ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「お待たせしましたぁ。メイドさんが無意識でチートを覚醒します」
深月「限界突破以上の強さを手に入れますよ!」
布団「知ってる人は多いと思うの。でも、深いツッコミは入れないでね?」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」





影とお別れ。メイドはいつも通りです

~深月side~

 

己の影二体と相対する深月の心境は、晴れ晴れとしていた。長年の憑き物が落ち、縛られた精神が解放されたのだ

 

ふふふ、前世と今世を含めて告白されたのは初めてですね。しかも、私が今まで気にしていた事も全て無駄になりました。本当の仲間とはこういう者なのですね

 

コツコツと歩いて近づく深月を見て、ハジメ達は少しだけ心配する。闇が晴れたとはいえ、自分を圧倒していた影が二体。絶望的状況なのだが、どことなく今の深月ならどうにか出来ると思っている

 

『はぁ・・・皆が()を受け入れても、他の者達まで受け入れてくれる可能性は低いんだぞ?』

 

『それに、先程まで手も足も出なかったのに勝てるとお思いですか?』

 

影の二体の言う通りだが、全てが軽くなった深月は影が己にどうにか出来るイメージが湧かなかった。初めての感覚に戸惑うが、いい意味の戸惑いだった

 

「そうですね、確かに私は影一人相手にするだけでも手も足も出ませんでした。ですが、今は何と言ったらいいのでしょう・・・負けるイメージがまるで湧かない。今までは可能性が限りなく0でも湧いていたのにも関わらず、今は湧かない。私自身も戸惑っています」

 

『矛盾は!』

 

『意味がありません!』

 

影の身体がブレた瞬間、深月の両端から无二打が迫る。そんな中、深月は目を閉じて慌てた様子もなく佇んでおり、ハジメ達はつい援護をしようとした

 

『な!?』

 

『に!?』

 

影のが放った无二打は、深月が"ゆっくり"と拳の横に手を添えて軌道を逸らす。直後、流れる形で片足を軸に90度回転して膝高に片足を上げる事で影二体の水面蹴りを受け止める。そこから深月は猛攻を防ぐ

 

「皐月!」

 

「ハジメさん!」

 

咄嗟にユエとシアが援護をしようと二人に声を掛けるが、当の二人は深月の動きが明らかに異常であると気付いた

 

「いいや、援護は要らない」

 

「あ、ははは・・・ここまで違うの?」

 

「「「「?」」」」

 

ユエ達は、「あれを見て援護が要らないの?」と疑問に思っていると、八重樫が食い入る様に深月の動きを見て呟いた

 

「ほんと・・・才能に恵まれているわ」

 

「雫ちゃん、どういう事?」

 

香織が答えを知っていそうな八重樫に尋ねる。ハジメと皐月も異常ではあるが、理由が分からない為耳を傾ける

 

「私のお祖父ちゃんが言っていたわ。技術があるに越した事はないが、真に強いのは考えるよりも先に最適解を導いて動く体だと」

 

「???・・・つまりどういう事?」

 

流石の皐月も八重樫が言っている事が理解出来ず、頭で?が大量生産されていた

 

「私だってそこまで知らないわ。だけど、神楽さんは間違いなくその領域に居るという事よ」

 

「取り敢えず、いつでも援護が出来る様に戦闘態勢のままにしておくぞ」

 

踊る様に避け、受け流し、逸らしと直撃を防ぐ深月

 

『何故当たらないのですか!』

 

「何となく分かるのです。と言っても、気付いたのは攻撃された後ですがね?」

 

『後から気付く?・・・・・身勝〇の極意か!』

 

「・・・・・あぁ、そういえばそんな状態の名前がありましたね」

 

ハジメ達は身勝手〇極意って何?と意味が分からず首を傾げている

 

『この熱量に攻撃出来ずとも防ぐ・・・兆の状態ですか!』

 

「深い・・・落ちる・・・感じる・・・」

 

『っ!?完成形に移行するのか!?早過ぎるぞ!』

 

影が焦りで攻撃の密度を上げるが、深月はその全てを悉く防ぎ、更に感覚は鋭くなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

底無しの海に沈むかの如く、雑音が消え、必要最低限の動きだけを導く。感知系の技能だけで防ぎ、より深く落ちる。すると、底に着いたのか、分厚い板の目の前に立ち止まる

 

行き止まり?でも、違う?分からないけれど・・・ここが行き止まりではないとどことなく感じる。周りには・・・誰でしょうか?影・・・自分ではない誰かの影。分からない、誰なのか分からない。会った事があるのに思い出せない。貴方は誰?

 

板の隣に居る影は、深月を見つめたまま何もしない

 

あぁ、このままここに居たい。けれど、お嬢様達が待ってい・・・る?

 

深月は再び影を見ると、影の人数が増えていた。一人だったのが八人まで増えていたのだ

 

・・・あぁ、そういう事なのですね。では、行きましょう!

 

深月が一歩近づいた瞬間、板が開く。いや、板は扉だった。そして、肝心の影の正体は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影と深月の攻防は永遠の如く続き、痺れを切らした影が一度後退する

 

『こうなれば・・・諸共に粉砕する!』

 

『・・・お嬢様には当ててはいけませんよ?』

 

『当たり前だろう?』

 

この時、ハジメ達に悪寒が走った。あのストナー〇ンシャイン事件と同じ部類だった。一塊になろうとしたが、相手の一手の方が早かった

 

『この勝利はお嬢様の力の為に!』

 

『この手が真っ黒に染まり、勝利を捥ぎ取る』

 

深月の手を引こうとも間に合わない距離に、ハジメは舌打ちをした

 

『『暗黒―――石破〇驚拳!!』』

 

滅茶苦茶な名前だが、威力は絶大なそれが二つ放たれ融合。一つのどす黒い大きな拳となって一直線に深月へと襲い掛かる

 

「「「「「「深月!」」」」」」

 

ハジメ達が深月の名前を呼び、どす黒い大きな拳が深月に着弾すると思った。だが、結果とは違いそれは掻き消えたかと思ったら、二体の影の後ろに銀色に輝く人影の手に掴まれていた。少しの衝撃だけで爆発するだろうそれは、銀色に輝く人影が指でトンと叩いただけで消失した

 

『このっ!』

 

『なめるな!』

 

影の拳が銀色に輝く人影に放たれるが、直撃する瞬間に避けられた。しかし、それだけには留まらず、複数の打撃音と共に二体の影が大きく仰け反った

 

『『ぐはっ!』』

 

ハジメ達は何が起きているのかが分からず、ただ茫然と見ているだけだ。銀色に輝く人影に変化が訪れ、体に纏わりついていた光が剝げ、深月が姿を現した

 

「私は心の何処かで、仲間は必要ないと思っていたのです。ですが、今なら―――今だからこそ分かる。仲間は共に支え合い、共に生きる大切な者達だと。そして、私の仲間を殺そうとした私の影。遺言は聞きませんし、いたぶろうともしません。ただ一つ、一撃必殺を持ちまして終わらせます」

 

『調子に乗るなオリジナル!』

 

「先ずは一人」

 

空間魔法と重力魔法で圧縮した空間同士を連鎖爆発させようとした影の男に一瞬で近付いて頭部を粉砕

 

『それを待っていました!』

 

影は深月の勢いが死んでいない状態でピンポイントバリアパンチ(魔力最大出力)を放つ。しかし、両手で防がれたかと思うと、左右に弾かれて魔力そのものが消失した。その瞬間、深月の膝から魔力糸で作られたドリルで真っ二つに抉り飛ばされた

 

『・・・あぁ、勝てなかったのですか。オリジナル、貴女の勝ちですよ』

 

影は霧の様に消えた。完全勝利―――凄まじい力での圧勝に、ハジメ達はまるで自分が勝利した様に喜んだ

 

「あっ、いっづぅ!」

 

直後、銀色の光が霧散した深月に待っていたのは魔物肉を食べた時以上の激痛だった。まるで溜まりに溜まった衝撃が濁流の様に体中を駆け巡る。今まで体験した事のない領域での短時間戦闘でも、これ程まで体を酷使している事を考えれば多用する事は出来ない。いや、そもそももう一度この領域に入る事が出来るとは言い難かった

皆が深月に駆け寄りったハジメは、何も言わずに肩に手を回して深月を支えてユエの再生魔法と香織の回復魔法の二重の治療が行われる

 

「・・・皐月、氷血晶を取り出して。再生に集中する」

 

「どうして・・・回復魔法でも直ぐに治せないなんて」

 

「二人の再生と回復合わせてすぐに治療出来ないって嘘でしょ!?」

 

二人の治療でも直ぐには回復しない状態の深月に皐月は驚愕する。しかし、あの戦闘をほんの少しでも見ていたからこそ分かる。見えない速度での移動と攻撃、最低限の動作での回避等々。ハジメ達が相手の攻撃一つでも直撃してしまえば最後と言っていい程の攻撃。深月がどうやって捌いていたのかは当の本人以外は不明である

 

「あの身勝手〇極意?という状態からの積もりに積もった疲労が一気に圧し掛かったというところね」

 

「あぁ、あれを見てたら絶対に相手したくねぇと思ったな。衝撃だけで骨が折れる可能性があり、ロングショットでも捉えられない動きは無理だ。限界突破状態ならなんとか見える程度だろうな」

 

「私も身体強化と再生魔法で底無しで動けますが、あの攻撃を直撃したらと思うと・・・流石にお陀仏ですぅ」

 

シアも物理オンリーのチートだが、その耐久値を軽々超える攻撃の嵐には絶対に耐えられないと口漏らす

話は戻り、数十分に及ぶ治療で深月はようやく回復した

 

「さて、深月も試練をクリアしたから先に行きましょう。―――――と言いたかったけど、皆まで言わなくても分かってるわよね?」

 

「余裕」

 

「当たり前です!」

 

「こればかりはのう・・・」

 

「仕方がないよね」

 

「自業自得としか言えないわ」

 

深月と気絶している谷口を除く女性陣がハジメをジト目で睨む

 

「・・・どうかしたのか?」

 

ハジメはどこ吹く風のご様子でスルーするが、欲望駄々洩らしたハジメに味方は居ない

 

「深月を支えたのは紳士よね」

 

「仲間だから当然―――」

 

「でもね?内心で、「メイドを支える俺、マジ主人の鏡。後でご奉仕をしてもらおうか」というのは最低よ?」

 

「言い掛かり―――『メイドのご奉仕を想像しつつ興奮したからな』・・・・・待て、何で俺の影が居る!?」

 

皐月達女性陣の後ろに居た影がいきなり現れている事にハジメは驚愕する。しかし、影はハジメだけではなく、皐月の影も勿論の事、ユエ、シア、ティオ、香織の影達も居た

 

『確かに試練は終わったわ。でも、もう現れないと何時から錯覚していたのかしら?そして、ユエ達の影が居るのは私が誘ったの。因みに、ハジメの影を連れてきた理由は、面白そうだったからよ!』

 

もの凄くマズイと感じたハジメは、もう一度影をぶちのめそうと駆け出す。しかし、ユエ達の連携によって拘束され、宝物庫までも没収されてしまった

 

「さて、ハジメは深月にどんなご奉仕をさせるつもりだったのかしら?」

 

「ごらあ!喋んじゃねえ!!」

 

『すまないな、俺。影とはいえ、こっちも脅されているんだ。ありのままを伝える他ない』

 

「俺の影だろ!?抵抗しろよ!!」

 

『はっはー!俺には悪いが暴露してやるぜ!―――メイドのご奉仕なんて決まってるだろ?意味深だ!あわよくばスカートの中に頭を突っ込―――』

 

最後を言い終える前に、ハジメの影は皐月達の影にタコ殴りされて消えた。この場に残ったのは両方を合わせた重圧だった

 

「そ、そうだ!これは罠だ!試練の罠だ!!」

 

ハジメは必死になって周囲を説得する。だが現実は無慈悲だ

 

「ハジメの判決は」

 

『ギルティ』

 

何処で何をされるかは分からないが、ハジメは酷い目に遭う事が確定した

 

「ハジメのあれについては置いておくわ。早く奥に進むわよ」

 

皐月が皆を促して奥へと続くであろう光を潜ろうとする

 

「ご主人様達よ、少しだけ待ってくれんかの?」

 

「私もティオと同じだよ皐月それとハジメくん。ちょっと待って」

 

ハジメと皐月が振り返ってティオと香織の顔を見ると、とても真面目な表情をして一世一代の告白をする眼をしていた

 

「それで?何が言いたいの?」

 

皐月の念話が飛んで来たと同時に、二人は仲良く奇麗な土下座をして額を地面に擦り付けた。この様子を見たユエ達はギョッと目を剥いて驚いた

 

「ご主人様達、妾は間違っておった。すまなかったのじゃ」

 

「今まで本当にごめんなさい」

 

「何について謝っているのかしら?身に覚えが多すぎてどれがどれか分からないわ」

 

変態による後処理と突撃娘の弊害のフォローに奔走する事多々あった。本当に多すぎて分からないのだ

 

「出会った後からの問題行動全てじゃ」

 

「私は・・・高校に入ってからの事全てです」

 

ティオはともかく、香織は高校に入ってからという事に八重樫は物凄く驚いていた。あの突撃娘が反省と言う言葉を遂にと言った感じだ

 

「そ、それでなのじゃがな?」

 

「これから先は念話でも良いかな?」

 

「ちゃちゃっと終わらせてよね」

 

(その・・・今まで気づかなくてすまなかったのじゃ)

 

(自分の事ばかり考えていてごめん)

 

(・・・それで?何を言いたいの?)

 

ティオと香織からの謝罪の言葉ばかりに、皐月は溜息を吐いて本題に切り替える

 

((側室でハーレムに入れて下さい))

 

真っ直ぐな答えだ。最近まで、「正妻になる!」と言っていた二人がここまで落ち着いている事に皐月は疑問を覚える。誰かが告げ口した可能性があるのだが、ユエとシアと八重樫に釘を刺しているし、他人にはバレる可能性は限りなく少ない

 

(どうして急に心境を変えたのかしら)

 

(香織よ、先ずは妾からじゃ)

 

(どうぞ)

 

皐月の問いに、ティオから答える

 

(変態の時の妾は自分だけしか見ておらなんだ。しかし、深月の淑女教育を経て全体を見渡してからようやく気付けたのじゃ。ご主人様は妾達にもチャンスを与え、それを物に出来るかだけじゃった。気付くまでには空回りしておっただけじゃがな)

 

(次は私だよ!えっとね、空振りしていく内に何となくこうなのかな?って思い始めたの。特にフェアベルゲンの迷宮を攻略していた辺りからが疑問に思い始めたの。そして、影との戦いでようやく気付いたの。・・・私って自分ばっかりだなって。皐月みたいに皆にチャンスを与えるなんて出来ないし、その発想すら思いつかなかった。だけど、ハジメくんだけが好きだから、皐月が与えてくれるチャンスを側室としてものにしたい!)

 

ようやくだが、ティオと香織の二人は自分のどこが駄目だったのかを理解して側室としてハーレム入りの条件の一つをクリアした。だが、条件はもう一つある事を忘れてはいけない

 

(ふ~ん、今までの残念がようやく無くなったと言えば良いのかしら?)

 

((その節は大変申し訳ございません))

 

(でも、それに気付いたとはいえハーレムに入る為の条件はまだあるわよ)

 

皐月は、恐らく二人はまだ理解していない残念が残っている前提での言葉だった

 

(それは大体予想出来るのじゃ)

 

(だよね。それって深月さん関係だよね?)

 

しかし、二人は残念が完全に消えていた!流石の皐月も、「うっそぉ」と口漏らす程だった

 

(酷いのじゃ。・・・とはいえ、あの頃の妾じゃとそう言われても不思議ではないのう)

 

(うぅ・・・皐月がどれだけ私が残念なのかを理解したよ)

 

(それは仕方がないでしょ。・・・さて、分かっているなら言うわ。最終条件は、深月を第二婦人にする事よ)

 

これを聞いた二人は、少しだけ悩みつつも答える

 

(それは良いのじゃが・・・・・大丈夫なのかの?)

 

(文句はないけど・・・深月さんはハジメくんの告白に応えてないんだよ?)

 

(恐らくだけど、内心で揺れ動いているから大丈夫よ。後はハジメが何処まで攻め込めるかよ)

 

(深月さんって押しに弱そうだよね)

 

(今ならば攻略出来るのではないか?)

 

実はこの場に居る殆どがハジメの事を見ており、「やれ!突撃して陥落させろ!」と心の中で叫んでいるのだ

 

「あぁ、そういや俺の告白の返事を聞いていなかったな。どうなんだ?」

 

皐月達は、「やれ!もっとやれ!」とニヤニヤしながら深月を見ると、不思議そうに首を傾げていた

 

「?」

 

「何首を傾げてんだよ!俺の告白の答えは!?」

 

「お付き合いは出来ませんよ?将来の主となられるハジメさんの側室でも不可能です。現主のお嬢様が正妻とはいえ、立場的に流石にそれは駄目です。それとも、性処理係としてお仕えするのでしょうか?」

 

「阿保かあああああ!俺をどういう目で見てんの?それだと鬼畜男子だろ!?」

 

「夜戦で皆を屈服させる魔王では?マジカルな下半身の猛威はどれ程まで拡大するのでしょう・・・。第三者観点から見ても、多人数相手でもハジメさんが勝ちますよ?」

 

「そっち方面に話を逸らすな!答えは!?」

 

「そもそも、私は心に決めた人は誰一人居ませんよ?」

 

「深月、妥協点はどうなの?」

 

皐月はこれ以上深月の口を開けば、ハジメが立ち直れなくなるまで口撃される可能性があると判断して流れをぶった切る事にした。深月がお付き合いしても良いと思う妥協点―――これならハジメが目指す事が出来る

 

「私に勝つ事が出来る男性ですかね」

 

この即答に皐月達が頭を抱えた。戦闘力Max、生活スキルMax、交渉術Maxとほぼ全てをカンストさせている超人をどの様に倒すのかを思うと全てが無理だ。しかし、ハジメはこんな事で諦めない。影との戦闘を見て、ハジメは絶対に勝てないと悟ったが、抜け道がある事に気付いた。普段の深月なら差し押さえるだろう指定が無い事をチャンスだと感付いた

 

「深月・・・・・本当にお前に勝てば良いんだな?」

 

「そうですが?」

 

「だったら、後で一対一の勝負だ。内容は完全に公平になる様に皐月が主に決めるから絶対に逃げるなよ?」

 

「お嬢様が決められるのであれば問題はありませんね。基本的にお嬢様の命令は絶対ですので」

 

皐月は、深月が"基本的には"という言葉を付けた事に舌打ちする

 

(チッ!あの言葉が無ければ命令でハーレム入りさせたのに!)

 

と、お嬢様は思っているのでしょうね。ですが、私に隙はありませんよ。全てに対策をした今の私にハジメさんは絶対に勝てないです!

 

深月が内心で勝利を確信し、ハジメ達がどうやって攻略をしようかと相談しようとした時、八重樫が一大決心をした顔でハジメに近づいてガシッと顔を掴んでキスをした。怒涛の連続に、ユエ達と目を覚ました坂上と谷口は( ゚д゚)ポカーンとして、皐月と深月は何となく察していた

 

フラグを建てたどころか攻略しましたか。・・・流石、夜の魔王と言うべきでしょうか。今は居ないレミアさんがハーレム入り確定。リリアーナ様は攻略一歩手前、畑山先生は候補、園部さんは・・・何となく愛人枠に収まりそうですね。しかし、お嬢様の事ですからハーレムメンバーに加える可能性が高そうですね

 

「私は南雲君が好きよ」

 

「い、いや・・・だがなぁ?」

 

「あぁ、正妻は高坂さんでしょう?そこら辺は把握済みだから問題ないわ」

 

「ならウェルカムね」

 

「皐月!?」

 

「ぶっちゃけ言うと、ハジメが気になっている女性は残り三人よ。ハウリア女性陣は除外するから気にしないでね?」

 

「え?」

 

自分が知らない間に大勢の女性陣を攻略している事実に、ハジメは硬直してしまった。自分がやってしまった可能性があるのは二人だけ。しかし、残り一人は完全に分からなかったのだ

 

「えっと、皐月?もう一人って誰なのかな?」

 

「個人情報だから公にはしないわよ」

 

「私達には知る権利があると思うのですぅ」

 

「知りたい」

 

「誰なのじゃ?」

 

「・・・あぁ、なるほど。確かに気にしていたわね」

 

知らない候補の一人に気付いたのはハーレム新参の雫(※これより雫と表記します)だった。ユエ達は雫にズイズイと近づいて圧を掛けるが、深月が更なる爆弾をぶちまける

 

「私個人の見解は、愛人枠に収まりそうな雰囲気ですね」

 

「「「「「「愛人ッ!?」」」」」」

 

「あ、あ~・・・何となくその雰囲気があるわね」

 

「そ、そうね。・・・高坂さんはどうするつもり?」

 

「愛人枠は無粋よ。それならハーレムに入れた方が良いわ。それと、ハーレムに入るのなら皐月で良いわよ。私も雫って呼ぶわ」

 

「そう。・・・なら皐月、これからもよろしく頼むわ」

 

皐月と雫が握手してすんなりとハーレムメンバーに加わった

 

「ちょっと待って!雫ちゃんはどうして条件が分かったの!?」

 

「・・・香織、皐月を見ていれば普通に気付くわよ。香織が南雲君と一緒に行動する時には既に分かっていたわ」

 

「私って残念だったんだね。ふっ、フフフ―――悲しい(´;ω;`)」

 

親友の雫は一日も経たずに気付いたのに、己はかなりの間気付かなかった事に自虐する。それを見たティオが香織の肩にポンと手を乗せて、「妾も香織と同じで気付かなかった」と同じ心情同士で慰め合う

 

「と、ところでよぉ・・・先には進まないのか?」

 

桃色な雰囲気の中、坂上は雰囲気がぶち壊れるだろうなぁと思いつつ本題を呟いた

 

「そうだったわ。こんな所で立ち止まっている場合じゃないわね」

 

「んじゃあ、行くか」

 

ハジメと皐月を先頭に皆が光の扉を潜り、視界が白から徐々に晴れると大きな空間に出た

 

「・・・どうやら、今度は分断されなかったみたいだな」

 

「・・・ん。それにあれ」

 

「ふむ、どうやら、ようやく辿り着いたようじゃの」

 

「綺麗な神殿ですねぇ」

 

「ゴールにたどり着いたわね」

 

透き通った純氷で出来た氷壁と氷柱があり、地面から水が溢れ出ていた。恐らく、解放者の拠点だから極寒ではないのだろうと予測する事が出来た。水は小さな噴水の様にいくつか噴き出ており、溢れ出た水は湖を作り、湖面に飛び石状の床が浮いていた。そして、その向こう側に氷で出来た神殿が建っていた

 

「・・・攻略・・・したんだ・・・ぐすっ」

 

「鈴ちゃん・・・やったね」

 

「・・・やったわね」

 

「おうよ。本当に何回か死にかけたがな」

 

「龍太郎は避ける事をしないからでしょ?これで皐月が止めなかったらもっと多かったでしょうね」

 

「いやぁ、ははっ、まぁ、結果オーライってことでいいじゃねぇか」

 

ハジメと皐月を先頭に、氷の足場を使って神殿へと進む。特に何事もなく進み、神殿の大きな両扉の前で立ち止まる。扉には雪の結晶を模した紋章が描かれていた。特に封印など厄介な仕掛けも仕組まれておらず、念の為に深月が扉を開けて罠をチェックするが、すんなりと開いた

 

「見た目は神殿なのに、中身は住居だな」

 

「オスカーの所と似ているわね」

 

調度品の全てが氷で出来ているが、触っても涼しいと感じる程度の温度だった。恐らく何かしらのアーティファクトで維持されているのだろう

皐月は、羅針盤を使って魔法陣を探す。調べると一階の正面通路奥に反応があり、行く途中にあった部屋は少しだけ覗いて目当ての魔法陣がある重厚な扉を深月が押し開ける

 

「ここだな」

 

ハジメがそう呟き、全員が魔法陣の上に立つ。そして、試練の内容を調べられ脳内に直接神代魔法が刻まれる。最後の神代魔法、変成魔法を習得したシア達が喜びを露にしようとした時

 

「ぐぅ!?がぁああっ!!」

 

「あづっ!?うぁああああっ!」

 

「・・・っ、うぅううううっ!!」

 

「イタタタタタ!痛いです・・・」

 

いきなりハジメ、皐月、ユエの頭に激痛が走り、頭を抱えながら膝を付く。深月は、身勝〇の極意の反動よりもマシな痛みだったので手で頭を抑える程度で済んでいる

 

「ハジメさん!?皐月さん!?ユエさん!?・・・深月さんはデスヨネー」

 

「どうしたの、三人共!!」

 

「落ち着かんか!香織!呆けるでない!」

 

「え?あっ、うん、直ぐに診るから!」

 

突然の変化に、ティオがシアと雫に一喝入れ、香織も叱咤されてようやく起動した。直ぐにハジメ達の様子を見ようとすると

 

「っぁ・・・」

 

「んくぅ・・・」

 

「・・・んっ」

 

脂汗を大量に浮かべたハジメと皐月とユエは、頭痛から解放され体の力がガクッと抜けて地面に倒れるが、深月とシアと雫の三人が倒れる前に支える。様子を見ると、三人共気絶していた

 

「み、深月さん。一体何があったんですか?」

 

「それよりも休ませましょう。情報量が多すぎて私も未だに頭痛が・・・」

 

「よく我慢出来るのう」

 

深月は宝物庫からベッドを取り出して三人を川の字に寝かせた

 

「はぁ・・・神代魔法とは凄まじいですね」

 

「それで何が分かったの?」

 

意識がある皆が深月を見て、この謎の痛みの原因を聞く

 

「生成魔法、重力魔法、空間魔法、再生魔法、魂魄魔法、昇華魔法、変成魔法―――全てを手に入れた瞬間に膨大な情報が溢れたのです。その情報とは概念魔法と呼ばれるものです」

 

「あっ、ハルツィナ樹海の解放者が言っていたあれですか?」

 

「そうです。究極の意思によって魔法を作り出す―――しかし、この意思の力が全てに物を言うのです。半端な意思では作る事すら不可能なのです」

 

「え?こんなのあったらいいな~じゃ駄目なの?」

 

「魔力を消費するだけですね」

 

「そ、それは何とも微妙な魔法じゃな」

 

生半可な意思では魔法を作れない事を教えられたシア達は、ハズレじゃないの?と言いたげな表情をしていた

 

「本当に微妙だと思いますか?」

 

「だって・・・究極の意思ですよ?」

 

「ぱっと思い浮かばないのじゃ」

 

シアとティオは想像力は乏しい様だ

 

「ねぇ深月さん、概念魔法なら地球に帰れるかな?」

 

香織の言葉に、雫と坂上と谷口の肩をビクッと震わせる。もし・・・もしも帰ることが出来るのならと思うとドキドキする

 

「そうですね、多分大丈夫だと思います・・・よ?」

 

「「「「何故疑問形!?」」」」

 

「いえ・・・私の行動理念はお嬢様の幸せの為だけですよ?地球であろうと、トータスであろうとご満足いただける様にサポートする事こそメイドの勤めです。ですので、私は地球に帰りたいな~という意志が弱いのです」

 

「これはハジメくんと皐月に任せるしかないのかな?」

 

「大丈夫よ香織、皐月が深月に命令すれば一発よ」

 

「そうだね!・・・・・あれ?雫ちゃんはさん付けじゃないの?」

 

「意地汚いメイドにさん付け?精神年齢が年上でもさん付けしなくてもいいでしょ。意地悪だから、意地悪だから!」

 

雫は、今までの深月の悪戯の被害者であると言ってさん付けをしないつもりだ。そして、ここぞとばかりに鬱憤を吐き出す

 

「ほっほ~う?意地悪メイドと言うなら、雫さんだけ質素な食事で―――」

 

「ごめんなさい」

 

「雫ちゃん陥落早くないかな!?」

 

「香織、美味しいは正義なのよ。我慢なんて出来るとでも思う?」

 

「そうだよね。・・・ごめんね」

 

「食を豊かにする為なら・・・私は深月さんにすり寄るわ」

 

見事な掌クルックル~だった。一度でもあの味を知ってしまえば・・・意気消沈の食事を摂るのは嫌なのだ

 

「話を戻しましょう。この変成魔法、皆さんはどの様な魔法と定義していますか?」

 

「え?え~と、そうね。刻まれた知識からすると、普通の生き物を魔物に作り替えてしまう魔法ね。術者の魔力と対象の生き物の魔力を使って体内に魔石を生成し、それを核として肉体を作り替えることが出来る」

 

「うん。私も、そう理解してるよ。それに、既にいる魔物の魔石に干渉して自分の魔力を交えることで強化したり、服従させたりすることも出来るみたいだね」

 

雫と香織の理解は大体合っている。しかし、それは変成魔法の三割程度の恩恵だ

 

「この変成魔法とは、有機的な物質に干渉する魔法です。良いですか?有機物=人体にも作用する魔法なのです。ティオさんの竜化の原点かもしれません」

 

「ほほう、竜化の大本が変成魔法とな」

 

「そうです。竜人族のティオさんだと変成魔法で背中に竜翼を出せるかもしれません」

 

「何と!?そ、それでは空を飛ぶ時に竜化せずとも飛べるという事か!」

 

「慣れも必要かもしれませんが、恐らく飛べるでしょう」

 

深月の述べる可能性に、ティオはテンションを上げて早速変成魔法を使って竜翼を生やそうとしている

 

「攻撃が当たる場所だけを竜化・・・いえ、甲殻や鱗で覆う事で防御力を底上げするという事も出来ますね」

 

「テンション上がって来るのじゃーーーー!」

 

「み、深月さん!私は!?私はどんな可能性があるんですか!?」

 

「シアさんですか?・・・・・ウサミミをもっとモフモフに出来る程度じゃないですか?」

 

「戦闘面じゃないですぅ!?」

 

「頑強な敵が現れたら、ハンマーで叩いた部分を歪にして機動力を割くとか?」

 

「いいですねぇ~!深月さん覚悟ですぅ!」

 

「正直言いますと・・・・・猪突猛進なシアさんには不得手な魔法ですよ?動いている相手を前に出来るのですか?」

 

「・・・できないです」

 

シアは少し考えた結果、変成魔法を使う事は諦めた。物体の情報を読み取り、魔力の流れを掴み、上書きや変更する繊細な操作。ゴリ押しオンリーの脳筋バグウサギには過ぎたる魔法である。一方、深月の助言を受けたティオに関しては、竜翼を出したり腕に鱗や甲殻を纏わせたり出来ていた。だが、飛ぶ事は未だに出来ない模様

 

「それじゃあ、深月さんは変成魔法をどう使うの?」

 

「そうですね・・・使い処は変装でしょうか?」

 

「あまり実用性が無さそうね」

 

「もの凄く良いですよ?魔人族に変装してフリードを暗殺するつもりでしたのに」

 

これを聞いたシア達は、想像した。深月が変装し、魔力糸で服を作って敵陣深く潜入して敵将の首を討ち取る―――もしも地球でこれが出来るのであれば、完全犯罪が出来るだろう。魂は同じでも、DNAまで変える事が出来たらと思うと物騒極まりない魔法の一つだ

 

「皆さんが何を考えているか分かりますが、必要になればやりますよ?」

 

「「「「「「やるんかい!」」」」」」

 

皆がツッコミを入れる中、深月は変成魔法を行使。干渉するのは己の身体―――胸部を小さくするという世の女性陣が聞いたら悲鳴を上げる代物だ。ほんの少しだけ小さくする事に成功した深月は、「ふむ」と呟いて元に戻す

 

「素晴らしいですね。これ以上胸のサイズが大きくならない様に変える事が出来ます」

 

「何それ羨ましい!」

 

「という事は・・・深月さんは適正があるという事なのですね」

 

「あくまで体系を少し変える程度です」

 

「もしかして・・・太ったら痩せる事が出来る?」

 

「出来ますよ?」

 

これを聞いたシア達は、絶対に極めてみせると気合を入れて変成魔法の練習を開始した。未だに目覚めないハジメ達に、深月は軽食を用意する為に外にキッチンを取り出して料理をするのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさんは身勝〇の極意を習得しました。しかし、その状態になろうとしてもなれないのである」
深月「あの感覚は凄まじいです。攻撃が分かると言ったらいいのでしょうか?・・・うん、説明出来ません」
布団「何にせよ、一皮剝けたメイドさんなのです。次回はステータスプレートを見るよ!バグレベルの進化に恐れる主人公とお嬢様」
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