ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「主人公達の特訓はっじっまっるよ~」
深月「心苦しいですが、やってやりますよ!」
布団「それでは、ごゆっくり~」









メイドのハードな特訓をお嬢様達に!

~皐月side~

 

「ふわぁ~・・・何だか騒がしいわね。どうなっているの?」

 

深月より先に起きた皐月が独り言ちて、念話でハジメに確認を取る

 

(ねぇハジメ、ついさっき起きたんだけど・・・誰が居るの?)

 

(おはよう皐月、やっと起きたのか。ちょいとめんどくさい事があってな)

 

皐月は、ハジメから伝えられる情報量の多さについ溜息を吐いた

 

(ハルツィナ樹海の大迷宮に魔人族が来る事はある程度は予想していたけど・・・帝国ェ・・・・・)

 

本当に間の悪い・・・そして、何時の間にか遠藤が乗り込んでいるという事にも驚いた

 

(遠藤君については大丈夫だと思うわ。クラスメイトの中でも純粋な想い―――――何よりも、護る為に力が欲しいという点が良いわ。そういった人は伸びるし、私の勘が囁いているのよ。遠藤君を強くしろってね?)

 

(皐月の勘が囁くのか・・・もしかしたら遠藤の奴化けるかもな)

 

(暗殺者に必要な下地が備わっているからね)

 

(それで・・・深月の方は大丈夫か?)

 

(ん~、まぁぼちぼちぐらいかな?戦闘には支障ない程度までは回復している筈よ)

 

(了解だ。もうすぐフェアベルゲンに到着するんだが、そこで一泊して深月のハードな特訓するぞ。俺達は強くなったとはいえ、深月に勝てない。そして、中村の奴が深月並のチートになっているんだ・・・いつまでも足手纏いってのは性に合わねぇ!)

 

(私もそのつもりよ。中村さんをぶっ飛ばしてエヒトもぶっ飛ばす!)

 

(という訳で、深月に説明頼む)

 

(はいはい、少しだけゆったり出来るわ~。それと、シアがソワソワしているのはカム達を心配しているからよ)

 

(・・・勇者(笑)は降りていないぞ)

 

(・・・はい?リリィは降ろしたのよね?何で一緒に降りてないの?鳥頭なの?数歩歩いただけで忘れるとかありえないでしょ)

 

(八重樫達も居るんだよなぁ~)

 

(苦労人!しっかりと仕事しなさいよ!!)

 

リリアーナの護衛として乗り込んでいる天之河達が、どうして降りていないのか謎である。恐らく、"リリアーナ達には近衛騎士が一緒だから大丈夫だろう。だったら、襲われた村を助けるのが当たり前だ"等と解釈して優先順位を変えたのだろう。本当に勇者なのかと疑いたくもなる・・・いや、もう既に(笑)が後ろに付いているのでどうしようもないだろう

皐月がハジメと念話を終えて少ししてから深月が目を覚ました

 

「・・・おはようございます、お嬢様」

 

「おはよう、深月。しっかりと目を覚ましたらブリッジに行くわよ」

 

「知らない者がこの飛空艇に乗っていますね」

 

「道中で助けた亜人族達らしいわ」

 

「奴隷として連れ去られようとした者達ですか」

 

「正解。それと、フェアベルゲンで一泊するわ。そこで私達をいつもより厳しく鍛えて欲しいの」

 

「かしこまりました」

 

布団から出た二人は、身なりを整えてブリッジへ続く扉を開ける。皐月は天之河達が乗っている事を知ってはいたが物凄く不機嫌そうに顔を歪めていた

 

本当に何様のつもりなのかしら・・・私達がリリィの護衛をしないからと言って、「だったら俺が行く」って豪語しておきながら何で降りていないの?八重樫・・・隅っこで胃の辺りを押さえているわね。胃潰瘍はもうなっていそうよね

 

「八重樫さんは大丈夫でしょうか・・・口の端っこに血が滲んだ痕がありますよ?」

 

「え"っ!?・・・もしかして吐血した?」

 

「少しだけ伺ってきます」

 

皐月から離れて八重樫の方へ行った深月が事情聴取をしているのを傍目に、皐月はハジメ達の方へと合流した

 

「おはよう」

 

「念話でも言ったが、おはようさん」

 

「・・・深月大丈夫だった?」

 

「切り替えが出来る位には回復しているわ」

 

「はぁ~、本当に良かったです」

 

「深月があそこまで悩むとは・・・妾達の力不足が原因じゃろうな」

 

「そう・・・だよね。中村さんのあれを見ちゃったら・・・」

 

「だったら強くなれば良いだけだ。ステータスの数値で負けているなら、技術を学んでその差を埋めるだけだ。まぁ、ステータスの数値も上昇させる為に死ぬ程努力はするがな」

 

「基本的にはそれだけよ。私とハジメは、あの防御を突破出来る物を絶対に創る事が課題ね」

 

これから先の戦いを想定するならば、分解魔法が付与されている防具を貫通出来る武器が必要となってくる。特に、中村を度肝を抜く様な物が必須である

 

「その為に足が多少なりとも遅くなるのは仕方のない事だ。早々に地球へ帰りたい気持ちもあるが・・・万全を期するなら当然の事だ」

 

「私も強くなる!」

 

「あの時は心をへし折られてしまいましたが、再び出会うまでに強くなります!」

 

「足手纏いは御免じゃからの!」

 

「この体を使いこなさないといけないね!」

 

今以上に強くなる為に深月のハード訓練を受ける事が決定。今までの嫌々は無く、敵を倒して生き残る為の目標が明白となっている。ハジメ達が気合を入れ終わった少し後で深月が合流し、八重樫の現状を伝えられた

 

「簡単な質疑応答と触診から分かったのですが、過度なストレスにより胃に穴が開いている可能性があります。そのストレスの中にですが・・・香織さんの肉体切り替えがトドメとなったかと思われます」

 

深月に指摘されて驚いていたが、皐月から例え話で説明されて頬を引き攣らせたと同時に八重樫に回復魔法を行使した。八重樫本人は、香織の突撃行動が少なくなって胃を攻撃される回数が少しでも減る事を祈った

ハジメ達がフェアベルゲンの森の手前に到着してのお迎えは樹海の濃霧だった。ハジメ達ですら方向感覚が狂わされてしまう程だ。しかし、ここでもぶっ壊れていたのは深月だった。亜人族達が先導してフェアベルゲンへと向かおうとしたのだが、感覚を狂わされずに進んで行く。扇状に張り伸ばした魔力糸が、振動の反響を伝手にマッピング―――――もっと分かりやすく説明するなら、超高性能ソナーだ。深月がフェアベルゲンへと真っ直ぐ向かっている事に気付いた亜人族達は、頬を引き攣らせて驚愕し、ハジメ達は「またぶっ壊れ技を・・・」と呆れていた。少し歩いていると、深月が立ち止まると同時にシアのウサミミがピコピコと反応した

 

「人間独特の気配ではなく、武装した亜人族の兵士達ですね。ここで少し待ちましょう」

 

「う~・・・近づく気配は分かりましたが気配の種類までは分かりませんでしたよ~。修行不足です!」

 

同じ亜人族とはいえ、自分達よりも先に気配に感付いた事に驚いた者達が二人の方を向いた。少しして、霧をかき分けて見た事のある虎耳の集団が現れた。全員が武器を持って警戒をしていたのだが、戦闘に居た深月を見て目を剥き、後ろに居たハジメと皐月の二人にも気がついた

 

「お前達は、あの時の・・・」

 

かつて樹海に入った時に出会った警備隊長のギルが率いる兵士達だった

 

「一体、今度は何の・・・って、アルテナ様!?ご無事だったのですか!?」

 

「あ、はい。彼等とハウリア族の方々に助けて頂きました」

 

「それはよかったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。・・・少年。お前は、ここに来るときは亜人を助けてからというポリシーでもあるのか? 傲岸不遜なお前には全く似合わんが・・・まぁ、礼は言わせてもらう」

 

「そんなポリシーあるわけ無いだろ。偶然だ、偶然」

 

「そうか。だ、だが・・・何故メイドが先頭に立っているのだ?普通は迷う筈「気にするな。気にしたら負けだ」・・・分かった」

 

話しに全くついていけない天之河達は、ただただ黙って様子を見ている

 

「それより、フェアベルゲンにハウリア族の連中はいるか?あるいは、今の集落がある場所を知ってる奴は?」

 

「む?ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。聞いているかもしれないが、襲撃があってから数名常駐するようになったんだ」

 

「そりゃよかった。じゃあ、さっさとフェアベルゲンに向かうぞ」

 

詳しくは着いてからだ。ギルを先頭にして濃霧を歩き、ハジメ達はフェアベルゲンへと到着した。しかし、目に映る光景は以前の様な幻想的な自然の美しさが失われていた。巨大な門は破壊され、空中回廊や水路がボロボロに途切れていたのだ

 

「・・・酷いわね。幻想的な光景がここまで破壊されるなんて・・・」

 

予想以上の被害を見た皐月の感想だった。どんよりと暗い雰囲気が漂う中、フェアベルゲンに居た者達がアルテナを見つけて驚愕し、この場に居る事に喜んで走り寄る。どんどんと人が集まり、アルテナの近くに居たハジメ達を見た亜人族達が警戒する。すると、奥から人をかき分ける様にフェアベルゲン長老衆の一人アルフレリックがハジメ達の前に現れた

 

「お祖父様!」

 

「おぉ、おお、アルテナ!よくぞ、無事で・・・」

 

もう二度と会う事が出来ないかもしれないと思われた再会に、涙ぐんで抱き合った。しばらくした後、アルフレリックはアルテナの頭を撫でながらハジメ達に視線を向けた

 

「・・・とんだ再会になったな、南雲ハジメ、高坂皐月、神楽深月。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのはわからないものだ。・・・ありがとう、心から感謝する」

 

「私と深月は現場には居なかったから、お礼はハジメに言ってね?」

 

「俺は送り届けただけだ。感謝するならハウリア族にしてくれ。俺は、ここにハウリア族がいると聞いて来ただけだしな・・・」

 

「そのハウリア族をあそこまで変えたのもお前さんだろうに。巡り巡って、お前さんのなした事が孫娘のみならず我等をも救った。それが事実だ。この莫大な恩、どう返すべきか迷うところでな、せめて礼くらいは受け取ってくれ」

 

ハジメは、アルフレリックの感謝の言葉に、若干戸惑いを感じつつ頬を掻きつつ肩を竦めた。そんなハジメを見た皐月達は、微笑まし気に見つめている。そして、人間を救う為に迷宮に潜って訓練をしていた自分よりも、意図せずこの世界の人々を救っているハジメを見る天之河は複雑な表情をしていた

その後、ハジメ達はハウリア達と合流する予定だったのだが、タイミングが悪く警戒の為にフェアベルゲンの外に出ているとの事だった。その場で待機は恩人に宜しくないと、アルフレリックが自宅に招き深月がお茶を淹れてハジメ達の前に置いた。無論、天之河達の分は無い。ハジメ達が、深月が淹れたのお茶を味わっていると、ハウリア族の男女が複数人、慌てたようにバタバタと駆け込んで来た

 

「ボスゥ!!お嬢ゥ!!お久しぶりですっ!!」

 

「お待ちしておりましたっ!ボスゥ!!お嬢ゥ!!」

 

「お、お会いできて光栄ですっ!Sir!!Mam!!」

 

「うぉい!新入りぃ!ボスとお嬢のご帰還だぁ!他の野郎共に伝えてこい!三十秒でな!」

 

「りょ、了解でありますっ!!」

 

ハジメと皐月の前に立った複数の兎人族が、ビシッ!と踵を揃えて直立不動し、見事な敬礼を決めている姿があった

 

「あ~、うん、久しぶりだな。取り敢えず、他の連中がドン引いているから敬礼は止めような」

 

「「「「「「「Sir,Yes,Sir!!!」」」」」」」

 

久々のボスの声を聞くハウリアは満足そうに、新人のハウリアは「俺達もついに・・・」と感動していた

 

「ここに来るまでにパル達と会って大体の事情は聞いている。中々、活躍したそうだな?連中を退けるなんて大したもんだ」

 

「へぇ~、ハジメから聞いただけだったけど・・・体の所々に生傷があるわね。活躍も本当の様ね」

 

「「「「「「きょ、恐縮でありまずっ!!」」」」」」」

 

感極まって涙声になっているのはご愛敬として、感極まって震えている彼等。ハジメは、パル達からの伝えられた情報を伝えた

 

「なるほど。・・・"必滅のバルドフェルド"達からの伝言は確かに受け取りました。わざわざ有難うございます、ボス」

 

「・・・・・なぁ、お前も・・・二つ名があったりするのか?」

 

「は?俺ですか?・・・ふっ、もちろんです。落ちる雷の如く、予測不能かつ迅雷の斬撃を繰り出す!"雷刃のイオルニクス"!です!」

 

「・・・そうか」

 

中二病は伝染していた。ハジメは少しだけ後悔しつつ次へ切り出そうとした時、皐月が気になった事を口にする

 

「二つ名ねぇ~、私達にもあるの?」

 

「もちろんでござっ!?」

 

嬉々として伝えようとした瞬間に、ハジメからの威圧で言い淀んだ。言ったら殺すぞ?といわんばかりの威圧だ

 

「ハジメは、私達の二つ名が気にならないの?」

 

「い、いやっ・・・一応知っているから後で教える。今はそんな事よりも大事な話があるだろ?」

 

「・・・そうね、ハジメが知っているならそれでいいわ」

 

自分の傷口を広げずに済んだ事で少しだけホッとしているハジメは、気を取り直して"雷刃のイオルニクス"に尋ねる

 

「ハウリア族以外の奴等も訓練させていたみたいだが、今、どれくらいいるんだ?」

 

「・・・確か・・・ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので・・・実戦可能なのは総勢百二十二名になります」

 

思っていた以上に人員が増加した事にハジメ達は素直に驚く。一方、"雷刃のイオルニクス"は質問の真意をあまり理解していない様子だ

 

「それくらいなら全員一度に運べるな。・・・イオ、ルニクス。帝都に行く奴等を明日までに集めろ。俺が全員まとめて送り届けてやる」

 

「は?はっ!了解であります!直ちに!」

 

「ハ、ハジメさん・・・大迷宮に行くんじゃ・・・」

 

「カム達の事が気になってんだろ?」

 

「っ・・・それは・・・その・・・でも・・・」

 

「そんな様子で大迷宮に挑むとでも思ったの?シアは私達の大切な一人なのを自覚しなさい。"家族"なんでしょ?」

 

「う"ぅ~、皐月さ~ん!」

 

涙目になったシアは、皐月に抱きついて頭を撫でられる。どこから見ても、子供をあやしているお母さんにしか見えない

 

「・・・ん。シア、可愛い」

 

「ふむ、たまには罵り以外もいいかもしれんのぉ~」

 

「皐月の母性が高い・・・」

 

「高坂さんはとんでもないわね。何ていうか・・・うん・・・言葉に出来なかったわ」

 

「鈴もそう思うよ・・・。サッツンの胸に埋めて頭撫でられたら幼児退行しちゃいそう」

 

「もしかしてハジメ様は母性の高い人が好き?・・・己を磨かなければいけません!」

 

上から順に、ユエ、ティオ、香織、八重樫、谷口、そして何故かアルテナの感想だ。少しして、シアは皆から見られていた事に気付き顔を真っ赤にして、ウサミミがピョコピョコと忙しなく動いていた

 

「パル達にも俺が明日から行動すると言っておいたから・・・早速特訓するか」

 

ハジメの言葉を聞いた皐月達は、先程までの和気あいあいの空気を戦闘状態に切り替えた。それを見ていたハウリア達は、「再びボスとお嬢の訓練が受けれる!」と期待していたのだがハジメに断られた

 

「今の俺達にお前達に訓練をつける余裕は全くない。お前達はお前達で訓練をしていろ」

 

「そ、そんなああああ!?」

 

「ボスの訓練が受けれない・・・?ウワアアアアアアアア!」

 

「私達よりも強い敵が現れたって事よ。自力を上げなければ死ぬ―――――だから余裕がないのよ」

 

「なっ!?」

 

「ボスやお嬢よりも強い・・・だと!?」

 

ハウリア達は、ハジメ達よりも強い存在が居る事に驚愕していた。しかも、余裕が無い。圧倒的な力を持った敵と遭遇した事にすぐに気付く

 

「あの時は深月が居たから助かっただけよ。でも、次の相対だと深月でも危険だと判断したわ。敵が多いかもしれないし、深月を無視して私達に攻撃してくるかもしれない。護りながら戦うという事はそれだけ難しく、負担を掛けるという事よ」

 

「恐らくだが・・・中村の奴が体に慣れていなかったから、深月が優勢だった筈だ。もしそうでなくとも、念には念を入れる必要があるって事さ」

 

「ボス、お嬢・・・深月殿が強いと言っていたのは冗談ではなく本当の事だったのですか?」

 

「嘘つく理由なんて無いだろ」

 

聞いた事があるハウリア達は少しばかり目をまん丸と、新人のハウリアは想像がつかない表情をしていた

 

「なんにせよ特訓だ。お前達は邪魔になるから、見学程度なら良いぞ」

 

「「「「「良いのですか!?」」」」」

 

「後学の為に見ておきなさい。・・・見えたら御の字だけど」

 

ハウリア達は少し疑いながらではあるが、ハジメ達の特訓の様子を見る事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

アルフレリックの家を出て、フェアベルゲンから少しだけ離れた開けた場所に集まった。見学者はハウリア達と数人の亜人族の兵士と天之河達である。普段よりも厳しい特訓という事で、どれ程の密度で行うのか興味があった者達だ。深月は、瞑想をして気持ちを切り替える

 

特訓・・・非殺攻撃でお嬢様達を沈める。本音を言えば怪我をさせたくありませんが、お嬢様の提案を無下にする訳にはいきません

 

深月の切り替えが終了。同じくハジメ達も連携について作戦を終え、最終確認をする

 

「俺達はオルカンとヒュベリオンとユエの絶禍、ティオのブレス、香織の分解魔法を使用禁止するが・・・深月はどうする?」

 

「今までと殆ど変わりありません。魔力糸の無色透明、魔法の装填を使いません。」

 

「了解、それじゃあ試合開始の合図を・・・八重樫に頼むわ」

 

「そこはハウリア達じゃないのね・・・。分かったわ、私が投げた石が地面に落下が開始の合図よ」

 

八重樫は、地面に落ちている石を手に持って真上に放り投げる。重力に引かれて石が落下―――――地面に落ちたと同時にユエの魔法が放たれた

 

「火光!」

 

小さな火花を爆発させて発光、スタングレネード並みに強力な光が深月の視界を奪う。遠隔操作で深月の前眼で光らせ、新しい魔法の奇襲なら即落ちする事は無いと考えたのだ。シアとハジメが接近戦を、残り四人は遠距離からの攻撃を準備する

 

「でっりゃああああああですぅ!」

 

深月に襲い掛かるシアのドリュッケン。振りかぶった全力全開の一撃は、苦もなく両手で止められた。地面も陥没せず、まるで吸収されたかの様な―――――ハジメはシアの足を引っ張って、その場所から回収。それと同時に、深月の足元の地面が砕け散る。深月によって魔改造された〇象の杖は、とっても危険極まりない。受け止めてすぐに衝撃を流すのではなく、"停滞"させていたのだ

ハジメ達の奇襲を難なく防いだ深月は、一旦後退する。しかし、これ以上は退けなかった。答えは、ユエの"幻牢"という魔法――――空間魔法を応用した無色透明の固定魔法だ。しかし、それは悪手だった。深月から放たれた斬撃がユエに直撃

 

「ッア!?」

 

それは殺気を研ぎ澄ませただけの攻撃で、ユエにけさ斬りの錯覚をさせる程の効果だった。発動していた魔法は解け、自由となった深月の右手がブレて――――

 

「グホッ!」

 

ハジメが腹筋を貫く衝撃に一瞬だけ屈んだと同時に、先程まで立っていた場所の近くを弾丸が通り過ぎる。これは皐月が放った弾丸で、深月の追撃を防ぐ為の攻撃だった。もし、あのまま何もしなければハジメが最初に脱落していただろう。とはいえ、腹筋を貫通する攻撃にすぐに立て直す事は出来なかった。即効性のあるボディーブロー――――鳩尾打ち。四肢の先端まで電気が走ったかの様な痺れが動きを阻害していた。香織がすかさず回復魔法を行使しようとした瞬間、頭部に衝撃。鈍器で殴られたかの様な痛みに涙目になるが、ハジメを回復させる事に成功

 

「香織さん下がって!」

 

「え?――――っ!?」

 

涙目の歪んだ視界から回復したら、掌底を叩き込もうとしている深月が目の前に居た。以前の人間体ならば体が動かなかっただろう。しかし、今の体は神の先兵―――――動きも見えるし、反応も出来る。バックステップと同時に無詠唱の聖絶を十枚挟む事で、衝撃を少しでも和らげようとする

 

「甘いです」

 

ただ単に突き出す掌底ではなく、体全体を使ってねじり込んだ掌底が十枚の壁を易々と砕いて香織の胸部に直撃した

 

「ケフッ!?」

 

肺の中の空気が全て抜け、回転しながら吹き飛ぶ。ゴロゴロと地面を転がり、大きな木をクッションに止まった

 

「そこじゃ!」

 

ティオの魔法が深月に飛来するが黒刀を一閃して切断と同時に、深月の頭部に向かって飛来する弾丸を振り抜いた刀を反転して、刀の腹で軌道をずらした

 

「あの状態から切り返せるの!?」

 

「伸びきった状態じゃったぞ!?」

 

「これならどうだああああああ!」

 

回復したハジメが死角からメツェライを構えており、皐月とティオが後退しながら追撃を行う。追撃の攻撃を切って逸らし終えたと同時に、毎分数百発の弾丸が深月に向かって殺到する。深月は両手を高らかに上げて地面に手を落としたと同時に、魔力糸の壁が展開された。強度は最高レベル―――――アザンチウム製の剣と切り結んでも、なかなか切れない代物だ。アザンチウム製の弾丸ではないので、全てが地面に落ちる

 

「五天龍!」

 

ユエの放った火、雷、氷、風、土の五種類の龍を象った魔法が四方全てから深月を襲った

 

ドガガガガガンッ!!

 

爆発して大地を抉り取った龍。土煙が晴れると、深月の作った魔力糸の壁が少しだけ欠けており、その後ろには所々傷付き煤だらけの深月が蹲っていた。ハジメ達は、会心の出来だと心の中で喜びながら深月に特訓を続けるかを聞いた

 

「俺達の勝ちだな」

 

「やっと勝てたわ」

 

「流石ユエさんですぅ!」

 

「あれはえげつないのう」

 

「ユエ、ナイス!」

 

「ん!」

 

流石にやり過ぎでは?と感じていたギャラリー。だが、一人だけ―――――そう、たった一人だけ違和感に気付いた

 

「ん?・・・・・あ」

 

「どうしたの遠d――――」

 

ゴキュッ!

 

ギャラリーの一人の遠藤の呟きが聞こえた皐月が、振り返ると―――――シアが深月に締め落とされていた

 

「油断しましたね?」

 

傷だらけの深月を見ていたハジメとユエとティオと香織の後ろから聞こえる深月の声。驚愕して振り返ると

 

ゴトンッ!

 

深月とハジメ達の間に、手榴弾が落ちてきた。深月よりも手榴弾に意識が向き、爆発――――周囲一帯を煙が覆い、ハジメ達は深月を完全に見失った

 

「ちぃっ、ユエ!」

 

ユエの魔法で煙を排除してもらおうとハジメが呼び掛けるが、返事はなくドサッと何かが倒れる音がした。ハジメと皐月は急いで金剛を発動して煙の外に出て合流・・・無事に脱出出来たのは、ハジメと皐月の二人だけだった。もうもうと舞う煙をかき分けて出て来た人物は一人――――深月だった。二人が深月を警戒し続けている間に煙が晴れた中に、地面に倒れ伏したユエとティオと香織の三人の姿があった

 

「どういう事だ・・・深月はあそこに居たんだぞ」

 

「ちょっと待って、傷から血が流れ落ちていない!という事は魔力糸で作ったダミー!?」

 

「お嬢様、正解です。因みに、ユエさん達は復帰出来ませんよ?」

 

「針がぶっ刺されているから分かっている。経験者は語るってな」

 

ハジメは、倒れ伏している四人の首筋に刺さっている針を見て形勢逆転された事を悟った

 

「このまますぐに終わらせてしまうと特訓になりませんので・・・お嬢様とハジメさんには、自己流の改善を見出して下さい」

 

「「何?」」

 

深月は、宝物庫から拳銃を二丁取り出す。深月専用ハーゼンとハウンド、ハジメ達のドンナー・シュラークの銃身よりも長い歪な銃だ

 

「おいおい、俺達相手に銃撃戦だと?慢心し過ぎじゃねえか?」

 

「銃の取り扱い経験は私達の方が上よ?」

 

「お嬢様方はお忘れですか?私は、幼少の頃に軍隊に入隊していたのですよ?」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

ハジメと皐月の二人は完全に忘れていたのだろう。二人は毎日銃を撃つ事で感覚が麻痺して、深月よりも一日の長があるといつの間にか錯覚していまっていた事に気付き、冷や汗を流す

 

「お嬢様とハジメさんに作っていただいたハーゼンとハウンドは、とても使い心地が良いですよ♪」

 

「あぁ、そうかい!」

 

「それは良かったわ!」

 

ドパパンッ!!

 

四つの弾丸が放たれた。しかし――――

 

ドパンッ!

 

ガギギギギンッ!!

 

深月の放った魔力弾に銃弾が弾かれて相殺されてしまった

 

「にゃにぃ!?」

 

「ちょ!?魔力弾でその威力はヤバイって!」

 

「行きます」

 

ハーゼンとハウンドから放たれた弾丸が、ハジメ達に向かう。しかし、軌道が少しだけズレていた。ハジメ達が左右に散開しようとしていたのだが、二つの銃弾がぶつかって左右を通り過ぎる

 

「跳弾!?」

 

「障害物じゃなくて弾丸で!?」

 

動くスペースを阻害された二人が取れる行動は一つだけ。バックステップで後退しながらハジメが迎撃、皐月は宝物庫からミーティアを取り出して右腕に装着する

 

「こんのぉおおおおおお!」

 

キュバババババババババ!!

 

深月を近づかせない事を第一として魔力弾をまき散らすが、獣の様な低姿勢の深月が右左と素早く動いて照準を絞らせない。ジグザグに走りながら徐々に近づく深月に、ハジメは咄嗟に――――ぶっつけ本番で深月と同じ技を使った。ドンナー・シュラークの放たれた弾丸がぶつかり、深月の進む前後に進む

 

「ハジメさん、今の状況でそれは悪手です」

 

「なに―――――クソッ!」

 

「させない!」

 

「流石です」

 

深月は、自身を停止させようとした弾丸がぶつかったと同時に一直線にハジメへと襲い掛かる。しかし、皐月が空いた手でシュラーゲンで狙撃という機転で窮地を脱する事が出来た。尚、深月は後ろへ跳びながらシュラーゲンの弾丸を叩き切っている

仕切り直しにしたいが、深月の凶悪さはここからが本番である

 

「シッ!」

 

深月が投擲する針が皐月の腕に飛来し、重量級の装備を扱っている皐月は咄嗟に右腕を盾にする

 

解放(リリース)

 

「やばっ!」

 

深月の呟きが聞こえた皐月は、右腕のミーティアを分離して後ろへと跳んだ

 

固定(フィックス)

 

ミーティアに当たる寸前で針が糸状に解け、ガトリング部分を引っ掛ける様に引き絞られた。ぎっちりと絡まった事で迂闊に手を出す事が出来なくなり、手持ちの武器一つを失った。ハジメは、そのまま皐月へと突撃しようとした深月の足元を狙う

 

「させるか!」

 

「追撃は駄目です―――――ッ!」

 

深月は、足元を狙っただけの弾丸ならば左程注意しなくてもいいだろうと優先順位を下げた。しかし、足元に着弾したと同時に死角からいきなり現れた弾丸を体勢を崩しながら避ける。避けた瞬間に見えたリング状の物体を見た深月は、あれがハジメ達の作ったアーティファクトであると気付いた

 

「空間魔法を付与したチャクラムですか!」

 

「おう、初めてで驚いただろ?」

 

してやったりとニヤケているハジメ。深月ならば対応するであろうと予想していたからこそ、次の一手はインパクトがデカい。深月が避けた弾丸は、ハジメと深月の中間程で破裂した

 

「なっ!?」

 

「ハッハー!弾丸が破裂するなんて予想していなかっただろ!」

 

破裂した弾丸から溢れた煙は真っ黒――――煙幕弾だった。真っ黒なコートを羽織っているハジメと皐月が隠れるにはうってつけの色だ

 

「うっ!・・・後で怒りますよ!!」

 

なんと、煙には匂いも付いていたのだ。もの凄い悪臭――――肉が腐った匂いが周囲一帯を覆い、ギャラリーや倒れ伏していたユエ達も阿鼻叫喚の代物だった

 

「く、臭い!」

 

「にぎゃああああああああ!臭っ!臭ぁっ!おえっ!?・・・・・吐きそうですぅ」

 

「んほおおおおおおお!匂い責めとは何とも新しいのじゃあああああ!あ、でも臭すぎて気分が・・・」

 

「は、ハジメくん!?私達動けない!動けないよ!?やめ――――――ウェップ」

 

この弾丸を作るのには苦労した。撃った瞬間ではなくある程度の距離で破裂するという条件を満たす・・・何度も何度も試行錯誤をして作られたのだ。中身は、炭の粉末と魔物肉の腐敗臭を凝縮させた物を詰め込んでいる。深月が怒っているのは、食材を食べずに腐らせたからだ

冷静に思考させない為の一手を切る。気配を消し足音を立てずに深月へと忍び寄ったハジメと皐月は、同時に前後から強襲する

 

(いける!)

 

(当たる!)

 

風爪の攻撃が深月へと当たろうとした瞬間、深月のハーゼン・ハウンドが火を噴いた

 

ドガンッ!!

 

二つの魔力弾が風爪を打ち消しながら二人を襲う。しかし、この攻撃は想定内だった

 

(次の攻撃は――――)

 

(ハジメを迎撃しながら私を襲う!)

 

深月の行動は二人の予想通りで、ハジメを迎撃しながら皐月へと襲い掛かった。深月は、皐月の頭に向けてハーゼンを薙ぐ。それを冷静にドンナーで受け流す皐月は、シュラークで四肢を撃とうとした

 

ドガンッ!!

 

だが、重く鳴り響いた銃声と同時に視界が真っ暗になった。ハジメは、後ろから見ていた為何が起きたのかを把握していた。深月は、薙いだハーゼンを人差し指を支点に回転させて、銃口を皐月の側頭部に向けて撃ったのだ。皐月は深月の足を撃つ事に意識を逸らしていた為、深月の反撃になすすべも無く直撃した

ハジメは、皐月の犠牲を無駄にしない為にもこのチャンスを逃さずに攻撃をしようとして深月を一瞬で見失う

 

「何・・・だと!?」

 

自身に向けられた牽制用のハウンドを注視していたのが仇となった

ミスディレクション―――――深月は、牽制用のハウンドを少しだけ上に投げてハジメの意識を一瞬だけずらし、それと同時に気配を溶け込ませた。ハジメは、気配感知も目に映らない状況に目を剥いた。深月の気配遮断を知ってはいたが、戦闘中にいきなり消えるのは想定以上の技術だった

一瞬で形勢が不利になってしまったハジメは、咄嗟に腕をクロスして胸部を庇ったと同時に衝撃。ガード程度無意味といわんばかりの突き抜ける衝撃は、ハジメを地面から引き剥がして大きく吹き飛ばした

 

ドガンッ!!

 

魔力感知で攻撃が来る事も分かっていた。しかし、強力な攻撃で体の動きを封じ込められた状態のハジメにはどうする事も出来ず、額に強烈な衝撃が襲い徐々に目の前が真っ暗になっていく中、最後の深月の言葉が聞こえた

 

「一瞬ではありますが、肝が冷えました。私もまだまだ精進が足りなかった事に気付かせて頂き有難う御座いました」

 

ハジメは背後から聞こえるその言葉を最後に、体が引っ張られる感覚と頭部に走る衝撃に意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「食べ物を粗末にしたハジメさんには、後程OHANASHIしなければなりません」
布団「仕方がなかったんや!メイドさんを驚かせるにはこうする他なかったんや!」
深月「だからと言って腐らせるのは駄目ですよ!悪臭ではなくミントな匂いならばっ」
布団「ミントってあるのかな?」
深月「・・・探したらあるのではないですか?」
布団「取り敢えず、この攻撃方法は確定ですわ」
深月「罰当たりな・・・」




メイドさんのガチギレ時のフォントについて

  • 感情表現が良く分かるからこのままで
  • 読みにくいので普通に戻して
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