ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「正月に向けての準備が忙しぃ( ;∀;)」
深月「買えば済みますよ?」
布団「節約って大事。そして、何事も手作りが一番なのさ。・・・まぁ、毎年恒例ってやつさ」
深月「餅つきですか?」
布団「Yes!」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」






メイドには癒しが必要です

~深月side~

 

死が・・・私に死が押し寄せてくりゅううううううう!?ゲフッ!

 

皐月による、「気持ち悪い」の核爆弾級の口撃が深月の心をへし折った。四つん這いに崩れて吐血、誰から見ても隙だらけの深月なのだが、ゴキブリ達は虫の知らせか何かで近付こうとはしていない

 

「愛らしい奴等にも無視されるか。それだけ人望が無いって事だな―――ざまぁねぇぜ」

 

「・・・中二野郎と一緒なのは不服だけど、いい気味」

 

「ア"ァン?うるせぇぞチビッ子」

 

「・・・蒼龍」

 

ユエの魔法が襲うが、ハジメは悠々と回避して煽る。そこから周囲全てを巻き込む形で乱戦となった。時々深月にも攻撃が向けられるが、全てを難無く受け流す

 

「受け流すなよ」

 

ユエ達も深月に対して厳しい言葉を言い放つが、それらはどうでもいいと割り切れる。しかし、特攻兵器は健在なので―――

 

「クソメイド、動かないでよ。動いていたら殺せないわ」

 

オッフゥ・・・もう嫌です。私耐えれません―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな世界は絶望しかありません・・・・・死にましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて・・・何故深月がこれ程まで憎まれているかというと、ハジメ達が深月に依存している事が原因だった。料理が美味しいからだけではなく、戦闘、生活、アフターケア等々かなり頼り過ぎている信頼関係なのだ。愛情も良いのだが、依存の方が感情反転の幅が大きい

話は戻り、感情反転といえども拒絶の言葉がグサグサと突き刺さり耐えきれなくなった深月は、夫婦剣を一刀持って首に押し当てた

 

ブシャッ

 

躊躇なく頸動脈を切り裂いて地に崩れ落ちる。その瞬間を見たハジメと皐月は、目を見開いたと同時にオルカンとブラストモードのミーティアで周囲のゴキブリを、シュラーゲンの炸裂弾で巨大ゴキブリを大量に葬る。それと同時に、反転した感情が一気に和らいだ事に気付いた。それはユエ達も同様で、香織以外は持ちうる最大火力の攻撃を叩き込んでゴキブリ達を殲滅した。一方、香織は急ぎ深月の傷の回復を行う。進化した回復魔法の刻永は、最大十秒の間ならばどれだけ酷くとも完全まで回復させる事が出来るのだ。例えるなら、失った筈の血も補充されると言う事だ

深月の回復も終え、ゴキブリ達も殲滅し終えたハジメ達の行動はただ一つ

 

『深月(さん)、ごめんなさあああああい!』

 

反転した間の記憶は鮮明に覚えており、もしかしたら自分の言葉で傷付いたのではないかと罪悪感がとてつもなかった。特に皐月が酷く、深月をギュ~ッと強く抱きしめている

 

「・・・ごめんね深月ぃ」

 

皐月の胸に顔を埋められて皆からは見えないが、( ˘ω˘)スヤァと良い笑顔で眠っている深月を見れば心配した事が損だと思ってしまうだろう。色んな意味で戦闘不能の深月をハジメが背負い、奥へと続く転移の魔法陣へと歩を進める。尚、深月の安らかな表情が一瞬だけ歪んだ事は敢えて伏せておこう

一行が魔法陣の上に立つと、今までと同じ様に光って転移。そして、目の前に広がっていたのは庭園だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

庭園の広さはおおよそ学校の体育館程で、いろんな場所からチョロチョロと水が流れ、芝生があり、あちこちから伸び生えている小さな樹木と、白亜の小さな建物だった。そして、一番奥にある円形の水路に囲まれた小島の中心に立つ樹木と、伸びた枝が絡みついている石板があった。ティオが周囲の様子を確認する為に、庭園の端に行き眼下を覗きこむ

 

「ご主人様達よ。どうやらここは大樹の天辺付近みたいじゃぞ?」

 

ティオの言葉に他の者達も庭園の端から眼下を覗くと、広大な雲海と見間違える様な濃霧の海が広がっていた

 

「空が近いから標高が高い場所だと思ってはいたけど・・・フェルニルに乗っている時には見当たらなかったわ。どうなっているのかしら?神代魔法?」

 

「フェルニルはかなり高い場所を飛んでいたからな。それでも見えなかったって事は・・・魔法かアーティファクトで隠匿されているのか?」

 

ハジメと皐月は、魔法に長けたユエに視線を向けて尋ねる

 

「闇系統にそういう魔法はある・・・魂魄魔法ならもっと・・・あるいは空間をずらしてる?」

 

ビンゴ!予想が当たっていた。しかし、ユエは違和感を感じさせない程の力の行使は無理だという事だった。これを聞いたハジメ達は、ここの解放者の認識を改めた。嫌がらせばかりをする陰湿者でも実力はあると

 

「ここが、ゴールね」

 

「あぁ、試練はどれもこれもが嫌らしい物だったがな」

 

二人の呟きに天之河達がハッとした表情になり独り言を漏す姿を尻目に、ハジメ達は石板の傍まで歩いて行く。ある程度の距離にハジメ達が入った事で、周囲の水路に若草色の魔力が巡った。この水路そのものが魔法陣となっているようだ。そして、いつもと同じ様に記憶を探られる感覚の後に、無理やり刻み込まれる感覚。ハジメ達は慣れているが、二人だけが衝撃と違和感に「うっ」と呻き声を上げている

皐月が神代魔法の名前を口に出そうとした瞬間、石板に絡みついていた枝がグネグネと動き始めた。いきなりの出来事にハジメ達は身構えたが、枝が集まっていき、人の顔を作り始めた。それから肩から上までの部分が作られ、女性の容姿が作られ色が着く。そして完全に人型が出来ると、その女性は目を開けて口を開く

 

「まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します」

 

オスカー達と同様にリューティリスも記憶映像を作っていたのだろうと分かってはいたが、まさか樹木が形となって伝えるとは思ってもみなかった

話は戻り、リューティリスはリリアーナの王族に似た気品と威厳があるように感じる

 

「しかし、これもまた必要な事。他の大迷宮を乗り越えて来たあなた方ならば、神々と我々の関係、過去の悲劇、そして今、起きている何か・・・全て把握しているはずね?それ故に、揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心というものを知って欲しかったのよ。きっと、ここまでたどり着いたあなた達なら、心の強さというものも、逆に、弱さというものも理解したと思う。それが、この先の未来で、あなた達の力になる事を切に願っているわ」

 

ユエ達が神妙な顔で話を聞く中、ハジメは焦れて物色を開始。一方、皐月は左手をグッパグッパと広げて閉じてを繰り返しながら、掌をジッと見つめている

 

ミレディが言った通り、昇華魔法だったわね。知識には無いけれど、感じる―――ステータスだけじゃない。技能も進化している。より高性能のアーティファクトを作る事も夢じゃないわ

 

「あなた達が、どんな目的の為に、私の魔法―――"昇華魔法"を得ようとしたのかは分からない。どう使おうとも、あなた達の自由だわ。でも。どうか力に溺れることだけはなく、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい」

 

これで伝える事は終わったのだろうと判断したハジメが石板から攻略の証を勝手に取り出そうとする姿を見た皐月は、ハジメの頬を抓って引き寄せる

 

「痛ぇ!痛ぇって皐月!!」

 

「話が終わっていないのに勝手な事しないの!」

 

ハジメを庇う者は誰もおらず、ハジメは皐月におとなしく従う

 

「わたくしの与えた神代の魔法"昇華"は、全ての"力"を最低でも一段進化させる。与えた知識の通りに。けれど、この魔法の真価は、もっと別の所にあるわ」

 

ハジメの眼がクワッと見開かれるが、皐月は予想していたのでさして驚きはしない。ハジメは、つい「それを先に教えろや!」と口漏らす

 

「昇華魔法は、文字通り全ての"力"を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法・・・これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさる事で神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法―――"概念魔法"に」

 

リューティリスの言う概念魔法という単語を聞いた皐月は、ある可能性を思い至り手を握る力が強くなる

 

概念魔法・・・神の御業と言うべき魔法―――なら、地球に帰る事が出来る転移魔法も使えるかもしれないわ。でも、解放者達が求める物とは根幹が違うかもしれない。空間魔法と昇華魔法で別次元へ転移?いえ、何も知らない場所を切り開くならより細やかな情報・・・座標が必要となるわ。・・・もしかしてアーティファクト?

 

「概念魔法―――そのままの意味よ。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ただし、この魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易に修得する事は出来ないわ。何故なら、概念魔法は理論ではなく極限の意志によって生み出されるものだから」

 

知識に刷り込まれなかった理由を聞いたハジメは、極限の意思というフワッとした説明に理解出来なかった

 

「わたくし達、解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出す事が出来なかったわ。もっとも、わたくし達にはそれで十分ではあったのだけれど・・・。その内の一つをあなた達に」

 

リューティリスが言い終えたと同時に、石板の中央がスライドして懐中時計の様な物が出てきた。それを手に取ったハジメと一緒に皐月もそれを見て考察する

 

これ・・・真ん中に針?が中央に固定されているわね。羅針盤みたいな形・・・・・ちょっと待って、さっき言っていた概念魔法の一つがこれで、それで十分という事は

 

予想が段々と確信に変わり、皐月はハジメの腕を掴む力が徐々に強くなる

 

「さ、皐月大丈夫か?」

 

皐月の様子が変わった事に気付いたハジメは、呼び掛けるが返答が無い事に戸惑った。声では気付かない皐月の額を軽くデコピンする事で現実に引き戻す

 

「あっ・・・ごめんね。このアーティファクトが私達に必要な物だと分かって・・・つい」

 

「何?俺達に必要な物って―――まさか!?」

 

ハジメも何かに気付いた瞬間、リューティリスが説明を再開した

 

「名を"導越の羅針盤"―――込められた概念は"望んだ場所を指し示す"よ」

 

二人は確信した。これは自分達が探し求めたものの一つだと

 

「どこでも、何にでも、望めばその場所へと導いてくれるわ。それが隠されたものでもあっても、あるいは―――別の世界であっても」

 

『っ・・・』

 

思わず地球組のメンバーが息を呑み、一途の期待が生まれる。解放者達の使い方はエヒトの場所まで繋げる事だと分かった。無論、ハジメ達もエヒトを倒す為に必要な物だ

故郷へと帰る為の一手が手に入った事に、心の中で歓喜する二人を見たユエが二人の手を掴んで優しげな眼差しを送る

 

「全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなた達はどこにでも行ける。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からん事を祈っているわ」

 

伝える事を終えたリューティリスは、石板に絡みついた状態へと元通りとなった

 

「ユエ、念の為に聞くが・・・昇華魔法を使えば・・・空間魔法で・・・・・世界を越えられるか?」

 

ハジメの言葉に皐月を除く地球組がハッと気分が上昇するが、ユエは間をおいて返答する

 

「・・・ごめんなさい」

 

「そうか・・・」

 

ある程度は予想していた。解放者達が作ったアーティファクトは三つ―――エヒトを倒すために作ったのだから、一つだけでは無理だという事を

 

「ユエ、気にしなくても良いわ。解放者達が作った概念魔法は三つ。一つではクソ神が居る場所へは辿り着けない事が分かっていたから故郷へ帰れるとは思っていないわ」

 

「皐月の言う通りだ。故郷へ帰る為のアイテムの一つが手に入っただけでもマシだ」

 

「・・・ん!」

 

出来無いなら、もう一つの神代魔法を手に入れれば万事解決。神を倒す意志もそうだが、故郷へ帰るという意志に比べたら低い。奈落に落ちてから、ハジメと皐月の意志はただ一つ―――地球へ帰る。ただそれだけだ

 

「ハジメさん、皐月さん、下に降りるショートカットの道も出現しましたよ」

 

シアの指差す先を見れば、庭園の一角に転移の魔法陣が出現していた。ハジメと皐月は、一早く気付いたシアによくやったと褒める様に頭を撫でつつ、魔法陣を詳しく調べていると天之河が声を掛けてきた

 

「な、なぁ、南雲。さっきの話・・・その概念魔法が使えるようになれば・・・」

 

「ああ、帰れるだろうな。少なくとも、転移先はこの羅針盤が教えてくれるだろう」

 

「そう・・・か・・・」

 

天之河は希望が湧いてきた表情になり、他の三人も同じ様な表情をする。しかし、八重樫は少しして冷静になって重要な事を尋ねる

 

「自分でもかなり身勝手だとは思うけれど、南雲君は・・・帰る時に私達も一緒でも・・・大丈夫なの?」

 

転移直後からハジメと皐月の事を陰ながら無能と呼び、子悪党共を助長させる言動もあった。後ろめたさが大きく、一緒に連れて帰れなんて言えないのだ。魔人族の襲撃から助けられ、王都襲撃で助けられ、迷宮で助けられ―――と返しきれない恩が積み重なっているので下手に出る他ない

 

「安心しろ。定員制限やらデメリットでもない限り、ついでに全員連れ帰ってやるよ」

 

「そ、そっか、えへへ。ありがとう、南雲君」

 

「・・・三人は駄目だったのね」

 

「「「うっ!?」」」

 

皐月は周囲を見て反応を伺う中、八重樫だけが違っていた。恐らく昇華魔法を手に入れ、その力に戸惑いを感じているのだろう

 

「八重樫・・・お前は攻略を認められたみたいだな」

 

「!・・・えっと、ええ、使えるみたい」

 

「ほ、ほんとか雫!」

 

「マジかっ!やったじゃねぇか!」

 

「流石、シズシズ!鈴の嫁!」

 

ハジメと皐月は、勇者(笑)パーティー達は誰一人攻略出来ないだろうと予想していた。しかし、一人とはいえ八重樫がクリアしている事に少しばかり感心した

戦闘力はクリア出来なかったものの、精神面ではしっかりとクリア出来ていたので神代魔法を手に入れる事が出来たのだ。試練をクリアした八重樫に喜ぶ谷口、悔しがる坂上、笑顔で称賛しつつも表情に影を落とす天之河

 

「とにかく、一度フェアベルゲンに戻って、少しゆっくりしよう。ゴキブリの大群は軽くトラウマだ。精神ダメージがヤバイ・・・皐月に癒されたい」

 

「膝枕なら良いわよ」

 

「皐月の膝枕を私も堪能したい」

 

「わ、私も堪能したいですぅ!」

 

「私だって膝枕出来るよ!何でも出来るよ!大切なことだから二度言うよ!」

 

「ふむ、ご主人様は疲れておるのじゃな。物があれば扇ぐのも良いのう」

 

皆がそのまま転移魔法陣へ移動しようとした

 

「な、なぁ・・・神楽さんを起こさなくても大丈夫なのか?」

 

ハジメ達が声の先に振り返るが、そこには誰も居らずキョロキョロと周囲を確認している

 

「な、なぁ。皆してどうしたんだよ?目の前に居るだろ?」

 

ハジメ達は真正面に視線を向けるが、何も見えない。ただ、声だけが聞こえる事態に臨戦態勢に移行する

 

「ワザとか!?俺だよ!遠藤だよ!」

 

「遠藤?・・・・・そこに居るのか?」

 

皆がようやく気付くが、本人の姿が全く見えない状況に戸惑う

 

「ちくしょう・・・ちくしょう!」

 

今までの遠藤ならばようやく気付くレベルなのだが、昇華魔法を手に入れた事で影の薄さがワンランクアップしたのだ。声は聞こえても姿が見えない・・・ステルス迷彩を使用している様なものだ。いや、景色に違和感なく溶け込んでいるので性能的にはこちらが格段に上だ

 

「ちっ、本当に姿が見えねぇな。遠藤の影の薄さをワンランク上げる昇華魔法・・・凶悪コンボだな」

 

「意識していないと存在を忘れてしまいそうで怖いわ。・・・流石、天職が暗殺者ね」

 

「皆嘘だろ!?な、なぁ?俺見えてるよな?」

 

遠藤が「冗談だろ?」と真剣になって皆に尋ねるが、誰もが姿が見えないとの回答に落ち込んだ。取り敢えず、姿も見えないので、最終兵器の深月を起こして見つけてもらおうという結果に至った

ハジメは背に乗せている深月を下ろし、皐月が深月の頬をペチペチと叩いて起こそうとするが全く起きない。焦れた皐月は、深月の精神に追い打ちする事にした

 

「嫌いになるわよ?」

 

「グブッ!」

 

「今起きたら―――――私の抱き枕にしてあげるわ」

 

深月の眼はゆっくり開き、ブツブツと独り言を口漏らす

 

「そう・・・私はお嬢様に嫌われた。なら、物としてお役立ちする他ありません。たとえ焼かれようとも笑顔で・・・吐血しようとも笑顔で・・・笑顔で笑顔で笑顔でエガオデエガオデエガオデ―――etc」

 

皐月の言葉は逆効果だった!メンタルをへし折られた深月を回復させるには至らず、徐々に腐食させる口撃だった。ハジメ達は、ヤバイと感じて一斉に皐月へと視線を向けて、「どうするんだよ!?」と状況改善を促す念を込めていた

 

「ちょちょちょちょ!?深月カムバーック!あれは試練で感情が反転した事が原因なの!大嫌いの反対は大好き!深月が居ないと私達全員が駄目になるから戻って来なさい!!」

 

皐月が深月に抱き付いて説得する事一時間。ようやく立ち直った深月だが、未だに表情は暗く気落ちしている事がありありと出ていた

 

「あ、あ~・・・うん、すまん。これだけしか言えねぇわ」

 

皆が後ろめたさを感じながら深月に謝罪するが、深月は特に気にしていない

 

「大丈夫です。・・・お嬢様以外のダメージは殆どありません」

 

「お・・・おう」

 

ハジメ達は、皐月以外の言葉は特に何も感じないという事にちょっとだけムッとする。少しくらい何かしらの反応があるのが普通ではないのかと思うが、逆を言えば皐月至上主義の深月らしいので何も言わない

 

「それで・・・何用ですか?」

 

「えっとね、遠藤君って今何処に居るか分かる?ほら、深月は今まで遠藤君を見失った事無いでしょ?」

 

「ハジメさんの斜め後ろに立っていますよ?」

 

「よかった・・・よかったっ!!」

 

深月は問題なく遠藤を捉えており、当の本人は感動に打ち震えていた。誰からも見つけられない中、一人だけはしっかりと己の存在を忘れない人・・・感謝感激雨あられである

 

「後で一杯抱き締めるから赦してね?」

 

「はい、大丈夫です(よしゃあああああ!クンカクンカ出来ますよおおおお!!)」

 

深月は、暴走する理性を抑えて表情に出さない様にすることに成功―――これで超が付くご褒美が確定した。いきなり全開状態で動いてしまえば感付かれてしまうので、徐々に回復する演技をしつつハジメ達の後ろを追いかける様にハルツィナ樹海を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ハルツィナ樹海を攻略したハジメ達は、フェアベルゲンへと帰還してメンタルを癒している最中だ。ハジメとユエが皐月の膝枕券を獲得していたのだが、深月の気落ちでご飯のクオリティ低下を危惧したので入れ替える事にしたのだ

 

本当に良い笑顔で横になっているわね・・・。ハジメ達が傍に居る事分かっているのかしら?

 

現在、皐月の膝枕を堪能している深月は、( ˘ω˘)スヤァと良い笑顔で寝ているのはいつも通りだ。だが、この場にはハジメ達(勇者パーティー除く)が居るので、深月の寝顔が皆に見られているという事だ

 

「・・・深月の表情があれだな」

 

「ん。だらしない笑顔」

 

「幸せそうですねぇ~」

 

「あの深ヅゥアアアアアアアアア!?駄目なのじゃ!妾の腕を落とさないで!痛いのはもう嫌じゃああああああ!」

 

「・・・深月さんってこんな顔も出来たんだね」

 

一人だけ反応が違う事はスルーして、皐月は自由な手で頭を撫で、頬を突いて、かなり成長している胸を揉んだりと色々と弄っているが一向に起きない

 

ここまでしても起きないのね。・・・いえ、起きようとしないの間違いかもしれないわ

 

皐月の予想通り、深月は無意識下でどうでもいい情報を聞き流して起きないのだ。皐月の言葉も取捨選択するこの状態は色々と手がつけられない。かなり長い間膝枕をしており、夕食の時間が近付いているので強制的に起こす事にした

 

「起きないと―――命令するわよ?」

 

「バッチコ・・・・・いえ、嘘です。起きます」

 

チッ!ハーレムに加えようと思っているのに上手く行かないわね!・・・まぁ、嫌々は好きじゃないから強引にはしないけどね

 

ハジメハーレム強制加入の難を逃れた深月は、スッと立ち上がってストレッチしている。恐らく動作チェックをしているのだろうと皐月は予想する

 

動きを見るに大丈夫だと思うのだけれど・・・問題は精神面よね。原因は私なのが余計に質が悪いわ。溜め込まなければ良いのだけれど、それは追々様子を見て判断するしかないわね

 

深月を観察していた皐月はハジメ達の様子を見ると、彼等も皐月同様に追及はせずに経過観察で判断する様子だ。いつまでも悪い事ばかり考えても仕方がないので、気分を切り替えて夕食の話題へと移行する事にした

 

「深月、夕食の献立だけど・・・何を作るの?」

 

「そうですね・・・。今日は精神的に疲れたご様子ですので、うどんを作る予定です」

 

ユエ達は「うどん?」と首を傾げる中、ハジメ達はコロンビアポーズで歓喜を露にした。トータスに来てからは、エネルギー消費が激しいので麺類は避けていたのだ。だが、今回の迷宮はスタミナよりも精神をゴリゴリと削る試練ばかりだったので、あっさりしつつホッと落ち着きを取り戻させる理由がある

 

「うどんだと!?ヒャッハー!今日はうどんフィーバーだ!!」

 

「うどん、食べたい!きつねうどん?たぬき?天ぷら?それとも肉?・・・どれも食べたいっ!」

 

「二人共、食べ過ぎは駄目よ?」

 

「大丈夫だ。十玉だけに抑える!」

 

「常人の五倍ちょっとを抑えているなんて言えないわよ!多くても五玉にしなさい!!」

 

「皐月駄目だよ!うどんは日本人のソウルフードなの!抑えるなんて無理だよ!!」

 

「香織―――太るわよ?」

 

「はうっ!?・・・はい、多くても五玉にします」

 

「ハジメも今日ばかりは少なくしなさい。私と合流する前にサンドイッチを食べたってユエ達から聞いたわよ?」

 

「うぐっ!?・・・で、でもなぁ?」

 

「もう一回作ってもらえば良いだけでしょ。次はシュネー雪原にある氷雪洞窟よ?暖を取るには相性も良いでしょ」

 

「・・・仕方がねぇか」

 

皐月に正論を突き付けられ、二人は大人しく引っ込んだ。一方、ユエ達はうどんに興味津々でソワソワしている。深月は簡易キッチンを取り出して材料をポンポンと乗せて準備に取り掛かる中、ソワソワしているシアが深月に近づいて尋ねる

 

「あの~深月さん、私も何か手伝えますか?」

 

純粋な善意と、深月から教えられたチャレンジ精神からの言葉だ

 

「後程単純な力作業を任せます。調理の過程の際、私の手の動きを観察していて下さい。細やかな分量等に関してはその日その日で変わってきます。ですが、それは繊細。シアさんはおおよその分量比だけを覚えて頂ければ大丈夫です」

 

「了解です~!」

 

シアの様子を見た皐月は、つい想像してしまった。もしも自分に子供が出来、料理を作ってとせがまれたらどうなるのかを―――。小、中学校では家庭科の調理実習では問題なく作れはした。だが、それが美味しいかと言われれば微妙だったのだ

 

あれ?私ヤバくない?料理出来たとしても、自分の子供に「おいしくない」と言われたら私立ち直れなくない?シアに倣って、私も料理の勉強をしなければいけないかも・・・

 

何時かは訪れる現実にげんなりしつつ、深月達の調理風景を間近で観察する為にキッチン近くまで移動する。皐月が移動した事で、ハジメ達も移動。結果、キッチン周りに全員が集まり料理風景を見る事になった

 

ボウルに入った小麦粉に塩水を加えながら混ぜるのね。えっと・・・一気に入れないのはどうし、「小麦粉がだまになるといけないからです」あっ、はい。・・・まるで粘土ね。まん丸になったわ

 

皐月の解説通り―――ボウルに入れた小麦粉に、シアが塩水を少量加えつつ深月が混ぜ捏ねて一塊になるまで続けられた。何事もやりながら学ぶ事が重要だ。ボウルに小麦粉がへばり付かなくなったら、まな板の上に打ち粉(小麦粉)を敷き掌で押しつぶす様に捏ねる作業を途中からシアに交代。耳たぶ程の硬さになり、表面が滑らかになったら魔力糸で作った布で包んで生地を休ませる

生地を休ませている間に、うどん汁を作る。今回は進化したオアシスの水を使用するのだが、念の為"清潔"を行使して雑菌等を取り除いた後、乾燥昆布、乾燥トビウオ擬き(清潔済み)を投入してじっくりと出汁を取る間に、休ませたうどんを布から取り出して、打ち粉が敷かれたまな板の上に取り出す。その後、伸ばし棒で均一の太さになる様に少しずつ伸ばし、折り畳み準備完了

深月がうどんを切ろうとしたら、ハジメと皐月がうどん包丁を深月に進呈した。トントントンとリズム良く、迷い無く均等の幅に切る。全てを切り終えたタイミングで丁度良く出汁も出切ったので、お湯を沸かしていた別の鍋にうどんを投入。裏漉しで出汁を取り、醤油で味を調えながら沸騰しない程度で温める。うどんを投入して、十分辺りで一本取り出し食べて火が通っているか確認した後、うどんを湯切りざるに入れ―――

 

ジャッ!

 

勢いよく湯切りした後、器に入れて醤油出汁を入れて青ネギを入れて完成。シンプルイズベスト、最初の出来立ては主である皐月からで、ハジメが羨ましそうにジーッと見ているが気にせずに食べる

 

チュルチュルチュル

 

出来立てのうどんを食べ、魚介ベースの醤油出汁を飲んで一言

 

「はぁ~~~。美味しい」

 

皐月がホッと息を吐いていると

 

ズゾゾゾゾゾゾ!

 

ハジメの豪快な啜りが響き渡る。皐月がジト目でハジメを見るが、当の本人はこれが通な食べ方だと言わんばかりに堂々としている。流石にハジメみたいな音を立てて食べるのははしたないと感じたユエ達は、皐月と同じ様に出来るだけ音を立てずに食べる

 

「チュルチュル―――ゴクンッ・・・・美味しいのは分かるけど、もう少し落ち着いて食べれば?」

 

「無理だ!俺はいろんな種類のうどんを食べたいんだ!!」

 

深月が用意している色々な具材を自分好みに組み合わせる。どれもこれも美味しいので無限に広がるレパートリーに、ハジメは次はどれにしようかな~と口ずさみつつ深月にお代わりを要求している

 

「フハハハハ!次はどれを入れてやろう。肉も良いし、野菜も、海藻も良いな!」

 

ハジメは、五玉で抑えると宣言していたのだが今は六玉目のお代わりをしている。流石に無限のレパートリーがあるとはいえ、限られた種類の薬味なので味が変わらない。何かめぼしい物がないかと探していると、"餅巾着の様な物"が一つだけ置かれていた。ハジメは、お代わりのうどんが入った器の中に"それ"を入れて出汁とネギをトッピングして自分の場所へ戻る。すると、この騒ぎを聞きつけたであろうハウリア達と勇者(笑)パーティーが参戦

 

「ボスが良い物を食ってるぞぉおおお!」

 

「ボスゥ!お嬢ゥ!俺達にも恵んでくだせぇ!」

 

「シア、ズルいわよ!ボス、お嬢、私達にもそれをぉおおお!」

 

「南雲ずるいぞ!」

 

「うどん食わせてくれ!」

 

「鈴も食べたい~!」

 

「本っ当にごめん!止められなかったわ・・・」

 

ハジメはうっとおしいと感じつつ、彼等の方に向き直って一言

 

「俺達のうどんはやらん!」

 

だが、不平不満は大きくなり、皆が実力行使に及ぼうとした時

 

「遠藤さんの分です。大丼の器ですが食べれますか?」

 

「神楽さんありがとう」

 

「いえ、出汁も丁度ですので有難いです」

 

深月の方を見ると、遠藤に普通に手渡している。しかも、うどんに欠かせない出汁も最後という事実に、遠藤を倒してでも奪い取ろうとしたのだが、ここで救いの手が差し伸べられた

 

「太麺のうどんを新しく作りましたが・・・食べたいですか?」

 

『食べる!』

 

「出汁は時間が掛かりますので、調理済みの物を使用しますが・・・かまいませんか?」

 

『大丈夫だ。問題ない』

 

皆が食べる事と宣言するが、ここでぶった切るのが深月クオリティー

 

「あぁ、ど腐れ野郎達は八重樫さんを除いては駄目です。・・・強姦未遂の者達には贅沢品だと思いますので」

 

「「「ぐはっ!?」」」

 

大迷宮の試練とはいえ、遠藤よりも耐性の高いステータスを持っている三人はクリア出来なかったのだ。最低限でも、あの程度の試練をクリア出来なかった者に食べさせるのは嫌との事だ。ハウリア達に関しては、革命大成功記念として食べさせるとの事だ

 

「はぁ・・・私の分を譲るから三人でジャンケンして食べていいわよ」

 

三人はやる気満々で、蹴落としてでも手に入れると意気込んでいる

 

「龍太郎、鈴、俺がみづ―――グハァッ!?・・・神楽のうどんを食べる」

 

「悪いが、お前のお願いだろうとこればかりは聞けねぇな」

 

「二人には負けないよ!」

 

天之河の額にゴム弾が直撃したが、全員スルーしてジャンケンに臨む

 

「「「せーの、―――――ジャンケンポン!」」」

 

結果、坂上が勝利して深月のうどんを獲得した

 

「よっしゃああああああ!うどんは俺の物だ!!」

 

「くっ!」

 

「ぬあああああああ!?あそこでパーを出していたらっ!」

 

坂上のグーに敗れた二人は、もの凄く悔しがっていた。その様子を見ていた八重樫は、ため息を吐きつつ心の中で黙祷した

 

(龍太郎、貴方はこれから地獄を見るわよ。いえ、地獄なんて生温いわ・・・。神楽さんが言った事を、ちゃんと理解していなかったのがいけなかったのよ)

 

八重樫は、フェアベルゲンに住む亜人族達が用意した夕食を食べる事にした。そして、ハウリア達の争いも収まった。闘争に勝利したのは、カムとパルとラナの三人チームだった

 

「何事もバランスの良いチームが勝つ。後は技量差だ」

 

「深月殿のうどんは私達が頂く!」

 

「へっ!悔しがっても一つたりともやらねぇぞ!」

 

だが、勝者四人の絶望はこれから始まる

深月が四つの器にうどんを入れて、汁の代わりに"カレー"を投入した。カレーうどんを見た坂上はガッツポーズを、ハウリア三人は、初めて見るカレーに期待する

 

「いただきます!」

 

先行は坂上で、箸を使って豪快に啜った。いや、啜ってしまったと言った方が良いだろう

 

グゲギャアアアアアアアアア!

 

手で喉を抑えながら地面にのたうち回り、少しして体を弓なりに逸らしながら、「グイェアアアアアアアアアア!」と叫びながら気絶した。ハウリア三人組は、これはヤバイ!と感じて逃げようとした。だが、他のハウリア達が三人の四肢を拘束して逃げられない様にする

 

「さあ族長、カレーうどんですよ!あまりの美味しさに震えあがりましょう!!」

 

「ヤメロオハナセェ!」

 

「疾影のラナインフェリナ、その名の如く素早く食べるのが得策よ!」

 

「シニタクナイ!シニタクナーイ!」

 

「必滅のバルトフェルド・・・お前自身が滅される運命を呪うがいい!」

 

「貴様等・・・貴様等!バカヤロォオオオオオオオオ!」

 

食べようとしない三人の口を強制的にこじ開けた瞬間に流し込み、鼻を掴み口を閉じて顔を上に向けさせて飲み込ませる。口を閉じられている為、「ン"ン"ン~~~~~!?」としか叫べないのだが、どれ程辛いかは容易に想像出来る

ハジメは、そんな彼等を観戦しつつ笑いながら自分のうどんを啜った。その瞬間、口と喉と胃に強烈な刺激が炸裂しハジメの意識を強制的に奪った。意識を失ったハジメは、うどんの海に顔から突っ込み沈んだ

 

「・・・あれ?ハジメのうどんってふつうだった筈だけど?」

 

皐月の言う通り、ハジメのうどんの出汁はカレーではない

 

オギャアアアアアア!眼がッ!鼻ガッ!グォオオオオオオオオオオ!?

 

地面にのたうち回るハジメを他所に皐月達は、うどんの中を見ると魚介ベースの醤油出汁が濁った赤色に染め上げられていた。頬を引き攣らせながらも、ハジメの箸でそれを掴み上げると・・・ドロドロとした麻婆が滴り落ちていた。そう、原因は巾着―――深月は、冷やし固めていた麻婆を巾着の中に入れていたのだ。要するに、深月専用の食べ物という事だ

 

「もしや、ハジメさんが私の麻婆巾着を取ったのですか?せっかく麻婆うどん専用味に調えていたのに・・・残念です」

 

深月は、麻婆うどんをチュルチュルと食べ進めながら麻婆スープを飲んでいた。深月が自分専用で用意した麻婆巾着だと知った皐月達は、ハジメに残念な眼差しを向けて一言

 

「自業自得よ。他人の食べ物にまで手を出したのがいけないわ。ちゃんと全部食べなさい」

 

「深月の食べ物を奪った罰」

 

「食い意地の張り過ぎですぅ」

 

「麻婆・・・うっ、頭が・・・」

 

「ヒェッ!・・・深月さんの麻婆を食べちゃ駄目だよ?」

 

ハジメに味方は居らず、残された道はただ一つ

 

「俺は逃げるぞぉおおお!」

 

「逃がしませんよ」

 

悲しきかな―――麻婆巾着を奪われた深月がハジメを拘束する

 

「ハ、ハナセェ!」

 

「麻婆巾着を取ったのなら、全部食べて下さい!」

 

「深月が俺の分を食べればすべて解決だろぉ?」

 

「辛さが薄まった麻婆を食べるのは邪道です。麻婆の辛さを損なわず調和された麻婆のダブルパンチは食欲を刺激するのです。あ、一つでもしっかりと美味しいですよ?麻婆を混ぜる事自体が邪道と思われがちですが、二つを合わせる事で味・旨味・辛さの段階を引き上げるのであれば、それは進化というのです!進化した麻婆を食べつつ、混ぜる前の麻婆を食べて味の懐かしさを思い出すのもまた堪りません。調味料の種類や分量で様々な味を生み出す麻婆は広大な海と等しく、未だ未開の地なのです!ですから―――etc」

 

とうとう深月が暴走した。麻婆について語られる何たるかは色々と置いておいて、ユエ達はハジメの四肢をガッチリと固定して皐月がうどんの器を手に取ってハジメの目の前に立った

 

「深月の麻婆うんちくについては置いておいて、ハジメは責任を取って食べましょう?大丈夫、気絶したら・・・流し込んであげるわ」

 

うどんを乗せたレンゲがゆっくりとハジメに近づく

 

「俺に死ねと申すか!?」

 

「ハジメ・・・頑張って!」

 

「口を開けるのは任せて下さい!」

 

「ゴホンッ・・・ご主人様、頑張るのじゃ」

 

「回復魔法なら任せて!」

 

シアの身体強化が昇華魔法によってバグレベルと化し、ハジメの口を開く程度なら余裕なのだ。ハウリア達と同じ様に、ギギギッとこじ開けられた口の中に皐月が素早く投入。辛さの暴力がハジメを襲い、体が痙攣する。だが、ここで止めてしまえば辛さが残るので、心を鬼にして皐月は一気に流し込んだ

ハジメが全て食べ終えた事を確認し終えた皐月は、ユエ達に目配せをして解放させる。気絶したものの、粗相はしていないので大丈夫と判断した。尚、ハウリア三人組は股下を濡らしている。何で濡らしたのかは読者のご想像通りだろう。そして坂上に関しては、「こんなうどん食えねぇ!」と口漏らしてしまった

 

「食べると豪語しておきながら食べないと仰いましたか?」

 

坂上の背後に冷徹な眼差しを向けている深月が立っていた。坂上は深月に臆する事なく「無理だ!」と言おうとした瞬間、周りのハウリア達に拘束された

 

「な、何するんだ!?」

 

「筋肉野郎、深月殿が用意した食べ物を食わないだと?」

 

「セレブ野郎、無理矢理だろうと食わせる」

 

「気の小さい男ね」

 

「族長達も逃げようとしたが、口に出してまで拒否はしていないぞ?」

 

「なっ!?や、止め―――グボボボボボ!?」

 

ハウリア達のチームワークによって、坂上はカレーうどんを全て飲み込み再び気絶した

 

「食べ物を粗末にする奴はクソのする事だ」

 

「好き嫌いは駄目だぜ」

 

一仕事終えたハウリア達は解散し、自分達で用意したご飯を食べ始める。天之河は、坂上が気絶したのにも関わらずどうとも思っていない皆に怒ろうとしたが、八重樫が冷静な一言でピシャリと止める

 

「この結果は龍太郎の不注意が原因よ。私が遠慮した事に疑問に思わなかった?神楽さんは、"調理済み"と言ったのよ?恐らく自分の食べる何かのストック分を使うと判断したのよ。王国に居た時に何を食べていたのか見ていたでしょ。・・・・・あの麻婆は食べたくなかったのよ」

 

そう、王国でも深月が麻婆を食べている姿は目撃した。しかも、厚かましくも一口貰った女生徒がトラウマになった事も

 

「南雲が作らせたに違いない!」

 

「なら、あれを見てそう断言出来る?」

 

八重樫が指差す方を見れば、麻婆巾着入りうどんを食べさせられたハジメが気絶している光景だった。自分で首を絞める馬鹿が居るなんて事はありえないので、ハジメが深月にワザと作らせた可能性はゼロである

 

「それとね光輝、何かあったらすぐ南雲君のせいにする事は止めなさい。見ていて腹が立つわ」

 

「なっ!?」

 

「先に言っておくけれど、これは南雲君の為じゃないわ。貴方の将来を思って言っているの。疑う事を覚えなさい。これから先、疑わずに進んだら高確率で死ぬわ」

 

「俺は死なない!」

 

「物理的な死も、社会的な死もあるという事よ」

 

「・・・だけど」

 

「前も言ったけれど、幼馴染でもずっと一緒に居るという事はないわ。ガハルド皇帝も言っていたでしょ?なにもしない束縛は相手の将来を真っ暗闇にしたまま進ませると。皇帝は私達よりも年上、人生の先輩なのよ。まぁ、だからと言って好意なんてこれっぽちも無いけど」

 

「・・・俺は」

 

「だから、私に見切りを付けさせないで。同門といってもずっとフォローし続ける事なんて出来ないわ。もう少し自分で判断して、責任を持った行動をしてちょうだい」

 

八重樫は天之河から離れて、月夜が広く照らす広場の隅へ移動。丁度良い切り株を椅子にして、試練の事を思い出しつつどうする事が正しいのかを苦悶していた

 

「私がクリアして、三人は出来なかった。光輝達は手に入れれば強くなるとは言っていたけど・・・これはそんな生温いものじゃないわね。使い手の技量次第の魔法・・・ね」

 

八重樫が見つめる先は、ハジメ達。特に皐月を見ており、錬成の技術を見て驚きの声を上げているユエ達の様子から、昇華魔法をさっそく使いこなしている様子に己の未熟さが浮き彫りになってくる

 

「高坂さんは凄いわね・・・もう使いこなしてるわ。どんな使い方をしているか聞いてみるのも参考になるかもしれないわね」

 

一度心の中を整理し終えた八重樫は、皐月達に昇華魔法をどの様に使っているかを尋ねに行く

迷宮の試練は、ある者には達成感を、ある者には落胆を、ある者には心に影を、ある者には心にしこりを残した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「治癒師さんがどんどん進化している件について一言」
深月「癒す際のイメージ力が大事なのです!」
布団「まぁそれはいいとして、問題は影薄い君ですよ」
深月「昇華魔法で取り柄が更に進化しましたね。これでON,OFFの切り替えが出来れば、更に戦闘力が上がります」
布団「最早、自動ドアが絶対に反応しない位になりそう」




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