ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「おまたせぇ~。仕事が一段落ぅ」
深月「無用な掛け合いは無しでいきましょう」
布団「(´・ω・`)」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」










メイドが超危険な攻撃を放ちます

~皐月side~

 

深月の生物兵器の効果範囲から逃れた一行の内、谷口は嘔吐しながら涙目で犯人を恨めしそうに睨む。しかし、悪臭と落下の恐怖で体をプルプルと震わせているので逆にほっこりする

 

「す、鈴ちゃん。そんなにぷるぷるして・・・可愛い」

 

「一応慰めたら?」

 

「とはいえ、自分のタイミングだったら確実に飛び降りなかっただろ。ティオの行為は正解だな」

 

ほのぼのとしていると、谷底の壁の一角から「うりゃあああ!」という声と共に、ドゴンッ!ドゴンッ!と衝撃音が響き始めた。谷底の壁が破壊され、ドリュッケンを肩に担いだシアが戻って来た

 

「いやぁ~、深月さんの無慈悲な攻撃で溜まった鬱憤を晴らせて爽快ですぅ!」

 

「アホか。まだ大迷宮じゃないが、ここが危険地帯であることに変わりはないんだぞ。気を抜くな」

 

「あぅ~、すみません。・・・ちょっと調子に乗りましたぁ」

 

「まぁ・・・シアの気持ちも良く分かるわ。後で私からあれを食べさせるから、これ以上どうこうするのは止めなさい」

 

「!?」

 

シアは、「それなら大丈夫ですね!」と嬉々とした表情を浮かべ、深月はギョッとした表情で目を剥いていた。深月の後々の処刑を提案して、皐月は手に持った羅針盤を確認して道筋を確認する。目の前には枝分かれの道があるが、羅針盤が指し示す一本の道を選び進む

 

「それじゃあ、バカをやってないで行くわよ」

 

「いつまでも吐くなよ?一々立ち止まるなんてしねぇぞ」

 

つい先程まで吐いていた天之河達は、覚悟を決めた表情で嘔吐感を我慢してハジメ達の後ろをついて行く。氷の峡谷は、水すら流れていない。いや、凍っていると言った方が合っているだろう。谷の上は吹雪が酷いが、ハジメ達が居る谷底は冷気が吹き抜けるのでもっと寒い。もしも、身に着けているアーティファクトが無ければ、どれ程厚着をしていても凍死するレベルだ

 

「深月の簡易壁が便利すぎるぅ~」

 

「邪魔をする氷柱を溶かしながら進む事も出来るって便利の一言よね」

 

ドーム状の魔力糸を展開し、進行先を邪魔する氷柱達は熱量操作で高温にした壁でドロリと溶ける。風で舞い上がっている雪も、触れた瞬間に溶けている

 

「・・・結界師の鈴の出番がないよ」

 

ハジメによって魔改造されたアーティファクトを装備している谷口がげんなりしている。深月の魔力糸の壁は物質化しているので魔力消費が殆どなく、唯一持続させているのは熱量操作の魔力だけだ。だが、これも技能の節約で消費軽減されているのである。谷口の結界は、広範囲で持続させなければいけないので適材適所である。・・・深月がかなり幅広い適応能力があるだけだ

 

「お前達が深月相手に張り合おうとする事自体が間違っているぞ」

 

「月とスッポン位の差があるから無駄よ」

 

「月ぃっ!?―――スッポーン・・・」

 

ハジメと皐月の言葉の矢が心に突き刺さり、谷口は物凄く落ち込む。八重樫は、「何もそこまで現実を突き付けなくても・・・」と口漏らした

 

「シズシズぅ、慰めて~」

 

「余計な物がこっちに来るから止めなさい」

 

「辛辣ぅ!?」

 

しばらく歩くと、行き止まりだが奥へと続く穴が開いていた。羅針盤はその先を指しており、通り道だと分かった

 

「到着ですね」

 

「えっと・・・来てますよね?」

 

「あぁ、来てるわね」

 

「お前等、準備しろよ」

 

深月は、魔力糸を解いて周囲の環境を確認しつつ夫婦剣を持つ。いきなり深月が武器を持った事で、天之河達は魔物が近付いていると理解して臨戦態勢に入る。尚、ハジメ達は自然体で警戒をしていると

 

「「「「「ギギギギギィ!!」」」」」

 

奇怪な雄叫びを上げながら五体の魔物が現れた。全身を白い体毛で覆われたゴリラの様な魔物―――しかも、身長は三メートル越えで二足歩行だ

 

「ビッグフットか?」

 

「ハジメもそう思う?」

 

初めて見るビッグフットに、ハジメと皐月は少しだけワクワクしている

 

「地球のビッグフットよりも筋肉がありますね」

 

「「「見た事あるの!?」」」

 

「私を発見した瞬間逃げてしまいました」

 

「「野生の本能が恐怖したのか(ね)!」」

 

深月が地球でビッグフットを見た事がある話は置いておいて、天之河達が五体のビッグフットと戦っている。しかし、相手の魔物は頭が良いのか直線的な攻撃ばかり繰り返す天之河と坂上の攻撃を派手に避けておちょくっている

 

「こっ、この野郎っ!!」

 

「くそっ、何で当たらない!」

 

あ~あ、直線的な攻撃ばっかりだから避けられるのよ。本当に戦い方を学んでいるのかしら?もしかして舐めプしているの?

 

皐月が酷く思うのも無理はない。それ程までに素直な攻撃をする二人なのだ

 

「鈴にまっかせて!地を這え、"聖絶・重"!」

 

以前、王都襲撃の際に見せた香織の聖絶の応用を真似して、谷口は相手を閉じ込める結界を展開。もう一体のビッグフットが、隙だらけの谷口に飛び掛かった。だが、それも想定済みだった

 

「呑み込め、"聖絶・爆"!!」

 

自身と飛び掛かって来るビックフットの間に、障壁を一枚挟んだ。ビッグフットがその障壁に触れた瞬間、障壁が爆発した

 

ドゴォオオン!

 

指向性を持たせていた事で谷口に衝撃は来ず、ビッグフットだけが吹き飛ばされただけだった。体中血だらけになりながらも着地して、充血した目で谷口を睨むも直ぐには飛び掛からなかった。素直な突進ではあの障壁を攻略出来ないと判断したのだろう

 

「ふっふ~ん、鈴だけに警戒してていいのかなぁ~?」

 

谷口がニヤリと笑ったと同時に、ビッグフットの後ろから爆発の煙をかき分けて八重樫が襲撃。妖怪首置いてけと同じ様に、首を斬り飛ばして再び煙の中に身を隠す。一体の仲間がやられた事で、八重樫を警戒してしまった瞬間

 

「縛れ、"聖絶・縛"」

 

谷口が鎖状の結界でビッグフットの両手両足を縛った。それと同時に、八重樫が煙から飛び出して黒刀のトリガーを引く

 

「――"起きなさい、黒刀"!切り裂け、"飛爪"!!」

 

横一閃、飛ぶ風爪が身動きの取れない二体のビッグフットの首を斬り離し、ビッグフットは死体となって崩れ落ちた。これで残るは二体―――天之河と坂上が相手をしているビッグフットだけとなった

 

「こっちは終わったわよ」

 

「援護するよ~」

 

それからは一方的だった。谷口に拘束され、他がトドメを刺すだけ

 

「翔けろ、"天翔剣・震"!!」

 

「打ち砕け、"重拳"!!」

 

明らかにオーバーキルな攻撃を繰り出そうとするお馬鹿二人に、八重樫が素早く黒刀の鞘で脳天を叩いて中断させる

 

「こっんのお馬鹿共!ここは屋外じゃない事を理解しているの!?最初のオルクスの遠征の時に、メルド団長から崩落の恐れを考えなさいと教えられたでしょうが!!」

 

「「うっ!?」」

 

怒髪天の八重樫の圧に、二人は委縮してコンコンと叱られる

 

あの馬鹿達は本当に学んでいないわね。警備ではなく、反勢力に突撃させる当て馬にする方が良いわね

 

皐月が将来無償下働きが確定している三人のスケジュールを立てていると、彼等を見ていたユエ達がダメ出しをしていた

 

「・・・バカばっかり」

 

「ですね~」

 

「男は脳筋ばかりじゃな」

 

「雫ちゃんや鈴ちゃんはしっかりしてるのに駄目だね」

 

あぁ、深月がシアをジト目で見てるわ・・・。ちゃんと叱らないといけないわよね

 

つい先程、八つ当たりでハンマーでドッカンドッカンしていたシアは二人に対して何か言うのは出来ないのだ

 

「シア、さっきの八つ当たりを忘れているのかしら?此処みたいな閉鎖空間じゃないけど、峡谷の一部が崩壊すれば雪崩も起こるし岩雪崩の可能性もあったのよ?ちゃんと最悪の場合何が起きるか想定して動きなさい」

 

「うっ!?・・・すみません」

 

「シア、これは庇えない」

 

「あれを口に入れられたのは同情するがのぅ」

 

「と、取り敢えず次から注意しよう。気持ちを切り替えよう!」

 

シアは「うぅ~!」と唸りながら、ハッと思いついて深月を見て巻き込もうと追撃する

 

「そ、それなら深月さんも同じじゃないですか!ここまで来るのに魔力糸で氷柱とか溶かしていましたよね!!」

 

皐月は溜息を吐きながらシアに後ろに振り返ってどうなっているかを確認させると、所々狭まったり歪な通り道となっていた

 

「あっれ~?」

 

どうして?とシアは理由が分からなさそうにしていると、深月からお返しが返ってきた

 

「何も考えずに進んでいたとでも思いましたか?出来得る限り環境を変えず、対処しても問題ない障害物は溶かし、怪しい場所は少しだけ余裕をもって切断していたのです。溶かしてしまえば脆くなってしまいます」

 

「真っ直ぐ進んでいると感じたと思うけれど、時々は後ろの確認もしなさい」

 

「気を付けますぅ!」

 

天之河はそのまま心臓に聖剣を刺し、坂上は内部から破壊する破拳で止めを刺した。だが、最後の一体が絶命の雄叫びを上げてしまった。ハジメ達は、只うるさいとしか感じなかった。しかし、深月は頭に手を当てて残念な奴を見るジト目で天之河達を見ていた

 

「・・・深月、何か問題?」

 

皐月の言葉に全員が深月の方を見る。しかし、寸前でシアはウサミミを忙しなく動かす

 

「いえ・・・あの絶命の雄叫びが仲間を呼ぶ合図だったのです」

 

「「「「え"っ!?」」」」

 

その直後、遠くから響く雄叫びと足音に天之河達は頬を引き攣らせた

 

「数は・・・数百程度ですね。新技のお試しにも丁度良いのでお掃除してきましょう」

 

「新技?夜にゴソゴソとしていたのはそれ?」

 

「少しばかり創作物から引用しました」

 

「何ィ!だったら俺は見るぞ!!」

 

深月の創作物を参考にした新技に興味津々なハジメは物凄く食いついた。ハジメが見るなら私もとユエ達も着いて行こうとし、更には天之河達も一緒にとなった

深月が軽くストレッチをしている内に響く音が大きくなり、天之河達が先程以上に顔を青褪めている

 

「ユエ、障壁は大丈夫か?」

 

「ばっちり!」

 

「深月の蹂躙劇場の始まり始まり~」

 

「つい先程、深月さんからおつまみを渡されましたよ~」

 

「なっ!?ポップコーンだとっ!」

 

「しかも、普通の塩味と蜂蜜を焦がしたキャラメル味ね」

 

「用意周到じゃのう」

 

「美味しい~♪」

 

天之河達は、美味しいそうにポップコーンを食べているハジメ達を羨ましそうに見ているが、この事態を引き起こしたのは油断していた自分達なので欲しいとは言わずに見るだけに留める

すると、深月が宝物庫から某ソルジャーバイクを取り出して格納されていた六本のバスターソードを取り出して合体させる。身の丈に合わない大剣を持って試し振りしても深月の重心はズレる事はない

 

「さて、お掃除の時間です」

 

深月の言葉と同時に、大量のビッグフットが深月へ突撃する。深月が振るうバスターソードの力は強く、刀身の腹に当たって吹き飛ばされたり、両断されたりと様々だ。しかし、仲間の一体を犠牲にしてバスターソードに複数のビッグフットが飛びついて斬れない様にするが、深月はそのまま振り回したりせずに手を離して距離を取る

 

ん?やけにあっさりとバスターソードを手放したわね。って事は、ここからが本番?

 

皐月の読みは正しく、無手の深月にビッグフットの凶爪が振り下ろされる。しかし、深月がその凶爪の真正面から殴りかかる。これには八重樫達も目を剥くが、魔力感知があるハジメと皐月は相手に同情した

 

(こりゃあ酷ぇ)

 

(ミンチね)

 

二人の予想通りで、その凶爪が深月の拳に届く前に粉砕されビッグフットの顔面に拳が着弾。頭部がパァンッ!と音を鳴らして破裂して血を巻き散らす。後続で襲い掛かろうとしたビッグフット達は、バスターソードを手放した事で弱くなったと思っていたのだろう。・・・深月の拳で粉砕された仲間を見て突撃を躊躇った

 

「警戒ですか。・・・それは駄目ですよ」

 

深月がパンッと音を立てて手を合わすと、小さな稲妻が全身から迸った。ハジメ達が徐々に大きくなるそれを見ていると、合わせた手を開いた隙間から稲妻が迸る

 

「プラ〇マサンダー!」

 

「ゲ〇ターだと!?」

 

槍を投擲する形と同じ様に放つと、射線上に居たビッグフットの腹を焦がし貫いた。だが、この技は一直線に進むだけではない。軌道を変え、初弾に直撃したビッグフットの周囲をも貫いた。逃げ惑うビッグフットは、特攻を仕掛けた

 

「神風ですか?無意味です。―――プロテクトシ〇ード!」

 

「おおっ!勇者王の盾(゚∀゚)キタコレ!!」

 

左手を突き出し、纏雷と重力魔法と空間魔法の反発防御空間を生成して敵の進行を防ぐ。一方、ロボットアニメを網羅しているハジメは興奮しており、自分でも使える可能性を発見して嬉しそうにしている。だが、攻撃しているビッグフットからすれば冗談ではない。攻撃が通らず、どうする事も出来ないのだ。深月は、魔力糸でバスターソードを手元に戻して力を一拍溜める

 

「少しばかり派手に行きましょう。これは神へと至りし大英雄の一撃です―――――射殺す百頭(ナインライブス)!!」

 

この技は本来であれば弓なのだが、周囲の被害を考慮しての近接だ。深月の場合、その場で振るうのではなく踏み込んで振るった。結果、バスターソードの暴風がビッグフット達を全て飲み込んで粉々にした。流石のハジメも神速の連撃を見て、「あっ、これ訓練で使ったらいけないやつだわ」と口漏らした

 

うわぁ~、あの連撃?はヤバイわね・・・私達でも対処出来ない・・・。メイドがME☆I☆DO☆になってるわ

 

ビッグフットが全滅し、ハジメ達が深月に「お疲れさま」と言おうとしたが、当の本人は何処か満足出来ていない様子だった

 

「深月、さっきの技に不満な所でもあった?」

 

「あっ、いえ・・・もう少し試したい技があったのですが、敵は全部お亡くなりになりましたので」

 

「そっちかよ。相手に同情するぜ・・・凶悪で回避不可能な新技の犠牲になるんだからな」

 

「・・・最後が全く見えなかった」

 

「絶対に訓練で使わないで下さいよ。絶対にですよ!振りじゃないですよ!!」

 

「最後の技もそうじゃが、あの追尾する稲妻も危険じゃのう」

 

「ん~、私的には盾がいいかなぁ~?」

 

ハジメ達は、自分達でも再現出来る可能性がある技を深月が開発しているので色んな期待が高まる。一方、天之河達は呆然としていた

 

「み―――神楽は何であんなに強いんだ」

 

「す、すげぇ」

 

「ミヅキンヤバイ、超ヤバイ」

 

新技をポンポンと出している事に凄い凄いとしか言えない三人を見て、八重樫は溜息交じりで当たり前の事を教える

 

「あのねぇ、あんた達は凄い凄いって言ってるけどそれは神楽さんが努力をしているからよ。才能もそうだろうけれど、その下地が出来ているからやれているのよ」

 

「だったら俺達もでき「無理に決まってるでしょ!」な、何故だ雫!俺達はちゃんと努力をしているんだぞ!?」

 

「俺達もあいつ等と同じ様に技能を磨いてんだぞ?」

 

「す、鈴も頑張っているよ!」

 

「本当に馬鹿」と本音を漏らしてありのまま・・・八重樫は自身が知っている事だけを話す

 

「私達の努力ってちっぽけなものよね。・・・当たり前の様に寝て、食べて、訓練を繰り返す。王国の襲撃から少しだけ改善されたとはいえ、それでもまだまだよ。簡単な事だけど、三人の睡眠時間はどの程度か聞いてもいいかしら?」

 

八重樫の質問に、三人は七時間と答える。ハジメ達も同様にそれに近い睡眠を取っているのだが、如何せん深月は常識の範囲外だ

 

「これはメルド団長から聞いたのだけれど、神楽さんは私達が寝静まった後も訓練しているわ。訓練、瞑想、訓練―――恐らくだけど、瞑想と見せかけた睡眠じゃないかと思っているわ。その時間は日によって違うけれど、一時間か二時間程度よ」

 

「「「いっ、一時間!?」」」

 

驚異の睡眠時間に三人が「ありえない!」と現実を受け入れない目をしていたが、ハジメ達が居る方から聞こえた声で現実味を帯びた

 

「なぁなぁ深月、お前って何時新技を編み出してんだ?本番の前には試運転はしているだろ?」

 

「皆さんが寝てからですよ」

 

「・・・ちょっと待ちなさい。深月、睡眠時間を削っているでしょ?」

 

「お嬢様、大丈夫ですよ―――一時間も寝ていますから!」

 

この場に居る皆が固まった。「あっ、これはガチで言ってる」と確信した瞬間だった

 

「ちゃんと寝ろ!」

 

「過労駄目!」

 

「最低でも五時間は寝ましょう!」

 

「人間とは思えんぞ!?」

 

「一日だけだよね!?・・・えっ、今ではほぼ毎日?駄目だよ!!」

 

ハジメ達も深月を心配して、強制的に睡眠時間を長くする様に皐月に眼で合図を送った

 

「はぁ・・・、私達が狙われて危険な事だと分かるわ。だからと言っても、戦闘に支障をきたす可能性を作らないの!いい?今日からはちゃんと寝るのよ」

 

「で、ですが・・・食事の御用意等が遅れ「寝なさい」お、おく「ね・な・さ・い」・・・はい」

 

皐月の圧に屈した深月は、気を落とした

 

「深月が心配するのも分かるわ。だから、私達も睡眠時間を少し削って一緒に寝れば良いのよ。そうね・・・五時間が良いわね」

 

「ん?って事は」

 

「・・・皐月、ハジメと一緒の時間が減る」

 

「そんな事は先刻承知よ。話は変わって、帝国で先兵が襲撃した時に相対して分かった事だけど、彼女等は体の動きに慣れていない様子だったわ」

 

皐月の言葉に、ハジメ達と八重樫は一気に注意深く気を張り詰める。天之河達は全然理解していない様子だ

 

「ちょっと待て。って事は何か?エヒトの野郎が先兵の身体を弄って強化しているのか?」

 

「あ・・・あぁ、なるほど。それで動きがちぐはぐだったのですね。ようやく合点がいきました」

 

皐月の言葉を聞いた深月は、帝国で先兵との戦闘を振り返ってようやく納得した。深月が六人もの先兵と相対したのはいいのだが、その時は分解魔法の装填を行っておらず、素手で殲滅出来ていたからだ。やけに弱いと感じつつ、王国で戦った先兵の方がエリートだったのではないかと結論付けていた

 

「いや・・・んん?・・・そう・・・なのか?だが、確かに王国で戦った先兵の方が強かった様な気が・・・する?」

 

ハジメは王国で先兵の一人と戦ったのだが、深月特製アーティファクトが有ったらそこまで苦戦はしなかったのではないか?と思っている

 

「ハジメ、深月お手製のアーティファクトの有無は要らないわよ」

 

「・・・何故分かったんだ」

 

「顔に出ているわよ」

 

「・・・そうか」

 

皐月の前ではハジメの考えている事などお見通しである。皐月は、表情に出ているから分かったと言っていた。しかし、長い間一緒に行動していたユエでさえ気付かなかった些細な変化に気付く―――正妻故の理解力だ

 

「何にしても、先兵が強くなっている事実よりも私達が気を付けるのは、目先の事。大迷宮の攻略に集中するわよ」

 

「・・・だな。問題は山積みだが、大迷宮が危険である事に変わりはない」

 

先程までの気の抜けた雰囲気を止めて、迷宮攻略の注意深い目で探索を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

ハジメ達が進んだ先は、透明な氷が壁となりミラーハウスの中に居ると同じ様相だ。そして、横一列で十人程並べる程の広さを持った通路なので、酷い場合は方向感覚を狂わされ迷子になるだろう

 

「あぁ~、深月チートで楽だわ~」

 

「いざという時の魔力が温存出来るから安心」

 

「そうですねぇ~、深月さんの魔力糸が無くてこの壁の向こうの吹雪に直撃すると思うと最悪ですぅ」

 

「雪一つで凍傷は厳し過ぎるのじゃ」

 

「深月さんが咄嗟に防いでくれた事に感謝だね!」

 

深月の魔力糸の壁向こうの環境は過酷の一言だった。深月が咄嗟に壁を作ったとはいえ、少量の雪を被ったハジメの肌が赤くなっていたのだ。雪一つがドライアイスの様に極めて低い温度で出来ているのだ

 

「氷で出来た洞窟に、凍傷を起こす雪・・・氷雪洞窟とは的を射たネーミングね。このアーティファクトが無かったらと思うとゾッとするわね」

 

「飲み水もままならないもんね」

 

八重樫が渡された防寒アーティファクトをまじまじと見る中、香織は同意しながら魔力糸の壁の外側に魔法を行使して水を生み出す。だが、その水は十秒も経たないうちに凍って地に落ちる。水を確保できなければ生き物は死ぬ。一応炎で氷を溶かす事は出来るのだが

 

「確かにのぅ。その辺の氷を削って溶かせば水自体は確保できるが、どうもこの空間では炎系の魔法行使が阻害されるようじゃし・・・飲み水のために一々上級レベルの魔法を消費するのは痛いのぅ」

 

「・・・でも、私達には関係ない」

 

ティオの言う通り、この氷雪洞窟内部では炎系魔法の威力が減退してしまう。例えるなら、初級魔法を行使する際に必要な魔力量が上級魔法並みになるという事だ。しかし、ハジメ達にはその心配は無い。アーティファクトで防寒、宝物庫で飲食物を保管しているので、過酷な環境の弊害はない

 

「本当にアーティファクトが創れて良かったわ」

 

「だな。・・・ああ成りたくはないもんな」

 

ハジメと皐月がユエ達の言葉に相槌を打ちながら、奥の方に視線を向ける。ユエ達がハジメと皐月が見ている方に視線を向けると、壁の氷の中に埋まっている男が居た。その姿はまるで疲れ果てて壁に背中を預ける様にしていた。そして、そのまま寒さにやられて死亡したのだろう

 

「・・・ハジメさん、皐月さん。何だか、あの死体・・・おかしくないですか?」

 

「ん?・・・そういえば、随分綺麗に壁の中に埋まっているな」

 

「はい。まるで座り込んでいた場所まで氷の壁がせり出てきたか、座ったままの状態で壁の中に取り込まれたみたいな・・・」

 

「壁に埋まるとしても凹凸があるのが自然よね?」

 

シアが気付いた様に、男が死亡して氷の壁の中に入っている事は不思議ではない。だが、それは直通のこの道ではあまりにも不自然なのだ。氷の壁が男を取り込んだか何かしなければこういう風にはならない

 

「・・・魔力の反応は氷壁にも死体にも見えない。まぁ、念の為、殺って・・・いや、壊しておくか」

 

「そうね・・・魔眼石の方にも反応は無いから大丈夫だと思うわ」

 

念には念を入れて皐月が確認しても何も問題はなかった。よって、此処は破壊する事を選んだ

 

ドパンッ!ドパンッ!

 

昇華魔法により再設計されたドンナー・シュラークで、男の額と心臓部を撃ち貫く。天之河が死者に対して鞭打つ行為に眉をしかめるが、一々文句を言う不毛さを学んだのか、半開きの口を閉じた。数秒経っても壁と死体に変化がなく、杞憂だったとハジメはホルスターに仕舞って先へと促す

男の死体から先に進み、幾つも枝分かれした迷路のような通路を羅針盤が指し示す方向に歩く。道中、氷壁に埋まった死体やトラップ等がそれなりにあったが、魔物の襲撃は全くなかった。そして、羅針盤によれば既に三分の一は進んだようだ

 

「ん?・・・またか」

 

ハジメ達が、またしても通路の氷壁に埋まった死体を発見した。浅黒い肌に尖った耳・・・魔人族だ。それが三人固まって眠る様に目を閉じている

 

「・・・これで五十人。ほとんど魔人族」

 

「恐らく、魔人族の中に迷宮攻略者が居たのね。フリードは攻略したかどうか分からないけど、仲間が攻略した事で自分も大丈夫と過信した結果だと思うわ」

 

「ふむ。攻略情報があれば行けると踏んだのじゃろうが・・・やはり、そう簡単にはいかなかったようじゃのう。他のルートのことも考えると、どれだけの者が挑んだのやら」

 

「でも、国を挙げて挑んだのなら、そのフリードっていう人以外にも攻略できた人がいる可能性はあるよね。もしそうなら、魔物の軍団が再編されるのも時間の問題かも・・・」

 

香織は王国に居る者達を心配する。襲撃の際は無力だった自分だが、今は力がある。しかし、遠い場所だと思うと介入する事も出来ない事に不安なのだ

 

「大丈夫よ、香織。少なくとも直ぐに攻められることはないと思うわ。内通者の可能性は徹底的に潰したし、大結界も完全に修復されているもの。大結界を警備する兵士達も、一度内側から破られているせいで高い危機意識を持っている。それに向こうは、あのレーザー兵器が損壊していることを知らない。戦力が揃っても安易には動かないはずよ」

 

「雫ちゃん・・・うん、そうだね」

 

「王国ですか。・・・戦力として十分な力を持っているのは遠藤さんだけですね。人質を取られてしまえばそこで終了―――空間魔法の転移で結界をすり抜ける可能性もありますね」

 

八重樫が良い感じに締め括ろうとするが、深月がその全てを台無しにする。だが、深月の言は最もである為にジト目で睨み返すしか出来なかった

 

「・・・安心してくれ、香織。力を手に入れて狂った神を倒し、人間も魔人も皆、俺が救って見せる。ここに残ってリリアーナ達も俺が守る。全ての神代魔法を手に入れれば、いずれ自力で帰れるからな。俺は、誰も見捨てない」

 

「お花畑くんは黙っててよ」

 

香織の小さな辛辣の言葉は聞こえておらず、勇者(笑)らしい発言だ。しかし、その言葉とは裏腹に、天之河の視線は香織にではなくハジメに向いていた。今の天之河の目には、嫉妬、疑念、焦燥、苛立ち、もどかしさ等、負の感情が盛り沢山含まれている。まるで、「悪であるハジメにどうしてそんな力がある!」、「卑怯な手で力を手に入れたに違いない!」等と考えていると簡単に予想出来る

そんな視線を向けられている事に気付いているハジメは、一度天之河を見て肩を竦めるだけしてスルーした。その行為に余計に腹が立ち眉を吊り上げる天之河だが、双方の意思が平行線を辿る事は分かり切っているので言葉には出さなかった

 

「まぁ、知らない仲でもないし・・・頼まれたのなら、帰る前に姫さんへ贈り物くらいはしてやるさ。ヒュベリオンとか、大陸間弾道ミサイルとか、高速軌道型戦車とか、慣性と重力を無視した戦闘機とか・・・」

 

「ちょっ、な、南雲くん?女性への贈り物にしては物騒すぎないかしら?この世界のパワーバランスが崩壊するわよ」

 

「知った事じゃないなぁ。まぁ、一応、使用者制限はかけてやるさ。王族と王族が許可した奴だけ使えるみたいにな。なんなら王都を要塞化でもするか。ノイントレベルが来ても撃退できるレベ・・・皐月、痛いんだが?」

 

物騒な事をポンポンと言葉に出すハジメに、皐月が頬を抓って中断させる

 

「そんな贈り物をされた女性がどういう風に受け取るか分かって言っているの?」

 

皐月の言葉を皮切りに、ユエ達のジト目がハジメに突き刺さる

 

「・・・ハジメ」

 

「手を出し過ぎです」

 

「無自覚にも程があるじゃ」

 

「リリィも参加するの?」

 

そして、肝心の深月はと言うと

 

「"ハーレム王に俺はなる!"という事でしょうか?流石に手当たり次第は酷いと思われますよ」

 

「ならねぇから!!」

 

「ハーレムは全男性の夢というのは理解しております。えぇ、大丈夫です」

 

「絶対に心の中でドン引きしているだろ!」

 

ハジメが更に追及しようとした所で、深月は気配を溶け込ませて姿を消した事に舌打ちしつつ八重樫達に身の振りを考えさせる

 

「八重樫達も、魔人領から帰った後、どうするのかきちんと決めておけよ。この世界に残るか、俺らと共に帰るか。待ったはなしだからな」

 

「・・・ええ。わかってるわ」

 

「うん。決めるのは恵里と話してからだけど・・・」

 

「俺は光輝に付き合うぜ」

 

ハジメの言葉に三人が頷き、少しだけ妙な空気の中通路を進むと、大きな四辻に出た。他の通路も辿って来た通路同様に大きく、縦横十メートル程の広さがある。皐月が羅針盤で進路を確認しようとした時、深月の呟きが聞こえた

 

「おや、リアルバイオ〇ザードですか?」

 

「え?」

 

深月の言葉に遅れ、シアのウサミミが忙しなく動いた

 

「ハジメさん・・・何か来ます」

 

「魔物か?ようやく出て来たな。どこからだ?」

 

「・・・四方向、全部からです」

 

「なに?後ろからもか?」

 

シアの警告に全員が戦闘態勢に移り、自分達が通って来た道からも敵が来ている事に緊張する

 

「ねぇ、ハジメ」

 

「何だ?」

 

「ついさっき深月が漏らした言葉なんだけど―――――リアルバイ〇ハザードって言えば分かるわよね」

 

皐月の言葉を聞いた地球組は頬が引き攣り、トータス組は?を思い浮かべた

 

「敵は凍死死体という事です」

 

深月の確信めいた言葉に、トータス組も頬が引き攣ると同時に響く声

 

ヴァア"ア"ア"ア"

 

雰囲気的に暗くなる通路から、軍服を着た特徴ある耳の男が全身にびっしりと霜を貼り付けた状態で走り近づいて来た

 

「深月の予想通りか!」

 

「死体が相手なら、粉砕する他ないわよ!」

 

深月が魔力糸の壁を作っているのは良いのだが、こちらから攻撃する手段がない為にユエが結界を張って吹雪を防ぐ事にした

 

「結界を張る」

 

ユエが結界を張った事を確認した深月は、魔力糸を解除して迎撃準備に入る

 

「何にせよ、やる事に変わりはないわ。・・・敵であるなら、死体であろうと容赦はしないわ」

 

皐月の言葉を皮切りに、四方の通路から一気に溢れ出るフロストゾンビ

 

ヴァア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!

 

不愉快極まりない声が洞窟内に響き渡る。フロストゾンビはこちらを喰おうとしているのか、大口を開けて歯を剝き出しにして突撃する様はリアルバイオ〇ザードである。凍っていたので肉が腐ってはいなかったのだが、醜悪である事に変わりはない

 

「や、やぁ、来ないでぇ!"聖絶・爆"!!」

 

リアルバイ〇ハザードに恐怖した谷口が、パニックになりつつもバリアバーストを行使、迫り来るフロストゾンビを爆殺した。まるで液体窒素で凍らされた金属を粉々に砕いた様な有様だ

ハジメ達も攻撃してフロストゾンビをバラバラにしたり、切り飛ばしたり、分解したりと様々だ。それで終わりだと良かったのだが、バラバラにした肉片がくっついて元通りになり、分解された体は氷の壁から補う様に元通りになる

 

「魔石が無いわね。・・・でもうっすらと魔力反応はあるわ」

 

「えぇ~!それって、まさかメルジーネの時の悪食みたいな太古の魔物って事ですか!?」

 

「あんなのがわんさか居たら、この世界は既に滅亡してるぞ。何か仕掛けがある筈だ」

 

皐月は魔眼石でも探り当てられない魔石を探そうと羅針盤を使おうとする

 

「似た体験はありますよ。オルクス大迷宮のあれをお忘れですか?」

 

深月の言葉を聞いた皐月は、エセアルラウネの事を思い出した。周囲の環境は吹雪、何かしらの異物が混入している事はない現状にホッとしつつ、フロストゾンビにうっすらと反応する魔力の元となる魔石を探る。すると、ここから数百メートル離れた場所に反応があった

 

「なるほど、深月の言った通りね。あのエセアルラウネの時と似ているわ」

 

「魔物がこの死体を操っているって事か!」

 

「ふむ。とにかく、その魔石をどうにかしなければ、延々と戦い続けなければならんというわけか」

 

「なら、行くしかありませんね!」

 

皐月の推測に従う他ないと感じた皆は、元凶の魔物を倒すべく行動を起こす

 

「深月、殲滅攻撃を開発してないのか?」

 

「ありますが・・・威力が不明です」

 

「威力不明かよ!?ちぃっ、崩落の危険性もあるがそれよりかはマシだな。ミサイルぶっ放すから遅れんなよ!」

 

ハジメは宝物庫からオルカンを取り出して、皐月が指定する四辻の一角目掛けて発射

 

バシュウウウウウッ!!―――――ドゴォオオオオオン!!!!

 

凄まじい轟音が響き、進路上のフロストゾンビを爆殺。その隙に、一気に通路を一気に駆け抜ける。後に続くユエ達が再生するフロストゾンビに追撃をかけて、再生しきる前に再び肉片に変える。何発も連射して爆殺して通路を作り、駆け抜けた後には再生したフロストゾンビたちが雄叫びを上げながら迫って来る。特に、皐月と深月とユエとティオ以外の女性陣の表情は引き攣っている

 

「ふぇええ~、リアルバイオハザードはやだよぉ~」

 

「す、鈴、気をしっかり!腐敗してないだけマシな絵面よ!ほら、よく見れば愛嬌がないことも……」

 

「微塵もないよっ!愛嬌なんてっ!うわぁああん!来ないでぇ、"聖絶・爆ぅ爆ぅ爆ぅうううう"!!」

 

「鈴ちゃん!乱心しないでぇ!魔力が保たないよっ!きゃぁ、腕投げて来たぁ!しかも、腕だけ動いてるぅうう!!カサカサ這って来てるぅううう!!」

 

「ひぃいいい!香織さん、ちゃんと狙って下さいぃいい!!今、飛んできた腕にシッポ触られたじゃないですかぁ!!」

 

まるでホラーハウスに挑んだ様に悲鳴を上げる四人に対し、皐月達は平然としていた

 

「う~む、若いのぅ。ただの魔物にああまで騒げるとは・・・」

 

「・・・ティオ、ババくさい」

 

「ふぉ!?ひ、酷い言い草じゃ。まぁ、実際、年上じゃから、ついつい微笑ましく思ってしまうことはあるが・・・ユエもあるじゃろう?」

 

「・・・ない。私は永遠の十七歳」

 

「地球でそんな事を言った方がババくさく感じられるわよ」

 

「!?」

 

「精神年齢が十七歳で良いのでは?」

 

「あぁ、そうよね。封印されていたから、その方が誰もが納得するわね」

 

反応する魔石に繋がる通路を駆け抜けながら、深月は一人ある事を振り返った

 

今振り返ったのですが、この通路・・・昇華魔法で破壊力が増したオルカンの爆発にも耐えましたね。これはあれでしょうか?私の新技を披露しろと言っているのですね!

 

ニヤリと笑みを浮かべた深月を見たハジメは、今までにない悪寒に襲われた。それと同時に深月が足を止めてフロストゾンビ達を睨み付け、手と手の間から凄まじい魔力の波動が集束していた

 

「ス〇ナァァァァァァ――――」

 

「全員死ぬ気で走れぇええええ!!」

 

深月の言葉を聞いたハジメは、全員に全力疾走を促し走りながら右手にオルカン、左手にメツェライを構えて撃ちまくる。途中で再生しようとしているゾンビ達を無視して一気に走り抜けるハジメを見た皐月達も続く。皐月が一瞬深月の方に振り返ると、莫大な魔力が球体を模っていた

 

「ヒィッ!?あれはヤバイって!!」

 

皐月の悲鳴を聞いたユエ達も一瞬だけ振り返り、ヤバイ事を感じ取った。冷や汗を流しながら、再生しようとする肉片を無視して全力疾走。そして遂に―――超危険な技が放たれてしまった

 

「サァァァァン〇ャイン!!」

 

深月へと襲い掛かる大量のフロストゾンビの足元に着弾―――爆発する魔力。フロストゾンビの肉片を粉々にするどころか蒸発させ、爆発範囲がどんどんと広がる

 

「ギャアアアアアア!深月さんどんだけですかあああああああああ!?」

 

「死ぬ!死んじゃうのじゃ!!」

 

「ひぃいいいい!?」

 

「せ、聖絶!!」

 

このまま走っても巻き込まれる事を感じ取ったユエは、何重にも張った聖絶で防ごうとする。だが、そんな事よりも走れと言いたげに、舌打ちをしながらユエを皐月が抱えて走る

 

「いやあああああああ!?ありえないでしょおおおおお!」

 

「ミヅキィィィィン!鈴達死んじゃうよぉおおおお!?」

 

「うわぁあああああああああ!?」

 

「ぎゃあああああああああ!やめろぉおおおおお!?」

 

天之河達も死を錯覚させる魔力エネルギーの奔流に、涙目になりながら足を動かす。しかし、全員の希望を粉々に粉砕するかの如く、徐々に広がるエネルギーが一瞬で距離を埋めた

 

『あっ、これ死んだ』

 

全員の心の声が合わさった。しかし、爆発のエネルギーに飲み込まれる直前、氷の壁の中に入る様に全員が連れ込まれ爆発のエネルギーが通り過ぎた。壁越しでもビリビリと響く音と振動に、生きている事を実感して大きな溜息が吐き出された

実は、ストナーサ〇シャインを放った深月が着弾を確認せずにハジメ達の傍まで一瞬で追い付き、氷壁を高熱の魔力糸で溶かして大きなスペースを取り、全員の腰に魔力糸を結んで引き摺り入れて蓋をしたのだ。一応くり抜く形で氷の壁の中に入ったとはいえ、爆発のエネルギーで氷が耐える事が出来ない可能性も踏まえて最大硬度の魔力糸でドーム状で覆う事も忘れていない

 

「い、生きてるぅ~」

 

ハジメの本心に全員が同意し、元凶の深月を睨む。しかし、当の本人はあまり納得のいかない表情をしていた

 

「むぅ・・・もう少し破壊力が欲しい所ですね」

 

「これで足りてないの!?十分過ぎるでしょ!!」

 

「中村さんを消滅させる為には威力不足ですよ!」

 

「エリリンにこれぶつけたら死んじゃう!?」

 

「殺す為に開発した技ですので当たり前でしょう?ようやく試射が出来たのが良かったです。これで足りない部分を補えます」

 

「嫌だぁ!殺さないでぇ・・・」

 

何も知らない第三者から見れば、全ての人が深月が悪いと感じる光景だ。メイドのスカートを掴んで必死に止めようとする子供・・・。絵面的にアウトである

 

「なぁ・・・そんな事よりもさっさと先に行くぞ」

 

「あぁ、そうですね。入り口を開けます」

 

ハジメ達は、死体を操っている魔物が増援を寄こす可能性を考えて皆を急かす。深月が入り口の蓋を解除すると、目の前に広がっていた光景は壮絶―――氷の壁が爆発の影響で削られていたのだ。通路と天井は更に広く、高くなっていた

 

「うわぁ~お・・・こりゃあ酷ぇや」

 

「あのまま巻き込まれてたら確実に死んでたわね。・・・深月、あの技は最終兵器として使いなさい!」

 

皐月がストナー〇ンシャインを普段使わない様に制限をする様に厳命。しかし、ここでも深月クオリティーが炸裂する

 

「グラビ〇ィブラスト、ヘルアン〇ヘヴン、冥〇攻撃、石破〇驚拳も開発出来ていましたのに・・・残念です」

 

ハジメは内心で「見たいっ!超見たい!!」と思ったが、皐月が居るので敢えて言葉には出さない。しかし、ハジメの考えている事などお見通しである皐月の前では意味がない。気を取り直して、ハジメ達は深月の放ったストナー〇ンシャインで拡張された通路を進んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさんの新技はどうしようか迷ってたんだけど、ヨウツベで懐かしい物をリスペクトォッ!冥王さんについては難しいけど、再現だから!完璧ではないのさ」
深月「スパ〇ボMXで調べて頂けたら結構ヒットしますよ?」
布団「ぶっ壊れ兵器の一つだからねぇ~」
深月「・・・重力魔法で押しつぶした空間を連鎖爆発で再現できるかも?」
布団「( ゚Д゚)」



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