ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「・・・どうぞ」
深月「・・・読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」










メイドの仕事はこれからです!

~皐月side~

 

王国に帰還した私達の行動はただ一つ。深月の手料理を食べる事。これは絶対よ。しかし、リリアーナ。今なんて言った?

 

「高坂さん、大変申し訳ありませんが今日の間だけでも神楽さんを貸してください。仕事の処理が段違いですので・・・」

 

フザケルナ!

 

「私なら、今日の間だけでしたら構いませんよ?」

 

フザケルナ!フザケルナ!バカヤロォォオオオ!

 

「神楽さんもこう言っていますし・・・お願いします!」

 

「ソ、ソウ。ダッタラワタシモミヅキトイッショニイテモイイワヨネ?」

 

「え、えぇ。高坂さんは、神楽さんの本当の主ですので何も問題ありませんよ?」

 

言質録ったわよ

 

「と言う訳で、ハジメ達は依頼達成の報告をお願いね?」

 

皐月の「別行動しましょう」という予想外の言葉に異を唱えるハジメ達

 

「待てぇい!自分だけ良い思いをするつもりか!」

 

「横暴!」

 

「絶対に許しませんよ!」

 

「例えご主人様とはいえど容赦せんぞ!」

 

ハジメ達は、深月の料理を食べたいが為に睨み合う。第三者から見れば、皐月が負けるであろうと予想するが

 

「ふ~ん、そんな事を言っちゃうの?どこかの誰かさんは、フラグを沢山立てているのは私の勘違いかしら?」

 

「グフッ!?」

 

ハジメの心にバリスタの矢が突き刺さり、四つん這いになった。ユエ達は、冷や汗を流した。このままでは、間違いなく自分が標的となってしまうと理解した。だが、遅かった

 

「幼児が居る場所で、裸でハジメと寝ていたのは誰だったかな~?」

 

「そ、それ以上は赦して・・・」

 

「ド変態のところ構わずで、フォローに奔走する私のストレスが酷いのだけれど?」

 

「うっ・・・ぐぅ!?」

 

「深月に教えてもらっているにも関わらず、美味しさが上達していなかったわよね?」

 

「ちょっと待って下さい!私だけ八つ当たりじゃないですか!」

 

「というわけで、任せたわ―――――ね?」

 

釘を刺された三人と、酷い八つ当たりをされた一人。ハジメ達は、「速攻で終わらせるからな!」と言い残して冒険者ギルドへと向かおうとした時―――――

 

「それでは、お嬢様も未来の仕事の予行演習と参りましょう」

 

「What?」

 

皐月は窮地に立たされた

 

「未来の仕事の予行演習です。思いの他リリアーナ様の書類仕事が多いのです。新事業の一環として体験しましょう」

 

「ねぇ、待って。王族が処理する仕事を私がやる?機密情報が駄々洩れになったりするから駄目な筈よね?」

 

「私も手伝っていますので、それは今更ですよ。将来で悪戦苦闘しない為ですので、お嬢様も一緒に書類仕事を致しましょう?」

 

「や、やっぱり私も冒険者ギルドに・・・」

 

「お嬢様自らが班分けされたので、我儘を言ってはなりません!」

 

「み、深月の鬼ィ!悪魔ァ!サディスト!」

 

「私は、鬼や悪魔ではありませんし、Sでもありません」

 

「ハジメ助けてぇえええええ!」

 

皐月は、ハジメに助けを求める。しかし、ハジメ達はニヤケながら皐月を送り出した

 

「頑張れよ皐月。こっちはこっちで、"丁寧にしっかりと報告"するから安心しろ。深月が皐月の事を想って、未来の仕事を体験させてくれる様にしたんだ。サポートもするって言っているから大丈夫だって・・・・・多分

 

「皐月、頑張れ!」

 

「ドンマイですぅ!」

 

「深月と共に頑張るのじゃぞ?」

 

「えっと・・・頑張ってね?皐月」

 

「ふざけるな!ふざけるな!ばk―――――ムググッ!?」

 

「それ以上はいけません。お口チャックです」

 

魔力糸の猿轡をされ、深月にドナドナされる皐月を見送ったハジメ達は冒険者ギルドへと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カリカリカリカリ・・・パラッ・・・カリカリカリカリ・・・

 

皐月達が居る場所は執務室。静かな部屋の中は、羽ペンで書く音しか聞こえない

 

しょるいごじゅうまいおわった~、やっとさんぶんのいちがおわった~。・・・・・何、この紙束地獄。死にそう・・・いえ、脳が溶けそう・・・。リリアーナしゅごい・・・私よりも年下なのに難なくこなせているわ。深月は―――――あぁ・・・うん、知ってた。ノンストップで記入しているわ。手がブレて見えているのは私だけじゃないよね?リリアーナだってチラチラと深月を見ているし・・・ぬわああああん!もう疲れた!書類と戦いたくない!これだったら、魔物と戦っていた方がマシよ!」

 

「高坂さん、途中から声に出ていますよ・・・」

 

「お嬢様、ファイトです!私の方はもうすぐ終わりますので待っていて下さいね?でも、手抜きは駄目ですよ?お嬢様の為になりませんので」

 

「知ってた。今の私は書類戦士

  

 ――――――体はペンで出来ている

 血潮はインクで、心は硝子

 幾たびの書類を越えて不敗

 ただの一度の休憩も無く、ただの一度も癒しも無い

 彼の者は常に助けを求め 机の上でインクに酔う

 故に、その生涯に武器は不要

 その体は、きっとペンで出来ていた

 

私・・・もうゴールして良いよね?」

 

「お嬢様、ゴールはまだまだ先ですよ」

 

「現実に戻さないでよぉ・・・」

 

机に突っ伏す皐月。その間も深月の腕は止まらず、シュババババと残像を生み出す速さで処理をしていき、遂に自身の分を終わらせた

 

「ふぅ。私の方は終わりましたので、お嬢様のお手伝いを少しだけ致します」

 

「私の三倍近い量があった筈ですが・・・もう終わったのですね」

 

「深月みたいな万能メイドが一家庭に一人欲しいと思うわ」

 

「半分は手伝いますが、もう半分は自力で頑張って下さいね?」

 

「   」

 

皐月のノルマの半分を自分の所に持って行って記入を開始した深月は、ものの数分で作業を終了させてしまった

 

「これで終わりです。リリアーナ様、記入に不備が無いかの最終確認はお願いします。私は少しばかり席を外します」

 

一言伝えて執務室を出る深月を見送る三人。因みに、リリアーナ専属メイドのヘリーナ(※ヘリオトロープは長いので、以降はヘリーナに変更します)も居たりするのだが、存在感が薄すぎて目立たなかったりした

 

「はぁ・・・この書類の全てに目を通すとなると憂鬱になります。高坂さんも頑張って下さいね?」

 

「事務仕事は簡単だと思っていたけど、甘く見過ぎていたわ。それと、私を呼ぶときは皐月で良いわよ」

 

「分かりました。それでは、私の事はリリィとお呼び下さい」

 

「リリィよりもマシな記入仕事を頑張るわ・・・」

 

再び机の上の書類と戦闘を開始する皐月。物凄く覇気が無くて見ている方が心配だが、しっかりとやる事はやっているので安心?だろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

執務室から退室した深月が何処に居るのかというと、料理場に居るのだ。書類仕事に奮闘する皐月達は、未だに昼食を食べていないので作って持って行くつもりだからだ。中村の傀儡とされた者達は多かったが、その大半は騎士や少数のメイドで、料理人などの彼等は何もされていない。昼を少しだけ過ぎた事によって、現在の料理場は戦場となっていた。特に、騎士達やクラスメイト達が食べる物を作っているので準備が多いのなんの・・・。深月が料理場へと続く扉を開けると、タイミングが良いのか悪いのか・・・メルドと料理長と思わしき人が話している最中だった

 

「メルド、もう少しだけ待ってくれ!」

 

「料理長、忙しい中すまないな。だが、あと少ししたら騎士団の者や勇者達もここに来るぞ」

 

「炊き出しし終えて昼食の準備をし始めた瞬間にこれかよ!クソッ、おいお前等、気張れよ!」

 

『了解!』

 

普通なら、料理人達の圧にやられて踏み込めないだろう。しかし、そんな事は知らねぇと深月は入って行く。メイドという場違いの者に、料理人達が訝し気に深月を見てザワつく。それに気付いた料理長は、振り返ってどうしてこの場にメイドが居るのか分からなかったが、邪魔だと追い返そうとキツ目の言葉を投げつける

 

「メイドが何の用だ?ここは料理人の聖域――――いや、戦場だ。邪魔だからさっさと出て行け」

 

「私は、お嬢様達の昼食を用意する為に此処に来ました。まぁ、そのついででリリアーナ様の分もお作り致しますよ」

 

「・・・手を見せろ」

 

深月は黙ったまま料理長に手を見せ、ジッと見る料理長。深月の手は綺麗で、素人目では包丁は持った事無いのではないかと疑う程だ

 

「・・・綺麗すぎる手だな」

 

「自身を清潔に保つのは、従者として必須ですよ」

 

「・・・あそこの一角を使え。あそこだけなら使ってもいいぞ」

 

「かしこまりました。使用後は、しっかりと"綺麗"にしておきます」

 

「あそこにある材料ならどれを使っても構わない」

 

料理長が指差す先にある食材の山。海鮮類は無いものの、遠目から見ても分かる野菜達が積まれていた

 

「野菜だけですか・・・肉類はないのですか?」

 

「本来ならあるんだが、国の状況ぐらい分かってるだろ?」

 

「では、手持ちの分を使わせて頂きますね?」

 

深月は、宝物庫から"普通"の鶏肉を取り出して料理長へ確認をさせる。まな板の上に置いて、色や弾力を見て新鮮かどうかを確認してゴーサインを出した

 

「この肉なら十分過ぎる品質だ。まるで捌いた直後の様な肉質じゃねぇか。それに、どんな血抜きを行ったんだ?全く血が滲んでいねぇぞ」

 

「便利な技能がありますので♪」

 

「包丁はどれを使う?―――――まぁ、愚問だろうがな」

 

「無論、手持ちの包丁を使わせて頂きます」

 

料理長は、深月が宝物庫から出したハジメ印のアザンチウム包丁を見た瞬間、ギョッと目を見開いた

 

「ヤベェ・・・王国で用意された最高級の包丁が玩具に見える位良い物じゃねぇか」

 

「ハジメさんに作って頂いた世界に一つしかない包丁です。刃こぼれしないと言っていましたが、ちゃんとお手入れをしていますよ?」

 

「包丁を見ただけで分かるわ!はぁっ・・・包丁と手を見ただけで料理人の技量が分かるんだが、お前さんは俺より上だな。その年で、それ程の技術―――――停滞していた俺の目標が出来たな」

 

「お話もこの辺りで切り上げましょう。料理を作る上で、基本は重要です」

 

「フッ、正にその通りだ。何事も向上心を忘れない。そして、時には初心に振り返る事も重要さ」

 

深月と料理長は分かれて、それぞれの持ち場へと移動。深月はそのまま食材の山へと近づいて選別を開始した

 

駄目―――駄目―――駄目―――良し―――駄目―――良し―――駄目・・・・・状態の良い野菜が少ないですね。ならば、状態の良し悪しで味が左右しない料理が良いですね。取り敢えず、フューレンで手に入れたニンジンを茹でておきましょう。トータスに来てから色々な場所での食を見てきましたが、焼く、蒸す、茹でる、煮る、干す、といった事はされていました。ですが、固めるという発想がありませんでした。斬新かつインパクトのある料理となれば、アニメで見た化けるふりかけと、テリーヌで行きましょう

 

深月は、宝物庫から出した鶏肉の半ばに切り込みを入れて二枚に開けて、軽く茹でたニンジンと切ったタマネギを乗せて挟む。そして、清潔した布で香草を少し乗せた鶏肉を巻いて魔力糸でぎっちりと縛る。後は、これを茹でるだけだ

 

この茹でている間にソース作りを致しましょう。ピリッと辛めのと、柑橘ベースの二種類を作ります。ニンニクは却下――――青唐辛子とトマトに似た野菜を重力魔法で潰す!

 

押し潰すではなく、すり潰す様に重力魔法を行使。二つの野菜は、あっという間にドロドロに混ぜ合わさった

 

良い感じに混ざりましたので、布で水分だけを絞り出しましょう。――――――出来ましたが、何か足りない

 

深月は味見して何が足りないのかを考えるが、特にこれといった追加は無くても良い。しかし、ここで気付いたのは鶏肉の種類だった。もも肉ではなく、胸肉

 

油をほんの少しだけ混ぜただけで大丈夫ですね。次は柑橘ベースですが、混ぜるだけですし・・・

 

宝物庫から、醤油、酢を取り出す。その後、デザート用で置かれているであろう柑橘を手に取って、皮越しに匂う風味を厳選。選び終えた二個を手に持ってカットする

 

良い匂いですが、問題は酸味です。一房頂きます

 

果肉を噛むと同時に広がる酸味。レモン程強くは無いが、それでも酸っぱいと感じる程だった。深月の様子を少しだけ見ていた料理人達は、酸っぱい果実を食べた事ににこやかにしていた。だが、これ程の酸味を持ちながら、柑橘の独特な風味のバランスは素晴らしかった。残りの一個を、横半分に切って手で搾る。重力魔法だと搾り過ぎてしまうので、微調整できる手が一番やりやすい

 

醤油3:酢0.5:柑橘1.5の割合で混ぜて完了です!・・・・・あの果実は誰も使わないのでしょうか?偶にしか使わない?それでは、半分頂いても良いですか?全部持って行って大丈夫?ならば、遠慮せずに貰います!

それでは、宝物庫に入れっぱなしは邪魔になってしまいますので全部搾りましょう。あ、今回は重力魔法の練習として使います。すり潰すではなく、四方から押し潰すイメージでギュギュギュ~っとして汁は容器に保管です。搾り終えた皮は、乾燥で水分ゼロにして宝物庫に入れましょう。今は料理中で忙しいので

お次は、エリセンで作った寒天の出番です。フフフッ、寒天のお陰で料理の幅が物凄く広がって嬉しいです♪氷結させた魚の出汁を切り取って、別の容器に入れて熱量操作で溶かして放熱で一回沸騰させましょう。冷凍しているので大丈夫だとは思いますが、念には念をです。そして、スープをかき混ぜながら粉上にした寒天粉を入れてじっくりと冷まします。すると、徐々に固まって来ているのでお玉を回収。そして待つ事少々―――――煮凝りの完成です。そして、鶏肉を取り出して冷ます間にご飯を炊いて、青ネギを切る。鶏肉も冷めたので、布を剥がして一口大に切ります。布諸共切るのもありですが、私はメイドです。この程度で崩したりしませんよ。本当なら葉物を付けたしたいのですが、無いので悪しからず―――――です。因みに、茹で汁を捨てるのは勿体無いので宝物庫に入れましたよ

 

テリーヌを見目麗しく皿の上に盛って蓋をしたら、キューブ状の煮凝りと青ネギを小さなお椀にいれる。土鍋と料理を乗せたワゴンを宝物庫に収納して、深月は皐月達が居る執務室へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室前へ到着した深月は、宝物庫からカートを取り出し、土鍋をスペースのある場所に置いてノック

 

「深月です。お食事をお持ち致しました」

 

「神楽さんだったのですね。入って頂いても大丈夫ですよ」

 

「失礼致します」

 

扉を開けてワゴンを押して入室すると、机に突っ伏している皐月が居た。肝心の書類仕事は全て終わっていたので、深月から言う事は唯一つ

 

「お嬢様、お疲れ様です」

 

「書類は・・・もう見たくない。そして、お腹空いた・・・」

 

「丁度お昼の時間帯なので当然です。ちゃんとした料理をお持ち致しましたので食べて下さいね?」

 

「深月の料理を食べる為に頑張ったと言っても過言ではない」

 

「皐月、神楽さんの作る料理はそれ程までに美味しいのですか?」

 

「段違いよ。私達は、深月に胃袋を掴まれているから逆らえないの。あ、パンがあったら食べたいんだけど・・・ある?」

 

「今日はご飯ですので我慢して下さい」

 

「ご飯でも大丈夫!」

 

深月は、宝物庫からテーブルと椅子を取り出して設置。そして、皐月とリリアーナが座る場所に配膳していく

 

「こちらは、鶏むね肉で人参を挟んで茹でたテリーヌです。二種類のソースがありますので、各自のお好みでお願いします。赤い方がピリ辛で、黒い方が酸っぱいです。現在ご飯を入れていますが、この青ネギが入った容器を入れてお召し上がりください」

 

皐月とリリアーナは、軽めに盛られたご飯の上に、青ネギが入った容器を手に取ると、青ネギの隙間から見える薄茶色のブロックを見て首を傾げた

 

「これ・・・何?深月が用意しているから食べられるのは分かるけど、先に聞いておきたいわ」

 

「これは一体・・・?このブロック状の物が食べ物なのですか?」

 

「そのまま食べても美味しいですよ?」

 

二人は、深月に言われた通りにスプーンで一ブロックだけ掬う。透明感のある薄茶色の物体。今まで見た事の無い料理に戸惑うリリアーナより先に、皐月が口に入れた瞬間目を見開いて驚いている

 

「うっま!なにこれ!?口の中に入れたら少しずつ溶け始めたんだけど、衝撃はその次よ!溶けたと同時に舌の上に広がる濃厚な旨味は肉とは違う!」

 

「本当ですか!?――――――美味しい。・・・皐月の言う通り、肉だと舌に油の濃厚さが残りますがこれは全く残っていません。これは肉とも野菜とも違い、初めての味わいです。この様な料理を一体どうやって・・・」

 

「うまぁああああああああい!」

 

「ヘリーナ・・・貴女の顔が残念な感じになっていますよ」

 

「リリアーナ様、美味しいは正義です!」

 

「このブロック状の物体ですが、これは煮凝りと言います」

 

「「煮凝り?」」

 

「はぁっ!?こっちでどうやって作ったの!?」

 

「寒天の原材料と似た海藻を処理して作りました。エリセンでの収穫は、食の幅を物凄く広げてくれたのです」

 

「そっか~、エリセンで海藻を採って来たのね・・・。この世界だと、海藻を食べるって発想自体が無いもんね」

 

「海藻?」

 

「海の中に生えている藻です。内陸で言うならば、苔と言ったら分かりやすいでしょう。雑草とは違う土に生えている緑色の仲間です」

 

土に生えている苔を想像したリリアーナとヘリーナの二人は、頬を引き攣らせた

 

「あれの・・・仲間ですか?冗談ですよね?」

 

「土に生えているあれを・・・?」

 

「あくまでも仲間とされているだけで、一緒ではありません。私達の故郷では、干した海藻を使った料理は沢山存在します。高級品は凄いですよ?」

 

「そうなのですか?だとすれば勿体無いですね」

 

「乾燥させてしまえば長期保存も出来ますから」

 

「ちょ~っと待ったああああ!今は食事を楽しむ時間なのよ!仕事の話は駄目、ゼッタイ!」

 

ワーカーホリックの二人の話をぶった切り、皆を食事に集中させる

 

「そうですね。・・・話は戻します。お気付きだと思いますが、この煮凝りは熱で溶けます。ならば、熱々のご飯の上に振りかければどうなるか・・・お分かりですよね?」

 

「当たり前よ。全部ぶっかける!」

 

「私は半分に分けます。このテリーヌと一緒に食べてみたいですから」

 

「このソースをご飯にかけても大丈夫ですか?・・・止めた方が良いのですか・・・」

 

思い思いのやり方で食事をして味の変化を楽しむ三人を見ながら、飲み水を清潔進化と冷蔵を行使して注ぐ。とても楽しそうに食事をする三人を見て、深月は嬉しそうに微笑んでいる

 

お嬢様の笑顔を頂きました♪良いですねぇ~、私の荒れた心が浄化されていきます!

 

熱々のご飯の上に全部乗せる皐月と、スプーンで一掬いずつ入れるリリアーナ。世界の文化の違いが良く分かる

ご飯の熱で煮凝りが溶けて、ご飯をコーティング。青ネギと一緒に一口食べた皐月は、恍惚な顔で味を噛みしめており、リリアーナの方は、絡まる美味しさに手が止まらず一口――――もう一口と食べ進めている。ヘリーナは、あまりの美味しさに昇天して真っ白に燃え尽きていた

 

「うまぁ~い、凝縮された魚介の出汁がご飯粒一つ一つを覆い、口の中に入れるとブワッと広がるこの感じ・・・あぁ、食は心を豊かにするぅ」

 

「皐月と同じです。サッパリとしているのにも関わらず、旨味の爆発。今まで食べた料理の中で一番インパクトがあります。テリーヌの方も食べましたが、ソースの味の変化も楽しくて、つい食べ過ぎてしまいますね」

 

「燃え尽きましたよ・・・真っ白に・・・・・」

 

全てを美味しく食べ終えた皐月達は、これからの事について話し合いを始める事にした

 

「王国はボロボロね。騎士の人数が減り、大結界は無くなり、強大な力を持った敵が相手・・・王国は詰んだんじゃない?」

 

「そう・・・ですね。今の王国は全てがボロボロです。父上も母上も教会の上層部も居ないこの現状を延命させるには・・・帝国に同盟を求めるしかありません。本当なら、南雲さん達に助力を請いたいのですが・・・」

 

「駄目に決まっているでしょ」

 

「・・・ですよね。今の私は王国を存続させるが為の楔、政略結婚しかありません」

 

「それが妥当ね」

 

「ですが、この現状を帝国が知らない筈はありません。同盟ではなく、属国として提示される可能性が大きいでしょう。そうなれば、天之河さん達の立場が変動してしまいます」

 

「勇者(笑)だけならそれもありだと言いたいけれど、そこには先生達も含まれる。そうなってしまえば、奴隷よりも待遇は良いけれどそれと変わりないわ」

 

「私達の都合でこの世界に連れて来てしまったのです。帰還の目戸が立つまでは、護らなければいけません」

 

「・・・分かっているとは思うけど」

 

「はい、帝国の属国にはなりません。今回分かった情報のカードで対等の同盟という形に持って行きます」

 

皐月達が執務室の窓から見える王国の街並みを見つめていると、王国の端にある塔の天辺から光の粒子が天に昇って行く光景が見えた

 

「一体何が・・・?」

 

「結界が張られたわね。もしかして、ハジメがアーティファクトを直したのかもしれないわ」

 

皐月の魔眼で、王国に張られてていた結界の魔力の色が濃ゆくなった事を確認したのだ。確認の為に念話でハジメにどうしたのかを尋ねると、大結界を生み出すアーティファクトを直して鬼ごっこ中との事だ。一体何をしているのやらと呆れた

 

「リリィ、ついさっきハジメに確認を取ってアーティファクトの修復を確認をしたわ。取り敢えず、これでその場しのぎが出来るわ」

 

「そう・・・ですか。貴方達には本当に助けられっぱなしですね」

 

「別にいいのよ。持ちつ持たれつの関係と思えば良いのよ」

 

「この恩はしっかりと返しますよ?」

 

「それは良いけど、リリィは目先の事をしっかりと考えなさいよ?私達は帝国に行かないからね?」

 

すると、扉がノックされる

 

「姫様、メルドです。今宜しいですか?」

 

「メルドですか?大丈夫です」

 

扉を開けてメルドが入ると、皐月と深月が居た事に少しだけ驚くが、直ぐに真剣な面持ちで結界が直った事を伝える

 

「第三障壁が展開、王国を守る結界が直ったのを確認しました」

 

「忙しい中ご苦労様です」

 

「はっ!アーティファクトを直したのは坊主―――――いえ、南雲ハジメとの事です。それでは私はこれで」

 

メルドが執務室を去ると同時に、窓がコンコンと叩かれる。リリアーナは、音がした窓の方に視線を向けると、ハジメが居た

 

「えっ、南雲さん!?ど、どうやって此処に!?」

 

「それよりも、ここ開けてくんね?さっきから変態職人に追いかけられて大変なんだよ」

 

「な、なるほど・・・。ヘリーナ、窓を開けて下さい」

 

ヘリーナが窓を開けて、手早く避難してきたハジメ。恐らく、王女が居る執務室に居る筈がないと思っての行動だった。そして、あわよくば深月の料理を食べる為に来たのだ

 

「ふぅ、助かったぜ。それはそうと、俺の分は?」

 

「無いです」

 

「冗談だろ?もしかして、ついさっき食べ終えたとか?」

 

「ハジメ・・・ごめんね!美味しいから食べちゃった♪」

 

「ぐぉおおおおおおおお、よくも良い匂いを充満させやがったな!これじゃあ生殺しだろ!」

 

「煮凝りだけでも食べますか?」

 

「・・・食べる」

 

深月は、少量の煮凝りを出してハジメに渡す。ハジメは、少量だろうがなんだろうが関係ないと器に入った煮凝りを一口。瞬間、ハジメの脳内に雷が落ちた。深月の料理に飢えたハジメの口内を魚介の旨味が蹂躙し、少しだけ乾いた喉を潤わせた

 

「うめぇ・・・深月の料理はさいっこうだなぁ!」

 

深月は、ハジメが煮凝りをチビチビと食べている間に宝物庫から魔物肉の干し肉とテリーヌを茹でたお湯を取り出して、縦長に切った干し肉を茹で汁に投入。続いて、土鍋で炊いたご飯の残りを投入して放熱しながらじっくりかき混ぜて出来上がり

 

「テリーヌの茹で汁をベースとした雑炊擬きです」

 

「ヒャッハー!飯だ飯ぃいいいい!―――――いただきます」

 

茹で汁に付け足された干し肉の旨味は、濃厚なスープに大変身。お腹が物凄く空いているハジメには、この雑炊擬きの濃厚な味付けを欲していた。皐月とリリアーナとヘリーナの三人は、食事を終えたとはいえ、眼前で飯テロをしているハジメをジトッと睨む

 

「美味しそうよね」

 

「この濃厚な匂いはお腹を空かせてしまいます」

 

「食べたい・・・食べたい・・・雑炊擬き食べたい・・・・・」

 

腹を空かせたハジメ(猛獣)に手を出す事の出来ないリリアーナとヘリーナの二人と、一人だけ雑炊はズルいと心の内で舌打ちする皐月

 

「お嬢様方は昼食を食べ終えていますよ?」

 

「そうだ、これは俺の昼食だ。飯を食い終わった三人はそこにいr―――――」

 

「ですが、少量なら大丈夫なので小鉢に入れましょう」

 

「俺の飯が!?」

 

「作ったのは私ですので、お嬢様方に食べさせても構いませんよね?」

 

「だ、だがっ―――――」

 

「ハジメさんが作るのであれば、何も言いませんよ?」

 

「ごめんなさい」

 

素直に諦めるハジメ。皐月達は雑炊擬きを食べて嬉しそうにしていたのは言うまでもないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「飯テロの日常でっす」
深月「息抜きも必要ですね」
布団「取り敢えず、アンケートやってるのでよろしくです」

メイドさんのガチギレ時のフォントについて

  • 感情表現が良く分かるからこのままで
  • 読みにくいので普通に戻して
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