に敵意を向けた相手を私が見逃すとでもお思いなら、考えを改める事を提言して差し上げます」

 

言い終わると同時に途方もない殺意の圧力がこの場を支配し、感情の無い筈の先兵達の足が無意識に一歩だけ下がった。初めて感じる何かに汗を垂らした二人。だが、イレギュラーを排除する事が自らの使命。二人は、体験した事の無い闇へと躊躇なく踏み込んだ

 

「死になさい、イレギュラー!」

 

「スヴァール、合わせます!」

 

スヴァールの隙を埋める様にたたみ込むサングリーズ。深月は、魔力糸で作り出した槍を片手に相手の急所へと突き穿つ。しかし、スヴァールの持つ戦斧で切っ先を切り払われる。魔力糸の槍は、バターの様に斬られてただの棒と化した

 

「分解・・・厄介ですね。物理であろうと、魔力であろうと分解してしまう事から分解魔法と名付けましょう。しかし、それは当たらなければ良いだけです。あぁ、言い忘れていました―――――頭上注意です」

 

「これは!?」

 

「範囲攻撃!?」

 

深月の言葉と同時に感じた威圧感にスヴァールとサングリーズが反応、空へと舞った槍の切っ先が小粒の雨となって襲い掛かったのだ。空へと舞った切っ先に重力魔法と形状変化を行使して、空間魔法で空高く転移させたのだ。後は、棒術で地面の残骸を飛ばしたり、切り返しの出来ない個所を攻撃して距離を取る事で自身への直撃コースを外したのだ

 

ズガガガガガガガガガッ!!

 

スヴァールとサングリーズの二人は、殻に籠る様に背中の羽を丸めて防ぐ。その様子をじっくり観察する深月は、はっきりと見た。羽に当たる球が粒子となって霧散した事を

球の雨も終わり、羽を元に戻した二人は仕切り直して深月をより一層警戒する。深月はただ、黙々とその様子を観察する。傍から見ると、一体どちらが有利なのか分からない。畑山が感じているのはまさにこれだ

 

(か、神楽さんがここまで強いなんて。あの銀髪の人二人を相手取ってこの余裕?もしくは表情に出さない様にしているのか分かりません。―――――っ、神楽さん?)

 

膠着する状況を変える為に、深月が黒刀を縦一閃。音速を超えた斬撃がサングリーズに襲い掛かり、地面が削れたと分かるとランスで防ぐ。ギギギッと音を立てて堪える事に成功したと同時に、頭部に走った衝撃。魔力糸で作った不可視の槍が直撃したのだ。たたら踏むサングリーズに追撃をさせまいとスヴァールが前に立って警戒。だが、深月は一向に動かずに黙々と観察を続ける

すると、竜の咆哮が轟く。ようやくティオがこの場へと到着した

 

「ショータイムです」

 

スカートを舞わせる様に大きく一回転する深月を注意深く見る二人。だが、それがいけなかった。深月がスカートの端を摘まみ上げ、二人に鋭い眼光を叩き付けたと同時に皐月印のスタングレネードが炸裂した

 

「ぐっ、眼がっ!?」

 

「スヴァール、防御を!」

 

スカートを舞わせる様に一回転した最中に、宝物庫から安全ピンを抜いた状態でスカートの端に取り出したのだ。後は指先で摘まむ様に持って、上げると同時に擦り落す。二人に落ちるグレネードに視線を奪われるが、炸裂する寸前で威圧を掛けて認識対象をズラしたのだ。結果、二人は深月の一挙一動を見逃さないとしていた落とし穴にまんまと嵌ったという事だ

畑山が何故無事なのか―――――それは、ティオがここに来る直前に念話で目を閉じた状態で胸元に抱き着いて下さいと指示があったからだ。爆音については致し方なし

 

「ティオさん、畑山先生を連れて離れていて下さい。これから周囲の被害を無視して戦います」

 

『わ、分かったのじゃ!妾達は退散するのじゃ!』

 

畑山を背に乗せたティオは、ハジメと深月の戦闘被害に遭わない所まで下がった

 

「さて、お嬢様特製のスタングレネードのお味は如何でしたか?視力の方もそろそろ回復したでしょう?」

 

「・・・イレギュラー!」

 

「確実に殺す」

 

感情が無い筈の二人が、素人目から見ても怒っていると分かる位声に怒気が含まれていた。先程よりも数段早く攻撃を繰り出す二人。だが、深月はその猛攻を捌きながら気づいた点を口に出して述べる

 

「これまで攻撃して分かった事が幾つかあります。貴女方の武器や防具に付与されている分解魔法は厄介です。ですが、攻撃の衝撃までは完璧に吸収出来ていません」

 

避けて攻撃ばかりの深月に苛立ちを覚え始める二人は、自身が気付かない内に攻撃が一直線となっている

 

「であれば、完全に吸収出来ない強力無比な攻撃を前にすれば何も問題はありませんね♪」

 

深月が宝物庫から出したそれは予想外な物だった。銃身が異様に長く、真っ黒なリボルバー拳銃―――――どこぞの吸血鬼さんが扱う対化物戦闘用13mm拳銃である。この先兵達は、中村から拳銃について基本的な事を聞かされており、ハジメと皐月が使う武器で、深月が使うという事はありえないという前提で話を進められていたのだ。しかし、蓋を開けてみればどうだ?ハジメ達が取り扱う銃よりも異質な危険物を持っているのだ。彼女等の本能が大音量で危険信号を鳴らす

深月はスヴァールの胸部に向けて発砲。ノイントと同性能のステータスを持っている為、ハジメ達が扱う銃弾を叩き切る事が出来るが、これだけは違っていた。マズルフラッシュよりも先に、態勢を大きく崩しながら横っ飛びで回避するが、冷や汗を大量に流していた。何故なら、両腰に付いていた傷一つ無い合わせ大剣の内一つが粉々に砕け散っていたからだ

 

「当たれば即死ですか」

 

「えぇ、当たればですがね?」

 

スヴァールとサングリーズは魔力感知で気付いた。深月の拳銃は、魔力を込めたら込めた分だけ弾速が早くなって破壊力が増す。正にインチキなグロテスク拳銃である

 

「しかし、それは魔力を大量に消費しなければそれ程の破壊力を生み出せないという欠陥を抱えています」

 

「確かに燃費は悪いでしょう」

 

「彼女から聞きましたが、その形状の武器は計六回の攻撃しか出来ず、再び攻撃するには補給をしなければいけない。ハイリスク・ハイリターンな武器です。先程みたいに近距離でなければ悠々と回避できます」

 

スヴァールとサングリーズは空へと飛び、深月を見下ろしながら注視する。深月の方も、離れていては当たらないと分かり切っているので、空力で跳ね上がって大量の魔力を拳銃に込めていると、いきなり魔力が霧散した

 

「?」

 

体から魔力が霧散している様な感覚に、頭を傾げる深月

 

魔力が霧散というよりも抜かれているという表現が一番ですね。これでは銃に魔力を貯める事が出来ませんし・・・原因は?

 

自身の身に何が起きたか分からない状態でスヴァールとサングリーズがこれ好機と襲い掛かる

 

「最初は役に立たないと思っていましたが、今回だけは良い仕事をしましたね」

 

「イシュタルといいましたか、あの人間には後程褒章を与えるのも良いかもしれませんね」

 

「なるほど・・・見逃すのではなく、殲滅した方が良かったという事ですね」

 

地上の離れた所でイシュタル達が歌っている。正直気持ち悪いと思いながら、狙撃する。しかし、障壁が張られているのか攻撃が通らなかった

 

「吸収した魔力で結界を張っているという事ですか」

 

「よそ見が出来ると?」

 

「それは慢心です」

 

「いいえ、慢心はしていません」

 

前後から戦斧とランスの攻撃を紙一重で躱して黒刀の斬撃で二人を吹き飛ばすが、彼女等は吹き飛ばされながら深月へと分解魔法を放った。動く事の出来ない行動直後の攻撃、動かない深月を見つつもう一度分解魔法を放つ。しかも、逃げる事が出来ない様に上下と押し潰す形の攻撃。銀の極光が深月を飲み込み、手ごたえを得た二人は一息入れようと息を吐いた瞬間

 

「分解魔法を有難う御座いました。それでは、お別れです」

 

「なっ!?」

 

「スヴァール!!」

 

無音加速で一気に懐に飛び込んだ深月は、腰溜めにした右拳をスヴァールの胸部に穿つ。スヴァールは、とっさの判断で戦斧を深月の胸を刺し貫く。しかし、深月を刺し貫いた感触は無く、自分の胸部を穿たれた感触だけがあった

 

「ゴフッ・・・な、ぜ・・・・・」

 

深月の腕が引き抜かれると、瞳の光を無くしたスヴァールが地へと墜落した。その事実にサングリーズが驚愕したが、深月に向かって再び分解魔法を放つ。極光に飲み込まれたが、傷一つ無く立っている深月の姿を見て呆然としている

 

「止まっていますよ」

 

「はぁっ!!」

 

ランスを右手に、腰の合わせ大剣を左手に持って深月に攻撃する。刺して、斬って、払って、打ち付けて――――色々と攻撃を繰り返すも、その全てに手ごたえが感じられない。サングリーズの心にじわじわと恐怖を植え付けていく深月

 

「何故・・・何故!何故死なない!死ね!死ね!死ねえええ、イレギュラーああああ!!」

 

武器が体を攻撃する毎に、一歩、また一歩と近づいてゼロ距離となる。大振りでもう一撃攻撃すると、遂に深月の体は粒子となって消えた。肩を上下させて息を切らすサングリーズは、「倒した?」呟いて目の前から消えた存在に安堵。そして、ハジメと戦っているであろうノイントに助力しようと振り返る。だが、彼女の目の前に映るそれは、先程まで嫌と言うまで見知った服と白に近い銀の髪―――――気配が全く無い深月が背後に居たのだ。上半身だけの姿、まるで亡霊を見ているかの様だった

 

「抵抗は終わりですか?親へのお別れは?恐怖で震えあがる準備はOK?」

 

「ヒィッ!?く、来るな!来るな来るな来るなくるなくるなクルナクルナクルナクルナァアアアア!」

 

再びわめき散らしながら武器を振るうサングリースだが、深月の手がゆっくりと胸に突き入れられる。徐々に消え行く自分の胸。恐怖のあまり逃げ出そうとしたが、体が全く動かなくなった。例えるなら、生きたまま蜘蛛に喰われる様なものだ

 

「ァアアアアーーーーー!!」

 

「感情の無い人形に恐怖を植え付ける事が出来て、楽しかったですよ♪」

 

深月の手がサングリースの心臓部に届き、瞳の光を失って墜落。深月の手によって墜落した先兵を見たイシュタル達は、恐怖と狂乱に陥り発狂していた

ふと、深月はある事を思い付いて墜落した先兵の下へ降り立ち、死体を宝物庫へとしまい込んでハジメの下へと向かおうとした

 

さて、ハジメさんの方も終わったでしょう―――――ッ!?

 

唐突に感じた悪寒に反応した深月は、金剛と超硬化で体を強化して、更に魔力糸のドームを作り終えたと同時に襲い掛かった爆発の衝撃。木々や瓦礫の破片がドームの一部を抉り、ギリギリ防ぐ事に成功した

 

ど、どうして爆発したのですか!?ハジメさんの持つ武器でもこれ程までに広範囲爆発を引き起こす物は無かった筈です・・・

 

すると、念話石からこの爆発の原因をティオが語り納得出来る代物だった

 

土を発酵させて可燃性ガスの生成、からの爆発とは・・・畑山先生、ガス爆発の威力は知っている筈では?余裕が無くて、結界を破壊できるか分からなかったと。・・・取り敢えず、発酵のガス爆発は厳禁です。私はその爆心地近くに居たのですよ?あぁ・・・はい、そうですか。終わり良ければ総て良しと―――――私は赦しませんから、そのつもりでいて下さい。大丈夫です。何も武力でどうこうするわけではありません。後程楽しみにして下さいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

神の先兵の一人、ノイントを倒したハジメ。かなり厳しい戦いだったが、持ちうるアーティファクトのほぼ全てを使ってやっと勝てたという厳しい勝利だった。激闘を戦い抜いたハジメを待っていたのは、神山に建っていた聖教教会の爆破であった

 

「・・・うそん」

 

キノコ雲が出来る程の強力な爆発に、もの凄くドン引きしたのだ。「何がどうなってああなった!?」と叫びたいが、その余力すら無い状態だ

 

(ご、ご主人様よ・・・そっちはどうじゃ?)

 

(お?おぉ、ティオか。いや、こっちはちょうど終わったところなんだが・・・)

 

(ふむ、それは重畳。流石、ご主人様じゃ。丁度こちらも終わったところなんじゃが、合流できるかの?)

 

(いや、それが何かスゴイ事に・・・)

 

(・・・その原因は分かっておる。というより、妾達のせいじゃし・・・)

 

(・・・何だって?)

 

あの爆発を先生とティオがやっただと?いったいどういう事だってばよ・・・

 

(あの爆発はお二人のせいだったのですね・・・)

 

(深月の方は倒せたのか?)

 

(そ、そうじゃ!深月は二人相手取っておったが大丈夫かの?)

 

(えぇ、大丈夫でしたよ。神の先兵相手には)

 

あっ、これはヤバイな。深月の奴が珍しく怒ってる―――――となると、あの爆発に巻き込まれたのか?ってか、よく生きてたな

 

深月の物言いが何時もより違う事に気付いたティオは恐る恐る尋ねる事にした

 

(・・・もしかせんでも、深月はあの爆心地の近くに居たのかの?)

 

(居ました。私は、物凄く久しぶりに悪寒を感じましたよ。ドームを作って身を硬めなければ、確実に死んでいました)

 

(す、すまんかったのじゃあああああああああ!ま、まぁ終わり良ければ総て良しとも言うじゃろ?だから怒らないで欲しいのじゃ)

 

(無理です♪)

 

(諦めろティオ。今回ばかりは、お前と先生の二人が悪い)

 

(ちょっと待つのじゃご主人様!深月が怒っておるから妾達を差し出すのじゃろ!?せめて妾だけでも弁明して欲しいのじゃ!!)

 

えぇ~・・・嫌だなぁ)

 

(聞こえとるぞおおおおおおお!)

 

(それはともかく、今は合流するぞ)

 

(妾達の事はどうでもよいのか・・・仕方が無いのじゃ。腹を括る他ないのう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、上空へと跳び上がり深月とティオ達と合流した。まぁお約束のお叱りが待っていた

 

「まったく・・・ティオさんは知識が無い分特に追及はしませんが、畑山先生は別です!教師なのですから可燃性ガスの爆発威力の予想位は出来るでしょう!?教会で私達にデバフを掛けていた者達の処理をしてくれた事には感謝しますが、危うく死ぬところでした!」

 

「ぐすん・・・はい・・・すみません」

 

う~ん、このお説教を見ているとまるで子供を叱るメイドさんとしか見えねぇ」

 

「わ、私子供じゃないのにぃいいいい!南雲君にも子供扱いされたあああああああ!」

 

「あっ、思ってた事がつい出ちまった。すまん」

 

「いいんです・・・どうせ私は子供先生なんです。生徒を殺そうとしたダメダメ教師なんです・・・」

 

畑山の自虐が天元突破状態だ。ハジメに関しては言い過ぎだが、深月に関しては仕方が無い。もしも、深月の居た場所にハジメが居たら・・・確実に爆発に巻き込まれて大怪我をしたか、最悪死んでいただろう

畑山は、生徒である深月に怒られ、あの様な惨状を引き起こし、覚悟していたとはいえ教会の者達を木端微塵にした罪悪感と色々が押し寄せ、その場で嘔吐してしまった

 

『妾の背中が・・・』

 

「私が清潔しておきますので、我慢して下さい」

 

ハジメの胸元に畑山が縋り付いて泣いており、深月は汚れている所を清潔でキレイキレイする。ティオは、再生魔法で畑山のすり減った心を少しばかり癒して落ち着きを取り戻させた

 

「落ち着いたか?先生」

 

「は、はい。も、もう大丈夫です。南雲君・・・」

 

「ハジメさん・・・またしてもフラグを建てますか」

 

「おいいいいいい!?それは今いう事か!?」

 

俺って何かとヤバイ状況に居るよな?先生は先生で顔を紅くするし、深月は避けない事を苦言するしでしっちゃかめっちゃかだろ!

 

色んな事から目を逸らそうとしたハジメ。しかし、深月とティオの警戒心を含んだ声が届く

 

『ご主人様よ。人がおる。明らかに、普通ではないようじゃが』

 

「気配が無いですね。しかし、ゆらゆらとして見えている・・・神山の大迷宮は魂魄魔法。この場に定着した魂が現れているという事でしょうか?」

 

「何だって?」

 

禿頭の男は、ハジメ達が認識したのを確認したのか、そのまま無言で重力を感じさせずに瓦礫の山の向こうへと移動した。そして、視界から消えない程度の所でハジメ達の方に振り返って待機している

 

「・・・ついて来いってことか?」

 

『じゃろうな。どうするのじゃ、ご主人様よ』

 

「・・・そうだな、さっさと皐月達と合流はしたいところだが・・・元々、ここには神代魔法目当てで来たんだ。もしかしたら、何か関係があるのかもしれない。手掛かりを逃すわけにはいかないな」

 

ハジメ達は、ティオの背から降りてそのまま男性の後ろを辿る様に付いて行く。しかし、何事も無く進む。そう、本当に何も起きないのだ

 

「何かしらの試練があると思うのですが、何もなさそうですね」

 

「いや、既に試練が始まっている可能性もあるんじゃねぇか?」

 

「試練って・・・前に言っていましたよね?死ぬ可能性が高いと・・・」

 

「迷宮を作ったやつらのコンセプトが何なのか分からないから何とも言えないな」

 

しばらく進むと、目的地に着いた様に真っ直ぐハジメ達を見つめながら静かに佇んでいた

 

「あんた、何者なんだ?俺達をどうしたい?」

 

「・・・」

 

ハジメの質問には答えず、黙って指を指す。その場所は変哲も無い瓦礫の山だが、禿男は進めと言っている様だった。警戒をしながら瓦礫の上に立つとその瞬間、瓦礫がふわりと浮き上がり、その下の地面が淡く輝き出した。しかも、そこには大迷宮の紋章の一つが描かれており、彼が何者なのかを指示していた

 

「彼は解放者なのですね」

 

「オスカーの日記やミレディからの情報だと、解放者の一人――――ラウス・バーンって所か」

 

地面が淡く輝いてハジメ達を包み込むと、見知らぬ空間に立っていた。左程広くは無いが、光沢のある黒塗りの部屋で、中央に魔法陣が描かれており、その傍には台座があって古びた本が置かれている。恐らく解放者の拠点だろう。時間が惜しいので、畑山には何も言わずに魔法陣の上に立つと、何かが入り込んでくる感覚に三人はうめき声を上げる。深月も嫌そうな顔をしつつ、声には出さない。あまりの不快感に、罠かと思ったが、あっという間に霧散した。それと同時に、頭の中に直接、魔法の知識が刻み込まれた

 

「魂魄魔法・・・」

 

「う~む。どうやら、魂に干渉できる魔法のようじゃな・・・」

 

「なるほどな。ミレディの奴が、ゴーレムに魂を定着させて生きながらえていた原因はこれか・・・」

 

「恐らく、先程の不快感は最終試練か何かだったのでしょうね」

 

「先生、大丈夫か?」

 

「うぅ、はい。何とか・・・それにしても、すごい魔法ですね・・・確かに、こんな凄い魔法があるなら、日本に帰る事の出来る魔法だってあるかもしれませんね」

 

畑山は、初めて経験する頭痛にこめかみをグリグリしながら納得したように頷く。その表情は疲れ切ったものだが、帰還の可能性が現実味を帯びてきているので少しだけ緩んでいる

 

「それじゃ、魔法陣の場所もわかったことだし、早く皐月達と合流しよう」

 

「あっ、そうです!王都が襲われているんですよね?みんな、無事でいてくれれば・・・」

 

心配そうにする畑山を促して、神山を下山するハジメ達。神山から王国へと続くリフトがあるのだが、そんなにゆっくりとも出来ないので、畑山には悪いが強制フリーフォールを体験することになった。悲鳴が木霊するもハジメ達は無視して王国へと降り立ち、戦力不足である香織達の方へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「うん。メイドさんが色々とインストールしています」
深月「ハジメさんに渡された拳銃はとても使い心地が良いです」
布団「魔力込める量によって威力が変わるなんて・・・銃の常識を崩壊させています!」
深月「ハジメさん曰く、内部バレルをアザンチウムにする事で摩耗を防ぐそうです」
布団「お嬢様も新しい武器をツクッテソウダナー」←フラグ
深月「しかしながら、私はよく生きていましたね。防御が間に合わなければどうなっていた事か・・・」
布団「戦略兵器となり得る先生パネェ!」
深月「それでは、次話の投稿をお待ち下さい」
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