ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「タイトル通りメイド成分が無くなるお話だよ!」
深月「えっ、私が居なくなると?」
布団「大丈夫、メイド服成分が無くなるだけさ!」
深月「それは・・・大丈夫と言えるのでしょうか・・・」
布団「帝国のお話はあと少し・・・あと少しで終わる筈だ。それが終われば大迷宮~」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」







メイド成分が無くなった

~深月side~

 

リリアーナと別れて様子見で会場入りしたハジメ達は、周囲の者達から注目を集めていた。綺麗な女性が多い為致し方が無いとはいえ、皐月達を舐める様に見ている視線ばかりだったので少しだけ威圧を込めて睨む。ハジメから発せられた圧に顔を青褪めさせた者達はサッと視線を外す

 

「俺の皐月を舐め回す様に見やがって」

 

「パーティーではよくある事だからあまり気にしていないわよ」

 

「俺が嫌だからな」

 

「私がハジメの女という事を宣言してくれてとっても嬉しいわ」

 

公の場でイチャイチャする二人を見て、羨ましそうに見るユエ達。だが、この場では一番優先されるのは皐月に他ならない。ハーレムを容認するだけに止まらず、しっかりとそれぞれの時間を与えている事から、ユエとシアは諦められるのだ。しかし、未だにハーレムの条件を達成していない二人は空振りするばかりである

 

お嬢様はハジメさんが相手をしてくれていますので行動に移りましょう

 

深月はハジメと皐月に一言入れて、小さなアーティファクトを受け取ってその場から離れる。深月の行く先はリリアーナの待機室で、時間的に丁度だろうと予測したのだ。待機室前に辿り着くと、見慣れない男が天之河達やメイドを外に出して入ろうとしていた。深月はそのまま音を立てずに男と共に待機室へ侵入に成功し、二人から渡された二匹のアーティファクトを解き放ち観察する事にした

 

「ふん、飼い犬の躾くらい、しっかりやっておけ」

 

「・・・飼い犬ではありません。大切な臣下ですわ」

 

「・・・相変わらず反抗的だな?クク、まだ十にも届かないガキの分際で、いっちょ前に俺を睨んだだけのことはある。あの時からな、いつか俺のものにしてやろうと思っていたんだ」

 

あぁ、なるほど・・・味見をするつもりなのですね。流石にそれはドン引きですよ

 

待機室へ入った男の正体は、リリアーナの結婚相手のバイアスという男だ。顔を強ばらせながらリリアーナを見ている事と、人となりの情報を収集した事からこれから起こる事を予測出来たのだ。そして、深月の予測通りバイアスはいやらしい笑みを浮かべながら、強引にリリアーナの胸を鷲掴んだ

 

「っ!?いやぁ!痛っ!」

 

「それなりに育ってんな。まだまだ足りねぇが、それなりに美味そうだ」

 

「や、やめっ」

 

乱暴にされ、痛みに表情を歪ませながら外に助けを求める様に声を上げる

 

残念ですが防音仕様のこの部屋では無意味です。しかし、常人よりもステータスが上である筈の八重樫さん達は例外では?お嬢様からの忠告もあった筈ですし・・・平和すぎる日本の常識が思考を邪魔しているのでしょうか?

 

深月が色々と考えている間にも状況は動く。リリアーナはバイアスによって床に押し倒されている

 

「いくらでも泣き叫んでいいぞ?この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、外には一切、音が漏れない。まぁ、仮に飼い犬共が入ってきても、皇太子である俺に何が出来るわけでもないからな。何なら、処女を散らすところ、奴等に見てもらうか?くっ、はははっ」

 

「どうして・・・こんな・・・」

 

「その眼だ。反抗的なその眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさ。俺はな、自分に盾突く奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ。必死に足掻いていた奴等が、結局何もできなかったと頭を垂れて跪く姿を見ること以上に気持ちのいいことなどない。この快感を一度でも味わえば、もう病みつきだ。リリアーナ。初めて会ったとき、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、いつか滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ」

 

「あなたという人はっ・・・」

 

「なぁ、リリアーナ。結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、どんな顔でパーティーに出るんだ?股の痛みに耐えながら、どんな表情で奴等の前に立つんだ?あぁ、楽しみで仕方がねぇよ」

 

リリアーナは涙を堪え、それを見ているバイアスはニヤニヤとしている。これが帝国皇太子として本来の姿なのだろう。相手に恥をかかせない様に選んだドレスは引き千切られ、シミ一つ無い綺麗な肌が露になり羞恥で顔が真っ赤になる。はだけた場所を隠そうにも両手は押さえられ、両足の間にも膝を入れられて隠す事が出来ない

 

リリアーナ様、諦めては駄目ですよ!金的して物理的に不能にしてしまえば大丈夫です!

 

だが、恐怖で強張ったリリアーナはなす術も無くドレスの全てを剥がされてしまった。リリアーナは、政略結婚とは理解していた

恐怖と嫌悪で誰も助けに来てくれない現実に、リリアーナは絶望した。メイドのヘリーナも、護衛の騎士も、護ると豪語する天之河も助けに来ない。例え政略結婚をしても、将来的には幸せになりたかった―――笑いあって支える存在となりたかったと心が叫ぶ。そんな中ふと思い出した事、香織と八重樫に何時か聞かされた話―――ピンチの時に颯爽と現れて救う者のおとぎ話。王女としての場合なら、現実味を帯びない話に笑っていただろうが、今は一人の女としての願いで―――――心の中で「助けて!」と叫んだ

すると、バイアスの肩の上に二匹の蜘蛛が降り立った。それを見たリリアーナが、驚きで目を見開いて見ていると、一匹の蜘蛛が足の一本をバイアスの首筋にプスリと突き刺した

 

「いつっ!なんだ?」

 

首筋に痛みを感じたバイアスは、リリアーナにキスをしようとした寸前で顔を離して刺された首筋を押さえる。そして、もう片方の肩に乗っていた蜘蛛が反対側の首筋に片足をプスリと突き刺す

 

「いっ!?・・・く、くびびびびびびびびび!?」

 

バイアスはリリアーナの横に倒れ伏し、痙攣して意識を失った。二匹の蜘蛛は、地面を走って白い布に登り、ポケットの中へと入って行った

 

「へっ?」

 

「ようやくお気付きですか?」

 

「か、かっ、かっ、神楽さん!?一体何時の間に!?貴女は皐月と一緒に居たのでは!?」

 

「お嬢様はハジメさんとラブラブしています。それと、私はそこの皇太子と一緒に入りましたよ」

 

「最初から居たのですね!?だったら助けて下さいよ!」

 

「いえいえ、私はリリアーナ様が攻撃に転じたのであれば手を貸すつもりでしたよ?」

 

「帝国との同盟が失敗したら何もかもが終わるので無理ですよ!」

 

リリアーナは深月にツッコミを入れているが、重要な事を忘れているので深月がその事について尋ねる

 

「私にツッコミを入れるのは構いませんが・・・見えてますよ?」

 

「え?」

 

深月が指差すはリリアーナで、体の部分を指されている。リリアーナは、指差された先を見ようと視線を下ろすと、パンツ以外何も身に着けていない自分の姿を見て顔を真っ赤にした

 

「・・・教えて下さいよ」

 

「えっ・・・ドレスが引き千切られた事は理解していましたよね?・・・今の状況で私のせいにするのは如何なものかと」

 

「蜘蛛と深月さんが居た事実に忘れてしまっていたんですよ!」

 

「引き千切られたドレスは勿体無いですね。修復するにも時間が掛かりますし・・・新しいドレスを着るというのは如何ですか?」

 

「そう・・・ですね・・・漆黒のドレスでお願いします」

 

「なるほど、少々お待ち下さい」

 

深月は、部屋の中にあった黒いドレスを手に取って糸状に分解する

 

黒でフワフワフリフリのドレスは誰も着ないと思うのですが・・・そこは放置しましょう。レースアップのロングマーメイドにアームカバーが良いですね。鎖骨のラインと二の腕だけの露出で注目も集まるでしょうし、政略結婚の為とアピールも出来ますので最高です。金色の糸は無いので魔力糸で代用。模様の装飾をして、ブローチはサファイアで引き立てましょう!リリアーナ様は「誠実」「慈愛」「徳望」の三点にピッタリですし、これから起こる事を考えれば"幸運"がリリアーナ様に降りますから

 

深月の手が動き、残像を生み出しながら形作られるドレスは肩端を隠し、肩から鎖骨ラインを露にしつつも体のラインがクッキリと出るマーメイドドレスが仕立てられた。本来は膝下部分で波打たせているのだが、これに関しては足首部分まで伸ばしつつ、ダンスに差し支えない様に大きく流れる様な布仕立てにした。アームカバーは、指先まで包まれつつも、伸縮性のある魔力糸を混合した布でズレる事の無い一品と仕上がった

リリアーナは深月が仕立てたドレスを身に着け、アームカバーを装着してブローチを付けて完成した

 

「・・・神楽さんに出来ない事ってあるのですか?あの短時間でドレスを仕立てるなんて・・・専門職の方でも出来ませんよ?」

 

「技能で裁縫を持っていますので」

 

リリアーナは、これ以上はツッコミを入れても無駄だと悟った。この場でやるべき事は全て終えた深月は、皐月達のドレスを用意しようとこの場を離れる。扉が開かれて普通に出て行った。しかし、表に居る者達は何も気付いていないのか、入ってくる様子が無かったのでリリアーナから扉を開け、バイアスが急に倒れたという事にして部屋を移動した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

深月が皐月達と合流してユエ達女性陣がドレスへと着飾る。ユエ達は帝国で予め用意されていたドレスを着た。元の素材が良い為目を引く存在なのだが、今回も相手が悪かった。皐月のドレスは、深月が一から仕立てたドレスで、デザインはハジメが考えたものだった

↑(※ネロブライドの第二再臨のドレスだと思って下さい)

オタク知識全開で深月に注文したハジメは、皐月の姿を見た瞬間コロンビアポーズで喜びを露にした。深月はやり切ったと言わんばかりに額に流れる汗を拭っていた。ティオと香織が深月にドレスを仕立ててもらおうと突撃しようとしたが、ユエとシアの二人に止められて諦めたのだった

さて、改めて皐月達のドレス姿を確認しよう。今回の主役はリリアーナとバイアスの二人だが、その立場を奪う程の華がある皐月達の事を考えるとやり過ぎた感が否めない。だが、ハジメに後悔はなく、深月に至っては興奮しすぎてうっかりと鼻血を垂れ流してしまっていた程だ

 

「フヘヘヘ、お嬢様お美しい~!」

 

「深月、かなり危ない絵面になっているから気を付けろ」

 

「ハジメさんはお嬢様のお姿を見て興奮しないのですか!?」

 

「興奮するに決まってるだろ!それより深月も着替えろよ。パーティー参加者はドレス必須だぞ?」

 

「私はメイドです!」

 

深月は頑なにメイド服から着替えるつもりはないらしく、今は皐月の姿を多くでも脳内保存している。テコでも動きそうにない深月を前に、ハジメは最終兵器を投入する事にした

 

「お~い皐月~、深月にもドレス着させようぜ?」

 

「え"っ!?」

 

「深月、ステーイ。一緒にドレスを着ましょう?拒否は認めないわ。さぁ、行くわよ!」

 

「め、メイドですので・・・私は別に・・・」

 

「却下」

 

「そ、そんな・・・バカな・・・」

 

深月に逃げ場はなく、おとなしくドレスを着る他ない。皐月は深月を試着室へと連行して行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――十分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメはお酒を飲もうとグラスを取ろうとした時、会場の一角が騒めきだした。「姫さんが来たのか?」とそちらへ視線を向けると、皐月と同色の白いドレスを纏った白銀の美女が居た

↑(※英霊祭装:アナスタシアのドレスと思って下さい)

無意識なのか、見惚れているハジメに気付いたユエが肘打ちをして目で「この場で皐月以外に見惚れるな」と警告を込めた視線を向けていた。ハジメは、ハッと気付き気持ちを切り替えて心の中で「皐月は最高」と呟き、先程の姿を思い出して落ち着きを取り戻した

しかし、事態は急変する。なんと、ハジメが見惚れていた白銀の美女がこちらへと近づいて来ていたのだ。一直線にハジメの元へと歩み寄って来ている。ハジメも驚いているが、ユエ達はもっと驚いている。彼女達は、見知らぬ美女とハジメに「接点があった?」と疑いの眼差しを向けると、ハジメは首を横にブンブンと激しく横に振り否定している。だが、彼女は歩みを止めずハジメの前へと到着した。修羅場な雰囲気に、周囲の者も天之河達も全員が沈黙する。中々切り出せない中、ハジメは表情に出さず恐る恐ると尋ねる

 

「あ、あ~・・・初対面なんだが・・・俺に何か用・・・か?」

 

ハジメの率直な言葉だった。ハジメの言葉を聞いた彼女は、驚愕した表情を浮かべていた

 

ハァ?何で相手が驚いているんだよ!?これじゃあ俺が悪いみたいな雰囲気じゃねぇか!知らねぇ奴を見てどうしろと!?俺の反応は正しいだろ!

 

パーティー会場に居る女性陣は冷ややかな目でハジメを見て、天之河だけは「あの女性が可愛そうじゃないか!南雲は酷い奴だ!勇者である俺がどうにかしないと!」と言って白銀の美女に近づいた

 

「そこに居る男は出会った人を忘れる様な酷い奴だよ。君は俺が案内するから心配しなくても大丈夫だよ」

 

天之河はハジメをディスりつつ、自分の元へ連れて行こうとする。しかし、返ってきた答えは予想外な一言だった

 

「ど腐れ野郎は関係ないので元居た場所へ帰って下さい」

 

ドギツ~イ一言だった。仮にも勇者である天之河に向けて言っていい言葉ではなく、パーティー会場に居た淑女達が彼女に殺気を込めた視線を向けようとした

 

「は?・・・え?・・・冗談だろ?」

 

ハジメの呟きが会場に響く事で、彼女達の殺気は霧散してハジメの方へと向き直る。ユエ達はハジメの目の前に居る女性に視線を向けており、ハジメの次の言葉に驚愕する

 

「お前、深月か!?」

 

『えっ?』

 

先程まで話していたメイドの名前が深月と呼ばれている事は分かっていた。そして、ハジメが言った言葉も深月という名前――――全員が目を点にした後、驚愕の声が広がった

 

『はぁああああああああああああ!?』

 

ユエ達も驚愕しており、記憶にあるメイド姿の深月を思い出すかの様に見比べているのだろう。まるで目が飛び出したかの様な驚き具合と言ったらいいだろう

 

「あれが・・・深月?・・・嘘、あれは別人!」

 

「変わり過ぎですぅ!確かに深月さんは綺麗でしたが、あの化け具合は異常です!」

 

「何・・・じゃと!?あれは変装ではないか!」

 

「あれが深月さん?劇的ビ〇ォーアフターだよ!?」

 

「嘘でしょ?あれが神楽さんって嘘でしょ!?」

 

「ミヅ・・・キン?待って、あれはミヅキンじゃない。深月さんじゃん!」

 

ユエ達女性陣は変わり様に驚いて混乱している。ハジメは深月だと確信したが、まさかここまで変身するとは思ってもみなかった。取り敢えず、気になる事だけを聞く事にした

 

「えっとな・・・それは変装か?」

 

「変装ではありません!少しだけメイクを入れただけですよ!」

 

「じゃ、じゃあ美貌のツボを突いて変化させたとかじゃないんだよな?」

 

「どんな化物なのですか・・・。そんなツボがあればお嬢様を今以上に綺麗にしていますよ!」

 

あぁ・・・これは深月だわ

 

取り敢えず、ハジメはどうしてこんな大変身をしたのかを聞こうとすると、仕掛け人の皐月が帰って来た

 

「クッ、フフフフフフ!深月が分からないっておかしいわ!みんなメイド服で判断し過ぎでしょ」

 

「仕方がねぇだろ。深月がメイド服以外の服を着ているの初めて見たんだからな」

 

「それでも、体の情報からある程度は分かるでしょ?白銀の髪なんて一番目立つでしょ」

 

「そ、染めたら分からねぇだろ?」

 

「こんなに綺麗な白銀に染められないわよ!」

 

ハジメの言い分は全て叩き落され、結局分からなかったハジメが悪いという事になった。深月もドレスを着て参加した事で、周囲の貴族や有権者達からのお誘いが凄いのなんの

 

「それにしても、南雲殿のお連れは美しい方ばかりですな」

 

「全くだ。このあとのダンスでは是非一曲お相手願いたいものだ」

 

――HQ、こちらデルタ。全ポイント爆破準備完了

 

――HQ、こちらインディア。Mポイント制圧完了

 

とにかく愛想笑いでその場を凌いでいると、会場入り口辺りが騒がしくなった。どうやら、主役のリリアーナとバイアスの入場だろう。扉が開き主役が入ってくると、会場の人々が困惑と驚きの混じった声を上げる

それは、リリアーナの衣装の事だろう。当初の予定は白の綺麗さを売りにだしたドレスだが、今着ているのは深月が仕立て直した漆黒のドレス。如何にも「政略結婚の義務としています」と言わんばかりの澄まし顔と合わさって、鉄壁の手出しする事が出来ない様な雰囲気を醸し出しており、一緒に入場して来たバイアスは苦虫を潰した表情をしていた。微妙な空気の中、拍手の雨を迎えながら壇上へと上がりリリアーナの挨拶回りとダンスパーティーが開催された

リリアーナとバイアスのダンスは見事の一言。とはいえ、この見事というのはリリアーナがバイアスとの一定距離を離している事だ。音楽の旋律に合わせてバイアスが近づくも、気付かぬ内にリリアーナと離れるからだ。そして、ダンスも終わり挨拶回りをしに行くリリアーナを見て、バイアスは苛立ちを抑えながらも追従していった。そのリリアーナの様子を見た香織は、違和感を感じていた

 

――HQ、こちらロメオ。Pポイント制圧完了

 

――HQ、こちらタンゴ。Rポイント制圧完了

 

「何て言うか、リリィらしくないね。いつもなら、内心を悟らせるような態度は取らないのに・・・」

 

「まぁ、あんな事があればそうなるわよ」

 

「・・・あんな事?」

 

ユエ達が首を傾げてハジメと皐月を見る

 

「南雲君、高坂さん、一体何をしたの?」

 

「おいおい、それはどういう意味だ」

 

「どういう意味って・・・貴方達が動いたという事は、何か非常事態が起こったという事でしょう?大体何かが変わる時って、貴方達のせいでしょ。実際に何か知っているみたいだし」

 

「チッ、・・・まぁ別に言っても良いか。つっても、これは深月の予測で助けたってだけだからな」

 

「ああいうタイプの人間はどうするか分かりやすいって言ってたわね」

 

「だ・か・ら、何が起きたの」

 

「「レイプされかけた」」

 

「そう、リリィがレイ・・・ナンデスッテ?」

 

「ちょっと、ハジメくん、皐月!?今、なんて!?」

 

ハジメと皐月に詰め寄る二人を見て、言うんじゃなかったと後悔した二人はうってつけの避難場所へと移動する事にした

 

「あ~、うん、だから・・・・・皐月、一曲踊らないか?」

 

「良いわね。私はダンスをした事があるからリードしてあげるわ♪」

 

「あ、ちょっと、南雲君!高坂さん!面倒になったからって逃げないで!きちんと説明してちょうだい!」

 

「そ、そうだよ!重大事だよ!ちゃんと説明して!」

 

ハジメは皐月の手を取ってダンスホールへと逃亡、タキシード姿のハジメと花嫁衣装(擬き)の皐月が場に出た事で、注目が集まる。元々お金持ちのパーティーでダンスをした事がある皐月がハジメをリードして、ハジメは技能の瞬光をフル活用して一緒に踊る。今までダンスを観察していた事で十分様になっているし、時々ミスをする事もあるが、その都度皐月のフォローが入る事で外見からは完璧過ぎるダンスだ

やがて演奏も終わり、軽いキスを交わした二人に帝国貴族達から盛大な拍手が贈られた。それは、純粋な賞賛の気持ちで、帝国貴族の淑女達も見惚れていた

 

皐月がダンスをした事があるって分かっていたが・・・フォローがすげぇ。地球に帰ったら本格的に練習しないとな

 

拍手に一礼して元居た所に戻ると、何故かフフンと胸を張っているティオが居た。恐らく二番目に踊る地位を賭けて勝負して見事勝ち取ったのだろう

 

「さぁご主人様!次は妾とおd――――」

 

しかし、ティオの期待はあっさりと裏切られた

 

「南雲ハジメ様、一曲踊って頂けませんか?」

 

ハジメに声を掛けたのはリリアーナだった。このパーティーの主役からのお誘い・・・ティオが勝てるわけがなかった

 

「姫さん・・・主役がパートナーと離れて、いきなりどうした?」

 

「あら、その主役の座を奪っておいて、その言い方は酷くありませんか?」

 

「あんな仕事顔してるからだろ?っていうか皇太子は放っておいていいのか?」

 

「挨拶回りなら大体終わりましたし、今は、パーティーを楽しむ時間ですよ。もともと、何曲かは他の人と踊るものです。ほら、皇太子様も愛人の一人と踊っていらっしゃいますし」

 

「愛人って・・・あっけらかんとしてんなぁ」

 

「ふふ。それより、そろそろ手を取って頂きたいのですが・・・踊っては頂けないのですか?」

 

ハジメが躊躇していると、皐月に背を押されてしまった。振り向いて皐月を見ると、その眼は「リリィに恥をかかせるな」と言っていた

 

「あ~、分かったよ。・・・喜んでお相手致します。姫」

 

「・・・はぃ」

 

注目を集めている事も相まって、いつものハジメとは考えられない程恭しくリリアーナの手を取り、ダンスホールの中央に導いた。先程の皐月とのダンスを見て、リリアーナは少しばかり恥ずかしがっているので注目度が更に高くなっていた。因みに、ティオは公衆の面前で変態化する寸前で深月に肩を掴まれる事でおとなしく見る側へと周った

ゆっくりとした旋律が流れ始め、合わせる様にゆったりとしつつ流れる様なダンスを始める。リリアーナは、ハジメの肩口に顔を寄せて囁く様に話す

 

「・・・先程は有難うございました」

 

「そりゃあ分かるわな」

 

「あんな非常識な物といい、神楽さんといい・・・貴方方以外にはいないでしょう?それに、お二人の"紅"はとても綺麗ですから・・・見間違いません」

 

「そうか。まぁ、帝国の皇子筆頭があれじゃ、その場凌ぎだがな。遅かれ早かれだろ」

 

「はっきり言いますね。・・・でも、例えそうでも嬉しかったですよ。香織から貴方に助けられた時の事を聞いて、少し憧れていたのです」

 

「それで、色々吹っ切れてあの態度とそのドレスか?」

 

「似合いませんか?」

 

「似合ってるさ。だが、やはりあの白色のドレスの方が合ってる。真逆にしたのは当てつけか?」

 

「ええ、妻を暴行するような夫にはこの程度で十分ですから・・・それより・・・やっぱりあの蜘蛛を通して見えていたのですね。・・・私のあられもない姿も・・・あぁ、もうお嫁にいけません」

 

「小声とは言え、こんな場所で滅多なこと言うんじゃねぇよ。というか、さっきから密着しすぎだろ?皇太子が何やらすごい形相になってんぞ?」

 

「いいじゃないですか。今夜が終われば私は皇太子妃です。今くらい、女の子で居させて下さい。それとも、近いうちに暴行されて、愛人達に苛められる哀れな姫の些細なわがままも聞いてくれないのですか?」

 

「暴行されて、苛められるのは確定なのか・・・」

 

「確定ですよ・・・」

 

リリアーナは一拍置き、一度ハジメに表情を隠しながら抱き着いて姫ではなく、一人の少女としての一言が零れ落ちる

 

「・・・もし・・・もし、"助けて"と言ったらどうしますか?」

 

深月から可能性の話をもたらされたとはいえ、本当にそうなるかなんて分からない。だが、それはあくまでも交渉が有利になるというだけで結婚後の夫婦生活については何も触れていない。だからハジメにこんな事を聞いたのだった。厄介事を嫌う性格である事を知っているからこそ、諦める為に弱音を吐いたのだ。否定されてようやく諦めがつくというもの――――だが、ハジメの返答はリリアーナの予想斜め上のものだった

 

「まぁ、俺がどうこうする前に、結果的に助かるんじゃね?場合によっちゃあ、今夜で今の帝国は終わるかも知れないし・・・少なくとも、皇太子はダメだろうなぁ」

 

「・・・はい?」

 

――HQ、こちらヴィクター。Sポイント制圧完了

 

――HQ、こちらイクスレイ。Yポイント制圧完了

 

何故確信出来るのかが分からず、リリアーナは目を点にしてハジメの顔を見ると、ハジメがニヤリと口元を吊り上げていた。激しく嫌な予感がしたリリアーナは、頬を引き攣らせながらも一途の期待を寄せる。恐らくこれが深月の言っていた事だろう。そして、皐月が言った押して押しまくれという事だと理解した

 

「それとな、甘えるならもう少し分かりやすくしろ。俺は、察しが悪いからさ、うっかり何かしちまうかもしれない」

 

「っ・・・」

 

ハジメとリリアーナのやり取りを見ていた皐月は何処か悟った表情をしていた

 

「姫さんが不幸だと、悲しむ奴等がいるからな」

 

「そこは、嘘でもお前の為だと言うべきじゃありませんか?私、きっと落ちていましたよ?」

 

「落としてどうする。まぁ、取り敢えず、姫さんにとっての最悪だけは起こらないと思ってればいいさ。あいつらの大切な友人である限り、な」

 

「・・・ぶれないですね、南雲さんは・・・本当、皐月が羨ましい・・・」

 

「おっと、皐月に見られてるな。案外この事も全て聞かれているかもな」

 

「ッ!?」

 

リリアーナは顔を真っ赤にして皐月の方に振り向くと、右手をヒラヒラと振っていた。これだけで何がどうなったか分かっただろう

そして、音楽も終わりダンスが終了した。ハジメは元居た場所に帰る際、リリアーナから別れ際に「ありがとう」と感謝の言葉を言われた。そのまま振り返らずに片手を上げるだけの返事を返して帰ると、皐月を除いた女性陣がジト目でハジメを見ていた

 

「・・・流石ハジメ。そして、またやらかした」

 

「ハジメくんの女ったらし・・・」

 

「・・・ハジメさん、一体いつの間に・・・油断も隙もないですぅ」

 

「のぉ、ご主人様よ。放置プレイで少し濡れてしまったのじゃが、下着を替えてきてもよいかの?」

 

「さっきの暴行発言と関係あるわね。・・・リリィが危ないところを助けたって言っていたし、今のダンスで止めを刺したってところかしら?ねぇ、一体、何を囁いていたの?一応、リリィは人妻なのよ?分かってる?ねぇ、分かっているの?南雲君?」

 

「はわわ、南雲君、遂にNETORI属性まで・・・大人過ぎるよ。鈴のキャパを超えてるよぉ」

 

ハジメは、ただ単に皐月や香織と仲が良いリリアーナだから助けただけで下心は一切ない。相手が惚れようが「関係ねぇ!」とソッポを向いたが、その視線の先にはニコニコ顔の皐月が居た

 

「ねぇハジメ、私言ったよね?」

 

「・・・下心は無いぞ」

 

「反省しない様なら、深月に言ってご飯を抜かせるわよ?」

 

「すいません」

 

「無自覚が一番困るのよ。分かっているの?期待させておいて興味なしなんて酷い男だと思わない?」

 

「仰る通りです」

 

「まぁいいわ。例え増えようとも、私の方針は変えないから」

 

――HQ、こちらズールー。Zポイント制圧完了

 

――全隊へ通達。こちらHQ、全ての配置が完了した。カウントダウンを開始します

 

シアと香織の表情が少しだけ強張った。そして、周りは婚約パーティーのカウントダウンに入った

 

「さて、まずは、リリアーナ姫の我が国訪問と息子との正式な婚約を祝うパーティーに集まってもらった事を感謝させてもらおう。色々とサプライズがあって実に面白い催しとなった」

 

ガハルドがハジメの方を見るが、当の本人は知らんぷりを決め込む

 

――全隊へ。こちらアルファワン。これより我等は、数百年に及ぶ迫害に終止符を打ち、この世界の歴史に名を刻む。恐怖の代名詞となる名だ。この場所は運命の交差点。地獄へ落ちるか未来へ進むか、全てはこの一戦にかかっている。遠慮容赦は一切無用。さぁ、最弱の爪牙がどれほどのものか見せてやろう

 

――十、九、八・・・

 

――ボス、お嬢。この戦場へ導いて下さった事、感謝します

 

「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。今宵は、大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ。それが、息子と義理の娘の門出に対する何よりの祝福となる。さぁ、杯を掲げろ!」

 

ガハルドは会場の全員が杯を掲げた事を確認した後、ワインの入った自身の杯を掲げて覇気に満ちた声で音頭を取った

 

それは亜人族も同様であった

 

――気合を入れろ! ゆくぞ!!!

 

――「「「「「「「「「「おうっ!!!」」」」」」」」」」

 

――四、三、二、一・・・

 

カウントダウンが始まり・・・

 

「この婚姻により人間族の結束はより強固となった!恐れるものなど何もない!我等、人間族に栄光あれ!」

 

「「「「「「「「「「栄光あれ!!」」」」」」」」」」

 

――ゼロ。ご武運を

 

その瞬間、会場の全ての光が消え失せて暗闇が広がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさんは衣装チェンジしますた」
深月「・・・お嬢様の命令がなければこんな事には」
布団「女性のおめかしって凄いよね。変貌レベルだわ」
深月「いや・・・私のこれは髪型とアイラインと口紅だけですよ!?」
布団「おめかしを理解していない男はこれだけで分からなくなるのさ」
深月「えぇ・・・」





メイドさんのガチギレ時のフォントについて

  • 感情表現が良く分かるからこのままで
  • 読みにくいので普通に戻して
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