ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】 作:ぬくぬく布団
深月「読者の皆様方も夏の猛暑に注意して下さい」
布団「それじゃあ帝国編がはっじまっるよ~」
深月「ごゆるりとどうぞ」
気落ちするメイドはお休みします
~深月side~
あぁ・・・私は巨大な壁に立ち往生しています。今まで体験してきた中で最大級の壁―――――これを乗り越えなければバッドエンド直行です
今まではぶち壊して突き進んできた深月。しかし、今回の壁は種類が違うのだ。例えるなら、アザンチウム製の分厚い壁に素手で挑む様な感じだ
内心気落ちしている深月は、こちらをジッと見つめている皐月に気付いない。ハジメ達もこの様子には気付いており、表情に出さずに焦って念話で会話をしている
(おい、深月の様子が物凄くヤバいんだが・・・何があったか分かるか?)
(分からない)
(うぇええええ!皐月さんが見ているのに気付いていないですよ!災害の前兆ですか!?)
(いつもなら直ぐに気付いておる筈じゃが・・・)
(深月さんがあそこまでおかしいのは初めて見るんだけど・・・)
(皐月は何か心当たり無いのか?)
(無いわよ!それを言うなら、私の方が一番驚いているのよ!!)
話しは変わって、ハジメ達は空の上を飛んでいる。飛空艇"フェルニル"―――――巨大なアーティファクトの一つだ。これは、ハジメ達がノイントの死骸に香織の魂を定着させている間に作った物だ。行き先はフェアベルゲンの大迷宮。そして、搭乗員はハジメ達は当たり前なのだが、そこに追加して勇者(笑)パーティー達とリリアーナとヘリーナが乗っている
時を少しだけ遡ろう――――深月が訓練を切り上げ、皐月達を起こして朝食を食べ終えてフェアベルゲンへと向かおうとした。そこに待ったの声が掛かった。それはリリアーナの声で、帝国に行くからフェアベルゲンの前まで一緒に乗らせて欲しいとの事だった。本当なら帝国までと言いたかったリリアーナだが、ハジメ達の目的を知っていたので大迷宮を攻略した後で護衛を頼んだ。当然の如く断った所に天之河が現れて護衛に行くという流れになったのだ
「深月、本当に大丈夫?今の深月はおかしいわよ?」
「うぇっ!?い、いいえ大丈夫ですよ!?何も問題はありません」
「取り敢えず、一旦休みなさい。今の深月は見ていられないわ!」
「深月は寝ろ!中村にあんだけ重傷を負わせたんだから奇襲はありえないだろうしな」
「寝る!」
「無理は駄目ですぅ!」
「そうじゃぞ、深月は妾達の最強戦力なのじゃ。休める時に休む事こそ大事じゃぞ?」
「深月さんは働き過ぎだと思うよ?」
ハジメ達の言う通りである。王都騒乱からおよそ一週間―――――休まず働き、訓練をしての繰り返しをしているのだ。心配するのは当たり前だろう
「で、ですが・・・」
「ですがもヘチマもないわ!いいから来なさい!」
「え?あ、ちょっ、お嬢様~!?」
皐月にドナドナされる深月
「フェアベルゲンまで少しだろうけど、仮眠するには十分な時間があるわ。一緒に寝てあげるから深月も寝なさい」
「うっ・・・了解しました」
仮眠室に到着した皐月は、深月をベッドに連れ込んで添い寝する。しかし、深月の気分は未だに落ち込んだままである。これでも変わらない深月を見て、頭を胸元に寄せて撫でる
「一人で溜め込まない。深月は自分で気付いていないだろうけど、溜め込みやすい性格なんだから発散も大事よ?」
「・・・・・」
皐月の胸元に顔を埋めた深月は、黙ったまま皐月の言葉を聞く
「確かに私達は弱い・・・変貌した中村さん相手に手も足も出ないわ。深月だけが頼りだけど、私達に頼るという事を忘れないで。弱音を吐いても誰も怒らないし、一緒に乗り越える為に動くわ」
「・・・私が強くならなければ皆さんが死んでしまいます」
「それは一人じゃないと駄目なの?」
「・・・お嬢様達では危険です」
「この世界の命は軽いし、危険なら地球にもあるでしょ?」
「・・・・・」
「もう寝なさい」
「・・・はい」
深月は目を閉じ、皐月の心臓の鼓動を子守唄代わりに眠った。皐月は、小さな寝息を聞きながら頭をずっと撫で続ける
「・・・地球に帰るまでに隠している事を話してくれる事を期待しているわね」
~ハジメside~
ハジメは、皐月にドナドナされた深月を見送りユエ達と喋りながら操舵する。すると、ハジメの後ろから予想外の人物から声が掛けられた
「なぁ、南雲・・・少しいいか」
「どぅわぁっ!?って、遠藤・・・?どうしてお前がここに居るんだ。一体何時乗り込んだんだ?」
そう、影の薄い遠藤がいつの間にか乗り込んでいたのだ。ハジメの気配感知にも引っ掛からずに乗り込むその影の薄さ・・・真に暗殺者。それは周囲の者達も同様で、遠藤の姿を視認出来た者達一同驚いていた
「いつの間に・・・?」
「見える位置に居たのに気付かなかったです・・・」
「一度体験していたのじゃが・・・今回も分からんかった」
「遠藤君居たの?」
「遠藤さん!?えっ?ついて来たのですか!?」
「うおっ!?い、一体何時の間に・・・」
「遠藤君!?・・・気付かなかった」
皆言いたい放題で、少しだけ心が傷付いた遠藤。しかし、挫けず南雲の前に立って土下座した
「頼む南雲!俺を・・・俺を強くしてくれ!」
「・・・は?」
『・・・へ?』
皆があまりの急展開に着いて来れず、首を傾げた
「あの時・・・神楽さんが来なかったら皆が死んでた。傀儡になった二人に永山や谷口さんが殺されそうになった事にも気付かなかったんだ。本当なら警戒しなきゃいけなかったんだ!南雲達に助けられた時から、もっと力があればと思って訓練もした。けど、実際は足手纏いだったんだ!俺達の思う様な努力じゃ駄目なんだ!今までやってきた訓練もお遊びに近かったんなら、どうやって訓練したらいいかなんて分かんないんだ!だから、お願いだ南雲!俺を強くしてくれ!!」
ハジメは、これ程までに強く願う遠藤の眼を見て、深い溜息を吐いた
「んで?遠藤はどうして強くなりたいんだ。訓練自体は一緒にやっても良いが、ハッキリ言って地獄だぞ?」
「俺は死にたくないんだ。死なない為に強くなりたいし、友達の永山達も死なせたくないんだ」
「へぇ・・・自分が死なない為と、身近な仲間を守る為か―――――勇者(笑)よりもよっぽど勇者らしいじゃねぇか。俺の一存では無理だが・・・ユエ達はどう思う?」
ハジメは、ユエ達に視線を向けてどうする?と尋ねる
「別に構わない」
「誰だって強くなりたいと思うのでありですぅ!」
「妾も構わないのじゃ」
「私も大丈夫だよ。あの地獄の訓練をかぁ~・・・懐かしいなぁ」
「皐月達にもと言いたいが、一番先に言うのは深月にだ。あいつが俺達に訓練をさせているからな」
後は皐月と深月の反応待ちだが、恐らく了承するだろう。八重樫と遠藤の二人には、それなりに信頼もしている事を理解しているからだ。こうして、地獄のブートキャンプの参加を決めた遠藤。どれ程まで成長するかは彼次第だ
フェアベルゲンへと向かっていたハジメが遠目で何かを発見したのか、進路を少しだけ逸らしてゆっくりと進ませる。いきなりの進路変更と速度の低下に何事と驚きながら皐月と深月の二人以外がブリッジに集結した。ユエ達は中央に置かれた水晶を覗き込んでおり、遅れてやって来た天之河達も釣られる様に覗くと―――――狭い谷間を駆ける二人の兎人族が帝国兵に追いかけられていた。よくよく見ると、追いかけて来る帝国兵達の後ろには五~六台の馬車があった
「奴隷にする為に追いかけているのか」
「何だって!?直ぐに助けに行かないと!」
天之河は案の定喚いて、今すぐにでも飛び降り様と準備している。しかし、ハジメは水晶を覗いたまま動こうとはしない。いや、眉を寄せて訝しげに様子を見ていたのだ
「おい、南雲!まさか、彼女達を見捨てるつもりじゃないだろうな!?お前が助けないなら俺が行く!早く降ろしてくれ!」
「シア、こいつらって・・・」
「へ?・・・あれっ?この二人って・・・」
先程よりも拡大された映像を見て気がついた
「二人共、何をそんなにのんびりしているんだ!シアさんは同じ種族だろ!何とも思わないのか!」
「すいません、ちょっとうるさいんで黙っててもらえますか?・・・ハジメさん、間違いないです。ラナさんとミナさんです」
「やっぱりか。・・・豹変具合が凄かったから俺も覚えちまったんだよな。・・・こいつらの動き、表情・・・ふむ」
シアは、天之河の言葉をバッサリとぶった切って様子を見ている。すると、谷間の少し開けた場所で二人の兎人族が躓いて足を止めてしまった。それを見た天之河は、ブリッジを出て甲板から魔法を撃って注意を逸らそうとしたが、ハジメに止められる
「まぁ、待て。天之河。大丈夫だ」
「なっ、何を言っているんだ!か弱い女性が今にも襲われそうなんだぞ!」
ハジメを睨む天之河。ハジメは水晶を覗き込みながらニヤリと笑った
「か弱い?まさか。あいつらは・・・"ハウリア"だぞ?」
こいつは何を言っているんだ?と天之河が訝しげな表情をしたと同時に、誰かが何かに気付いて「あっ!」と声を上げる。天之河は何事?と思い再び水晶を覗くと、そこには山となって積み重ねられた帝国兵の死体が映っていた
「・・・え?」
ハウリア族を知らない全員が目を点にする。帝国兵達は、兎人族を追った兵士が一向に帰って来ない事に疑問に思い斥候を放つ。そして、その斥候部隊が仲間の死体の山を見つけ、その中央で肩を寄せ合わせて震えている兎人族の女二人に、何かを喚きながら近づいて彼女等のウサミミを掴もうとしたその瞬間、何処からか飛来した矢が斥候一人の頭を射貫いた。後方で倒れた音を聞いて振り返った前衛を見た彼女達は、音も無く飛び上がって隠し持っていた小太刀で眼前の兵士の首を落とす
「「「「「う"っ・・・」」」」」
生々しい殺戮の光景に慣れていない天之河達は、顔を青褪めて口元を手で押さえてブリッジの隅っこに用意周到に置かれたバケツに胃の中の物をぶちまけた。そして、リリアーナやヘリーナと近衛騎士達は、兎人族が帝国兵を瞬殺する光景を見てシアを凝視する。特殊なのはお前だけじゃなかったのか!?と言いたげな表情を察したシアは、否定の声を上げる
「いや、紛れもなく特殊なのは私だけですからね?私みたいなのがそう何人もいるわけないじゃないですか。彼等のあれは訓練の賜物ですよ。・・・ハジメさんと皐月さんが施した地獄というのも生温い、魔改造ともいうべき訓練によって、あんな感じになったんです」
「「「「「「「・・・」」」」」」」
全員の視線がハジメに向き、「またお前か!」と睨むが、ハジメはソッポを向いた
斥候部隊が戻らない違和感を感じた帝国兵達だが、時すでに遅し―――――石が馬車に当たった音を聞いて、そちらへと意識を向けたと同時に真正面から矢が一つ頭部を撃ち貫く。矢が飛来した方向に注意を向けた瞬間、後ろから飛び出したハウリアの一人に首が落とされ、再び矢が頭を撃ち貫く。縦横無尽に攻撃される帝国兵達は、あっという間に数を減らして二人となった。残りの二人は、捕まえた亜人族達を人質にしようとした瞬間、馬車上にひっそりと待機していた二人のハウリアにあっさりと首を落とされた
「こ、これが兎人族だというのか・・・」
「マジかよ・・・」
「うさぎコワイ・・・」
天之河と坂上と谷口のハウリアの強さに呆然としていた
「ふん、練度が上がっているじゃねぇの。サボってはいなかったようだな。・・・だが、ちと詰めが甘いな」
操舵から離れて風防からシュラーゲンの銃口を突き出して狙いを定めて――――発射
ドバァン!!
赤い軌跡を描くそれは、馬車から逃亡する一人の帝国兵の頭部を粉砕した。尚、ハジメが操舵から離れても大丈夫なのは舵自体がお飾りだからである。何事も形が大事なだけと言う事だ
水晶に映っていたハウリア達は、頭部が粉砕された帝国兵を見て射線を辿って空高くを飛ぶフェルニルに気が付く。紅い閃光と初めて見る謎の物体・・・これだけで誰が何をしたのかが分かり、彼等の表情は喜色に彩られた
「ハジメさん、ハジメさん。早く、降りましょうよ。樹海の外で、こんな事をしているなんて・・・もしかしたらまた暴走しているんじゃ・・・」
どうしたら温厚なハウリア達がここまで豹変するんだ!と言いたげな視線を無視して、フェルニルを谷間へと着陸させた。ハジメ達が谷間へ降りると、そこにはハウリア族以外の亜人族が数多く居た。約百人近い数・・・恐らくあの馬車の中全てに亜人族達が入っていたのだろう。ハジメの登場に警戒や驚愕に満ちた視線を向ける中、クロスボウを担いだ少年がハジメの手前まで駆け寄り、ビシッ!と背を伸ばして見事な敬礼をした
「お久しぶりです、ボス!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!まさか、このようなものに乗って登場するとは改めて感服致しましたっ!それと先程のご助力、感謝致しますっ!」
「よぉ、久しぶりだな。まぁ、さっきのは気にするな。お前等なら、多少のダメージを食らう程度でどうにでも出来ただろうしな。・・・中々、腕を上げたじゃないか」
「「「「「「恐縮でありますっ、Sir!!」」」」」」
谷間に響き渡る感動で打ち震えるハウリア達の声。敬愛するボスのハジメに、成長したなと褒められて涙ぐむが、泣かない様に必死にこらえている。もの凄く忠誠度が高いと見て分かる光景に、ティオや香織、光輝達とリリアーナ達はドン引きである
「えっと、みんな、久しぶりです!元気そうでなによりですぅ。ところで、父様達はどこですか?パル君達だけですか?あと、なんでこんなところで、帝国兵なんて相手に……」
「落ち着いてくだせぇ、シアの姉御。一度に聞かれても答えられませんぜ?取り敢えず、今、ここにいるのは俺達六人だけでさぁ。色々事情があるんで、詳しい話は落ち着ける場所に行ってからにしやしょう。・・・それと、パル君ではなく"必滅のバルトフェルド"です。お間違いのないようお願いしやすぜ?」
「・・・え?そこをツッコミます?っていうかまだそんな名前を・・・ラナさん達も注意して下さいよぉ」
相変わらずの中二病のパルに頭が痛くなるシア。しかし、場所を変えてから話をした方が良いと提案ももっともなので、これ以上の追及はせず、シアは、パルの中二病をどうにかしてくれとハウリアの女性と他のメンバーに注意を促す。だが、現実は予想以上に酷く、予想の斜め上に行く
「・・・シア。ラナじゃないわ・・・"疾影のラナインフェリナ"よ」
「!?ラナさん!?何を言って・・・」
シアからすれば、しっかり者のお姉さんだったラナからの返答に、シアは頬を引き攣らせる。しかし、彼等の怒涛は終わらない
「私は、"空裂のミナステリア"!」
「!?」
「俺は、"幻武のヤオゼリアス"!」
「!?」
「僕は、"這斬のヨルガンダル"!」
「!?」
「ふっ、"霧雨のリキッドブレイク"だ」
「!?」
全員がドヤ顔でジョ〇的なポーズを取りながら、二つ名を名乗った。どうやら、ハウリア達の間では二つ名が流行っているそうだ。そんな彼等を見たシアは絶望した。久しぶりに再会した家族が、ドヤ顔でポーズを決めているこの状況に、口からエクトプラズムを吐き出すシアはあまりにも哀れだ。ハジメが助け舟を出そうとしたが、流れ弾が飛んで来た
「ちなみに、ボスは"紅き閃光の
「・・・何?」
「ボスの二つ名です。一族会議で丸十日の激論の末、どうにかこの二つまで絞り込みました。しかし、結局、どちらがいいか決着がつかず、一族の間で戦争を行っても引き分ける始末でして・・・こうなったらボスに再会したときに判断を委ねようということに。ちなみに俺は"紅き閃光の輪舞曲"派です」
「まて、なぜ最初から二つ名を持つことが前提になってる?」
「ボス、私は断然"白き爪牙の狂飆"です」
「いや、話を聞けよ。俺は・・・」
「何を言っているの疾影のラナインフェリナ。ボスにはどう考えても"紅き閃光の輪舞曲"が似合っているじゃない!」
「おい、こら、いい加減に・・・」
「そうだ!紅い魔力とスパークを迸らせて、宙を自在に跳び回りながら様々な武器を使いこなす様は、まさに"紅き閃光の輪舞曲"!これ一択だろJK」
「よせっ、それ以上小っ恥ずかしい解説はっ――」
「おいおい、這斬のヨルガンダル。それを言ったら、あのトレードマークの白髪をなびかせて、獣王の爪牙とも言うべき強力な武器を両手に暴風の如き怒涛の攻撃を繰り出す様は、"白き爪牙の狂飆"以外に表現のしようがないって、どうして分からない?いつから、そんなに耄碌しちまったんだ?」
「・・・」
遂にハジメの口からもエクトプラズムが流れ出始めた。痛々しい二つ名の由来の解説に限界が来て、シアと同じ様になっている。そんなハジメとシアの背後で、ブフッ!と吹き出す音が響いた
「シ、シズシズ、笑っちゃダメだって、ぶふっ!」
「す、鈴だって、笑って・・・くふっ・・・厨二って感染する・・・のかしら、ふ、ふふっ」
ハジメがハッと意識を取り戻して背後を見ると、八重樫と谷口が必死に笑いを堪えようとしている姿だった
「ボス、一つ気になったのですが・・・お嬢は一緒ではないのですか?」
「・・・皐月は深月を連れて休憩中だ」
「因みに、お嬢の二つ名も候補があるんです!"紅き白百合の
「・・・深月はどうなんだ?」
「ボス・・・深月殿に二つ名を決めるのは無理です。力の片鱗を見た事が無いんですよ?唯一考えられるのは・・・"
「おいおい、必滅のバルトフェルド。深月殿が俺達に食べさせた物の名前を忘れたのか?"
深月に関しても酷い二つ名だが、どちらも麻婆に関する名前だ。ハウリア達から見て、深月特製麻婆は悪夢の存在となっていた
「さぁボス!どれが宜しいでs―――――」
ドパンッ!!
ハウリア達の頭部にゴム弾を撃ち込んで強制的に黙らせたハジメは、そのまま後ろに振り返って笑っていた八重樫と谷口を恨ましげな眼差しを向ける
「八重樫、クールなお前には後で強制ツインテールリボン付きをプレゼントしてやる。もちろん映像記録も残してやる」
「!?」
「谷口、お前の身長をあと五センチ縮めてやる」
「!?」
先程まで笑っていた二人がピタリと止まり、ハジメの圧に戦慄――――ハジメが完全なる八つ当たりをすると、二人には抗う術はない
「あの・・・宜しいでしょうか?」
ハウリア達を避けて、ハジメに理不尽だと言っている二人を尻目に声を掛けてきた美少女。足元まである長く美しい金髪で、スレンダーで碧眼、耳がスッと長く尖っている事から森人族である事が分かる。しかも、彼女の容姿がフェアベルゲンの長老のアルフレリックにどことなく似ていた
「あなたは、南雲ハジメ殿で間違いありませんか?」
「ん?確かに、そうだが・・・」
「では、わたくし達を捕らえて奴隷にするということはないと思って宜しいですか? 祖父から、あなたの種族に対する価値観は良くも悪くも平等だと聞いています。亜人族を弄ぶような方ではないと・・・」
「祖父?もしかして、アルフレリックか?」
「その通りです。申し遅れましたが、わたくしは、フェアベルゲン長老衆の一人アルフレリックの孫娘アルテナ・ハイピストと申します」
「長老の孫娘が捕まるって・・・どうやら本当に色々あったみたいだな」
長老の孫娘・・・お姫様である彼女が捕まるとは余程の事が無い限りはありえない。今正にそれが起きている事を理解したハジメは、再び溜息を吐いてパル達から詳しく話を聞く事にした。しかし、この場にずっと留まっているのはあまり良くない
「おい、お前等。亜人達をまとめて付いてこさせろ。ついでだ。樹海まで送ってやる」
「Yes,Sir!あっ、申し訳ないんですが、ボス。帝都近郊に潜んでいる仲間に連絡がしたいんで、途中で離脱させて頂いてもよろしいですか?」
「ああ、それならちょうど、こっちも帝都の手前まで送る予定だった奴等がいるから、帝都から少し離れた場所で一緒に降ろしてやるよ」
「有難うございますっ!」
亜人族達が、パル達に先導されておずおずとフェルニルへと乗り込む。ハジメも戻ろうとした時、「きゃ!」と悲鳴と共に背中に小さな衝撃。アルテナが、足枷の鎖に躓き、咄嗟にハジメの背中にしがみ付いたからだ。他の亜人族達が一斉に顔を青褪めて硬直する。アルテナも咄嗟とはいえ支えにしてしまった事に気付いて、より一層顔を青褪めた。人間が亜人族をどの様に扱うかなど手に取る様に分かる。殴られるだろうと思い目をつぶるが、衝撃はいつになっても来ない
「あ?・・・あぁ、そりゃあ歩きにくいだろうな」
「あ、あの・・・」
「いいからジッとしてろ」
ハジメの手が足枷に触れると同時に紅いスパークが迸り、音も無くアルテナの足枷が外れた。そして、手枷、首輪と外し終えたハジメは、「これで終わりだな」と一人で納得して踵を返した。亜人族達からは不思議な者を見るような目で、ハウリア達は誇らしげに、天之河達は何処か複雑そうに、ユエ達女性陣は呆れを含んだ眼差しで見る。そして、当人のアルテナは、若干頬を染めている
「ん?どうした?」
「「「「・・・別に(ですぅ)(じゃ)」」」」
本当にハジメは何も分かっていない様子だ
ハジメはフェルニルに亜人族を乗せ終え、彼等に着けられている枷を全て外して離陸した。ハジメ達はブリッジにてハウリア達に事の顛末を聞いていた
「なるほどな・・・やっぱ魔人族は帝国と樹海にも手を出していたか」
「肯定です。帝国の詳細は分かりませんが、樹海の方は強力な魔物の群れにやられました。あらかじめ作っておいたトラップ地帯に誘導できなければ、俺達もヤバかったです」
パル達曰く、樹海にも魔人族の手が伸びてきているとの事。既にハルツィナ樹海は大迷宮の名が通っている事から、フリード達が神代魔法を狙っていると容易に予想出来た
もの凄く簡単に説明すると―――――
見た事も無い魔物を放って亜人族の兵士を一方的に殺戮されてしまった
プライドなんてドブに捨ててでもハウリア達に協力してもらおう
ハウリア「ボス達の大迷宮を攻略するだとぉ?生意気言ってんじゃねぇ!ヒャッハー!魔物狩りじゃああああ!」
魔人族は大慌て
ハウリア「数が多い・・・そうだ!大量に設置したトラップ帯に誘き寄せてよう!」
冷静さを失った魔人族はそのままトラップ帯に・・・
ハウリア「首寄こせぇえええええ!」という流れで魔人族を撃退に成功したのであった
だが、被害は甚大。ハウリア達も戦いの後で油断しており、帝国兵達に亜人族を連れ去られてしまったのだ。捕まえた一人の帝国兵を拷問して情報を抜き取って、カム達が輸送馬車を追いかけた。しかし、帝国に辿り着いたであろうとする辺りで連絡が途切れてしまったという事だ。その後、斥候を出して情報を収集した結果――――帝国に侵入してから出てこれない事が判明。助けるべく警備情報を収集していると、大量の亜人族を乗せた輸送馬車が他の町に向けて出発したという情報を掴み、パル達の班が情報収集も兼ねて奪還を試みたというわけだ
「しかし、ボス。"も"ということは、もしや魔人族は他の場所でも?」
「ああ、あちこちで暗躍してやがるぞ?まぁ、運悪く俺がいたせいで尽く潰えているけどな」
本当に魔人族は貧乏くじを引いている。いく先々にハジメ達が居り、計画の悉くを蹴散らされているのだ
「まぁ、大体の事情はわかった。取り敢えず、お前等は引き続き帝都でカム達の情報を集めるんだな?」
「肯定です。あと、ボスには申し訳ないんですが・・・」
「分かってる。どうせ道中だ。捕まってた奴等は、樹海までは送り届けてやるよ」
「有難うございます!」
シアが何か言いた気そうにモゴモゴしていたが、何も言って来なかったので深くは追及しなかった。最後に、パル達から伝言を預かって、帝都から少し離れた場所でリリアーナ達とパル達を降ろした。そして、一行は、フェアベルゲンへと出発した
布団「今回は主人公がメインでした。メイドさんは気落ちしているので仕方がないね!」
深月「最悪を想定して動いていますので・・・大変です」
布団「そして、来ましたよ!微改造!」
深月「遠藤さんの強化、これは使えますね」
布団「どこまで改造しようかなぁ~。楽しみだぁ♪」
メイドさんのガチギレ時のフォントについて
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感情表現が良く分かるからこのままで
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読みにくいので普通に戻して