ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「お待たせしました」
深月「もうそろそろ本格的に執筆してくださいね?」
布団「がんばりゅ」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」






最終決戦
メイドは限界の更にその先を求める


~深月side~

 

緑光石が照らす洞窟―――ハジメ達はオルクス迷宮へ来ていた。道中に採れる素材を出来るだけ沢山採取して、来る決戦の日に向けて準備を始めた

 

「ここが皐月達が挑戦した本当のオルクス迷宮・・・表層が可愛く見えるわ」

 

襲い掛かる魔物を冷静に対処する雫が口漏らす。魔物肉を食べてドーピングした体の本格調整にはもってこいの場所だ。雫が魔物を屠る中、深月はピッケルを片手にてきぱきと鉱石を掘り集める。およそ一時間で宝物庫二個分の素材を回収し終え、ゲートホールで解放者の拠点へと帰還する

 

「深月達も帰ってきたわね。素材はどれ程採れたの?」

 

「宝物庫二つ分です」

 

「上出来よ深月」

 

ハジメの宝物庫の素材を合わせると、合計三つの宝物庫の中にぎっしりと素材が入っている事になる。大量の武器を作るならこれでも足りないかもしれないが、追加で採ればいいだけの事だ。深月ならば半日あれば三つの宝物庫を満タンにする事も不可能ではない

 

「それじゃあ香織、刹破をお願い。魔力タンクの深月が居るから時間はかなり延ばせる筈よ」

 

「わ、分かった。やってみるよ!」

 

香織が詠唱しようとするが、深月がそれに待ったをかける

 

「駄目ですよ。一部屋だけに魔法を使うよりも、この拠点全てにしましょう。衣食住が充実し、モチベーションの維持は重要です。些細なミスも発生せず、何かしらのヒントが浮かんでくるかもしれませんし、雫さんの強化も広い場所で行いたいです」

 

これを聞いて、香織の頬が引き攣る。初めて使う魔法を広範囲でとなるとかなり厳しいが、それゆえのメリットも有り、プレッシャーが掛かる。そして何よりも、深月の笑顔で全てを察した。失敗すればデスマーチの如く成功するまで何度もやり直しがあると

 

「ぜ、全力でやるよ!!」

 

「それじゃあ、私とハジメは付与先の製作だけど・・・これは砂時計風にする?」

 

「砂時計の形は壊れる可能性もあるから、正八面体でいいんじゃねぇか?台座を作って嵌めれば落下する心配も無いし、取り外しも簡単だ」

 

「後の再利用を考えたらそれも良いわね」

 

ハジメは神結晶を正八面体に加工し、皐月は台座を製作する。互いに確認しあうまでもなく、ぴったりと嵌る技術は凄い。互いが何をどう思っているのかをよく理解しているから出来る芸当だ

 

「それでは香織さん、準備は出来ましたか?私が中継役になる事で香織さんの刹破を受け止め増幅させてます。香織さんがイメージするのはこの空間全てを包む事です」

 

「スゥー、ハァー。―――刹破!」

 

香織の魔力はチート級にあるが、深月に言われるままのイメージで刹破を行使すると魔力が一気に八割消費して、限界ギリギリまで時間を延ばす。しかし、魔法を行使して感じるのは時間がさほど伸びていないのだ。ギリギリ限界まで魔力を注ぎ込んだにも拘わらず、延びた時間は感覚で一日程度・・・歯がゆさを感じつつ、香織は深月に全てを託す

 

「ごめん!多分私だと一日が限界っ!」

 

「限界まで注ぎます」

 

香織に渡された刹破に深月が魔力を込める。ぶっ壊れの魔力量とチート技能の節約で消費量が軽減しているとはいえ、深月の魔力はゴリゴリと削られる。魔力枯渇寸前まで注がれた魔法は、まるで嵐の様に粗ぶっている

 

「限界です・・・。当初は一か月と言いましたが、それ以上に引き延ばせたと思います」

 

「時間は長ければ長い方が良いわ。どれだけ延びた?」

 

「倍の2ヶ月です」

 

「最高だな」

 

「アーティファクトを作るだけでなく、修行に時間を割く事が出来るわね」

 

刹破を付与した神結晶は淡く輝き、拠点を何かが包み込んだ事に何となくではあるが分かる。ハジメ達は拠点の中心地に神結晶を設置し、壁端まで移動して効果があるかどうかを確認しても何かから出た感覚はない。念の為に皐月の魔眼で確認をしても問題無しの保証もある

 

「時間が延びたとはいえ侵攻の時間が短くなる可能性もあるから迅速に量産するぞ」

 

「対空迎撃装置の製作が急務ね。弾丸は一発作れば複製錬成をすれば時間ロスも少なくなるから・・・地上班の戦力上昇が必要ね」

 

「それでは、ゲートホールをお借りして調達しましょう」

 

『え?』

 

ハジメ達が、「どうやって?」と質問する前に深月はゲートホールで転移する。ここでハジメ達の思った事はただ一つ

 

『・・・何を調達するんだ?』

 

少ししてゲートホールが開き、深月が現れる。そして、その後ろからぞろぞろと王国で働く若いメイド達が連行されてきた。これを見たハジメ達は、手を叩いて思い出した

深月の技能の一つ―――戦術顧問。派生技能でメイドと出ている事から、一番効果が出る者達が選ばれたのだろう。何故若いメイドが多いのかという点だが、これは戦闘をする為の人員なので高齢のメイドは厳しい事から除外したのだろう

 

「さて、これから貴女達には戦争に向けて戦闘能力を身に付けて頂きます」

 

いきなり連行されたメイド達は見知らぬ場所に連れられた事にオロオロしているが、その中の一人が深月に、「天職はありません」と告白する。しかし、そんな事はどうでもいいと深月は宣言する

 

「天職の有無は関係なく貴女達に拒否権はありません。それに、私の天職はメイドです」

 

連れてこられたメイドの皆が驚愕する。王国襲撃の際に戦っていた姿を見ていたからこそ、天職は戦闘職だと思っていたのだ。そんな彼女達に深月はステータスプレートを見せると、皆がガン見する

 

「あ、あの・・・このステータスプレートは壊れていますよね?そうですよね!?」

 

深月はにっこりと微笑み、メイド達の逃げ道を塞ぐ

 

「逃げたければご自由にどうぞ?ですが、ここは前人未到のオルクス迷宮の最深部です」

 

これを聞いたメイド達はゴクリと喉を鳴らす。逃げ道は最初から用意されておらず、生きる為には戦闘能力を付ける他ないとようやく理解する。そんなメイド達の中に、一人だけ―――覚悟を決めている者が居た。それはリリアーナ付きのメイドのヘリーナだ

 

「貴女達、覚悟を決めなさい。神楽様のステータスは異常ですが、これは確信に変わりました。非戦闘職であろうと、努力次第で戦闘職よりも強くなれると言う事です。恐らく、技能の戦術顧問に派生技能としてメイドがある事から選別されたのでしょう。この場にいるメイドの私達ならという事です。最近私が一般兵士よりも強いと噂で知っていると思いますが、それは神楽様の訓練を少しだけ受けたからです。分かりますか?たった数日で、ですよ?」

 

「この空間は特殊で、外の一日がここでは二ヵ月です。メイドの一人一人が帝国の皇帝以上の戦闘力を持てます。もし、この戦争に勝利すれば、王国でメイドを続けても良し、他国でメイドをしても良し、冒険者になっても良しと選択肢は広がります」

 

深月とヘリーナの言葉を聞いたメイド達は、戸惑いつつも徐々に覚悟を決めつつあった。これには二人もにっこりしていた

 

「・・・俺、このメイド達がどこまで進化するのか気になるな」

 

「・・・私もよ」

 

「・・・きっと超人メイドになる」

 

「・・・戦闘メイドだよ」

 

「・・・私達より強くならないわよね?」

 

深月が本格的に指導するメイドがどれだけ強くなるかは不明だが、短期間でも成長した人物が二人・・・遠藤とヘリーナである。遠藤は元々が原石だった為、戦闘能力が向上するのは当たり前だ。しかし、ヘリーナに関しては0からのスタートだが、王国の一般兵士よりも強くなっているという事だ。これは深月が言う通り、メイドの一人一人がガハルド並みの力を有する可能性もあるだろう

 

「先ずは雫さんからです。栓を外しますので激痛が伴いますが、直ぐに収まります。では、いきますよ」

 

「えっ!?ちょっとま―――」

 

深月は雫の返事を待たずに針を腕に刺して抜いた。雫は、針に刺された時は全然痛くなかったのだが、針が抜かれたと同時に全身に電気ショックを浴びせられたかの様な痛みが襲い、床にのたうち回る。魔物肉を食べた時の激痛に比べればマシな部類だが、それでも痛い

 

「いっぎぃいいいい!」

 

「歯を食いしばってファイトファイト、数分もすれば痛みは無くなりますので大丈夫ですよ」

 

香織が、「せめて待ってあげようよ」と言うが、深月は、「過度に力が入っていない方が痛み少ないのです」の言葉にそれなら仕方がないと言いくるめられた。およそ五分―――痛みがようやく収まったのか、雫は大の字になったまま深月にジト目を向ける

 

「待ってって言ったでしょ」

 

「早く習得するならばあれが最適です。余計な力が入っている程激痛の時間は長く、雫さんに割く時間がもったいないです。さて、次は気を感じる所から入りましょう。座禅をして瞑想します。体の中から熱を持った何かを感じれば上々です。こればかりは個人の感覚なので時間が掛かります。その間、私はメイド達をlunaticで指導します」

 

これを聞いたハジメ達は、メイド達に黙祷した。自分達ですら受けた事がない難易度lunatic―――常人レベルの難易度設定だと思うが、それでもキツイ事に変わりはないだろう

 

「先ずは体力測定として、走りましょう。後ろから黒刀を持って追いかけますので全力でお願いしますね?」

 

「全員走りなさい!!」

 

ヘリーナの合図と共に、深月も行動開始。取り合えず、メイド達でも動きがギリギリ見える範囲で一閃。攻撃対象となったメイドは、悲鳴を漏らしながら手で頭を押さえながらしゃがむ事で攻撃は当たらなかったが、髪がほんの少し切られていた

 

「は・し・り・な・さ・い」

 

『ヒィッ!?』

 

メイド達は蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げるが、深月は全力で逃げないと攻撃が当たる範囲で近づいて攻撃する。悲鳴が至る所で上がる光景を見たミュウは、「深月お姉ちゃんコワイ・・・」と口漏らす程だ

 

「ミュウさんも良い子に育ちましょうね?でなければ、長いなが~いお説教をしますよ」

 

そんなミュウに追い打ちを仕掛けるのも深月クオリティー。メイド達にやっている事はしないが、こんこんと叱られるのは目に見えて分かる。ハジメ達に涙目で訴えるも、逆に頭を撫でられて、「良い子にしていたら大丈夫だ」との事だった。ハジメ達も深月のお説教されるのは嫌で、無視しようものなら首根っこを掴んで強制的に回収―――もしくは、ごはん抜きという可能性もある。色々と握られている状態の皆には逆らう術は殆ど無い

深月とメイド達の危機一髪鬼ごっこは終わり、バケツに胃の中身をぶちまけている者や大の字で倒れ伏している者達と様々だ。特に、ヘリーナは他のメイド達よりも強くなっているので、徹底的に追い回されたのは言うまでもないだろう。深月は、メイド達のステータスプレートを見ながら強化する部分をメモする

 

「なるほど・・・全体的にスタミナが第一優先ですか。デスマーチ近接格闘術が近道ですね」

 

メイド達は深月が何を言っているのか分からないが、絶対にヤバイ事を口にしているとだけ分かり顔が青褪める

 

「それでは、全員立ちなさい」

 

深月の威圧を込めた睨みにメイド達は反応し、痛む体に鞭を入れて立ち上がる。生まれたての小鹿の様に足がプルプルと震えており、まともに動く事が出来ない。そんなメイド達を見つつ、深月は香織に回復魔法を頼んだ。回復とは言え、それは筋肉の回復―――超再生を狙った回復行為だ。体の痛みは取れないが、動かす事に問題はない

 

「それでは、このまま近接格闘術を仕込みます。これから私はヘリーナさんとマンツーマンで行うので、他の者達はそれをしっかりと見学しましょう。そうする事で、何がどうなっているのかを少しばかり理解する事が可能です。では、始めましょう」

 

「神楽様、よろしくお願いします」

 

深月は無手の自然体で、ヘリーナはナイフを片手に構える。表情は真剣で、すり足で横に移動したり、ナイフの持ち方を変えたりとしている。戦闘経験皆無のメイド達はヘリーナが何故そういった事をしているのかを理解出来ず、首を傾げている。その反応は当然で、戦いにおいて一動作で隙を生み出すのは危険行為だが、対処出来るだけの力があればそれはアドバンテージである。そして、逆にその動作で相手の動きを乱す事も出来るのだ

 

「・・・むぅ、なかなか踏み込まない。でも、私でもそうする」

 

「うぅ・・・私は魔法で牽制攻撃しちゃうな」

 

ハジメと皐月はアーティファクト製作で部屋の中に籠っており、手持無沙汰のユエと香織が二人の様子を見て自分ならどうするかを呟く。ユエと香織は強力な魔法を行使出来るので、それで自分に有利な駒の動かし方をする事を学んでいる。何故攻撃せずに様子を見たり牽制程度で留めるかというと、進化した深月の動きをしっかりと見ていないからだ。たとえゆっくりでも、第三者目線からであれば体の動かし方で可動域や反応速度を見る事が出来るからだ

 

「ユエ、香織、そろそろヘリーナさんが動くわよ」

 

瞑想で目を閉じているのにも関わらず、雫はヘリーナが動くと告げる。二人は目を開けてる?と思いつつ振り向くが、雫は背を向けていて完全に見る事は出来ない。二人は勘で告げたのかと思ったが、雫の言葉から少ししてヘリーナが大きく動いた

 

「ハァッ!」

 

ベタ足から一瞬で深月に肉薄するヘリーナを見て、二人は普通の兵士よりも早く動いているヘリーナに驚愕した

縮地―――戦闘職が重宝する技能を何故ヘリーナが使えるのかと言うと、深月との訓練をした際に一度だけやり方を教わって自分の技術まで昇華させたのだ。努力が実を結んだというのはこの事だ。だが、如何せん相手は深月であり、その程度はお見通しだ

 

「縮地を自分の努力だけで身に付けましたか」

 

ヘリーナは深月の肩に向けて刺突を放った。片腕で軌道を逸らされるが、それを見越して手首を曲げて頸動脈を狙った切り返しへ変更。これならば片腕の邪魔は入らないので弧を描く様にナイフの刃が通るが、深月は軌道を逸らした腕をヘリーナの肩に振り下ろす。・・・所謂空手チョップだ

 

「い"っ!?」

 

関節部を狙い撃ちされたヘリーナは、痛みで一瞬だけ動きが鈍る。深月は、その隙に半歩後退してナイフをやり過ごし、狙い撃ちした肩を掴んでヘリーナを90度回転させて膝の後ろを蹴って体勢を崩させて右腕で首を絞め、左手でナイフを持っている手を掴んで完全拘束した

 

「終わりです。これで右腕に力を入れれば絞め落とされるか、首の骨を折るの二択があります」

 

「・・・ありがとうございました」

 

深月とヘリーナの訓練が終了し、メイド達はヘリーナの強さに呆然としていた。だからこそ、自分達が強くなれる可能性が大きいと確信に変わった

 

「さて、先程の動きを観察した貴女達に基礎を教えます。ちなみに、応用は基礎がしっかりと出来るまでは教えません」

 

深月はメイドを一人一人呼んで動きや姿勢を体験させた後、一度だけマンツーマンを行った後、次は彼女達自身でマンツーマンの訓練をさせる。そして、次は雫についてだ。先程のヘリーナが攻撃を仕掛けると気付いた言葉を聞いた時に、気の流れが変わった事を感じたのだろう

 

「次は雫さんです。気の流れはおおよそ理解しましたね?」

 

「これが神楽さんが見て、感じている世界なのね。集中すればする程、分かる・・・と言っても、気功が分からない人からすれば何を言っているの?って思われちゃうわね」

 

「そんなに凄いの?」

 

「そうね・・・香織、髪の毛にゴミが付いているわよ」

 

「え、ほんと?し―――」

 

香織は雫にゴミを取ってもらおうと頼む前に、雫はゴミを取った

 

「香織、取れたわよ。・・・しかし、本当に便利ね。集中するだけで相手の感情がオーラで見えるなんて・・・深月さんが鋭いと言われる所以はこれなのね」

 

「ふむ、その様子なら限界突破を取得する時間を省けますね」

 

「そうなの?」

 

「限界突破が要らないって凄いね!」

 

「気力操作と魔力操作の二つが両立している事が大前提の技です。名は咸卦法(かんかほう)です」

 

ハジメと皐月は、「あぁ~、マギア〇レベア使える深月なら習得していても不思議じゃないな」と納得しており、遂に伏字をしなくなった。しかし、この咸卦法についてだが・・・この世界に来て直ぐに使えていたのだ。魔力操作が無いと無理だと思われるが、深月には魔力操作の上位版の魔力制御があったので問題が無かったのだ

 

「気と魔を融合させ、体の中と外に纏い戦闘能力を向上させるのです。筋力は勿論の事、体が思考に追い付きます。これならば、中村さんの攻撃を回避する事も出来るでしょう」

 

「言葉から察するに、今までの訓練はお遊びレベルなのね」

 

「そうです。本当にお遊びレベルで、この咸卦法から発展させたのが私が使う装填です。自身のエネルギーだけでなく、相手のエネルギーをも利用するまでが最終目標です」

 

見える場所にあるが、ぼやける程遠い道のりに雫はため息を吐き、直ぐに気持ちを切り替える

 

「この咸卦法は気と魔力の量が同じでなければ正常に発動しません。失敗すれば消費するだけです。ですので、練習あるのみです」

 

「これも個人の感覚なのね・・・」

 

深月は雫に一度だけ咸卦法の成功状態を見せ、メイド達の訓練へと移動した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう駄目ですぅううう!?体痛くて死んじゃう!』

 

「人間はこの程度では死にません!」

 

メイド達の悲鳴と深月のスパルタ訓練を見て、香織は懐かしく思った

 

「私もあんな感じだったなぁ~」

 

「では、香織さんもご一緒に訓練をしましょう」

 

「い、いや~・・・私は素材を収集して来るよ」

 

香織は早足で拠点から出て素材を採りに行き、手持無沙汰となった深月は新たな技能を得る為に今の自分が出来る限りの全力を尽くす事にした

 

現状でも問題は無いとは思いますが、敗北する可能性を低くする為には更なる向上が必要ですね。新しい技?それとも概念魔法?・・・いえ、ありましたね。完全習得していないあの領域―――身勝手〇極意を

 

影との戦いのみでしか発動しなかったあの領域―――もし、あの状態を自分の意志だけで切り替えが出来るとなればと思うと必ず手に入れたい。そして、身体強化がⅠ~Ⅹと調整も必要となってくるのでそちらにも時間を割かなければいけない。深月が考えた結果、重力魔法と身体強化と限界突破を行使してあの領域のヒントを得たらいいじゃないかというごり押しで訓練を行う事にした

 

全ての神代魔法を手に入れた事によって重力魔法の強さが以前よりも強くなりましたね。これならばもっと体に負荷を掛けられます。身体強化を最大、限界突破、重力魔法を日常生活でギリギリ動ける程度で行使!

 

相変わらず無茶し過ぎの異常な訓練だが、この向上心が深月の強さの一端である。身体強化は持続力と調整を、限界突破はステータス上昇の底上げを狙っている

 

あっ、これはヤバイですね。気を抜けば潰れてしまいます。ですが、止めません!限界を超えた更にその先の限界を手に入れる為ならば必要な犠牲です

 

深月は普段行っているシャドートレーニングで現状の確認作業を開始する。対戦相手は自分自身なのは勿論の事、素早さは一番早くの最高難易度を想定する。とはいえ、常人の速さでしか動けないので直ぐにゲームオーバーとなってしまうが、もう一度リトライする事で徐々に先読みや予測の精度を上げていく

そんな深月のシャドートレーニングを見ていたヘリーナ達は、あれこそが深月の強さであると理解出来た。見えなくても分かる。深月が対峙しているのは己自身で、枷を開放した影と戦っている事が分かった

 

「神楽様は凄まじいですね。私達ではあそこまで出来ませんが、それに倣う事は出来ます。皆、やりますよ!」

 

ヘリーナはメイド達に喝を入れて、今まで以上の気合いを入れて訓練を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~皐月side~

 

ハジメ達は深月から渡される食事を食べながら大量のアーティファクトを作る。先兵を打倒出来る様に、兵士の力の底上げが出来るアーティファクトを量産する。只の丸い鉱石に限界突破を付与し、吊り下げる為の紐に超高速体力回復、超高速魔力回復を付与する。これで限界突破の制限時間が延び、戦闘持続力が格段に上がる

 

「はぁ~、疲れたぜ。だが、これで兵士達の強化は十分だな。対空兵装も充実し、弾丸も自動的に生成している―――後は俺達の修行だな」

 

「神言は精神や魂に作用するだけとはいえ、それ以外にも備えておいた方が良いわね。体が動かなくなってしまえば駄目だから・・・状態異常を無効化する能力が要るわね。これは深月の状態異常完全無効を付与してもらいましょう」

 

「だが、エヒトの言っていた様に万能の技能じゃないって事をどう理解するかだな。今現在確認出来ているのは、体に直接影響のあるデバフと、精神か?」

 

オルクス大迷宮での毒や麻痺は効かず、ハルツィナ樹海の媚薬や感情反転も効かなかった。但し、エヒトの憑依に関しては別だった

 

「あれは私達の油断よ。深月の装填は魔法を取り込んで纏うのではなく変質させる・・・深月がこの魔法は大丈夫と判断した事が駄目だった筈よ。私達はお酒を飲んでも毒耐性で酔わないでしょ?それは常時発動しているからと言うのもあるけど、その耐性という壁を無くせば酔うわ。常時閉じている蓋が装填で外れ、その隙に入れ物に入るという過程が成り立つわ」

 

「お、おう。言われてみればそうだな」

 

「一度でも染まれば元に戻るのは難しいわ」

 

「・・・それだと精神担当の深月をエヒトから引き剝がすのは難しいという事か」

 

混ざっている可能性はあるが、混ざっていない可能性もある。先ずはそのどちらかを見分けなければならない

 

「そこは賭けと言いたいところだけど、恐らく精神担当の深月は最終的には殻に籠る筈よ。ギリギリ限界まで粘り相手を疲弊させ、自分達に有利な状況を作る可能性が大きいわ」

 

「・・・だが、不安な点もあるんだろ?」

 

「そう・・・ね。最悪の場合は精神担当の深月の自己犠牲という選択を採用した場合よ。内容は変わらないように見えても、中身がまるで違うわ。全力で抗い、魂が壊れるかもしれない。そうなればクソ神が枷が完全に無くなるという事なの」

 

「それはヤバイな。不確定要素は出来るだけ排除したい」

 

「戦う時にクソ神が深月の体を完全に掌握、深月の魂が砕けないの二つ。後者の可能性が一番高いとなれば、それ専用のアーティファクトを作るわ。魂を補強、回復、保護の三点が必要+クソ神に抗える魔法」

 

「これも概念魔法か」

 

皐月のプラン―――深月の身体を乗っ取ったエヒトを物理的に追い出す為には精神担当の深月の魂を強くする事で、エヒトに抗い、体から追い出せる可能性を高くする予定だ

 

「先ずはハジメと私とユエで神域へ通るゲートキーを作るわよ。ここで重要事項は、直接クソ神の元までじゃなく扉を開ける事だけよ。相手は先兵を除いての戦力は、クソ神、フリード、ヤンデレ、お花畑の合計四人だけよ。クソ神は己の慢心で首を絞めてもらわないとね」

 

皐月に油断は無い。敵が多くなる可能性も考慮しての分散が限りなく勝率が高いと判断した。ユエとシアとティオの三人とエヒトに挑んでも問題は無いだろうが、エヒトが慢心せずに潰しにかかる可能性が高い。ならば、敢えて仲間を少なくして慢心する様に誘う事が一番だ

ハジメと皐月とユエは、神域へと繋げる事が出来るゲートキーを作り、その次はハジメと皐月で深月からエヒトを引き剥がす為の武器を、最後はエヒトを滅する武器を作るという流れだ。こうして怒涛の延長した一日が終了した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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