ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「忙ちぃ!!でも頑張る!!」
深月「きりきりと書きましょう」
布団「畑、田んぼ、仕事の三連コンボなりぃ!・・・いきなりの猛暑は体が溶けるぅ」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」





雑兵はメイドの敵ではありません!

~皐月side~

 

アーティファクトを限界まで量産し、全てを行き渡らせ、作戦も練った。後は開戦の時を刻一刻と待つだけだ。このトータスに住まう多種多様の種族が奮い立ち、覚悟を決めた表情で待機している

 

「・・・壮観だな」

 

「これも蒔いた種のお陰ね。先生、王女、皇帝、ギルドマスターとつながっていたからこそ出来た様な物よ」

 

「だな。全員にアーティファクトも配り終えたし、もうそろそろだろうな」

 

「舞台は整ったわ。いつでもかかって来なさい―――ってね」

 

ハジメと皐月が空を見上げて開戦の合図を待つ。緊張で張りつめていると、突如空がひび割れる様に空間が歪んだ。そこから現れる大量の先兵。赤黒く染まった空は、人々に不安や恐怖を与える嫌悪感がある

 

「気を抜くなっ!敵が来るぞ!」

 

「ッ、総員っ!戦闘態勢っ!」

 

メルドとガハルドが叱咤を含む命令を下す。王国騎士団団長、帝国の皇帝の一早く冷静さを取り戻した取り戻したからこその賜物だ

 

「あの落ちてくる黒は魔物か」

 

「先兵の数も半端じゃねぇ・・・」

 

険しい表情をしたメルドとガハルドが舞台の前面に立つと、連合総司令官であるリリアーナから念話が届く

 

『メルド、ガハルド陛下。余り突出はなさらぬよう。あなた達が死んでいいのは、戦いが終わった後だけです』

 

『申し訳ありません。これ程の緊張は初めてで判断能力が低下していました』

 

『ハッ、言ってくれるじゃねぇか。だが、連合軍で一番強い男が一番先頭で戦わなくてどうすんだ。俺が死んだら死んだで、それを怒りにでも変えりゃあいいんだよ。そのための女神様と総司令様だろうが』

 

『全く・・・メルド、陛下、女神と剣が出ます。作戦通り、お願いしますね』

 

『了解しました!』

 

『応っ、任せな!』

 

現場指揮官は本来ならガハルドが一番だろう。しかし、一戦力である為に視野を広く確保出来ない。よって、王族であり、本来は魔人族と戦う為に学んだ兵法をこの場で活かす事が出来るのは後方に居るリリアーナだけだ。畑山は豊穣の女神という旗印で兵法は全くの無知、カリスマと冷静さを持つリリアーナが適任なのだ。とはいえ、畑山も別の方面で言うならリリアーナよりもカリスマがある

 

「連合軍の皆さんっ。世界の危機に立ち上がった勇気ある戦士の皆さん!恐れないで下さい!神のご加護は私達にあります!神を騙り、今、まさに人類へと牙を剥いた邪神から、全てを守るのですっ。この場に武器を取って立った時点で、皆さんは既に勇者です!一人一人が、神の戦士です!さぁっ、この神の使徒である豊穣の女神と共に、叫びましょう!私達は決して悪意に負けはしないっ。私達が掴み取るのは勝利のみですっ!!」

 

この時の為に築いた要塞の頂上から畑山の言葉を聞いた兵士達は、怯えから一転して希望を見つけたかの様に目を輝かす。そして、己を鼓舞する様に足を踏み鳴らす

ドンッ、ドンッ、ドンッと一定のリズムを刻みながら約八十万の軍勢がが雄叫びを上げる

 

「「「「「「「「「「勝利!勝利!!勝利!!!」」」」」」」」」」

 

「邪神に滅びを!人類に栄光を!」

 

「「「「「「「「「「邪神に滅びをっ!!人類に栄光をっ!!」」」」」」」」」」

 

大量の先兵と魔物が連合軍に襲い掛かろうと前進している光景は恐怖だろう。だが、それを打ち破る為の言葉が発せられる

 

「悪しき神の下僕など恐れるに足りません!我が剣よ!その証を見せてやるのです!」

 

「仰せの通りに、我が女神」

 

「深月―――やってしまいなさい」

 

『かしこまりました』

 

その直後、巨大な魔力が神山の空から落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

『深月―――やってしまいなさい』

 

『かしこまりました』

 

深月が皐月の命令を受け、巨大で、腕が入る穴があり、専用グローブを着けた腕を機械的なそれに迷いなく突っ込んで魔力を解放する

 

「ゴルデ〇オン、クラッシャァアアアアアアアアアア!」

 

もう伏字だろうとお分かりだろう。どこぞの勇者王の最終兵器が成層圏に打ち上げられ、それを起動して扱っているのだ。擬きであるが、分解魔法を付与された超巨大兵器はとても強く、五十万近い先兵と魔物を蒸発させたのは最高の出来だろう。連合軍から見れば、邪神の手先を屠る神の一撃と捉えられても不思議ではない。敵の出現場所である神山ごと押し潰し分解―――真っ平らな大地となった

 

『・・・やりすぎてしまいましたか?』

 

『まぁ・・・やりすぎではあるが、兵士達の鼓舞には充分過ぎる一撃だったから問題はない』

 

『私達はこれから神域へ突入するわ。深月は地上でメイドとハウリアの指揮をした後神域へ突入よ。最終兵器は最後まで取っておく―――単身で突入する事になるけど、行ける?』

 

『問題ありません。ユエさんが創られた神域へと繋げる鍵がありますから』

 

ユエの機転―――それは突入する時間をずらすという事だ。最初は、深月を除くハジメ達、そして最終兵器の深月という事だ。地上は広く、被害を最小限に抑えるならこれが一番であり、エヒトが慢心する可能性も大きくなると二重の効果があると予測している

 

『俺達は先に行く。キリが良い所でこっちに来てくれ』

 

深月は成層圏から地上へ降下して、自陣の要塞上に着地する。作戦を指揮していたリリアーナと旗印の畑山は、いきなり降り立った深月に驚く

 

「か、神楽さん!?え?神域へ突入したのではないのですか!?」

 

「・・・もしや、地上の間引きですか?」

 

「先兵の数が予想よりも多いというのもありますが、クソ神を慢心させる狙いも含まれています」

 

深月は宝物庫から五十mm対戦車ライフル―――"グランイビル"を取り出す。深月のリクエストに応えた理不尽極まりない凶悪ライフルである。当たっても即死、掠っても即死、紙一重で避けても即死のトリプルコンボである。レールガン+ハーゼン・ハウンドと同様に魔力使用量で弾速が上がるという物だ。弾丸と魔力砲と切り替える事が出来る優れ物と一押し出来るが、こんなロマン砲を試射したハジメは反動で空を飛んだという事だけ付け加えておこう

 

「私の射程距離は視界に映る全てです」

 

ズゴンッ!

 

初撃の一発は複数の先兵を貫き、周りを衝撃で地に落とす。地に落ちた先兵は、連合軍の兵士達に討ち取られたりする

 

「それでは、遊撃に加わりますので指揮の継続をお願いします」

 

物凄く重い筈の対戦車ライフルをもう一つ取り出し、脇に抱えて大地を疾走する。砦に居る者達は、時々地上から放たれる太い紅い軌跡は深月の物だろうと把握しつつ連合軍に追加情報を送る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズゴンッ!ズゴンッ!ズゴンッ!ズゴンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両脇に抱えた対戦車ライフルが火を噴き、先兵を貫き、魔物を蒸発させる。連合軍の兵士達は、リリアーナから追加された情報を聞き歓声を上げる。魔王夫婦のメイドというネームバリューだけでも自分達よりも強いと分かるし、目の前で苦戦していた敵を屠る姿は正に戦闘メイドだ

 

「メイド長、こちらは私達にお任せ下さい」

 

「メイド隊はハウリアと共闘して散開、対空兵器の守護を最低数に留め遊撃しなさい。魔法に長けた魔人族は近接戦闘が苦手な者が多く、逆に亜人族は魔法を使えませんのでそちらに戦力を割きなさい。"あれ"も今が使い時です」

 

「了解しました。メイド長は何時頃まで地上に留まるのですか?」

 

「半数以上は初撃で滅したとはいえ、連合軍の総力の十倍近く―――先程とは違いますが、広範囲攻撃を行います」

 

メイド達が全員深月の元に合流し、各自命令を受諾。今までのメイド達の活躍はハウリアと同じ様に気配を殺して首を刈り取る攻撃ばかりだった。しかし、ここで深月はメイド達に仕込んだ奥の手を一手切る事にした

深月も含めメイド達は、腕に着けていたリストバンドを外す。その腕には拘束具の様な物が光っていた。まんま某霊界探偵が装着していたあれである。とはいえ、開錠の言葉は特別でも何でもない

 

解放(リリース)

 

その瞬間、メイド達の戦闘力が激増。感知系の技能を持つ先兵達は、この変化に一瞬だけ視線をずらしてしまい、数多くが地面へと落とされる。この程度ならばどうとでもないし、ステータス的にも不利になるわけでもない。しかし、深月の仕込みはこの一手だけではない

 

『咸卦法!』

 

実は、メイド達の近接格闘術の詰込みが予想よりも早く終わったので、更なる戦力アップとして咸卦法を習得させたのだ。勿論、メイド達は深月が選別した事もあり、全員が気を取得出来る人材だったのだ。最初はガス欠になる事が多かったが、それでも十分マシなレベルで運用する事が出来る状態となった。尚、ヘリーナだけはメイド達の中で抜きん出た才能を開花させていたりする

深月は対戦車ライフルを宝物庫に戻し、黒い西洋剣を取り出して魔力を込める。それに呼応する様に剣がどす黒く染まり、魔力の本流が徐々に漏れ出す

 

「エクス〇リバー・モルガァァァァアアアアアン!」

 

これも深月がパクった技だが、拘束具を一つ解除した状態で本物に遜色ない威力だった。薙ぎ払いで放たれたビームは空の敵を飲み込み、蒸発させた

 

「では、私は神域へと突入します。後は任せましたよ?」

 

深月はユエから手渡された神域へと繋げるゲートキーを手に持ち、神域の門へと一気に突入する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と言いますか・・・つまらない入り口ですね。もっと絢爛豪華な造りだと思っていたのですが期待外れです」

 

神域の入り口に到着した深月の感想は、とてもがっかりしたものだった。ほぼ白一色、距離感を掴みにくい道があるだけ―――という神が住まうには期待外れな物だった

 

「くっ、またしてもイレギュラーがっ!」

 

どうやらお嬢様達に多くの先兵が倒され、今は補充をしているという事ですか。おや?ここで根絶やしにすれば地上に行く先兵も少なくなるという事でしょうか?広いけれどほぼ一直線の道となれば一つですね

 

「ヘル・ア〇ド・ヘヴン!」

 

深月は両手に専用グローブを装着し、魔力と気の混合エネルギーを集約させる

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・」

 

魔力放出・纏雷・重力魔法・空間魔法・再生魔法―――進路上の敵が逃げられない様に電磁フィールドをイメージして放つ。エネルギーの渦が先兵達の周囲を覆った事を確認した深月は、無間の一歩を踏み出して背中から魔力を放出

 

「ウィィィィタァァァッ!!」

 

とてつもない重圧に先兵達は体を硬直させるが、直ぐに深月の突進を止めようと分解魔法を斉射する。専用グローブに分解魔法が直撃するも、減速する事なく加速する。分解魔法がいかにチート級であろうとも、一人でも概念魔法を創れる強さとなった深月の再生魔法の速度が勝っている為無駄である

深月が近づくにつれエネルギーの渦が狭まり、先兵達を強制的に一列にさせる。そして、先頭の一人の先兵の胸部に一撃が当たった瞬間に身体が弾け肉片になった。障害物である先兵に当たろうとも速度は衰えず更に加速して次の場所へと繋がっているであろう波紋を打つ極彩色の壁へと突入した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~雫side~

 

深月が神域へと突入する数十分前―――

ハジメ達と共に神域へと突入した元勇者(笑)パーティーの面々は、荒れ果てた都市の一角で待ち構えていた天之河と中村と戦っている

 

「光輝!目を覚ませよっ!!」

 

「目を覚ますのは龍太郎の方だ。南雲は皆の優しさを利用し洗脳する悪だ」

 

「ここまで酷いのか・・・厄介だな!」

 

坂上は天之河と一対一で戦い、谷口は中村の手で再度量産された傀儡兵と戦い、雫は中村と戦っていた

 

「どう、鈴?神様の失敗作の人形でも強いでしょ~♪結界があっという間に破壊される気分はどうかな?」

 

「にゃめんな!鈴は・・・鈴は諦めないんだから!」

 

「恵理っ!」

 

「おやおや~?雫は僕を殺す気満々なの?ぷっ、倒せるわけないじゃん」

 

中村は慢心している。あの一瞬の戦闘で自分が格上で、手も足も出せなかった事を理解しているからこその余裕。だからこそつけ入る隙がある。虎視眈々と狙いながら、中村が絶対に気付かないレベルまで戦闘力の制限を掛けた状態で戦う。もの凄く危険な行為だが魔物肉を食べてステータスが跳ね上がった雫ならば、少し当たっても耐えられる

 

「・・・恵理、本当にこうしなきゃいけないの?」

 

「鈴は、なぁにお花畑な事を言ってるのかな?僕と光輝君の二人だけの世界を作る為にはこれが一番なんだよ。光輝君の周りに集まる害虫は排除しても排除しても湧いて出てくるじゃん。だったら、二人っきりの世界が必要なんだよ」

 

中村の言う天之河と二人きりの世界・・・創られた世界でなければ不可能だろう。その世界を既に持っているエヒトの元に就くという事は、地球とトータスに混沌をもたらす存在となる。深月が言う最後の説得もこれで潰えたも同然だ

 

「恵理、鈴は・・・ううん、私は恵理をここで殺すよ」

 

「出来ると思って言ってるの?力もないただの結界師程度の羽虫がよく言うね」

 

「だから―――シズシズ、力を貸して!」

 

「トータスはともかく、地球に・・・家族が殺されるかもしれない可能性があるから―――恵理、ここで貴女を確実に仕留めるわ」

 

「ふぅ~ん。・・・光輝く~ん、雫と鈴が僕を殺すって言ってるから助けて~♪」

 

恵理のSOSに気付いたのか、天之河は坂上相手に容赦なく大技を放って吹き飛ばして駆けつける

 

「恵理、大丈夫か?雫、鈴、南雲の洗脳を今すぐ解いてあげるから少しばかり痛くする。だが、安心してくれ!南雲は俺が倒すから大丈夫だ!」

 

「光輝、今まで散々甘やかしていた私も悪かったと理解しているわ。でもね、いい加減我慢の限界なのよ」

 

雫は額に青筋を浮かべ、天之河を睨む

 

「だから―――あんたは龍太郎にもぶっ飛ばされなさい!!

 

縮地ではなく、無間で天之河の目の前に一気に近づいて背負い投げで坂上の方へと投げ飛ばす。慢心していた中村は、少しだけ驚いたが強化している天之河なので余裕で任せる事にして雫の警戒レベルを上げた

 

「ちょっと油断してたけど、あの脳筋が光輝君に勝てる可能性はゼロだよ。でも、光輝君を投げ飛ばした雫は苦しめて殺してあげるよ」

 

中村は体のスペックをフルに利用して初っ端から分解の翼を展開し、雫の四肢の一部を狙って分解魔法の極光を放つ。だが、観察眼に優れた雫はそれを悠々と回避して黒刀で切りつけるものの二本の指で挟んで受け止められた

 

「雫が何かしらの方法でステータスが伸びたのは分かってたよ。でも、そんな程度で僕に勝てるとでも思った?」

 

中村は、そのままアッパーを雫の腹に打ち込もうとした。だが、手を打つ直前に首に大きな衝撃を受けて吹き飛んだ。ずっしりと重く、芯まで響く力強さ・・・何が起きたのか理解出来なかった。だが、分かる事は一つだけ―――雫の攻撃が直撃したのだと

 

「ぐっ、この―――」

 

「悪いわね、ここからは一方的よ」

 

背後からの奇襲ではなく真正面からの強襲。雫は、姿勢を低く中村の脇腹を穿つ。骨にひびまでは入らないものの、一瞬感じる痛みの硬直を見逃さず左腕に組み付いて肩と肘の関節を破壊した

 

「ぎっ!?」

 

左腕をだらりとさせた中村は、雫を睨みながら魔法を行使する

 

「邪纏!」

 

「やらせないよ!聖絶・乱鏡!」

 

谷口は絶妙なタイミングで雫と中村の中間に魔法を放つ。この技は雫を直接狙う類の魔法を阻害させる魔法・・・数多くの鏡の乱反射―――氷雪洞窟のミラーハウスのヒントから開発した魔法だ。相手との距離、方向が分からない様に妨害すれば、対象を一人とした状態異常系列の魔法は防ぐ事が出来ると判断したのだ。何より、中村は相手の精神や魂に干渉する魔法を多用するからだ

 

「鈴ぅぅうううう!!」

 

中村は雫の突進速度や反応速度を鑑みて、先に谷口を脱落させる方が得策だと判断して分解魔法の極光を放とうとした。だが、谷口に向けた手は雫に蹴り上げられてあらぬ方向へとずらされた

 

「鈴は殺せないわよ」

 

「なっ!?その姿っ!」

 

雫の身体は稲妻が迸っており、似た姿を見た事がある中村は驚愕している

 

「あぁ、深月さんが使う装填じゃないわよ?これは咸卦法という限界突破に近い技術よ。それにアレンジを加えた私だけの強化なのよ」

 

「くそっ!またあのクソメイドが邪魔しているのか!」

 

中村は憎らし気に深月を罵倒するが本人はここには居ないし、居ても、「邪魔しているのはそちらでしょう?」といって煽り返すのは目に見えている

 

「だけど、その程度で僕を殺せると思わない事だね」

 

「殺すには足りないでしょうね。でも、深月さんが来ればどうする?私も合わせた二対一の戦闘になるわよ」

 

「その前に殺すだけだよ!」

 

恵理は雫が絶対に避ける事の出来ない攻撃を選択、雫を全方位からの分解魔法の檻の中に閉じ込め、破壊力に特化させた魔力の大剣を形成する

 

「檻・・・ね」

 

「動けないところを狙われるってどんな気持ちかな?フフフ、慢心しているからこうなるんだよ!」

 

中村は雫をなぶり殺す事を中止して一撃で殺す事にしたのだ。勝利を確信し、肉片一つ残らずにバラバラにしてやろうと魔力の大剣を全力の魔力放出で放つ準備をする

 

「シズシズ!」

 

「雫、何か遺言はあるかな?」

 

「中村さんって中途半端よね」

 

「死ね」

 

中村は、大剣を放った。衝撃で檻は弾け飛び、回避する事は出来るが絶対に間に合わない。谷口が雫のピンチに障壁を張って防ごうとするも、紙の様に楽々と貫かれて雫に直撃した

 

「ごちそうさま」

 

「へ?」

 

中村の放った攻撃は雫に直撃した筈だ。だが、爆発しないし貫通もしていない。何より、雫言っている事が疑問だった。何故?どうして?―――と。呆気にとられた返事の瞬間、雫を中心に広大な魔方陣が展開した

 

「な、何なんだよこれ!?」

 

大きく広がった魔法陣は、狭まり、魔力の大剣が光の粒子となって掻き消え、魔法陣が雫の元まで辿り着いた。その瞬間、雫から強大な魔力の波が周囲に襲う

 

「何をしたんだよっ!?」

 

「あら、見て分からない?装填しただけよ」

 

「あ、あれは魔法の属性に変質するだけじゃないか!」

 

エヒトからも教えられた装填の仕組み。魔法を吸収し、魂レベルで変質させて身体能力の向上と特性を生む。だから、目の前で起きている事が理解出来ないのだ

 

「という事は、エヒトは深月さんの記憶を見ていないし理解していないという事ね」

 

「で、でも、その程度の強化で―――――え?」

 

中村が雫の姿を見失い、気づいた瞬間には右腕を切断されていた

 

「あっ、があああああああああ!?」

 

襲い来る痛みでようやく理解した。今の雫は己よりも遥か上の頂に居るという事を。あっという間に追い抜かす原因は、魔力剣だろうとは予測出来るが肝心の理論が分からなかった

 

「っ!?」

 

首筋に感じる悪寒を回避する為に大きく体をずらすが、切られたのは両足。翼を展開しているから落ちはしなかったが、中村に残された攻撃手段は魔法だけとなった

 

「何で・・・何で左腕が治らないんだよ!超高速体力回復があるだろう!!」

 

中村は大きな勘違いをしている。超高速体力回復は、ゲーム設定で言うならHPの回復・・・傷も治るという定義だ。しかし、ここは現実。体力回復はスタミナであり、傷は一切治らない。いや、例え治るとしても左腕は治らない。あれは、関節を外すだけであり、外傷ではないからだ。氷雪洞窟で、深月が影と殺りあった際に再生疎外の為の針を仕込まれた事を思い出して欲しい。内部に異物があれば、それだけでも直りが遅くなり、治ったとしても依然と全く同じ様に動かす事は困難だろう

 

「ここは現実よ。ファンタジーな世界でも、ゲームじゃないのよ。その技能はスタミナ回復だけだし、再生の技能は外傷や、破壊系―――関節を外すのは対象外なのよ。と言っても、これは受け売りだけど」

 

「くそっ!くそっ!くそっ!くそぉおおおおおおおお!あのクソメイドはどこまで僕の邪魔をすれば気が済むんだよ!!」

 

「貴女が深月さんに喧嘩を売っただけでしょ」

 

「クソメイドが邪魔しなければ何もかも上手くいったのに!」

 

「雫さんの言う通りですよ。私は敵対した相手に手加減はしませんよ」

 

中村が一番聞きたくない声・・・雫の後ろから深月の声が聞こえたのだ

 

「取り敢えず、その翼は不必要ですね」

 

雫よりも静かに一瞬で中村の背後に回り込んだ深月は、中村の銀翼を掴み引き千切る。分解魔法が付与されている銀翼を引き千切る事が出来る=分解魔法を無効化もしくは再生速度が異常なだけだ。これは後者で、グローブを着けているからこそ出来る芸当だ

 

「中村さん、これでチェックメイトよ」

 

地面へと叩き付けられた中村を見下ろす深月と雫と谷口。そして、坂上とボコられて目を覚ました天之河が合流した。中村は、策が全て失敗した事に絶望しただただ彼等を見上げるだけだ

 

「えりりん・・・恵理、もう終わりだよ」

 

谷口は中村に馬乗りになり短剣を構える。その表情は苦痛に歪み、己の手で友人を殺す事に涙していた

 

「す、鈴。殺さなくても」

 

「光輝、見たくないのなら眠らせてあげるわよ?」

 

雫の睨みで天之河は何も言えなくなり、押し黙った。谷口は、短剣を振りかぶり中村の胸部に向けて振り下ろす

 

「・・・鈴、助けて」

 

「っ!?」

 

上段での一瞬の硬直と同時に、中村は狂気に歪んだ笑みを浮かべて谷口の喉元に狙いをつけて噛みつく

 

「鈴、避けろお!!」

 

死なば諸共の攻撃、雫は谷口と中村の身体が近く反応が出来ても抜刀出来ず、坂上は声を出すだけで、天之河は驚愕の表情をしていた。だが、中村の攻撃を想定していた深月は、冷静に谷口に嚙みつこうとする中村の首を掴んで吊り上げる

 

「ぐっ、があっ!」

 

「み、ミヅキン・・・私は・・・」

 

「私が居なければ、あの躊躇いで死んでいましたよ。さて、テンプレでは"遺言は?"と聞きますが、私にそんな甘さはありませんよ」

 

深月は空いた片手に夫婦剣の一刀を中村の心臓に突き刺して確実に心臓を潰す。普通ならば、それだけで放置してで終わりだろう。だが、念には念を入れて徹底的に殺すのに躊躇しない深月は首もへし折り、脳にもう一刀を突き刺した。完全に事切れた中村を遠くに投げ、スト〇ーサンシャインをノーモーションで放ち肉片一つ残さず完全消滅させた

 

「これで大丈夫でしょう。自爆する暇もなく殺しきれたので問題ありませんね」

 

「深月さんがあそこまでやったのなら死んだでしょ」

 

「・・・」

 

「谷口・・・」

 

谷口は自分の手を見ながら震えていた。本当の命の取り合いで、一瞬の躊躇が死を招く事に恐怖したが、自分の手でと覚悟していたのに足りておらず、尻拭いをさせた事・・・様々な感情が谷口を襲っているのだ

 

「雫さん達はこのまま地上へと降りて下さい。ここから先の戦闘は足手まといですし、地上の戦力が今どうなっているかも不明です」

 

「分かったわ。但し、光輝は縛っておくわ。戦場に出せば背後から切られるでしょうし」

 

「お、俺は・・・」

 

「ま、まぁ、そんだけの事をしたって事だ。だが、皆を説得するのを手伝ってやるからいつまでも落ち込むなよ。谷口の気持ちも分かるが、ずるずる引きずるのは止めちまえ。いつも通り笑ってる方がいいぜ」

 

深月は雫にユエが創った神域を行き来する鍵を手渡し、ハジメ達が通った場所を追いかけて壁を潜った

 

「さて、私達は地上へ行くわよ。香織が強いとはいえ、いつまでも一人にするのは心配だわ」

 

雫達は通ってきた道を辿り地上へと帰る。虹の壁を潜ると、大量の肉片と先兵が十体程生き残っていた

 

「龍太郎、私が敵の目を引くから全力疾走で走り抜きなさい」

 

「お、おう!そっちの鍵が無いと出れねぇんだが・・・それはどうするんだ?」

 

「出口に近づいたのを確認したらパパっと移動するから大丈夫よ。貴方達は脆いんだから気を付けなさいよ」

 

雫は生き残りの先兵達へと真正面から衝突。それを確認した坂上は谷口と天之河を抱えて出口へと走り、出口へ着く頃には雫が先兵の全てを倒し終えていた。その後、雫は坂上達と合流してアーティファクトを使って地上へと帰還した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさん強い!そして、侍女子つよすぎぃ!」
深月「上から叩き潰す攻撃は中々出来ない体験です。気持ちいいです」
布団「あれでも加減してるんでしょ?」
深月「当り前です。全魔力を注ぎ込めばトータス滅びますよ?」
布団「よい子の皆はマネしないでね♪」
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