ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「待たせてしまいすまない。どうしてもやらなければいけないイベントと作業と仕事で時間を奪われていた。本当にすまない」
深月「生産者は大変ですね」
布団「そしてまだまだ続く作業にまたしても時間を取られそうなんだ・・・すまないとしか言えない作者を赦して欲しい」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」














メイドは飛空艇の甲板でトレーニングです

~深月side~

 

神の先兵の撃退から翌日―――帝国上層部はドタバタと急いで動き回っていた。それは、カム達の亜人族開放とその為の法案の設立の為だ。その際、奴隷商等の亜人族の解放を渋った者達は首だけとなっていたりした。そして、帝国の市民に説明する際には、エヒト様の神託と宣言し、香織の神々しい登場であっさりと納得させたりした

 

信仰心高いとチョロいですね~。たったあれだけで信じるとは・・・

 

解放された亜人族は、何処か不安そうな顔をしている。いきなり奴隷から解放されて、見たことのない物体に運ばれるので仕方がないだろう。シアが「大丈夫ですよ~!」と大きな声で安心させようとしている

 

「亜人族達は解放されたな。だが、永久の平和は存在しない」

 

「カムもそこら辺りは理解している筈よ。案外、独立を提案するかもしれないわね」

 

「まぁ、ハウリアを見下したりしていたからそうなるだろうな」

 

独立―――今でもヒャッハーしている彼等がとなると・・・頭が痛いです

 

深月は彼等が独立した際の問題事が此方に及ばないかどうかを心配していた。しかし、時すでに遅しなので被害に遭わない様祈るしかないのだ

 

「深月もそこの所どう思う?」

 

皐月に話題を振られて、深月は言おうかどうかを迷う。主に、ハジメのダメージ的にだ

 

「ぶっちゃけて言えよ。深月の予測は大体当たるからな」

 

「本当の事を申し上げますが・・・時すでに遅しですので諦めて下さいね?」

 

「「?」」

 

ハジメと皐月は未だに理解していないのか、頭の上に?を浮かべる

 

「彼等ハウリアの頂点に位置するのはお二人です」

 

「「ん?」」

 

「子孫まで伝えられるお二人の武勇に、ハートマン訓練、厨二病」

 

「ゲハァッ!」

 

「ハジメ!?」

 

「長い時を経る事で尾ひれがついて二つ名が沢山増えるでしょう。そして、ハウリアに訓練を請う亜人族が居る可能性が高く、全体に蔓延・・・亜人族全てにお二人の名が一生残る事間違いなしです」

 

ポクポクポク・・・チーン

 

「よし、カムの所に行って阻止して来る」

 

「自由を掴み取ったのはハウリア自身ですよ?傍観者となっていた私達は介入出来ません」

 

「チックショオオオオオオオオオオオオオ!」

 

避けられない運命にハジメは四つん這いになって絶望した。そして、深月は更に追撃を加える

 

「そして、ハジメさんはシアさんをハーレムに入れた事でカムさん達をご両親に会わせる事になります。後は・・・お分かりですよね?」

 

「やめろぉおおおおおお!現実味を帯びた話をするんじゃなぁああい!」

 

「カムさん達に私達の出会いから全てを語られる事は覚悟しておきましょう」

 

「 」チーン

 

ハジメの口から再びエクトプラズムが流れ出た。会わせたくないと思っても、両家ご両親にはご挨拶は必須。現実から目を背けるも、やがて訪れるそれの威力は計り知れなかった

 

ハジメさんの精神に絶大なダメージを与え終えたので今の現状を再確認しましょう。帝国に居る亜人族は解放され、渋る者はハウリアに狩られ、民には神託という事で纏めました。フェアベルゲンへ向かうにはフェルニルに装着されるゴンドラ状の乗り物に乗せて一斉に運ぶ。その際、ガハルド様とリリアーナ様お二人を連れて行き法案の確認と宣言ですね

流石に人数が多いので搭乗に時間が掛かりますが、もうそろそろ終わりそうですね。私は甲板に出て警備をしましょう。先兵が襲って来る可能性もありますから

 

亜人族全員が乗り込み終えた辺りでハジメのダメージも回復し、深月は外で警戒との事でハジメと皐月は一緒に空の旅を楽しむ事にした。皐月の膝に頭を乗せるハジメと、そのハジメの頭を撫でる皐月―――とても甘ったるい空気を生み出していたりする

甲板に出た深月は、警戒しながら王国でも行っていたシャドートレーニングをする。神の先兵を倒した直後とはいえ、油断する事も出来ないし、エヒトが改良して投入する可能性もある。フェルニルに乗っていた奴隷だった亜人族と、艦内を探索していたガハルドと、それを見張る天之河と坂上と谷口の三人が見ていた。特に見られても困るなんて事は無いので続ける

そして、深月のシャドートレーニングを見たガハルドは何をしているのか理解していた

 

「ほぉ~、あのメイドが強い理由の一端があれか。そりゃあ強いわな」

 

「どういう事だ?」

 

「ゆっくり動いているだけだぜ?」

 

「あんなにゆっくり動いても意味ないんじゃ?」

 

「・・・あれが理解出来ないお前等はそれまでって事だよ」

 

深月を観察していたガハルドは見えていた。深月の戦っている影の相手は、己自身―――同じ技量での捌き合いは平行線だが、相手は疲れを知らずという条件が付く。各部の動きを最小限に、無駄なく効率的に動かす事を確認する様なゆっくりとした動きも分かる。もしも、深月が行っているシャドートレーニングを自分が出来るかと問われれば出来ると答えるだろう。しかし、それは短い時間だけだ。深月は休みなく数時間動き続けている事を考えると、絶対に真似出来ない

人間は普通の速さの動作とゆっくりとした動作ならどちらが楽かと問われれば、何も考えずにゆっくりの方が楽だと答えるだろう。だが、考えてみて欲しい。拳を突き出すだけなら確かに簡単だが、蹴り上げる動作をゆっくりとするのはどうだろうか?―――答えは物凄く疲れる。体幹を常に意識して重い足を徐々に上げていく事を想像するだけでも厳しいのだ。それを理解していないから天之河達は駄目で、所詮素人に毛が生えた程度という事だ

 

「深月の動きはゆっくりで簡単じゃないか」

 

「あれじゃあ攻撃して下さいって言っている様なもんだろ?」

 

「ゆっくりは楽だからね~」

 

「だったら自分達で体験してみな。あれがどれ程地獄か分かるぜ?」

 

天之河達は頭の上に?を思い浮かべながらガハルドが言った様に深月の動きを真似る

 

「こんな事したって意味なんて無いじゃないか」

 

「普段の動きをゆっくりするだけだからな」

 

「鈴でも余裕で出来るよ~」

 

「その余裕が直ぐに崩れ去るだろうがな」

 

「「「?」」」

 

すると、深月の動きが変わった。ゆっくりとスタンスを広げて地面スレスレまでしゃがみ込み、その間にも上半身は動いている。そして、ここからが本当の地獄の始まりだった。深月が片手を地面につけると、片手だけで体をゆっくりと持ち上げてムーンサルトをする。この時点で天之河達は背中から地面に落ちている。あっけなく落ちた天之河達に向けて、ガハルドは淡々とした口調で事実を述べる

 

「これでお前等は死んだも同然だな」

 

「まだだ!地面に倒れただけだ!」

 

「殺し合いをしている時にそうやって言い訳するのか?相手はお前の体勢が整うのを待つ程馬鹿じゃねえぞ」

 

「ぐっ!だが、次は倒れない!」

 

「・・・へいへい、勇者様には何を言っても無駄だな。俺はもうちょっと近くで見学させてもらうぜ」

 

「ま、待て!」

 

天之河達は動きを止めてガハルドの後を追う

 

此方に来るのですか。・・・一旦切り上げましょう

 

近くまで来たガハルド達は深月だけを見ているので、気付かせる様に声を掛ける

 

「遠藤さん、一度休憩を入れましょう」

 

「や、やっと休憩・・・」

 

深月だけしか目に入っていなかったガハルド達は、いきなり現れた遠藤の声に驚きながらそちらへ振り返った

 

「ど腐れ野郎はともかく、ガハルド様まで見失うとは・・・ハウリア達に暗殺されても仕方がありませんね」

 

「ちっ、そいつの影の薄さが異常なんだよ。おおよそ天職も暗殺者で、気配遮断を持っているだろ?だったら中々気付かないのは仕方がねぇだろ」

 

「空気の振動を感知すれば見失う事はございませんよ?」

 

「そんな事が出来るのは恐らくお前だけだろうよ」

 

「人間死ぬ気で訓練すれば大丈夫です」

 

「実体験かよ・・・。それとして話は変わるんだが、このアーティファクトが欲しい。個人用とか無いのか?」

 

「メイドとはいえ、お二人が制作したアーティファクトを全て知っているわけではありません。そして、お二人はアーティファクトを売るつもりはないと思います。例え個人で使用するとしても帝国の第一印象が悪いのが原因でしょう。言葉だけとはいえ、お嬢様達を犯すと発言されましたので」

 

「帝国の在り方が駄目だったって事か~」

 

戦争に利用されるという事もあるのだが、最大の理由は深月が言った通り帝国の第一印象からだった。それはもう最悪の一言だったのは真新しい記憶でもある

 

「私個人の意見では、帝国を滅ぼしたかったですよ」

 

「それは・・・主が危険に晒されたからか?」

 

「お嬢様の敵は私の敵です。しかし、滅ぼした後の厄介事というデメリットがありましたのでやりませんよ」

 

「お前を敵に回す奴らは不憫だろうな」

 

「私よりスペックの高い者は居ますよ?」

 

「・・・冗談だろ?」

 

「王国襲撃の際は体に馴染んでいなかった為に撃退が出来ただけですので・・・次は分かりません」

 

「なるほど、運が傾いていただけか。どれ程痛めつけた?」

 

「片腕を切断しましたが、恐らく再生しているでしょうね」

 

「かぁ~・・・どんな化物だよ。そんな奴らが敵ってのがヤバイな」

 

「次の相対で接戦する様であれば、後遺症が残る事を覚悟で殺すつもりです」

 

「それが良いだろうな。一度逃げられたって事は、相手に学習させる時間を与えたって事だからな」

 

中村と相対する時は必ず来る。しかし、その時までに中村がどれ程成長しているかが問題なのだ。王国での戦闘は、覇潰を使用していたからだ。手札を見せすぎていないので有利かもしれないが、結局はステータスの上昇系の技能である。どちらかと言うと、深月は技で圧倒する傾向が強く、王国の際はブチ切れた状態だったので力任せだった

深月とガハルドが中村を殺す算段を立てていると、横から天之河と谷口が割って入る

 

「恵理はエヒトに操られているんだ。だから殺してはいけない!」

 

「待って!恵理は鈴が説得するから殺さないで!」

 

深月は、この二人はふざけているとしか思えなかった。まだこの世界に来た時の姿であればやぶさかでもなかったが、中村は力でどうとでも出来る存在まで強くなっているのだ。それこそ、片手で天之河達を殺す事なんて余裕である

 

「平和ボケもその程度にして頂けませんか?中村さんを殺す―――これは確定事項です。人間のままなら説得等ご自由にと放り投げていました。ですが、今の彼女はどうですか?ステータス平均100000の化物スペックです。貴方達程度片手で殺す事など容易でしょう」

 

「今の所関係ない俺が言うのもなんだが・・・敵なら躊躇わず殺せ。一度でも裏切ったならそいつは何度でも裏切るぞ」

 

「恵理は操られているだけだ!自ら敵になんてならない!俺が止めてみせる!」

 

「そうだよ!鈴達で絶対に説得するから殺さないで!」

 

「私としては、説得に行かれるのは構いません。しかし、操られて貴方方が敵となるなら躊躇わずに殺しますが―――構いませんよね?」

 

まず間違いなく中村は深月を攻撃してくるだろう。それを説得?その程度の為だけに深月の命を天秤にかけるのは如何なものか・・・。そこで、普段思いつかない馬鹿がその疑問に行き着いた

 

「ん?なぁ、中村が神楽を狙っているんだったら、結局意味ねえんじゃないか?」

 

坂上の言う通りである。それに気づいた天之河達は、それでも諦めないと豪語する

 

「貴方達は、説得の為に私に死ねと言っているのと同じですよ?それを私が了承するとでも?」

 

「で、でも、ミヅキンなら恵里と戦っても無事だったじゃん!」

 

「先程も言いましたが、あれは運が良かっただけ。肉親ならいざ知らず、所詮は他人―――命を懸けるに値しません」

 

「うぅ」

 

「なら、どうして南雲を護っているんだ!」

 

深月は天之河の言葉に盛大な溜め息吐く

 

「普通は男が女を守るだろう!南雲は、女であれ戦場に立たせる酷い奴なんだぞ!」

 

深月は頭が痛くなり、こめかみを押さえる。天之河の解釈は、女を戦場に立たせる悪い奴と言う事だ

 

「・・・貴方がそれを言うのですか?クラスメイト達を戦争参加に導いた張本人さんが・・・」

 

「俺は皆を戦争に参加させた事はない!」

 

深月が天之河はクラスメイト達を戦争に参加させたと指摘するが、当の本人はそれを否定する。どこまでも無責任だ

 

「畑山さんは戦う事を否定していました。しかし、それを無視してイシュタルという汚物の言葉に従いましたよね?」

 

「イシュタルさんは酷い人じゃない!」

 

「畑山さんを監禁したのは教会、そのトップであるからこそ汚物なのですよ。それに、汚物は畑山さんの怒りによって爆殺されました。貴方の何も知ろうとしなかった責任を背負ったのです。畑山さんが誘拐された時、誰を一番最初に疑いましたか?きっとハジメさんなのでしょう?」

 

実際は違いますが、ど腐れ野郎に言うだけならこの程度で大丈夫でしょうね

 

深月の言葉に、天之河は図星を言い当てられた様に反応する

 

「ちっ、違う!」

 

「ダウト、目が泳いでいますよ。大方、ハジメさんが気に入らないのですよね?美しい女性が傍に居る事が気に食わないのでしょう?己の隣に居る事こそ幸せであると」

 

「南雲は当たり前の様に人を殺すんだぞ!沢山侍らせる事が当たり前と思っている男の隣に居るよりも、俺の傍に居た方が安全なんだ!」

 

「そこに女性の意思はあるのですか?」

 

「え?いや・・・人殺しの男の傍に居るより―――」

 

「女性の本当の想いを真っ向から否定する。粘着質な男ですね」

 

天之河を汚物を見る様な視線を向け、数歩離れる。ついでに、先程の天之河の答えに遠藤とガハルドも数歩離れる

 

「あいつ・・・マジかぁ~。ある意味男として屑だな」

 

「薄々は感じていたけど・・・改めて聞くと最悪だ」

 

二人の率直な感想に天之河がキッと睨みつけて怒ろうとしたが、深月に言葉に遮られる

 

「女性の想いを殺し、己が隣こそ最高の至福と解釈するその頭・・・本当にぶっ壊したいです。以前言われていた事ですが、ハジメさんは女性をコレクションにしていると叫ばれていましたね?」

 

「そうだ!南雲は女性をコレクションとして侍らせているんだ!」

 

「ハッキリ言いますが、貴方の方が女性をコレクションと認識しています」

 

「俺はそんな事していない!」

 

「なら、どうして香織さんの行動を否定したのですか?」

 

「南雲が洗脳したからだ」

 

「どうやって?」

 

「魔法で洗脳したに違いない!」

 

深月は、坂上と谷口に視線を向けて一つ問う

 

「魔法の勉強はしましたか?」

 

「やったが・・・正直分からなかった!」

 

「基礎から各属性の性質を習ったけど?」

 

遠藤にも視線を向けると、習っていると首を縦に振っていた

 

「洗脳に長けた魔法とは、闇属性魔法です。人一人を操るとなると、天職がその魔法に特化した者だけです。ハジメさんの天職は錬成師―――魔法適正無しですよ?どの様な根拠から洗脳と言う言葉が出たのか教えて頂けませんか?」

 

「だ、だがっ!」

 

「くどい。現実を受け入れられないから言い訳をするのは幼い子供と一緒です」

 

深月に続く様に、遠藤とガハルドが追撃を加える

 

「俺は人を好きになった事がないから説得力が欠けるけど、天之河が言っている事は、女性をコレクションにしているって事だって思う」

 

「俺にも側室は居る。だが、ちゃんと愛してやってるんだぞ?何もせずに隣に置くって事は、そいつの未来を真っ暗闇にしたまま奪うって事だ。勇者が言っている事は正にこの事だ」

 

「だ、だがっ!南雲は人殺しなんだぞ!?そんな奴と一緒に居ても幸せである筈がない!」

 

「今思ったんだが、何故勇者は南雲ハジメだけを否定しているんだ?俺はあいつよりも側室が多く、人殺しもしているんだが否定の声が上がっていないぞ?」

 

「側室の人達が納得しているならそれは仕方が無いんだ。だが、香織は納得していない!」

 

「いや、天之河さぁ・・・白崎さん自身にその事を聞いたの?」

 

遠藤の指摘に天之河がピタッと止まった。またしてもご都合解釈で、香織が無理矢理ハジメと行動させられていると思っていたのだろう

 

「さて遠藤さん、続きをしますよ。今回はマンツーマンで動きの再確認を致しましょう。それが終われば、新しい切り返しを伝授します」

 

「やってやるさ!」

 

今までの遠慮する考えがなくなり、心機一転とした遠藤は生き生きしながら深月にCQCを教わり始めた。受け入れられない現実に苦悶する天之河を、ガハルドが無理矢理連れて行く形でこの場から立ち去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤の特訓は厳しいの一言。倒れて起き上がっても、直ぐに倒され起きて倒され起きての繰り返しだ。それでも、遠藤は必死になって体を動かして流そうとするが、その全てを倒されてしまう。例えるなら、詰み上げ様とする石が毎回蹴り飛ばされていると言ったらいいだろう。いつ終わるか分からない苦痛だが、遠藤は徐々にではあるが、自分が強くなっている確信を得ていた。新しい技術を手に入れた時の感覚は心を震わせ、自然に笑みを零す程だった

 

早い―――CQCに関しての技術だけではありますが、成長速度が段違いです。一戦力として十分機能する事が出来ます。パーティーに入れて行動する手も一考した方が良いでしょう。私はワザと動きを遅くしていますが、追い付いて来ています。・・・それこそ、今日の間で追い付くかもしれませんね

 

深月の技が遠藤を倒そうとした瞬間、遠藤が手を弾き攻撃して来た。遠藤の伸ばされた手を掴んで投げたが、腕に圧し掛かる重さは無かったのだ。それは、遠藤は投げられると感じた瞬間に、自ら体を投げたのだ。しかし、着地からの攻撃で再び倒された。大の字で肩を大きく動かして呼吸しているが、遠藤は確かな手応えと実感に歓喜した

 

「やった・・・やった。やっと分かった!CQCってこういう事だったのか!」

 

完璧とまではいかないが、遠藤はCQCの基礎的な動き方を理解した

 

「投げて、防いで、堪えるだけじゃなかった。流される事も必要だったんだ!」

 

「ようやく気づかれた様ですね。では、今回はこれで切り上げましょう。復習は、無理をしない程度で忘れずに行ってください」

 

遠藤の訓練が終わったら、ユエ達四人に連れられる形で八重樫と谷口が甲板に出てきた。しかも、ユエと香織に関しては、背後に龍と般若を顕現させていた

深月が事の経緯をシアに聞くと、それはものすごく単純な事だった。ハジメに膝枕をしていた皐月を見て、ティオと香織がしつこく羨ましがっていた。そこでユエは、二人を引き剥がす為に事実を突きつけた後に喧嘩を売り、二人がそれを買ったという流れだ。しかも、道連れで八重樫と谷口も居た

 

「喧嘩をするのであれば、私と組手は如何ですか?」

 

「「「「「「いいえ、結構です」」」」」」

 

「残念です。・・・それでは、甲板の警戒は皆さんにお任せします」

 

深月は甲板の警備から外れて艦内の調理室へ向かい、皆(勇者パーティー除く)にお菓子を作りに行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

皐月はハジメに膝枕をしながら、外の景色を楽しむ様にフェルニルを操船している。途中でユエ達のひと悶着があったが、外で喧嘩をするという事なので二人きりでのんびりしている

 

「亜人族達をフェアベルゲンに送り届けたら、いよいよ大迷宮の攻略ね」

 

「寄り道したが、概ね順調だな」

 

「今の間だけは平和ね」

 

「・・・だな」

 

激甘な空気を大量生産する二人を見て、リリアーナとヘリーナの口の中はジャリジャリしている。二人が、誰かこの空気をぶち破れ!と思っていると、艦内探検が終わったガハルドが艦橋に戻って来た

 

「あ~、艦内探検は終わったのか?」

 

「おう、とんでもないな。何故、こんな金属の塊が飛ぶのかさっぱりわからん。だが、最高に面白いな!おい、南雲ハジメ。俺用に一機用意してくれ。言い値を払うぞ」

 

「どうせ深月にも聞いてんだろ?だったら諦めな」

 

「そういうなよ。な?一機だけ、小さいのでいいんだ」

 

「俺に何のメリットもないだろうが」

 

「ぬぐぅ、金がダメなら女だ!娘の一人にちょうどいい年の奴がいる。ちょっと気位は高いが見た目は上玉だぞ。お前のハーレムに加えてやるから、な?いいだろう?」

 

「ハーレムを加えるかどうかは私次第よ。娘を道具として扱うなんて酷い親よね」

 

「いいや、娘もちゃんと将来を見据えて行動するぜ?」

 

「いやいや・・・深月に教育されて帝国を内部崩壊させちゃうかもしれないわよ?」

 

「・・・おいやめろ、物凄く容易に想像出来ちまっただろ!」

 

深月の教育を受けた者がどうなるかは分からない。しかし、お話しだけで変貌したヘリーナという証人が居るのでとてつもなく不安に思うのだ。皇帝こそ一番とする帝国が女帝が支配する国となり、女帝は深月が忠誠を誓う皐月の部下となる。そうなってしまえば、皐月とガハルドの胃が直接攻撃されるのは目に見えている

リリアーナは、「流石にないですよね~?」と呟きながらヘリーナに深月の事を尋ねる。そして、返ってきた言葉に頭を抱えた

 

「深月様ですか?とても素晴らしいメイド長で御座います。遠藤様と御一緒させてもらい短剣術を学んでおります。次回はCQCなるものの訓練です」

 

これにはハジメ達も含め、全員が頭を抱えてしまった。「何やってんだ深月ぃいいいい!」と叫びたい心を抑えて苦笑いをしていると、噂をすれば影とやら―――深月がカートを押しながら艦橋へやって来た

 

「皆様頭を抱えられていますが・・・如何されましたか?」

 

噂の本人は、皐月達が何故頭を抱えているのかは分からない

 

「深月・・・貴女ねぇ・・・。リリィ御付きのメイドに何しちゃっているのよ」

 

「これと言った事はしていないのですが・・・何か不手際が御座いましたか?」

 

「いや、・・・不手際はなかったわ。・・・だけど、だ・け・ど!どうして戦闘能力を付けようと思ったの!?」

 

「一番身近に居る存在だからこそ、何かあった時の為の戦闘要員です。近衛騎士が常に傍に居るとは限りませんよ?」

 

深月の言う事は正論だ。今回の一件から、ヘリーナも己の判断力と力の無さを悔いているからこそ強くなりたいと願った。バイアスの様な男が現れない可能性はゼロではない

 

「リリアーナ様は警戒心はあっても、最悪の場合の想定が甘いのでそれを防ぐ為です」

 

「神楽様の言う通りです。あの一件で私の甘さがあの様な悲劇を生んだとなれば、二度と起こらない為にあらゆる手段を用いる事は当たり前で御座います」

 

「ヘリーナがここまで変わったのは神楽さんのせいですよね!?」

 

「主に忠誠を誓う事の大切さを説いただけです」

 

「事実だけに言い返せない!」

 

結局、深月によるヘリーナ微改造は行われる事となった。話は戻り、深月が押してきたカートに乗っているのはパンケーキだった。微かに香る甘い匂いと、熱量操作で温かさを保たれた一品だ

 

「あぁ~、この匂いは駄目なやつ~」

 

「この瞬間を待っていたんだ!」

 

「神楽さんの作ったお菓子・・・ゴクリ」

 

「リリアーナ様、はしたないですよ?」

 

「そう言うヘリーナこそ、涎が垂れていますよ?」

 

「・・・これは失礼」

 

匂いに釣られて、食に飢えた者達が口から涎を垂らす

 

「ほぉ~、甘いやつをあまり食わないが、匂いだけでこれは絶対に美味いと分かるな。俺の分もあるか?」

 

「ご用意しております」

 

「ちっ!それもよこせよ」

 

「おいおい、それはいくらなんでも横暴すぎるだろ南雲ハジメ。自分がされたら嫌な事を相手にするなよ」

 

「こういう時だけ人間味溢れる綺麗事言うなよ。帝国らしく強者に従えよ」

 

「飯の時だけはそんな事してねぇよ!」

 

「ハジメさん?」

 

「・・・ごめんなさい」

 

深月に睨まれて素直に土下座するハジメを見て、ガハルドは笑った

 

「ガハルド様の分もお下げしましょうか?」

 

「・・・すまん」

 

この場で勝てるのは皐月以外誰一人居ない。姫?皇帝?国を亡ぼす事の出来る先兵を一人で倒せる者達が言う事を聞く可能性は皆無である。要するに、この場で正しい行動は皐月に媚を売るしかないのだ

 

「あ~・・・高坂皐月。これ以上アーティファクトに関する事は言わねぇから食わせてくれ。な?良いだろ?」

 

「これ以上言わないなら別に良いわよ。そ・れ・と、ハジメも飢えているのは分かるけど少しは自重して」

 

「・・・はい」

 

皐月は二人を落ち着かせた後、深月に目配せして各自に配膳していく。すると、ユエ達が急ぎ艦橋へと戻り、少し遅れて

 

「私も!」

 

「ずるいですぅ!」

 

「良い匂いが漂ってきたのじゃ!」

 

「私の分もあるよね?」

 

「香織達がいきなり手を止めたから何かと思ったけど・・・こういう事だったのね」

 

「鈴も食べたい!」

 

八重樫はこの後の展開に溜息を吐き、谷口はパンケーキを頂こうとしている。しかし、虚しきかな。勇者(笑)パーティーの分は用意されていなかった。リリアーナは苦笑いしつつ、何故用意されていないのかを尋ねる

 

「尋ねるのは無粋ですが・・・何故天之河さん達の分が無いのでしょうか?」

 

「リリィ、勇者(笑)パーティーが帝国で何をしたか分かっているでしょ。それに、帝国と亜人族の間に結ばれる法案に勇者(笑)は必要ないのよ。必要なのは第三者の国家の重要人―――この世界に留まらない私達は駄目って事よ」

 

「それは・・・仕方がないですね」

 

リリアーナは、帝国に来てからの天之河の行動に頭を悩まされていたので食べさせない事で少しばかりの仕返しをする事にした。そして、当たり前の様に食べれると思っていた天之河達は反発する

 

「勇者の俺が立ち会った方がいいだろう?」

 

「光輝、止めなさい」

 

「雫止めるな。俺は南雲の様な人殺しを強要させる奴を立ち会わせない方が良いと思っているから、俺が代わりにするんだ。勇者じゃない南雲よりも、勇者である俺の立ち合いなら後の世代にもしっかりと伝わるんだ」

 

本当に・・・本当に意味を理解していない。勇者?そんな者は居ても居なくても変わらない。大して活躍をしていない勇者が立ち合い―――無名の自称勇者が立ち合ったと認識されてしまう。そんなものは邪魔でしかない。それならば、王国と帝国を襲撃した神の先兵を打ち倒した超メイドとその主の方がまだマシだ。所詮立ち合いというのは飾りである

 

「立ち合いなら勝手にすればいいわ。但し、このパンケーキは食べさせない。材料はあるから自分で作れば?」

 

「食べるなら美味しい方が良いだろ?南雲はいつも食べているから俺達に譲るのは当たり前だろう」

 

要するに、深月が作ったパンケーキを自分が食べる事が正しいと解釈しているのだ。だが、ハジメは天之河を無視して食べる

 

「うめぇ~、やっぱり深月が作る料理は最高だな!」

 

「無視するな!」

 

「はぁ?どうしてお前の言う事を聞かなきゃいけねぇんだよ。ハッキリ言うがな、タダ飯食らいなんてさせねぇぞ?ガハルドは・・・まぁ、あれだ・・・一応皇帝だからな」

 

「俺は勇者だぞ?」

 

「勇者だからどうした?魔人族の一人も殺せない様な奴が偉いとでも思ってんのか?」

 

「人殺しは悪だ!勇者である俺は、絶対に人を殺さない!皆は俺がみちb―――」

 

「光輝、いい加減にしなさい。それ以上言うなら私は貴方との縁を切るわよ?」

 

「くっ!」

 

天之河はハジメを一睨みして艦橋を出て行き、坂上は放っておけなさそうな様子で後を追って行った。空気が悪くなったが、深月はそんな事は気にせずに皐月達にパンケーキと紅茶を配膳した

そして、食べ終えた頃にフェアベルゲンの上空へと到着。ハジメは、フェルニルをフェアベルゲンのど真ん中に着陸させた。ゴンドラに乗った亜人族達が故郷に降り立ち、涙を流しながら、もう会えないと思っていた家族や友人達と抱き締め合っていた。これからは亜人族と帝国との法案の確認―――一応証人として赴くが、重要人物ではない。まるでガハルドを連行する様な形で族長達が集まっている場所へと移動した

ハジメ達のハルツィナ樹海の攻略は翌日になりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「続き書かなきゃ・・・でも展開に迷う」
深月「息抜きで何かを書かれるのも一考ですよ?」
布団「どうにかして頑張る('ω')」

メイドさんのガチギレ時のフォントについて

  • 感情表現が良く分かるからこのままで
  • 読みにくいので普通に戻して
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