ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「大変お待たせしました。少しだけお休みが出来たので急ぎ執筆!」
深月「頑張って下さいね」
布団「いつもより短めだけど許してね?」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」








メイドは白いものを手に入れた

~ハジメside~

 

フェアベルゲンに帰還した亜人族達。その後、アルフレリックを中心とした族長との会議で帝国との誓約を取り決め、ガハルドを転移門で強制帰宅させた。そして、深月の予想通りカム達はフェアベルゲンから独立―――ハウリア達専用の集落を作る事となった。一応、カムにハウリア代表としての権限を持たせる事で族長会議に参加出来る様になった

その夜、亜人族達に混ざって宴会を楽しむハジメ達。深月に関しては亜人族達が作る料理の観察をしていたりする。皆が静かになった後、皐月に促されてハジメとシアの二人きりの時間を用意され色々と話した

そして翌日、体に纏わる濃霧をかき分けながら大樹の元へと進むハジメ達と天之河達。道中、襲い来る魔物達を弱い天之河達と未だに体に慣れていない香織に任せて進む。そんな香織の様子を見ていたハジメは、中々様になって来ていると思った

 

「大分、慣れてきたみたいだな。毎日、ユエと喧嘩しているだけの事はある」

 

「・・・スペックが異常。うかうかしていられない」

 

「そんな事ないよ。魔法はまだ実戦だと使い物にならないし、分解も集中しないと発動しないし……ユエからは一本も取れないし」

 

香織がノイントの体になってから約十日―――これを思うと十分過ぎる成長速度である。しかし、前線で自ら戦う事に不慣れな為にユエ達には勝てないでいた

 

「・・・香織。あなた何を言ってるのよ。軽く私達を上回る身体能力に、銀翼と分解なんていう凶悪な能力、魔法は全属性に適性があって無詠唱・魔法陣無しで発動可能。剣術も冗談みたいに上達して上限は未だ見えず、ただでさえ要塞みたいな防御能力なのに傷を負わせても回復魔法の練度はそのまま継承しているから即時に治癒して・・・もうチートなんて評価じゃ足りない、バグキャラと言うべきよ。なのに、まだ不満なの?」

 

八重樫から呆れた様に、客観的な意見を言われ「そうかな~?」と本人はあまり自覚していない模様だ

 

「もうちょっと考えなさいよ。深月は除いて、分解魔法の前では相手は回避一択しか行動出来ない事のメリットは何?それだけなら何も言わないけど、ステータスは私とハジメとほぼ同等で回復魔法まで使える事を。固定ヒーラーじゃないのよ?攻防両立の移動ヒーラーなのよ」

 

「うっ、・・・ちゃんと自覚していくよ」

 

「比較対象を深月にしちゃいけないわよ?永遠に自分のスペックを正しく理解出来ないわ」

 

今の深月が成長限界とはいえ、それでも意味不明な強さは健在なのだ。高すぎる壁は乗り越えようとする意欲すら粉々に打ち砕く

 

「でも、ユエやシアにも勝てないし・・・私がバグキャラなら、ハジメくん達は?」

 

「・・・名状しがたい何か・・・としか・・・」

 

香織は、ノイントの身体でもユエやシアに勝てない。しかし、それは戦いに一日の長があるだけだ。何事も経験が一番である

 

「大丈夫だ、雫。大迷宮さえクリアできれば、俺達だって南雲くらい強くなれる。いや、南雲が非戦系天職であることを考えれば、きっと、もっと強くなれるはずだ」

 

「だな。どんな魔法が手に入るのか楽しみだぜ」

 

「うん、頑張ろうね!」

 

そして、大迷宮攻略に相応しくない面子の天之河達。何故彼等がこの場に居るのかというと、畑山に懇願されたからだ。何時?―――王国でハジメと畑山のふたりだけの時にお願いされたのだ。ハジメも最初は否定していたのだが、渋々ながら折れる事で同行させる事を許可した。しかし、天之河達を護る事はしないが命の保証を最低限という事を条件にした

当然この同行に反発したのは深月である。大迷宮で足手纏いの御守りをしながら攻略はそんなに甘くないと口酸っぱく言っている。ハジメも深月の言う事は全部正論で間違っていないと分かっているが、畑山にお願いされた旨を伝え、皐月の命令という形で反対はしなくなった。しかし、それは口だけで嫌悪感を滲み出させている事は言うまでもない

 

(皐月・・・深月の機嫌を取り戻す為にはどうすればいい?)

 

(諦めて)

 

かくいう皐月もあまりいい気分ではなかった。これはハジメにお願いされた事で、仕方なしに了承しただけに過ぎない。そして、現在進行形でイラつかせている理由は樹海の魔物に手を焼いている事と、大迷宮を攻略しただけで強くなれると思っている事だ。シアは、少しイラついている皐月にビクビクしながら道案内終了の声が上げる

 

「みなさ~ん、着きましたよぉ~」

 

濃霧を抜けて晴れた場所に出ると、以前と変わらない姿の大樹が姿を現した

 

「これが・・・大樹・・・」

 

「でけぇ・・・」

 

「すごく・・・大きいね・・・」

 

頭上を見上げ、大樹の天辺を見ようとするが見えず、横幅があり過ぎて壁に見間違う程の圧巻に口をポカンと開けて唖然とする初見組。ハジメは唖然としている彼等を放置して、大樹の根元にある石板のもとへ近づく。石板の方も前回と変わらず七角形の頂点に七つの各大迷宮を示す紋様が描かれており、その裏側には証をはめ込む窪みがあった

 

「カム、何が起こるかわからないからハウリア族は離れておけ」

 

「了解です、ボス。ご武運を」

 

これから先は魔境―――ハジメの言葉にハウリア達は少し残念そうな表情をしているが、それでも一斉にビシッと敬礼を決めて散開していった

ハジメは、石板に従ってオルクスの指輪、ライセンの指輪、グリューエンのペンダント、メルジーネのコインをはめ込んでいくと、徐々に強くなっていた光が解き放たれたように地面を這って大樹に向かい、今度は大樹そのものを盛大に輝かせた

 

「む? 大樹にも紋様が出たのじゃ」

 

「・・・次は、再生の力?」

 

ティオが興味深げに呟いた通り、大樹の幹に七角形の紋様が浮き出ていた。ユエが紋様に近づいて再生魔法を行使すると、今までにない光が大樹を包み込み、ユエの手が触れている場所から波紋の様に何度も光の波が天辺に向かって走り始めた

大きくとも瑞々しさ失っていた大樹が、根から水分を吸収する様にあるべき状態へと元通りに復活していく

 

「あ、葉が・・・」

 

「再生魔法で若かりし頃の大樹に戻ったのかしら?」

 

ぽつりぽつりと葉が大きくなり、それを皮切りに大樹に葉が生い茂って鮮やかな緑を取り戻した。風が大樹をざわめかせた瞬間、突如、正面の幹が裂けるように左右に分かれ大樹に洞が出来上がった

 

「迷宮の入口御開帳~、ってな」

 

「懸念していた事は外れたわね」

 

ハジメと皐月が懸念していた事とは、攻略条件を満たしていない者達が入れるかどうかという事だ

条件を満たしていないシア、ティオ、香織―――ついでの天之河達だ。恐らくだが、迷宮の解放条件があれだったのだろう。迷宮に挑戦する者は拒まず、生死を決めるのは己次第という事だ

 

「んじゃあ、行くか」

 

「そういえば、この迷宮は昇華魔法だったわね。・・・試練がさっぱり分からないわ」

 

「・・・入れば分かる」

 

「いつだってぶっつけ本番ですぅ!」

 

「炎は厳禁じゃの」

 

「頑張るよ!」

 

ハジメパーティーの意気込みは十分で、天之河達の勇者(笑)はというと―――

 

「攻略してみせる!」

 

「やってやるぜ!」

 

「頑張るよ~!」

 

「・・・はぁ、胃が痛い」

 

三人気合十分で、一人は考えの甘さに胃を痛めている

 

「それでは大迷宮に入りますが、覚悟は良いですか?」

 

「俺は強くなるんだ・・・身近な人を護る為に強くなるんだ!」

 

「「「「「「「「「「遠藤(さん)(くん)居たの!?」」」」」」」」」」

 

遠藤の影の薄さはいつも通り。足手纏いが多く、危険な攻略が開始された

ハジメ達は、大樹の洞の中へ入って進んで行くとただ大きな空間がドーム状に広がっていた

 

「行き止まりなのか?」

 

天之河が訝しそうにポツリと呟くと同時に、洞の入口が逆再生でもしているように閉じ始めた

 

「あっ、あぁ~・・・こういう事か」

 

「ボスが来る?それとも転移?・・・なるようになれとしか言えないわね」

 

徐々に外の光が細くなっていき、入口が完全に閉じ暗闇に包まれた。ユエが光源を確保しようとした瞬間、足元に大きな魔法陣が出現し強烈な光を発した

 

「こっ、これは一体なんだ!?」

 

「うわっ、なんだこりゃ!」

 

「なになに!なんなのっ!」

 

「騒ぐな!転移系の魔法陣だ!転移先で呆けるなよ!」

 

動揺する天之河と坂上と谷口にハジメが注意した直後、彼等の視界は暗転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

強い光が徐々に弱まり、ハジメ達が目を開けると木々の生い茂る樹海が視界に映っていた

 

「・・・ここは」

 

複雑怪奇の一言に尽きる

 

「みんな、無事か?」

 

天之河が周囲の状況確認をし仲間の安否を確認する。八重樫達は「大丈夫」と返事をする

 

「ユエ達も無事ね。私達だけ転移だったようね」

 

皐月がユエ達に点呼を呼び掛けようとした瞬間

 

ドパンッ!

 

ハジメの撃った弾丸が皐月の左腕を吹き飛ばした

 

「ハジメ、どうして!?」

 

「皐月さん大丈夫ですか!?」

 

「ご主人様!?」

 

「ハジメくん!?」

 

「ちょ、嘘でしょ!?」

 

「南雲お前っ!?」

 

「何やってんだ!?」

 

「南雲っち!?」

 

「南雲!?」

 

いきなりの出来事に、深月以外のこの場に居る皆が驚愕してハジメを止め様とするが、ハジメの殺気が普段とは比べ物にならない程だった

 

「やってくれたな大迷宮。おい深月、ちゃんと縛ってるよな?」

 

「言われずとも」

 

ユエ達はハジメと深月が何を言っているのかよく分からなかったが、ハジメが吹き飛ばした皐月の左腕を見ている事に気付いた。釣られる様に皐月の左腕に視線を向けると、吹き飛ばされた筈の腕から血が噴き出ていない事に驚愕した

 

「さてと―――おい、偽物。紛い物の分際で皐月の声を真似てんじゃねぇよ。次に、その声で俺の名を呼んでみろ。手足の端から削り落とすぞ」

 

「擬態が不十分です。お嬢様成分が全くありませんよ?」

 

「これ以上問答するのも時間の無駄だ。深月、殺れ」

 

ハジメの言葉を聞き、深月が右手を握りしめたと同時に、皐月、ティオ、坂上の三人の身体がバラバラになった。つい先程まで違和感無く溶け込んでいたティオと坂上がバラバラにされた事で天之河が斬り掛かろうとしたが、八重樫が肩を掴んで止めてバラバラにされた二人の場所を確認させる事で落ち着きを取り戻させた

 

スライムですか。・・・このハルツィナ樹海の昇華魔法からなる試練のコンセプトが全く分かりません。バラバラの転移による状況把握の確認を試す事は却下。擬態・・・この先もお嬢様達を模した魔物が現れる可能性は大きいでしょうね

 

深月は、冷静に状況を把握していく事で最悪の仮定を予測する

 

「深月、この大迷宮のコンセプトについてだが」

 

「恐らく信頼関係でしょう。仲間割れを起こす事が目的かと思われます」

 

「この先皐月達を模した敵が現れる可能性があるな」

 

「普段の仕草で判断する他ないでしょう」

 

「チッ。流石大迷宮だ。いきなりやってくれる・・・」

 

ハジメは、ドンナーをホルスターに仕舞いながらこの先へと続く通路を睨む

 

「ハジメさん・・・皐月さんとティオさんは・・・」

 

「転移の際、別の場所に飛ばされたんだろうな。僅かに、神代魔法を取得する時の記憶を探られる感覚があった。あの擬態能力を持っている赤錆色のスライムに記憶でも植え付けて成り済まさせ、隙を見て背後からって感じじゃないか?」

 

最愛の皐月に擬態された事で不機嫌そうに表情を歪ませる。そんなハジメの予測を聞いた八重樫と谷口が感心した様に頷く

 

「なるほどね。・・・それにしてもよく分かったわね」

 

「うんうん、鈴には見分けがつかなかったよ。どうやって気がついたの?」

 

八重樫と谷口は、どうやって見分けがついたのかコツをハジメに聞く。何故深月ではないのかと言うと、参考にならないと判断したからだ。しかし、ハジメから帰ってきた答えもとても参考になるものではなかった

 

「どうって言われてもな。・・・見た瞬間、分かったとしか言いようがない。目の前のこいつは"俺の皐月じゃない"って」

 

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 

惚気ともいえる回答に深月以外の全員がガクッと脱力した

 

「じゃあ、龍太郎君とティオさんは?」

 

「一度、偽者がいるって分かれば、後は注意して見れば"魔眼石"で違和感を見抜くことは出来るんだよ。だから、今後は俺といる限り心配無用だ」

 

天之河達は、そうですかぁ~と呆れた様子だった。一方、シアと香織はどこかモジモジしながら期待した眼差しでハジメに質問した

 

「あの、ハジメさん・・・私でも、見た瞬間に気づいてくれますか?」

 

「シアと同じく私は?」

 

微妙に甘酸っぱい雰囲気の中ハジメに視線が集まるが、ハジメは特に気にする事無くありのままを答える

 

「ん~・・・無理だな。この中だと、ユエと深月だけだな」

 

「「・・・」」

 

普通は空気を読んで「分かる」と言って欲しかった。しかし、そこはハジメクオリティーなので仕方がなしと言ったところだ。思わずジト目になる二人を無視して、ハジメとユエと深月は樹海の奥へスタスタと進み始めてしまった

 

「神経が太すぎるのも考えものね・・・」

 

「あぅ、カオリン、シアシア、元気だして!」

 

「香織は本当に、何だってあんな奴を・・・」

 

「はぁ・・・」

 

頬を膨らませ不機嫌さをアピールしている香織とシアをチラ見しながら、一行は樹海の中へと足を踏み入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海へと足を踏み入れた一行に待っていたのは、昆虫型の魔物の群れだった

 

ブゥヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!

 

「うぅ~、キモイよぉ~、"天絶ぅ"!」

 

「泣き言いわないの!鈴、そっち行ったわよ!」

 

「くっ、素早い!"天翔剣"!」

 

「魔物は人間と違うから戦いにくい!」

 

おおよそ幼児程の大きさの蜂の魔物がおびただしい数で攻めてきたのだ。顎をギチギチと鳴らし、針部分からは緑色の液体が溢れている事もあって嫌悪感が凄まじい。しかも、この蜂型魔物の厄介な所は、針を飛ばせるという所だ。しかも飛ばした針は直ぐに補充されるという中距離からマシンガンを撃たれる様なものだ

谷口が障壁で防ぎ、八重樫がヒットアンドアウェイで陣形を乱した所に天之河の高火力で薙ぎ倒すというゴリ押し戦術を駆使するが、視界を埋め尽くす蜂の群れは一向に減った様子がなかった

 

「くそぉ、こいつら、まるで魔人族の魔物みたいだ!」

 

「いや、逆だろう?奴らの魔物が大迷宮の魔物に近いんだ」

 

天之河は、大迷宮で少し前に経験した修羅場を思い出して思わず悪態を吐き、ハジメは必死に聖剣を振るう天之河を後ろから襲おうとするカマキリの魔物をハジメが難なく撃ち殺す。ユエは羽を凍柩で凍らせて地に落とし、シアはドリュッケンで蟻を土ごと粉砕し、香織は銀羽で蜂型の魔物を撃ち落とす。深月は気配を透過させて気付かれずに首を跳ね飛ばしながら奥へと進んで行った

 

「"天絶ぅ""天絶ぅ"!もう、ダメだよっ。押し切られちゃう!」

 

谷口の障壁が壊され、張り直し、壊され、張り直しを繰り返し、魔力を削り取って行く。少しずつ障壁を超えて自分に近づく光景は、まるで真綿で首を絞めるかのように鈴の精神にもダメージを与えていた

 

「奔れ、"雷華"!刻め、"爪閃"!」

 

八重樫の詠唱と共に、黒刀の性能が遺憾なく発揮され迫り来る蜂型の魔物を屠る。確実に、一体一体を倒すが、量が多く戦局が徐々に押され始めており、それに気がついている雫の表情は苦々しい

 

「刃の如き意志よ、光に宿りて敵を切り裂け!"光刃"!」

 

天之河が、八重樫のお陰で出来た隙に詠唱し、聖剣に光の刃が覆われ、約二メートルにまで延長された刀身を体を回転させてコマの様に薙ぎ払う。しかし、大振りの攻撃は攻撃後の隙が大きく、技後硬直を狙われ魔物が殺到する

 

「くっ、このっ!」

 

「光輝!」

 

再び聖剣を光らせて攻撃をするも、魔物の体当たりで体制が崩されてしまった。それからは、魔物達が待ってましたと言わんばかりに天之河に殺到する。八重樫が援護に向かおうとするが、魔物がさせまいと攻撃をして隙を与えない。そして、遂に魔物の一帯が聖剣を掻い潜り天之河の背中にガッチリと組み付き、凶悪な顎で光輝の首筋を噛み千切ろうとした

 

「ッ!?」

 

声にならない悲鳴を上げる天之河。その刹那

 

ドパンッ!

 

ハジメのドンナーが火を噴いて、天之河の背中に組み付いていた魔物を粉砕する

 

「動くなよ、天之河」

 

ドォオパン! ドォオパン! ドォオパン! ドォオパン! ドォオパン!

 

クイックドロウが炸裂、六条の光の槍が射線上の魔物を奥まで粉砕する。更に、奥へと突き進んだ弾丸と弾丸がぶつかり合って複雑に跳弾して進路上の敵を一気に殲滅する。天之河達が苦戦していた蜂型の魔物は、ハジメの手で一分も経たずに全滅された

全ての敵が倒されたと判断したハジメは、ホルスターにドンナー・シュラークを仕舞って、呆然とする天之河達を無視して倒した魔物に近づく

 

「ちっ、喰っても意味なさそうだな・・・」

 

「く、喰う?えっ、南雲くん、これを食べるつもりだったの?本気で?」

 

先の蹂躙劇を忘れ、ドン引きする天之河達

 

「言ってなかったか?・・・自分と同等以上の魔物を喰うとな、相手の固有魔法を自分の物に出来る事があるんだよ。奈落の底じゃあ、喰うものなんて魔物くらいしか無かったからな。あぁ、お前らは真似するなよ。まず間違いなく死ぬから」

 

「頼まれたってしないわよ。改めて聞くと本当に壮絶ね・・・」

 

「で、でも、じゃあ何でこれは食べないの?いや、鈴としては、そんな捕食シーンは見たくないから食べないにこしたことはないんだけど・・・」

 

「今、言っただろう?自分と同等以上じゃないと意味ないって。この辺の奴等じゃあ雑魚すぎるんだよ」

 

「・・・そっかぁ~。南雲くんにとって、この魔物は雑魚なんだぁ~。そっかぁ~、アハハ」

 

「鈴、気持ちはわかるから壊れないで。戻ってきなさい」

 

若干、壊れ気味に乾いた笑い声を上げる谷口を、八重樫が溜息を吐きながら正気に戻す。そんな中、天之河だけがハジメが殲滅した魔物を見てギュッと拳を握りながら見つめていた。天之河は、苦戦していた魔物を涼し気に余裕たっぷりで倒していたハジメに嫉妬。最初は無能だったのにいきなり強くなった―――何かズルをしているに違いないと、どす黒い感情が溢れているのだ

 

「・・・天之河」

 

「っ。な、何だ?」

 

「今は、お前の幼馴染を探し出すことだけ考えとけ。あれこれ悩むのは、やることやってからで十分だろ」

 

「あ、ああ。そうだな、早く龍太郎達を見つけないとな・・・」

 

ハジメの言葉に我に返った天之河は、行方不明の坂上を思って気を引き締めた

 

「・・・殲滅完了」

 

「ハジメさん、向こうは掃討しましたよぉ~」

 

「ふぅ、こっちも終わったよ」

 

ユエとシアと香織も魔物を倒し終え集まり状況把握をしていると、この場には深月だけが居ない

 

「深月は?」

 

「魔物を一撃で倒していましたけど・・・奥の方へ行ったのでしょうか?」

 

「私も魔物を倒す姿を見たよ。暗殺者の様に一撃で首を跳ねて消えたけど」

 

天之河達も一緒に周りを見渡すが、見つける事は出来ない。そん中、ハジメの眼帯に熱源感知が引っ掛かった。そこは、蜂型の魔物が沢山現れていた道の奥だった

 

(深月、蜂型の魔物が通っていた通路の奥に居るのか?)

 

(はい。通り道を辿って元を断つのは基本ですから)

 

(皐月達を探しに行くから早く戻って来い)

 

(かしこまりました。それと、お宝を発見しましたよ)

 

「ん?・・・お宝って何だ?」

 

深月の言うお宝が全く分からず、つい口漏らす

 

「宝石?」

 

「装飾品ですか?」

 

「武器かな?」

 

「まるでダンジョンね」

 

「トレジャーハンターミヅキン!」

 

言いたい放題である。光物にワクワクとする女性陣と、ファンタジーな世界のお宝に興味をそそられる男性陣。ハジメが視線を向けている方を見ていると、傷付いた様子のない深月を発見。その手には白い物体が抱えられていた事で、テンションが爆上がりする。しかし、近づくにつれ、白い物体が動いている事に気付く

 

「おい・・・何を持っている」

 

ハジメは、率直に深月が持っている物を尋ねる

 

「蜂の子です♪」

 

両手で持ち上げている蜂の子をハジメ達の前に出すと、ウネウネと体がよく動いていた。・・・目の前で動く蜂の子を見たユエとシアとティオは頬を引き攣らせ、香織と八重樫と谷口は顔を青褪めさせて深月から離れた

 

「何故離れるのですか?」

 

「・・・デカい幼虫は気持ち悪いからだろ?」

 

深月が手に持つ蜂の子を見て、ハジメですら少しだけ引いている

 

「蜂の子は栄養満点ですよ?」

 

『食べるの!?』

 

「えっ、食べないのですか?」

 

『絶対に嫌(ですぅ)!』

 

女性陣と遠藤と天之河と坂上も同じく拒否するが、ハジメだけはどうしようかと悩んでいた

 

「・・・ハジメ?」

 

「もしかしなくても・・・」

 

「蜂の子だよ?」

 

食に飢えているハジメでも食べないだろうと思っていたユエ達だが、本気で悩んでいる様子だ

 

「・・・なぁ、美味いのか?」

 

「未だ食べた事が無いので確証はありませんが、美味しいと思いますよ?」

 

「深月の腕次第って事か」

 

「調理は移動しながらでも大丈夫です」

 

「了解だ。皐月とティオを早く見つけないとな。あぁ、ついでに坂上もな」

 

「龍太郎の扱いが雑すぎない?でも、やっぱり恋人が大事なのね」

 

「恋人じゃねぇ。正妻だ」

 

「ハイハイ、お熱い事で」

 

一行は樹海奥地へと進む。尚、深月は料理をしながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「ど腐れ野郎達は要らないです。あっ、遠藤さんは別ですよ?」
布団「主人公の優柔不断がいけなかったんや」
深月「はぁ・・・諦める他ありませんね」


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