ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】 作:ぬくぬく布団
深月「お嬢様の活躍を見たかったです・・・」
布団「仕方がないんや。先兵が複数いたら、主人公だけでは勝てんのよ」
深月「頼りになる分には良いのですが、私が過労死してしまいます」
布団「お嬢様のドーピングするから問題ない!」
深月「楽しみにしています♪それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」
~皐月side~
ハジメと深月の二人が先生を、私とユエとシアとティオは魔物の駆除、香織とリリアーナは勇者(笑)の所へ。役割分担を決め終え、ハジメ達を神山手前で降ろして移動。王国へと続く街道に香織達を降ろして、私達は魔物達が出現するであろう平原に降り立った
深月の考察から予測して、魔人族が魔物を率いて出現するのはこの平原以外にはありえないわ。恐らくタイミングは、王国の結界が破壊された直後の筈・・・。偶には私自身で予測しないと、この先苦労しそうよね~。特に、地球に帰ってから
皐月達は、平原へと降りて四輪を宝物庫に収納して、再び作戦会議を開く
「魔人族達が空間魔法で現れるのは、この平原以外ありえないわ。王国内部に――――と考えたけど、精密なイメージが出来ない筈だからそれも却下。よくても、小型の魔物を解き放つ程度だと思った方が良いわ」
「・・・配置はどうする?」
「ティオは、上空に現れる小型の竜を相手して。ユエとシアは地上戦。私は両方よ」
「ドリュッケンが火を噴きますぅ!」
「・・・新しい魔法の実験台」
「本物の竜の力を見せつけてやるのじゃ」
各自の意気込みは十分。一応、念には念を入れての対策も立てる
「良い?もしも、神の先兵が現れたら私が相手をするわ」
もしも、魔法が全く効かず、物理耐性を持っているとしたらと思うと、特化型のユエとシアは間違いなくやられるだろう。唯一バランスの良いティオならばと思ったが、ステータスの事を思うと力不足だと感じたのだ
「先兵の強さが分からん事には何とも言えんからのう」
「この中で一番強い皐月さんなら余裕ですよね!」
「・・・皐月でも厳しいかも」
「えぇ~、深月さん程じゃないですが、皐月さんも化け物級ですよ?」
「うむぅ・・・正直言うと、ご主人様達が苦戦する姿が思いつかないのじゃ」
「二人は奈落の最下層で見た、先兵を模したゴーレムを見ていないからそう言えるだけ」
「あれはヤバかったわ。ステータスが今よりも遥かに低かったけど、十分強い深月を圧倒してたわ。竜化状態のティオよりも高いステータスにも拘らず、力強さに圧倒されていたのよ」
二人は想像した。竜化状態のティオよりもちょっと高いステータスの深月を思い浮かべて、皐月が言った事を想像すると
「「どんな化け物ですか(なのじゃ)?」」
「私でやっと勝てる位だと思いたいわ。・・・深月は、「技量を持っていても、力の前にはその意味を成さない」と言う程のステータスでしょうね。しかも、技能が何一つ無い状態でそれなのよ?」
「深月の超絶技術と策と罠の全てを総動員して勝てた相手。五人で深月と戦っても、直ぐに負ける私達じゃ不可能」
「マジですか・・・皐月さん、深月さんの技術だけで凌がれる私達で勝てますか?」
「深月相手に使ってないアーティファクトを惜しみなく使うから大丈夫よ。私とハジメのステータスだと、先兵と変わらない位って深月が言っていたわ。後は個人の技量勝負よ」
「深月が断定するのであればそうなのじゃろう」
「まぁ、今は魔人族よ。先兵がこちらに来る可能性が低いとはいえ、私達のやる事は変わらないわ」
「ん!」
「ですぅ!」
「そうじゃな!」
「それじゃあ、二人には左右を任せるわ。蹂躙の時間よ!」
ユエとシアが左右に別れると――――
パキャァアアン!!
何かが砕け散る音が響き渡った。恐らく王国を守っている大結界が壊されたのだろう。すると、その音を合図に、皐月達が視線を向けている前方の空間が揺らいて魔物達が大量に出現した。そして、魔物に交じる魔人族がちらほらと見える
ティオは竜化で空へと駆ける。先制攻撃としてブレスを小竜に放ち、燃やし尽くした。現れて早々に小竜の群れの一部が倒された事に驚き固まっている魔人族は、皐月が頭部に照準を合わせている事に気付かず頭部を粉砕された
「さて、行くわよ!」
空力で空に跳ね上がり、ウルの街でも使った炸裂弾を放って絨毯爆撃を開始した。強襲によって人間側を混乱に陥れようとした魔人族だが、反対に強襲された事で自陣が混乱に陥り指揮系統が乱れる
「何が起こっている!?これはどういうk―――――ギャアアアアアアアアアア!」
「くっ、魔法隊は空の人間を撃ち殺―――――」
ズドオオオオオン!
皐月は、上空から指揮官と思われる魔人族のみを狙撃する。中央から広がる混乱は周囲へと広がり、左右にも浸食する。丁度、左右に混乱の波が来たと同時に、ユエとシアが襲い掛かる。中央へと向いていた意識がいきなり前方へと移り、更なる混乱が魔人族達を襲った
「良い感じね、これで上空からの爆撃は終了。ここからは新兵器の出番よ!」
宝物庫から取り出されたそれは、ミニガンのメツェライと似通った形をしている。しかし、その銃身はフラッシュストライクの銃身を細く、長く、と改良をされている物だった。皐月が神結晶の腕輪を外して、カードリッジ部分に装着。その隙をチャンスだと思い込んだ魔人族達は突撃を開始する
「今だ、あの人間を殺せ!全軍突撃ぃいいいいい!!」
雄叫びを上げながら皐月へと群がる魔物と魔人族。皐月は、両手に持つそれを前方に構えて魔力を送り込む。キチキチキチと音を立てながら、ゆっくりと銃身が回転。だんだんと回転速度が上がり、まるで早く撃たせろと言いたげに甲高い音を鳴らす
キュイイイイイイイイイイイイ!
不気味な音を立てるそれに、臆する事無く突撃を続ける彼等の脳裏に過去の映像が高速で流れる
「"ミーティア"の餌食になりなさい」
ギュババババババババ!
ミーティアのトリガーを引くと同時に放たれる紅い魔力の球は、魔物達を貫通して後ろの魔人族達にも襲い掛かる。弾速は衰えず、威力もそのままで奥へ奥へと突き進むそれは凶悪極まりない攻撃だ。紅い球が通った場所には、体に複数の穴を空けた死体が築き上がる
キュィィィィィン・・・キチキチ・・・キチ・・・キチ
一仕事終えたぜ!と言いたげに回転を止めた筒は、銃身の先が少しだけ赤くなっている。すると、悪寒に駆られて伏せていた部隊だろうか?彼等は立ち上がり、仲間の死体を乗り越える様に皐月へと突撃して来た。恐らく皐月の攻撃が止み、持っている武器の先が赤くなっている事から攻撃が来ないと理解したのだろう
「今だ!あれが赤くなっている今がチャンスだ!仲間の仇を討てぇええええ!」
『うぉおおおおおおおおお!』
先程よりも大きい雄叫びを上げながら近づいている魔人族。リーダーと思わしき男の表情は、「今なら攻撃できまい!」と言いたげにニヤケている。しかし、悪夢はここからだ。皐月がこの程度で終わらせると思うだろうか?そもそも、フラッシュストライクを作ったのは皐月である。手に持っているミーティア本体の上にレバーを起こすと、銃身がポンッと外れた。そして、宝物庫から新しい銃身を取り出したのだ。しかも、形が物凄く歪で、一本の筒から四つのガトリングガンの銃身が付いているのだ。新しい銃身を取り付けたミーティアを見て、顔を引き攣らせる魔人族の男。だが、ミーティアのギミックはこれだけでは無かった
「ミーティア"コネクト"!」
御分かりだろうか?皐月は、義手の右腕をミーティア本体の後ろ部分に直結させた。これで狙い撃ちも容易となり、更なる殲滅力を手に入れたのだ!
「ミーティア・ブラストモード。最初から一気に行くわよ!」
先程とは違い、いきなり甲高い音を鳴らす。真ん中の柱を支点に回転を始めた四つは、その回転と連動する様に一つ一つのガトリングガンの砲身も回転を始めた。四つの銃身から放たれる魔力の弾丸の壁は、伏せて回避をしようとした魔人族を飲み込んで穴だらけにした
余談だが、皐月曰く、「四つのガトリングガンの砲身も回転した方がカッコいいでしょ?」というだけの理由で回転させている
「実射してみたけど・・・とんでもないわ」
グズグズの穴だらけの者達を見て、素直に思った事だった。皐月自身も、これ程の火力が出るとは思っていなかった。すると、筋肉で一際大きい魔人族一人だけが生き残っていた。よく見ると、当たった場所が少し焼けている程度の軽傷―――――何かしらの技能があって防ぐことが出来たのだろうと理解した
「この弾幕でよく生き残れたわね」
「化け物が!金剛と熱耐性が無ければ死んでいたところだ」
「一人で私と勝てるのかしら?」
「勝てはしないだろう。だが、一緒に死んでもらうぞ!」
目の前の魔人族の男は、ペンダントの様な物が幾つか身に着けられていた。これは、魔力を流す事で発動する爆弾。王国の兵士が持っていたのを奪っていたのだ
「アルヴ様ばんざああああああい!」
起動すれば止める事は出来ないそれが、合計五個。皐月程の猛者を倒すのであれば惜しみないと感じたのだろう。だが、皐月は落ち着いて対処する
「残念だけど、道連れは御免よ」
ここからがブラストモードの真骨頂。真ん中の柱が開き、中から銃身が伸びると同時に回りが高速回転を始める。赤い稲妻が迸り、真ん中へと集約され拳大の大きさになったと同時に発射。その衝撃は凄まじく、反動で十メートル程大地を削りながら後退した
ズガアアアアアアアアアアン!
直撃した魔人族はおろか、射線上の死体も全て飲み込んで存在そのものを消滅させた。皐月は、放熱するミーティアを急いで外し、宝物庫へと仕舞った
「うん、この威力ヤバイけど・・・隙が大きいわね。実力が拮抗している場面だと使えないわ」
すると、上空から聞き覚えのある声が響く
「あの場面からどうやって生き残ったのかは分からないが、貴様達は危険だ」
グリューエン火山で出会った魔人族―――――白竜に乗ったフリードがようやく現れたのだ
「やっと会えたわね。私の深月を傷付けた罪をお返ししてあげるわ」
「我らの同胞を殺した貴様は確実に殺す!」
開幕早々、シュラーゲンでフリードを狙撃する皐月。だが、出会ったとき同様障壁に阻まれて弾かれる
「無駄だ。あのメイドでなければ、この障壁を破る事は叶わん。撃て!」
「見え見えの攻撃に当たるわけないでしょ!」
皐月は、白竜のブレスを悠々と回避しながら宝物庫から新しい武器を取り出す。銃口が広いが、ありふれたライフル型の銃だ。それを見て嘲笑うフリードは、空間魔法の呪文を唱え始める。皐月はその銃に弾丸装填して、神結晶の腕輪をライフル上部に差し込んだ
「界穿!」
フリードは、火山の時と同様に白竜と一緒に転移する。その間、皐月は目を閉じて集中―――――そして、迷いなく左側に銃口を向けて引き金に指を掛けて引いた。射線の先には、白竜と一緒に現れたフリードが居た。フリードは、現れた瞬間に銃口を向けられた事に気付いて咄嗟に横っ飛びで回避した。フリードはこの時、避けなくても障壁があるから大丈夫だったと体勢を崩した事に悪態をつこうとした。しかし、皐月から放たれた弾丸は障壁を易々と砕いて、亀形の魔物を掠めた。障壁が破られた事に驚愕して、亀形の魔物の様子を見て更に驚愕した。掠った筈の魔物は、その場所が抉られたかの様な傷があり、少しして体を傾けて絶命した
「死になさい!」
亀形の魔物に気を取られた瞬間、フリードへと襲い掛かった皐月の右拳が腹部に直撃。フリードは寸前で後ろに跳ぶ事で衝撃を少しだけ逃す事に成功したが、皐月のステータスで殴られただけでも尋常では無い痛みとダメージを負った。白竜の背から吹き飛ばされて空へと放り出されたフリードは、小竜の背に着地した事で落下という難を逃れる事に成功した
「ちっ、逃した!」
皐月は、白竜の背を全力で叩き踏んで白竜を墜落させる。そして、地面へと墜落した白竜をそのまま殺す勢いで炸裂弾を大量に撃ち込んで沈黙させた
「今度こそ、その命刈り取ってやる!」
だが、フリードはその間に空間魔法の詠唱を唱え終えており、自分と白竜を対象にこの場から逃走したのだった。皐月は舌打ちして、高ぶった感情を冷やして落ち着きを取り戻していく
「ふぅ~、殺し損ねたか。私もまだまだね。冷静に考えれば、白竜と一緒に逃走する可能性もあったのを忘れていたわ」
皐月が周囲を見渡すと、爆撃や魔法の衝撃で抉れた地面を見て、「復興が大変そうだなぁ~。まぁ、命あっての物種よね」と興味を無くした。王国はどんな感じになっているのかと遠目に見ていると、ドォオオオオオン!という爆発音が聞こえそちらに目を向けると、神山にキノコ雲が出来ていた
「・・・は?キノコ雲?え?」
皐月は、ありえないものを見て混乱していると、ユエとシアが皐月に合流した
「皐月、あれ!」
「何ですかあれ!?ハジメさん達は大丈夫なんですか!?」
「わ、私だって知らないわよ!?あんな破壊力のあるアーティファクトなんて作ってないわよ・・・」
皐月は念話で深月に尋ねて、事の顛末について聞いて納得した
「先生ェ・・・」
「ウルの街の?」
「あの先生がやったんですか!?」
「あー、爆発する元を作ったのが先生で、火種はティオね。私達の故郷で言うガス爆発が原因なの。先生が可燃性ガスを作って、ティオのブレスで爆発させたんだって」
ガスの知識が無いユエとシアは、首を傾げて全く分からないご様子
「例えるなら・・・無色透明な火薬が大量にある所に火を放った結果があれよ」
「火薬?」
「ってなんですか?」
「・・・・・やっぱり後で説明するわ」
「それよりも、あの魔人族はどうなった?」
「皐月さんの所に居たんですよね!殺りましたか?」
「残念ながら逃げられたわ。つい、熱くなって簡単な事も忘れてしまったのよ」
「深月を傷付けたのは大罪。今度は私も一緒に殺る」
「熱くなってしまうのは当然ですよ~。私もぶっ叩きたかったですぅ!」
フリードを殺りたいのは二人共同じ。深月によって如何に餌づけされているか良く分かるだろう
「魔物って王国内部にも居るのかしら?」
「中は見れなかったけど、外壁周りには居た」
「じゃあ、外壁に居る魔物達を手早く片付けるわ」
「一番槍行ってきますですぅ!」
「シア、ズルい。・・・私も」
皐月は、競争する様に外壁に固まっている魔物の群れに突っ込むユエとシアを見てヤレヤレと肩を竦めて殲滅をしに行った
「これでトドメですぅ!!」
シアのドリュッケンが火を噴いて、魔物の体をミンチにして殲滅が完了した
「いや~、これまでの鬱憤を晴らせて気分爽快です!」
「・・・バグウサギ」
「シアがここまで強くなるなんて想像していなかったわ。再生魔法と相性良すぎでしょ」
今現在のシアのスペックを簡単に説明しよう。再生魔法で、傷を治し、体力を回復させ、状態異常を治す物理特化戦士。尚、未来視の派生技能も獲得しており、数秒先の未来を自由に見れるというお化けになっている。しかし、深月との組手ではあっという間に組み伏せられてしまったりしていたので、自分がどれ位強くなったのかを中々実感する事も出来なかったりしていた。未来が見えていたら対処できるだろうと思われがちだが、それは全くの見当違いである。未来が見えても、自分ではどうする事も出来ない技を繰り出されたらどうする?―――――何も出来ない。もしも、対処出来るのであれば、それは行動の選択肢が増えるというだけだ
「いやぁ~、深月さんと比べたらまだまだですよ~。ハジメさんや皐月さんやユエさんにも勝てませんし」
「シアは未来視に頼り過ぎているのよ。今でこそまだマシだけど、以前のゴリ押し戦術は悪手よ。今回もゴリ押しで攻撃していたでしょ?深月が見ていたら一対一の訓練直行よ」
「うぐぅっ!?そ、それだけは勘弁して下さい。・・・あれは悪夢です」
「深月からすれば、私達が死なない様にギリギリを見据えての訓練なのよ」
「・・・でも」
「分かっているとはいえ、もう二度とやりたくないと声を大にして叫びたいわ」
何を隠そう―――――香織を除くハジメ達五人は、深月と一対一の訓練を行った事があるのだ。ハジメと皐月とユエは二桁に及び、シアは八回と、もうすぐハジメ達の二桁の仲間入りだ
「話は戻って、さっきシアがミンチにした魔物で最後ね」
「生き残りを探しますかぁ?」
「・・・手負いなら兵士でも倒せる」
「生き残りに魔人族が居たら排除しましょ」
「「わかった(ですぅ)」」
皐月達は、生き残った魔人族が居ないかどうかを確認しながら王国内に居る香織達の元へと向かった
~香織side~
時間は少し遡り、皐月達と別れて街道を走って王国に帰還した香織とリリアーナは、急ぎ勇者(笑)の下に急ぐ
「リリィ、まだ走れる?」
「ゼェッ、ゼェ・・・香織は何時それ程までの体力をつけたのですか?」
「・・・深月さんの訓練は地獄なの。死なないギリギリで走らされてね」
「そ、それは・・・さぞかし大変でしたね」
香織が体験談を語る時、遠い目をしていた事に察したリリアーナ。恐らく、倒れる寸前まで走らされたのだろうと簡単に予想出来たのだ
「って、今はそれどころじゃなかった。早く雫ちゃん達を助けに行かなきゃ!」
「神楽さんが中村さんが裏切り者と言っていましたが・・・信じたくありません。しかし、あの話を聞けば聞く程現実味が帯びていました」
「ユエ曰く、名探偵深月さんらしいよ?オルクス迷宮を攻略している時に、この世界の謎の核心に至ったって言ってたの」
「本当にメイドなのか怪しいです。密偵と言われた方が納得出来ます」
「深月さんだから仕方がないよ」
地球に居た時の香織は深月を完璧なメイドさんと認識し、トータスに来た直後は超人メイドに切り替え、一緒に行動していく内に究極完全体チートメイドと割り切る事にした
二人が王国内を走って王宮手前まで到着すると、大きな破砕音が響き渡った
「結界が!」
「リリィ、私の傍から離れずに急ぐよ!」
王宮へと入った直後に王国内に響く悲鳴と絶叫が聞こえ、とっさに振り返ると魔物達が住民達を襲っていた。香織は、手に持つ杖の握る力が強くなる。本当なら彼等を助けたいと心の底から思っている。しかし、事前に深月から忠告をされており、膨大な魔力を持ってない香織では救えないと。自分すら守れない者が他人を護る傲慢は捨てろと―――――。結界を扱えるリリィと一緒に居るが、遠目から見る魔物達の強さの前ではギリギリも良い所だろう
「・・・急ごう」
「・・・はい。急ぎましょう」
勇者(笑)と合流する事を前提としている香織は、襲われている住民を護れない罪悪感を感じながら王宮内部を走る。最初は各自に割り振られていた自室へと向かおうとした香織。だが、深月との地獄の訓練で散々言われた一言を思い出した
「リリィ、こういう場合は何処に集まると思う?」
「恐らく騎士団達と合流する筈です。だとすれば、兵舎の近くにある鍛錬場付近かと思われます」
"心は熱く、頭は冷静に"
深呼吸を一つし終え、気持ちを最悪の展開が起きた場合の対処に切り替える。周囲に敵が居る事を前提に慎重に、急いで鍛錬場へと到着する。そこで見たのは最悪の光景だった
全員が騎士団の男やメイドに組み伏せられ、首輪を付けられていた。しかも、元凶が八重樫の前に立って剣を持ってヘラヘラと笑っていたのだ。激情が香織を支配しそうになるが、直ぐに落ち着かせて小声で詠唱を開始。本来の性能で展開できるよりも長めの詠唱を唱えて、完璧に防ぐ準備をする。元凶が、その凶刃を振り下ろしたと同時に駆け出してトリガーを引いた
「聖絶!」
凶刃と八重樫の間に展開された障壁は、その刃を止めて元凶以外の者達を驚かせた
「雫ちゃん!」
「香織!?」
「行って!」
香織の言葉と同時に、障壁が元凶に突撃。驚いた表情をするが、腕を交差して直撃を防ぐ。しかし、障壁の激突の衝撃はすさまじく、後方へと吹き飛ばされた
「光輪!」
その隙を逃さず、心の中で詠唱と強力なイメージを用いてトリガーを引く。光の紐が地面から伸びて、拘束していた者達の四肢に絡まり付いて動きを封じる
「香織・・・どうして?」
「雫ちゃん!待ってて!直ぐに助けるから!」
八重樫が何か言いたげだが、全員の傷が酷い。香織は急いで範光系最上級回復魔法"聖典"を唱える。アンカジや訓練で鍛えに鍛えた努力が実を結び、数秒の詠唱にトリガーを引いて一気に全員の傷を癒した
「っ!?なんで、君がここにいるのかなぁ!君達はほんとに僕の邪魔ばかりするね!僕の予想だとあのクソメイドが来ると思っていたんだけど!」
「深月さんとは別行動だよ、恵理ちゃん。・・・いや、中村さん!」
香織は再び聖絶を"中村が避けやすい間隔"で飛ばす。それと同時に、光輪で動きを封じている騎士団やメイドに障壁を飛ばして、直撃すると同時に爆破させて遠くへと吹き飛ばす。それと同時にリリアーナが香織と合流して、一気に形勢が逆転する
「やはり・・・神楽さんの考察は当たっていたのですね・・・。お父様、お母様、皆さん、ごめんなさい」
「チッ、色々と大変だったのになぁ~。まぁいいや、ゴミはゴミで始末すれば問題ないよね!」
「くぅっ!」
中村は、次々と飛んで来る障壁を悠々と回避して香織へ近づく。三日月の笑みを作って、香織と目と鼻の先の手前で正面から飛んで来る障壁を避けたと同時に、横へ大きく弾き飛ばされた
「グハッ!」
「聖絶!」
吹き飛ばされて地面へと倒れたと同時に、自身を中心としたドーム状の障壁を展開した。これで、障壁の中に居るのは香織とリリアーナの二人と、中村を除いた迷宮攻略組達である。この障壁を破壊されない限り一応安全である
ヨロヨロと立ち上がる中村は、狂気を孕んだ眼で香織を睨み付ける。香織も中村の眼を見て嫌な感じがして、一挙一動を注視する
「いや~、君は南雲と合流してから強くなり過ぎでしょ。何?詠唱が要らないとかチートじゃん。全く苛立たせてくれるよ。良かったら詠唱が必要無い裏技教えてくれない?そうしたら、この場は見逃してあげるからさ」
「確かにチートだよ。でも、それは努力したから・・・それ以外の言葉は見あたらないよ」
上から目線でこちらを挑発する中村に、冷静に対処する香織
「そっかそっか、努力か。それなら、僕の努力と君の努力のどちらが優れているか―――――勝負しようか♪」
中村は詠唱をして、炎系上級攻撃魔法を行使。しかし、香織の障壁は砕けない。メラメラと燃え揺らぎる炎の間からチラチラと見える中村の表情を見ていると、一瞬――――そう、ほんの一瞬だけ三日月に歪んだと同時に背から感じた悪寒。深月と訓練した時に感じた悪寒と同等なそれに驚愕して振り返る。それと同時に聞こえる幼馴染とリリアーナの声
「「香織避けて(下さい)!!」」
振り返った先に見たのは、槍術師の近藤の槍が香織の胸元へと迫っていた。目を見開き驚愕した香織の意識は、そちらへと割かれて障壁が消える。背から感じる熱量と目先の槍。勇者(笑)組なら、どちらを防げばいいのか分からずに殺られてしまうだろう。だが、香織は迷いなく目の前の攻撃を捌く
「やあああああああああ!!」
深月との一対一の組手は、香織にとって十分すぎる程の体験だった。眼に映るスローの世界の中、体に刻まれた一瞬の動作を無意識に行使する。受け流し等の上級な事は出来なかったが、今回は杖があり、運良く槍の側面を左手に持った杖で弾く様にずらした事で腕の肉が削げた程度で済んだ。大量のアドレナリンで痛みは来ず、そのまま右手を相手の顔面を押し倒す様に地面へ叩き付ける。極限状態の中で動く体は、聖絶を自身と近藤の間に展開して爆破させて横へと逃れる。そして、背中に感じる熱量が上がり、背を焼いた
「ッ"!?あ"あ"あ"ああああああーーーー!」
ベヒモスを焼き尽くす炎の直撃は、ぎりぎり人間である香織だと本来なら即死だ。だが、香織は無意識化の生存本能で回復魔法と再生魔法の複合魔法"刻永"を発動した。一秒毎に一秒前の状態へと戻す回復魔法。しかし、その魔力消費量は尋常では無く、炎が止むと同時に魔力切れで気絶して地面へと倒れ伏す
中村は、ようやく倒した香織を見ながらヘラヘラと笑いながらゆっくりと近づく。しかし、血を大量に流して貧血の体で黒刀を杖にした八重樫が香織と中村の間に立ち塞がる
「や――――っらせない!香織を殺らせないわ!!」
八重樫が中村を睨み付けるが、ニヤニヤと嘲笑う
「その状態で助けるの?プッ、アッハッハッハハハハハ!本当は君を人形にして友達同士の愉快な殺し合いをさせようと思ったけど、それは僕の綿密に立てた計画を邪魔したから後で殺してあげるよ!」
同時に、中村の拳が八重樫の腹部にめり込む
「がっ――――はっ!?」
お腹を押さえて蹲った八重樫。中村は剣を持って香織に近づき、無防備の首を刎ねる様に剣を振り下ろした。だが、中村の振り下ろした腕は、剣ごと消失した。それと同時に中村の横の地面にバスンッと何かが貫通して爆発した。地中が爆発して土が降り注ぐ事で、何が起きたのかを直ぐに理解出来なかった中村を現実に引き戻す。感じる違和感―――――剣を振り下ろした右腕が半ばで消滅して、血が噴き出ると同時に襲い来る痛みに悲鳴を上げた
「い"っ、――――――う"あ"あ"あああああああああああああ!?」
中村は、後退りしながら襲い来る痛みに左腕で右腕を押さえる。眼から涙が出て喚く中村の目の前に何かが降り立ち、腹部に鈍い音と衝撃。その威力は凄まじく、中村に直撃したと同時に衝撃により砂埃が霧散。少しして、中村が吹き飛んだ。中村は、鍛錬場を越え、王宮の壁にクレーターを作りながら激突した。中村を吹き飛ばした人物は、皆が知っている服装を纏った人物
「よく耐えました。予想以上の出来は、色々と認識を変える必要がありますね」
皆が知っているメイド―――――深月であった
布団「治癒師さんが強くなっている!」
深月「何事も地道な訓練が下地となるのです。後は焚き付けるだけですよ」
布団「よぉし、忙しいけど頑張って書くぞぉ!」
深月「感想等、お気軽にどうぞです♪」