ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「投稿だよ!雨が降れば執筆に時間を割けれる!!という訳で、読者の皆様方ごゆっくり」





それはそうと、たくさんの誤字報告ありがとうございます。投稿した時に言おうと思っていたのを長々と忘れてました。・・・ユルシテ





メイドはやっぱりメイドだった

~皐月side~

 

エヒトが神域へと戻った。深月が連れ去られた。いきなり失った最強戦力かつ、依存に近い状況の皐月に生まれた虚無。殺意云々よりも虚無が皐月の心を支配していた

 

深月が居ない・・・?どうして?何故?あぁ、弱いからだ。弱いから奪われるんだ

 

弱者は淘汰される。この世界では当たり前な事で、自分達がその弱者に部類される事が少なかったので自覚が足りなかった。奈落から這い上がり、他者を圧倒出来る力故の慢心が原因だ

 

「我が主は神域に戻られたので我も戻ろう。だが、その体は新しい依り代としよう」

 

アルヴが地面に伏しているユエに標的を変えた。深月の次はユエ―――、アルヴがユエの頭に手を乗せようとした瞬間、アルヴの両腕が切り落とされた。しかも、切り落とされた腕は無かった

 

「ぐぎゃあああああああ!?」

 

紐程の極細の鎖が皐月を中心に渦巻いていた。皐月を取り押さえようとしていた先兵は、その鎖に触れただけで分解された様に存在がごっそりと削り取られる

 

「"全てを無に帰せ(消えて無くなれ)"」

 

深月を失った喪失感故の感情。敵は全て消えて無くなれという意志だけの魔法に、相手は手も足も出ずに削られる

 

「イレギュラーは、我々、使徒が。これ以上、御身に傷がつく前に――」

 

「ひぃっ」

 

アルヴを護ろうとした先兵が、一センチ角の賽の目切りにされた後全てを消した。自慢の先兵が秒殺された光景に、アルヴから情けない悲鳴が上がる。皐月はエヒトの神言を跳ね除けて立ち上がり、ゆっくりと一歩一歩近づく

殺意の重圧にアルヴが背を向けて逃走しようとするものの、一歩を踏み出す前に両足を削り取られてダルマにされる

 

「・・・どこへ行く気?」

 

「っ・・・」

 

これで行動する事が出来なくなったとハジメ達は判断して警戒をしつつ他の者達に気を気張ろうとした瞬間、先兵の一人がアルヴの傍に立ってボロボロと粉になって消える。それと同時にアルヴの手足が再生し、火炎弾を放ち目くらましをする

 

「その身体を寄こせ!」

 

「っ!?」

 

ユエとの距離が指一本分程だった。ユエは、触られたが最後、アルヴに身体を乗っ取られる事に硬直してしまった。アルヴは勝ったと確信にニヤついた

 

ズッドンッ!『グエッ!?』プチッ

 

しかし、突如頭上から降ってきた者に潰されて地面のシミとなった。土煙が舞い、ハジメ達は傷だらけの体をなんとか起こして皐月の傍へと移動する。これは護られるという事もあるが、それ以上に皐月が暴走する事を防ぐ為だ。土煙が晴れた先には―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメデザインのメイド服を着た深月が居た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありえない現状に、皆が目を剥いて深月を凝視する。深月の身体はエヒトに奪われたのに、寸分違わない体の深月がそこにあるからだ

 

「さぁ、只今帰還しましたよお嬢―――『ジャララララ』ッ!?」

 

深月の帰還の報告が皐月に告げられるが、皐月の返答は全てを無に帰す鎖の一撃だった

 

「クソ神も余程私を怒らせたいのね。深月の姿でもう一度姿を現すなんて・・・・・死ね」

 

「ストーップ!私は神楽深月です!クソ神ではありませんよ!!」

 

「なら、どう証明出来ると?エヒトは深月の身体を乗っ取った=深月が体験した記憶もそのままという過程も成り立つ筈よ。それに、先兵を大量生産したエヒトが模して創った仮説の方が説得力があるわ」

 

皐月は冷静じゃないとハジメ達は思っていたが、冷静だからこその仮説が成り立っているこの状況―――皆がより一層警戒する

 

「憑依はあくまでも精神だけに作用するだけです!私の魂には影響ありません!!」

 

「それを断言すると言う事は、クソ神の当事者だけよ。消えなさい」

 

鎖が深月?に向けて殺到するが、ひらりひらりと舞う様に躱す姿に余計に皐月はいら立ちが募る

 

「話を聞いて下さいっ!」

 

「却下よ」

 

深月?の言葉に皐月は即答する。只でさえチートスペックな深月の身体を使っているので時間稼ぎでも危険な状況なのだ。つべこべ言わず、敵は排除するの一言だ

 

「な、なぁ皐月。ちょっと位話を聞いても良いんじゃねぇか?」

 

「ん・・・攻撃していない」

 

「そうですよ。クソ神だったら、深月さんの身体で人質を殺そうとする筈ですぅ」

 

確かにハジメ達の言う通り攻撃して来ないし、シアの言う事も一理あるわね。クソ神は陰湿で殺したいと思う程のアクションを起こす筈ね

 

取り敢えず攻撃を止め、鎖を出したままの臨戦態勢で待機して深月?の言葉を聞く事にした

 

「それで?どうやって自分だと証明するのかしら?」

 

「それはお嬢様の愛を語れば良いだけです!」

 

語られる皐月への親愛の言葉。ハジメ達は、「あ~、これは深月だなぁ~」と思いつつ苦笑いしているが、当の本人は真顔で酷く冷たい視線を送りながら

 

「よし、殺そう」

 

「何故に!?」

 

愛を語るなとは言わないが、皐月が何時トイレに行ったのか、あの時の下着は~等々と言わなくてもいい情報を発する口を封じなければより酷い何かを発する可能性が極めて高い

 

「さ、皐月。こ、これは必要な事だったから!大丈夫、途中で男子達の耳は女子が塞いでいるから!」

 

「・・・これだけでは駄目なのですか?」

 

「駄目よ」

 

「雫さんが隠れて購入した書籍は『君を想うあ「よし皐月、殺るわよ」・・・酷くないですか?」

 

「プライバシーの侵害って理解してる?ストーカー行為じゃない!」

 

これは酷い。対象が皐月から雫に変わり、誰にも知られたくなかった秘密が暴露されようとしていたのだ

 

「えぇ~、では雫さんの家は忍者屋敷と言った方が良いですか?」

 

そして、深月はもっと核心に迫った実話なら大丈夫だろうと思い言葉にしたが・・・

 

「・・・え?」

 

「え?」

 

深月は、雫は知っているだろうと思い告げたのだが、当の本人は何も知らないご様子だった

 

「じゃ、じゃあハジメさんがコスプレして欲しいランキング一位は―――」

 

「止めろ!それ以上カオスな空気にするな!!」

 

『いや、メイドでしょ?』

 

哀れ―――行動時間が短い雫ですら気付いたハジメの性癖。しかも、クラスメイト達の前で暴露されるというおまけ付きだ

 

「お嬢様達も鬼畜ですね。ハジメさんの性癖を皆の前で暴露するとは・・・」

 

『あっ!』

 

今更気付いたのか皐月達はハジメの方を見ると、「うぼぁ」と膝を付いてエクトプラズムが出ていた

 

「って乱されているじゃない!意識誘導もするという鬼畜さもクソ神そのものね」

 

「待って下さい!本当に待って下さい!ほ、ほら・・・私の手にはアルヴの魂が握られているでしょう?砕ける寸前ですが」

 

「あのクソ神なら眷属程度捨てるでしょ」

 

「・・・私の信用無くないですか!?」

 

「だったら、その手の魂を砕けば良いでしょう?そうすれば多少は信じ『やめろぉおおおイレギュラー如きが神に逆ら―――「ヒャッハー!汚物はキレイキレイします!」グァアアアアア』・・・・・・」

 

深月?が嬉々としてアルヴの魂を握り砕き、高密度の魔力で塵一つ残さず消滅させた後、清潔でその手を消毒した。皐月に信用を勝ち取る為ならば即実行する姿は深月その者で、これで多少なりとも信用された筈だろう

 

「次の命令はそのメイド服脱ぎなさい」

 

「えっ?その程度で良いのですか?」

 

「はいストップッ!!」

 

迷い無くメイド服を脱ぎ始めた深月?を見て中止の命令をする

 

「・・・深月である前提で話を進めるわ。あのクソ神が深月の体を乗っ取ったのにも関わらず、何故体があるの?」

 

そう、最もな疑問は其処なのだ。エヒトに乗っ取られた体は?今目の前にある体は?と皆が混乱している

 

「私は魂魄魔法を得た際に気付いたのです。体は器であると―――ならば、器を量産して破損しても新しい器に変えれば何も問題は無いと!」

 

『いや、その発想自体がおかしい』

 

倫理観ガン無視の頭おかしい発想に皆が頭を抱えた。永遠の命?無ければ作れば良いだけ!とゴリ押しの理論だ

 

「名案なのですが・・・何か問題でもありましたか?」

 

「いやいやいや!それが本当だとしてもどうやって新しい体を手に入れるんですか!?」

 

シアの言う事も最もだが、そんな問題を解決するのが神代魔法である

 

「腕一本切り落として再生魔法を行使すれば良いだけですよ♪」

 

『うわぁ・・・』

 

ハジメ達は思い出した。深月が分解魔法で消滅した拳をほんの数秒で再生させた事を。恐らく、深月は一日に一体ペースで作っているだろうと思い至った。そもそもの問題として腕を切り落とす事自体体験したくない痛みがあるし、そんな事をすれば痛みによる叫びは必ずある。だが、ハジメ達の耳にそんな音は入って来なかった=深月は叫ばなかったという理論が完成する。薬中であろうとその様な発想に至らない考えだ

 

「そして、変成魔法を手に入れる過程で派生した二重思考か鍵となります!エヒトに乗っ取られるまでは体担当と精神担当の私が居ました。簡単に説明するならば、魂が二つある様なものですね。だがしかし!乗っ取られたのは精神担当の魂です。今の私は体担当の魂なのです!」

 

「あ、あぁ~・・・精神担当の魂が体担当の魂を蹴飛ばして一時退避させたという事ね」

 

「流石お嬢様です!」

 

皐月は、取り敢えず深月が無事である事に安心しつつもう一人の深月を救出しなければいけないと考えていると

 

「後はエヒトの神言に対策してぶっ殺すだけですよ!」

 

「ちょいまてぇい!精神担当の深月が居るだろ!?」

 

「お嬢様の幸せの為に死ねるのなら本望でしょう」

 

「物騒っ!深月さんの考えが物騒過ぎる!?」

 

皐月の為ならば迷わず死を選ぶ深月だからこその選択肢だろう。だがしかし、皐月の辞書に手があるのにも関わらず深月を殺すという事は却下だ

 

「はぁ・・・こっち来なさい」

 

「膝枕ですか?添い寝ですか?」

 

「普通に来なさい!っていうか願望駄々洩れじゃない!!」

 

「コホンッ・・・失礼しました。体担当なので本能が溢れ出ているのです。精神担当がブレーキ役ですので」

 

皐月愛に溢れる深月の構造―――体担当は本能のままに皐月を求め、精神担当がそれに待ったを掛けるブレーキ役。普段から出来てはいたのだが、二重思考になってからはどうやって皐月と~をしようかと考え耽っているので危ない状態なのだ

 

「全く、油断も隙も無いわね。・・・・・深月の馬鹿」

 

「ご心配をおかけして申し訳ございません」

 

こうして深月が合流し、これからの事について話し合う事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

いやはや・・・まさか私の体が狙われていたとは驚きでした。予測で中村さん+何かしらの戦力で使い物にならなくなるかもしれないと用意していた事が幸いしました。しかし、私に隙はありませんよ?エヒトというクソ野郎には死を送り届けてやります

 

エヒト達が通った神門は何かしらの力を失ったのか、光が消えて誰も入れない状況になっていた。魔人族達は神域へ入れなかった事に絶望し、アルヴに助力を請おうとした。しかし、アルヴは存在して居ない状況に混乱し、最終手段のエヒト様と呼びながら深月に助けを請うた。まぁ、そんな状況を深月が逃す筈もなく、魔人族達を先導する事にしたのだ

 

「良いですか?私は貴方達魔人族の言うエヒトではありません。先程まで顕現していたエヒトとは邪神のエヒトルジュエと言います。己をエヒト神と偽ってこの世界の者達を騙していた。さて、何故私がそれを知っているのかと言う疑問についてですが、貴方方も見たでしょう?私の体を乗っ取って勝手にした邪神を。邪神の魂が私の身体に入った事で私の記憶が覗かれた=私も相手の記憶を覗いたという事です。魔人族の長だったアルヴは邪神の眷属―――邪神は、人族と魔人族を争わせ絶望を悦として愉快に楽しんでいるのです。ですが、遂に邪神はこの世界に興味を失い、全てを絶滅、破壊して新たなる世界へ標的を変えています。この世界に残された者達の手はただ一つです。人族と亜人族と魔人族が手を取り合って生きる世界を望んだエヒト神を滅ぼした邪神に抗うのです。それが生きる為の道であり、エヒト神が望んだ本当の真実なのです!立ち上がりなさい!天職が勇者?そんな事は関係ない!邪神に抗う為に立ち上がり、抗う者達全てが勇者なのです!」

 

エヒト=邪神だが、彼等が信奉しているエヒトとは全貌が違うので、意識誘導は容易い。嘘と事実を織り交ぜながら真実めいた事を述べて魔人族達を戦力の一部として取り込もうとする深月だった。だが、一人の魔人族が、「仲間を人間に殺された!」と大きな声で反発する

 

「仲間が人間に殺されたですか・・・人間も魔人族に殺されています。―――それがどうかしましたか?全ては邪神がそう仕向けたのです。そして、これから見せるのは反逆者と呼ばれた者が残した映像」

 

深月が空中に投影した映像は、メルジーネ海底遺跡で体験した事だ。人族と魔人族が争い、調和へと歩もうとした瞬間に人族が裏切る光景だ。魔人族の男は、「ほら見た事か!人間は裏切る!」と言って周りを同調させようとする。そこに深月は待ったを掛けて映像の一部を拡大させる

 

「さて、ここでおさらいです。この人間の王の傍に居る銀髪の整った顔に見覚えはありませんか?これは貴方達が使徒様と呼んでいた者の一人。邪神の手先の一人なのです」

 

魔人族達は驚き、近くにいる香織に憎しみの眼を向けるが、これも深月の待ったが掛かる

 

「この場に使徒が居る事がおかしいでしょう?しかし、彼女は原初の使徒です。エヒト神が健在だった時に作られた最初の一人―――何故人間達が裏切ったのか考えた事がありますか?いきなりの意識改変・・・・・似た魔法がありますよね?」

 

この言葉に、魔法を良く知っている魔人族達は気付いてハッとした表情をしていた

 

「お気付きの方も多いでしょう。あれは魅了魔法です。しかも、ステータスが軒並み高い使徒が使えば耐性の低い者達等ひとたまりもない。では、ここで話を戻しましょう。この映像で疑問に思う事は一つ。何故、誰も異変に気付かなかったという事です。その答えは原初の使徒です。彼女はエヒト神の為に戦い、敗れ、邪神の遊び道具として利用されました。おや?一部の方達はお気付きになられましたね」

 

魔人族達の中に、表情が険しくなった者達がちらほらと現れ、深月が彼等を指す。気付かない者達は、「どういう事だ!?」と矢継ぎ早に質問している所で深月が答えを告げる

 

「邪神の遊び道具となる=言い伝えられたエヒト神の使徒を瓜二つの存在を作った。瓜二つの存在ならば、怪しまれず、堂々と歩き、魔法を掛けれる。何せ彼女等は信奉するエヒト神の使徒だと疑われずに済むからです。そして、お嬢様の隣に居る彼女は原初の使徒―――とはいえ、邪神に弄られてただ動くだけの人形となってしまいました。最初は敵対しましたが、彼女の遺言、「彼女の為に体を」を聞いて使わせていただきました。原初の使徒の体ではありますが、仲間の魂を入れています」

 

邪神によってこの世界に転移させられ、帰る為に戦う者と他の手段を探す者、それを邪神が面白くないから排除する選択をし、この世界は飽きたので転移させられた者達の世界へ干渉するという内容だ

 

「皆が邪神の被害者です。とは言え、直ぐに信頼しろ等とは言いません。自分達が生き残る為には種族全体が手を取り合って抗う他ないのです。それを理解せず、自分以外は殺してでも生き永らえるという選択をする馬鹿が居ますが、その者達は永遠に邪神の駒となります。飽きれば殺されるのです。後者の方が生きるというメリットが大きいですが、何時殺されるか分からない。それならば、邪神の眷属とはいえ殺す事が出来る我々と一緒に抗い、後世に語り継がれる人になりませんか?邪神に立ち向かった英雄、勇者と呼ばれる事は間違いありません!長い時を反逆者と呼ばれた彼等も未だに呼ばれているでしょう?彼等もまた英雄、勇者なのです!家族を、友を、恋人を護りたいと言うならば抗え!では、私からは以上です。・・・・・あぁ、言うのを忘れていました。抗うのであれば、それ相応の力を持たせるのは当たり前ですよ?」

 

深月の演説も終わり皐月達の元に戻ると、魔人族の青年の一人がハジメ達に近づき声を掛ける

 

「・・・あんた達は抗うのか?」

 

「当たり前だ。ぶっ飛んだ考えで一人は大丈夫だったが、もう一人が捕らわれているんだ。邪神を倒して取り戻す―――それだけだ」

 

「この世界の次は私達の世界・・・逃げられないのであれば、戦闘能力の高いこの世界の方が良いわ。それに、貴方達も英雄や勇者として語り継がれる方が良いでしょう?」

 

嘘も方便・・・地球の方が色々と戦力が高いが、アーティファクトを渡した後を考えると面倒くさい事この上ない。だったら、この世界でブッ倒して神殺しの偉業として称えられ、人族、亜人族、魔人族の平和の架け橋をするのも悪くない

 

「なら、俺は抗おう。邪神に抗う為の力をくれるのなら多少の危険も承知しよう」

 

その青年に続き、また一人、また一人と魔人族の者が志願する。そして遂には絶対に戦えないであろう子供や老人は参加しない方向へと話が纏まった。そして、人族であり、王族のリリィが魔人族と共闘して邪神を打ち倒す為の架け橋をするという宣言をする

 

「さて、先ずは現状の再確認だ」

 

「邪神がもう一人の深月を乗っ取った。そして、この世界には飽きたので全てを破壊して絶滅させた後、地球へ標的を変えるという事で間違いないわ」

 

「恐らく、地球で最初のターゲットとなるのは私達の親族でしょう」

 

ハジメ達は深月の予測を黙って聞く。いつも的中させているので今回も外れる事がないと理解している。それを知らないクラスメイト達と畑山がどうしてなのかと理由を尋ねる

 

「邪神は絶望させて悦に浸る。地球の親族たちを集め、「保護をしておいたぞ」と御託を言い、死体を並べて絶望させ、地上に戻して反乱を待ち構えるでしょう」

 

『うわぁ・・・』

 

またしても皆の声が重なる。あのエヒトが顕現し、話し方や佇まいや様子を見ても分かり易い。クラスメイト達の重苦しい雰囲気が漂う中、シアは気にせず発言する

 

「もう一人の深月さんを取り戻すには、あの神域に行かなければいけません。そして、魔人族さん達は神域へ繋がる門に入れなかったと言っています。これはどうやって辿り着いたらいいのでしょうか?」

 

「そうね。・・・こっちで神域へ行く手段を別に手に入れるか、あるいは、三日後の大侵攻のときに出現すると予想される神門を突破出来る手段が必要だわ」

 

「ふむ、直接行く方法としては・・・ご主人様よ。やはり、クリスタルキーは・・・」

 

ティオがハジメに尋ねると、ハジメは溜息を吐きながら首を振る

 

「ダメだ。宝物庫と一緒に、な。確かに、あれがあれば神域へ直接乗り込むことは出来るだろうが・・・この三日で万全の体調を整える事がキツイな。人族、亜人族、魔人族の兵士全てにアーティファクトを作らないといけないから駄目だな」

 

「あ、それなら良い方法があるよ!刹破っていう時間を引き延ばす魔法が使えるよ!」

 

「時間を引き延ばすのね。・・・深月、どう?」

 

「あ、私じゃなくて深月さんに聞いちゃうんだ」

 

香織は出来ると意気込むが、魔力量が桁違いに多い深月なら引き延ばせる時間がより長いと考えて尋ねる

 

「そう・・・ですね。一ヵ月程伸ばせるかもしれませんね」

 

「よっしゃ!やるぞ!!」

 

「そうなると、各自別れて事に当たった方が良いわね」

 

「ティオ、竜人族の里へ行って戦力補充だ」

 

「了解じゃ!この世界の命運が掛かっているとなれば必ず動くのじゃ!」

 

「シアはミレディの協力を取り付けて」

 

「合点承知ですぅ!」

 

「ユエは私達と一緒にクリスタルキーを作るわよ。もし直接乗り込めないのであれば、門を開けるだけでも十分よ」

 

「ん、頑張る!」

 

ハジメ達は一分一秒も惜しいのでさっそく行動を開始する。だが、それに待ったを掛けるクラスメイト達

 

「ちょ、ま、待って!私達も戦うの!?」

 

「嘘だろ南雲?嘘だよな?」

 

「死ぬかもしれないんだぞ!?」

 

「地球で戦った方が勝ち目があるだろ!?」

 

皆が地球の方が技術力が優れているのでそっちが良いだろうと言うが、皐月がそれを封殺する前に畑山が待ったを掛ける

 

「皆さん、静かに!騒がないで下さい!落ち着いて!」

 

「で、でも愛ちゃん先生・・・」

 

「いいですか、皆さん。気持ちは凄く分かりますが、落ち着いて下さい。邪神が言っていた事が本当なら、地球で戦った方が危険です!」

 

皆がどうして?と理解していない様子に深月が追加を述べる

 

「エヒトはこの世界で先兵を下ろす場所を神山に指定しました。これは現状で神山のみが愉悦になる事を述べているのです」

 

「神楽さんの言う通りです。拡大する可能性も否めませんが、地球では人口密集地域からと言う訳ではありません。いきなり全土を対象にする可能性が極めて高いのです。そして何より、南雲君と高坂さんが作るアーティファクトを行き渡せる事が出来ません!それに、いきなり渡されてもそれを解析しようとするでしょう。それは時間の無駄です。ならば、アーティファクトの扱いに長けたこの世界の人達が何手先も行けます。空を飛ぶ敵に対しては厳しいですが、落ちた兵士を処理するなら対人戦闘に長けているのも長所なのです」

 

「さて、ここで追加です。もし、地球で邪神を倒せたとしましょう。しかし、その場合はアーティファクトを狙った出来事―――戦争、テロ、人体実験等様々です。歴史上最悪の技術を広めた者達として語り継がれ、事件が横行します。そんな中心人物になりたいですか?」

 

「神楽さんの言っている事は可能性ではありますが、必ず起こるでしょう。只でさえ異世界から帰って来たというファンタジーな体験をした私達を世界が放っておく事はありません」

 

「監視・・・もしくは拉致の危険性があります。帰還だけでこれだけの問題が起こりうるのです。アーティファクトを広めただけで世界中でどれだけの被害者が出るのかは予測出来ません。それこそ、世界最後の日と言われても納得出来ます」

 

「えっと~、もの凄く現実味を帯びた事を言わないで下さい・・・」

 

「こうでも言っておかなければ覚悟が決まらないでしょう?幸い南雲さんとお嬢様以外のクラスメイトは全員が戦闘職。しかも、流されたとはいえ全員が戦争に参加すると言っていますので覚悟を決めなさい」

 

今なら私の宝物庫に先兵の死体が二体入っているので武器を刺すサンドバックにしましょう。人形相手なら多少の忌避感を麻痺させる事が出来ますしね?

 

モブ生徒達も戦闘に強制参加させる事が決定し、ハジメ達も何かしらの宣言をして気合を入れていた

 

「あぁ、そういや先生。いっちょ頼みがあるんだ」

 

「えっ?た、頼みですか!?」

 

ハジメの指名に畑山がビックリしつつ何処か期待している様子を見て、クラスメイト達は「マジかよ・・・愛ちゃん先生までだと!?」やら「ドンファンよ!リアルドンファン!!」等々と口漏らす

 

「あぁ、扇動ですね」

 

「せ、扇動!?」

 

「豊穣の女神として事実を述べたら良いの。クソ神の記憶を覗いたという深月の証言を確証に変える事が出来るわ」

 

「さぁ、立ち上がれ人々よ!善なるエヒト様を騙り、偽使徒を操り、今、この世界を蹂躙せんとする悪しき偽エヒトの野望を打ち砕くのだ!この神の御使い豊穣の女神と共に!って感じでな。頑張れ」

 

「頑張れ、じゃあないですよ!なんですか、その演説!よくそんな言葉がスラスラと・・・南雲君の方が余程扇動家じゃないですか」

 

「いやいや、短時間で魔人族達を纏めた深月よりかマシだって。それに、撒き散らした種が芽吹きそうなんだ。なら、水をやって成長させて、うまうまと刈り取ってやればいいじゃないか。作農師だけに」

 

「誰が上手い事言えと・・・」

 

「いいじゃない、散々甘い蜜を吸って来たこの世界の住人達を利用出来るチャンスよ。ありのままの事実を伝えて支持される―――フフフ、一大宗教の出来上がりね!」

 

「高坂さんまで!!」

 

ハジメはともかく、皐月も畑山の豊穣の女神として祀り上げ様とする。発言力もあり、信頼高く、信憑性を確固たるものにする為ならば致し方ない事なのだ。戦力は多ければ多い方が良い

 

「人類総力戦となるべき戦いだ。戦力を集めても烏合の衆じゃ意味がない。強力な旗頭が必要なんだ。それには一国の王くらいじゃ格が足りない。出来るのは愛子先生だけなんだ。いっちょ頼むよ」

 

「・・・」

 

「・・・ハジメ、後でお話ししましょうね?」

 

「マジか?」

 

ハジメが無自覚で畑山を口説いた事に反応した皐月が、後程お話しと言う名のお説教をする事が決定した。そして、口説かれた本人はと言うと、何処かソワソワしながらハジメに再度尋ねる

 

「な、南雲君。今、最後の方、なんて言いました?」

 

「ん?いっちょ頼むって・・・」

 

「い、いえ、そうではなく・・・私の事、あ、愛子先生と呼びませんでした?」

 

「・・・何か、問題が?」

 

「い、いえ。南雲君は、いつも"先生"とだけ呼ぶので・・・」

 

「そうだったか?」

 

首を傾げるハジメと、何かを強請る様な畑山を見た者達は、何を期待しているのか理解した

 

無自覚にフラグを建築するハジメさんはプレイボーイですね。夜の魔王は流石と言うべきか予想通りと言うべきか・・・節操なしと言うべきでしょうか・・・」

 

「うぉい!」

 

暖かい空気が一気に冷め、歯軋りする愛ちゃん親衛隊

 

「南雲君、もう一度お願いします」

 

「・・・愛子、頼む」

 

「っ!!はい!任せて下さい!もうバンバン扇動しちゃいますよ!社会科教師の本領発揮です!」

 

もの凄く張り切っている畑山を見て、ハジメは溜息を吐きながら項垂れる。要するに、ハーレムを作るのは良いが、ちゃんと条件を見つけさせる事が大事・・・後腐れが無い様にアフターケアもハジメ次第という事だ。これで曖昧なままの関係を続けたのなら、皐月の雷がハジメに落ちるだろう

 

「ご、ごほんっ!な、南雲さん・・・わ、私も頑張りますね!」

 

リリアーナも畑山同様、期待した様子で目をキラキラさせている

 

「・・・ああ、頑張ってくれ、姫さん」

 

「・・・頑張りますね!」

 

「ああ」

 

「頑張りますね!」

 

「・・・」

 

「頑張りますね!」

 

「・・・」

 

「が、頑張ります、ね、ぐすっ」

 

「・・・・・頼んだ、リリアーナ」

 

「・・・リリィ」

 

「ぐぅ・・・頼んだ、リリィ」

 

「はい!頼まれました!王女の権力と人気を見ていて下さい!民衆なんてイチコロですよ!」

 

王女としてそれはどうなのかと言いたいが、もっと民達を大切にしろよとツッコミたい。教師の次は王女か!とクラスメイト達はザワザワとしており、彼等がハジメを見る目が畏怖に満ちたものだ

 

「目下の最優先事項は・・・オリジナルの深月を取り戻す事だな」

 

「中村さんとお花畑はやっちゃっても問題ないわね」

 

「いやいや!光輝達は俺達がどうにかするから待ってくれ!」

 

「鈴も恵理をどうにかするから待って!」

 

坂上と谷口は待ったをかける。しかし、この現状でこちらに引き込める可能性はゼロに等しいだろう。とはいえ、それは中村が居たらの話である

 

「勇者(笑)については・・・まぁ、それでもいいでしょう。ですが、中村さんについては論外です。説得するのであればして下さい。しかし、今まで散々見逃がしたのですから決裂したのであれば殺す覚悟を決めなさい」

 

「・・・うん」

 

流石の谷口も深月の命令に渋々了承した。寝返ってからの中村の行動はとても赦されるものではない。クラスメイトを殺し、王族、騎士、メイドを手にかけ、人質にしたりユエ達に攻撃したりと取り返しのつかない事を沢山しているのだ

 

「役割分担だが・・・クソ神は俺、皐月、深月の三人。フリードは、ユエ、シア、ティオの三人。中村と天之川が坂上と谷口だが・・・・・どうやってもやられる未来しか見えねぇな」

 

「少し失礼します。神域へ突入する者としない者の選別なのですが、香織さんと雫さんは地上でしょうか?」

 

「困ったわね。敵に高ステータス持ちが二人だから戦力を分散しなければいけないわ」

 

「香織が神域に入るのは止めておいた方がいいだろう。あそこはクソ神が支配する空間―――どうされるか分からねぇ」

 

香織の身体は先兵であったノイントの身体だ。遠隔操作で活動停止に陥るかもしれない事から却下で、回復要員が抜ける事もあるので無茶が出来ない。それに、地上での移動回復要員として活動した方が良い印象+相手に膨大な貸を作る事も出来るのだ

 

「雫はどうする?香織と一緒に地上班で行く?」

 

「いいえ、私は光輝の馬鹿をぶん殴りに行くわ。あのご都合解釈を育てた事に私自身の負い目があるの。それに、私はハジメの女だと理解させるわ」

 

「・・・ま、まぁ頑張れ?」

 

「ふむ、雫さんがそちらに行くのでしたら私もそちらの方が良いでしょうか?」

 

「深月さんは刹破?でおおよそ一か月程伸ばせると言ったわ。なら、その場所に私も行って深月さんとマンツーマンでステータスの底上げをしたいわ。私の取り柄は速さと剣術―――となれば、中村さんを相手にするわ」

 

「おいおい、中村のステータスは100000だぞ?」

 

中村のチートスペックに比べ、雫のステータスはその十分の一・・・あっという間に倒されるだろう。現に、先の乱戦で時間稼ぎすら出来なかったのだ

 

「確かに、私はさっきの攻防で手も足も出なかったわ。でも、深月さんとマンツーマンで特訓していたからか動きだけは見えていたのよ。後の問題は体が追い付くかだけなのよ」

 

「いや、それでも無謀に近いだろ。却下だ却下」

 

「これは深月をそちらに向かわせた方が良さげね」

 

ハジメと皐月は雫が中村と相対する事は無謀だという事で却下するが、ここで深月が手をポンと叩いて妙案を思いついた

 

「私が使っている装填をすればいけるかもしれませんね」

 

これを聞いたハジメ達は、「それは流石に無理だろ」と突っ込みを入れて作戦を立てようとする

 

「深月さん。その装填というのは王国で使った技能?」

 

「技能もそうですが、これは雫さんだからこそです」

 

「・・・深月、それは雫が装填を出来るという事?」

 

「可能性は低いですが、この場にいる者の中で一番高いという事です」

 

「それなら身体能力の高いシアは?」

 

「大雑把なので却下です。あれは少しでも扱いを間違えば反動が大きく、動けなくなります」

 

装填はハイリターン、ハイリスクの諸刃の剣でもある。しかし、完全に使いこなせたら最強に近いブーストでもある。そして、何故シアが出来ないかという点だが、それは普段の特訓で観察しているから出来ないと分かっているのだ

 

「感度が高い雫さんだからこそ提案しているのです。ハジメさんとお嬢様とは違い、あの短時間で魔力の流れ、発生源の探知が出来ていますよね?」

 

「・・・確実にとは言えないわ。ただ、なんとなくそこにある?と疑問に思う程度よ」

 

「魔力の掴みは上々、残るは気力・・・気功術ですね。雫さんに関しては、栓を引き抜いても大丈夫だと判断しました。よって、装填が出来る可能性があります」

 

「と、いう訳よ。無謀かもしれないけれど、可能性があるならやるわ」

 

「中村さんは絶対に装填は出来ないので安心して下さい。気功術の栓抜きを強引にすれば確実に何処かが壊れます。修復すら不可能、魂に消えない傷を負わせるような物です。それに、知識だけのエヒトにそれは無理です」

 

「どういう事?エヒトは深月の記憶を覗き見ているのよ?可能性がなくはないでしょ」

 

「知識と体験は違いますから」

 

これに疑問を覚えたのはもちろん皐月である。記憶を覗き見る事で、こういった事が出来ると理解をしているエヒトなら可能だと思う。だが、それは知識だけであって体験ではない。完成後の料理絵を見ず、材料を用意されただけでそれが出来る事はほぼ不可能。魂に刻まれた体験だからこその技である。しかも、体担当の魂がこちらにあるので確実だと断言出来るのだ

 

「ってことは、知っているだけで教える事は出来ないのか」

 

「そして、序盤でエヒトと相対するのはハジメさんとお嬢様のお二人だけでも十分だと思います。慢心しているからこそ付け入る隙があり、攻撃も弱く、力だけで解決しようとする。技はありません」

 

「・・・なるほどね。もし、そうでない場合も対処法は幾らでもあるし、深月の予想通りなら十分ね」

 

先ほども言った通り、知識と体験は違う。深月の技能の殆どは技に真価があり、力だけで言うなら限られた物だ。深月は魔力糸を中心に戦っていた事から、強く、手っ取り早いと思う者が殆どだろう。だが、それを操作し、戦況によって使い分けるのは技術だ。力だけの技能なんて0と100の両極端な使い方―――以前も説明した通り、技能を使っているだけである。引き出しを多くするのは理解していなければいけない

 

「クソ神は、俺と皐月が対処する」

 

「フリードは、ユエとシアとティオに任せるわ」

 

「中村と天之川は、深月と雫と坂上と谷口の四人だ」

 

「香織さんは地上で攻撃も出来る移動ヒーラーとして活躍して下さい」

 

他のクラスメイト達は地上担当。役職も決まり、ハジメ達はそれぞれ行動を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「倫理観ぶち壊しです」
深月「残機は沢山あった方が安心出来ます。マリ「アウト!」・・・ん"んっ!配管工さんと同じ様なものです」
布団「とはいえ、今のメイドさんの残機は0です」
深月「氷雪洞窟で魔法が一段階昇華した事で出来ただけですからね?そんな・・・魂魄魔法を手に入れてからはしませんよ~」
布団「決戦に向けてはするんでしょ?」
深月「当り前じゃないですか♪とはいえ、精神担当が居ないので無理ですが・・・」
布団「よかった・・・そこまではぶっ壊れじゃなかった」
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