ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「さあ始まるでざます!」
深月「フンガー」
布団「ノリノリでっす!」
深月「メイドのお茶目もこれで終わりです・・・さて、読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」









危機にメイドは現れる

~ユエside~

 

ハジメと皐月を先に行かせ、先兵とフリードと大量の魔物と戦うユエとシアとティオ。中々に強力で、特に先兵は今までとは比較にならない存在感を醸し出していた。そこで、戦力の分散―――ユエとシアのタッグで先兵達を、ティオはフリードと魔物をと言う流れだ

 

「今まで戦った先兵と比べ物にならない位強いです―――ねっ!」

 

「予想を遥かに上回る成長を確認。レベルⅡの限定解除」

 

「なっ!?」

 

シアと戦っている先兵が呟くと同時に翼の数と魔力が増加し、武器も大剣から細身のレイピアに変わっていた。だが、これは一体の先兵であり、他は槍やハンマー、双剣等々を装備した

 

「シアっ!」

 

ユエがシアの頭上に氷壁を作ると同時に、ハンマーを持った先兵の一人が氷壁を攻撃。並大抵では破壊されない自信のある氷壁は、ガラスの様にあっさりと粉々に砕かれた

 

「どっせえええい!」

 

「ふっ!」

 

シアのハンマーと先兵のハンマーがぶつかり、周囲に衝撃波が走る。シアは、鍔迫り合いをしながらスラッグ弾を発射して一人を倒そうとするも失敗。光の幕の様な障壁と分解魔法の障壁に防がれたのだ。とはいえ、その障壁は自身の前面だけにしか展開出来ない様子だ

 

「蒼龍!」

 

炎の龍が先兵達に突撃するが、これも分解魔法でかき消されてしまった

 

「流石は元器と言ったところです。その全魔法適正が厄介と言えば厄介ですが、分解魔法の前では無駄にも等しい」

 

周囲に浮かぶ先兵達がユエに突撃する瞬間、オリジナル魔法の火光で目潰しをしながら一定距離を保つ。魔法の攻守攻防はユエが若干劣勢だ。有限の魔力と無限の魔力の差は大きく、節約しながらでないと直ぐにお陀仏になってしまう

 

「・・・分解魔法は卑怯」

 

「ホントですよ!攻撃がかき消されたら手出しが出来ないじゃないですか!」

 

「所詮は弱者、主の駒として動かなかった事を悔やみながら死になさい」

 

しかし、ユエ達の目には諦めの感情は無い。あるのは、敵を倒す事だけだ

 

「・・・やっぱり深月の言う通りだった。今のままじゃ駄目」

 

「やっぱり深月さんは凄いですよね~」

 

「?」

 

ユエとシアは切り札の一つを切る事にした。といっても、この一つだけでも十分効果を発揮して打ち倒せる位の能力を秘めているのだ。それはハジメと皐月の二人に渡していたミサンガだ。しかも性能も前回の者と比べても比較にならない程の性能を誇っている

既存の六つの技能に、身体強化とその派生技能+精神統一とその派生技能+状態異常完全無効が付与されているのだ。現在の状況―――二対多数の数の不利を考慮しての精神統一系の技能を入れているのだ。咄嗟の状況でも冷静に判断出来るようにしている

 

「ん!・・・魔力効率が段違い」

 

「身体中に力が漲ってくるのですぅうううう!」

 

ユエの場合は魔力系、シアの場合は身体強化系と長所をより伸ばす事が出来た。まだ先兵に有利な状況であるが、シアの身体がブレた瞬間に先兵の一人にハンマーが直撃した。そして、ゼロ距離のスラッグ弾をお見舞いする事で体に風穴が開いて絶命する。しかも、先程までユエに攻撃した一人の双剣を使っていた先兵だ

 

「早いっ!?」

 

「・・・シアを見すぎ。冥刀(めいとう)

 

その詠唱の後に先兵の首が飛んだ。このオリジナル魔法は、不可視の魔力を刃にして振るう魔法だ。この魔法のメリットは手に持たず操作出来るという事だ。手に持つ動作をしたかと思えば背後からスパッと斬ったり、そのまま手の位置から刀の刀身を伸ばして攻撃したり等、魔力感知技能を持っていない者に対して絶対優位となる

先兵にも魔力感知は備わっている。だが、ユエが魔法を連発した事で空中に漂う魔力の残滓に紛れ込ませる事で魔力の刀身が自身の背後にあるとは思わないだろう

 

「魔力が感じられない!?」

 

「・・・隠しているのに気付けないお前達の方が無能」

 

ユエはもう一体の先兵の首を飛ばして残りの先兵達を挑発すると、案の定返答として分解魔法のビームが放たれる。だが、それはミサンガを盾にして吸収して自身の魔力として変換する

 

「あのイレギュラーと同様の吸収ですかっ!」

 

「・・・ごちそうさま」

 

そして、また一人がユエの刃にて命を刈り取られた。この無双はユエだけでなくシアもそうだ

 

「遅いですぅ!どっりゃあああああああああ!!」

 

「あぎっ!?」

 

ハンマーに強化スラスターを取り付ける事で威力と移動範囲の増大、強固な防壁の破壊を目的としている。そして、スラスターで変則軌道をしながら相手を翻弄して後ろから殴るだけだ。先兵も咄嗟に防御障壁を張ったのは優秀なのだが、想定を超えた破壊力の前ではガラス程度の盾だ。障壁は突破され、完全に振り返っていない状態での側面から抉る様な攻撃は内臓と背骨を破壊。完全に機能を停止させる事に成功

先兵を全て倒し終えたユエとシアはハイタッチ。その後、二人はティオの方に目を向けると東洋龍に変化したティオがフリードと魔物達を一掃している光景だった。これの変化は二人も知っており、ティオが奥の手を切る必要があった事に驚きつつ観戦する

 

「・・・流石ティオ」

 

「いやぁ~、あらかじめ聞いてはいましたが、あの状態のティオさんって強いですねぇ~」

 

あっという間に全ての敵を灰燼に帰したティオが元の姿に戻り、二人の場所へ合流する

 

「待たせたのじゃ」

 

「・・・待ってない」

 

「そうですよ~。私達以上の魔物達全てを殺し尽くしたティオさん流石ですぅ!」

 

「そうじゃろうそうじゃろう♪これが竜人族の力じゃ!」

 

「後はクソ神だけですね!」

 

「・・・私達も行く」

 

三人がハジメ達が進んだ先へと歩く。増援に三人が来ればエヒトは焦って、ミスを誘発するだろうと確信しているので光の先へ進もうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一~十までもが殺られましたか。・・・この程度のイレギュラーに敗れるとは何とも情けない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後から声が聞こえ、三人が振り返る。そこには先兵達の亡骸を山にした一人の先兵だった。三人は、「一人増えただけじゃん」とため息ながら口漏らしつつ先制攻撃を仕掛ける。ユエの魔法とシアのハンマーとティオのブレス―――逃げ場の無い攻撃を前にしてもその先兵の表情は変わらなかった。分解魔法でユエとティオの攻撃をかき消し、シアのハンマーを"片手"で受け止めた

 

「なっ!?」

 

「シア下がるのじゃ!」

 

「極・五天龍!!」

 

この先兵は今までとは違う事を理解したユエは、自身の最高火力である五天龍に全魔力を注ぐ事で発動するそれを放つ。これは分解魔法でも相殺する事も出来ない火力だ

五つの巨大な龍が先兵を飲み込み、土煙が舞い上がる。ユエはその間に血結晶を嚙み砕いて魔力を完全に回復させて二発目を準備しようとするが、土煙が晴れた先には無傷の先兵が佇んでいた

 

「温い、この程度で私を殺せたとでも思いましたか?」

 

「シア、ティオ!」

 

「合点承知ですぅ!」

 

「あい分かったっ!」

 

この段階で三人は、奥の手を切る事にした

ユエは、魔法を自身の周りに常時浮かばせて貫通力に優れたそれを連続で発射するという物だ。これにはミサンガの精神統一があるからこそ出来る攻撃だ。もし、これをミサンガ無しでしようものなら情報量が多すぎて脳がパンクして動けなくなる

シアは、ミサンガの身体強化Ⅹを使用。再生魔法で体を常時再生出来るものの、その速度を上回る反動と激痛が襲う。我慢強いシアだからこその最後の切り札である

ティオは、先程の神龍化という東洋龍に変化する事が出来る代物を今の身体の大きさまで力を圧縮する事で、耐久力を持ちつつ破壊力もある龍人化である

だが、それでも目の前の先兵から感じるオーラは途方もない力を持っている。いや、最初に見た時以上の力が宿っていると思っても不思議ではない程だ

 

「援護する!」

 

「防御は妾に任せるのじゃ!」

 

「ぶっ潰すですっ!」

 

ユエが二人に当たらない様に魔法を斉射して逃げ道を塞ぎ、シアとティオが突撃する。だが、ここでシアの未来視が発動し、殴り飛ばされる自身とティオの姿を確認した

 

「うそっ―――ガフッ!?」

 

「何じゃとっ!?―――がはぁっ!?」

 

だが、その未来視が発動した次の瞬間に衝撃―――シアは咄嗟にドリュッケンの柄を盾に、ティオは甲殻に覆われた腕でガードするが、先兵の拳一発で破壊され腹部にめり込む。途方もない衝撃に身体が吹き飛び大地を跳ねる様に吹き飛んだ。ユエは二人が飛ばされた瞬間に、最高貫通力を誇るオリジナル魔法の"螺旋槍"という魔法を放つが、それも拳で軽々と砕かれて接近を許してしまった

 

「先ずは厄介な魔法を使う貴女からです」

 

ユエは咄嗟に身体強化を使って顔面に迫る拳を首を捻ってギリギリで避けたものの、先兵が空いた片手でユエの足を掴んで地面に叩き付ける

 

「ぐっ、がはっ!?」

 

先兵のユエ棍棒の一発一発がクレーターを生み出し、ユエを助けようと立ち上がったシアに向けてユエを全力で投擲されてボーリングのピンの様に二人が吹き飛んだ

 

「次は妙な技を使う貴女です」

 

「ガボッ!?」

 

先兵は一人で孤立したティオを襲う。ティオも負けじと反撃に転じようとするが、手を出す全てがカウンターで急所に直撃して口から血を漏らす。これでは直ぐに殺られると判断したティオは、自身が持てる全ての力で鱗と甲殻の強度を高めて防御だけする。急所はなるべく避け、どうしても避けれない攻撃だけを防ぐ亀作戦に切り替える

 

「耐久勝負―――竜人族風情がどれだけ持つのか試してみましょう」

 

「ぐっ、ガァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

今まで大振りだった先兵の攻撃がコンパクトの回転重視となるが、一発一発に腰が入っており大振りよりも威力の高い連打となり悪手となった。五発もガードすれば骨が砕け、再生魔法で回復させる事でどうにか間に合う程度だ

 

「耐えますか。・・・これならどうですか?」

 

両腕で胸から上を防いでいたが、先兵はここで腹部に切り替え掌底をねじ込んだ。上の連打から、いきなりの下という伏線を張られた攻撃にもろに直撃して、ティオは膝から崩れ落ち思い出す

 

「こ、この・・・攻撃はっ!」

 

「我が主の器の戦闘技術は素晴らしいです。たった一つの工夫でこれ程の効果を生み出す―――あれぞ知識の極致・・・いや、殺しの極みです」

 

今まで深月と行ってきた地獄の訓練の中で何度も撃ち込まれた浸透系の打撃。強固なガードを内部から破壊する技術に、幾度となく倒れたからこそこの技が厄介であり、次の攻撃を防ぐ事も出来ずに直撃するのだ

 

「でっりゃああああああああ!」

 

先兵の後ろから殴り掛かったシアの一撃は軽々と避けられ、打ち上げる様に掌底を腹部にねじ込まれる。だが、シアは歯を食いしばって耐えながら先兵の両手を掴む

 

「無駄な足掻きです」

 

だが、先兵が上から押し込む形で力を加えるとシアは膝を付いて沈み込む。先兵はそのまま手を掴んだまま両足を地から離してシアの上に逆立ちをする形で立ったと同時に、シアと先兵の頭上にユエの螺旋槍が通過する。先兵は、逆立ちの体勢から腰を回してティオの側頭部を蹴って脳震盪を起こさせ、シアの頭に両足を着いて両腕を引っ張る

 

「あっ!?いっぎぃいいいいいいいいいいいい!」

 

「後衛のイレギュラー、魔法を使えばこれの腕を引き千切りますがどうしますか?」

 

「くっ!?」

 

これで迂闊に攻撃出来なくなったユエは発動しようとしていた魔法を中断する。この先兵はティオを攻撃していたらシアが突っ込んでくる事を理解し、尚且つ素手で来るとも予想していたのだ。後は、現状に至る様にゲームメイクをするだけという簡単な作業だ

 

「その魔法、かなり便利ですね。逃げる相手を追い込みつつ、逃げ道を防ぐ―――ふむ、こんな感じでしょうか」

 

すると、先程のユエと同じ様に先兵の周囲に大量の魔法の弾が浮かび、その一つがユエの頬を掠めて飛んできた。これだけでも理解した。この先兵は見ただけで魔法を理解し、技を盗む技術を持っていると

先程と立場が逆転し、ユエは飛来する魔法を避ける。咄嗟に魔法で迎撃をしようとしたら、先兵がシアの腕を引っ張って関節を外す。助ける事も出来ず、ひたすらに避けるだけ。しかし、一つの魔法がユエを掠めた時、体がズシリと鉛の重りを装着されたかのように手足の動きが鈍った

 

「あぁ、言い忘れていました。私の魔力に掠りでもしたら重しを付けられたかの様になりますよ。最も、この忠告は既に理解しているでしょう」

 

「・・・うぅ」

 

最初の掠めた攻撃を皮切りに、大量の攻撃を掠めてしまったユエにはどうする事も出来ない程の重しが付けられている状況となった

 

「さて、貴女達イレギュラーを排除した後は地上に残る駒を排除しなければなりません。故に、大火力で肉片一つ残さずに殺します」

 

先兵の頭上に生成される巨大な魔力の玉―――その玉は、一発が地上にでも落ちたら連合軍の半数近くが蒸発する程の威力を内包している。絶体絶命どころか完全に詰んだこの状況に苦虫を噛んだかの様な表情をしつつ、先兵に向けて言葉を投げる

 

「・・・私達は諦めない。まだ生きている!」

 

「んぎぎぎぎぎぃいいいいい!舐めないで下さいよっ!」

 

「舐める等とんでもない思い違いです。貴女達こそ私を舐めないで頂きたい」

 

先兵は冷酷な表情でユエを睨み、頭上に生成した玉をおと―――

 

「いいえ、貴女のそれは慢心です」

 

「っ!?」

 

先兵は咄嗟にシアの手を放そうとしたが、シアが全力で握り込んでいるので直ぐには振り解けなかった。たった少しの抵抗は無駄ではない。ユエ達も強いが、それ以上に強い頼りになる存在は後からやってくるのだから

 

「无二打ッ!」

 

「かはあっ!」

 

先兵の背後から背骨に凶悪な一撃が直撃した。先兵は咄嗟に防御障壁を展開する事で、100の力を軽減する事が出来た。しかし、80以上の力でも凶悪なそれが背骨に直撃したのは最悪の一言。先兵は吹き飛び、地面に一回二回三回と転びつつ巨大な岩も砕いて吹き飛ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

「危機一髪ですね」

 

「流石深月、ナイスタイミング」

 

「だずがりまじだあああああ!」

 

「それよりも、ユエさん達は気絶しているティオさんを連れて離れて下さい。あの先兵は通常個体とは違って異質です。造形が少しばかり違う事から、急造された先兵かオリジンの先兵のどちらかです」

 

「我が主の器が何故もう一つ居る!?」

 

吹き飛ばされた先兵は立ち上がっており、所々に土埃が付いているがこれといった怪我を負っていなかった。深月の疑問点のその一、中村の身体でも何処かしらを破壊出来る威力を内包した无二打にも拘らず怪我の無い体。もう一つ、身体強化Ⅹのシアならパワーだけなら中村に劣らない強さを誇っている

この上記の二つでも分かる通り、この先兵は異常で想定外の敵だ。とはいえ、深月は仮説の一つが思い浮かんだ

 

「私の事はどうでもいいですが・・・ふむ、オリジンの先兵と考えていいですね。体から発するオーラが異常で、一つではなく十一種のオーラですか」

 

「十一・・・まさか!?」

 

ユエは深月の仮説を聞いて気付いた。自分達が倒した先兵の数は十体。同じか少しだけ力の差がある先兵がこれほどまで強くなっている事と、アルヴが先兵の一人を取り込んで手足を復活させた事を

 

「・・・吸収した?」

 

「ちょっ!?ユエさんそれ本当ですか!?た、確かにあの強さの裏付けに納得できますね」

 

先兵は深月の言葉から答えを導き出したユエに賞賛の拍手を送り、深月を指さしながら答えを述べる

 

「よく理解出来ました。私は原初の使徒、ゼロ。そして、貴女達が倒した一~十の使徒を取り込み、イレギュラーの知識を入れました」

 

ユエ達はこの先兵が深月の格闘術のノウハウを理解している事は知っていたが、深月本人は知らない。だが、こうも敵に情報をあっさり教える所は生みの親であるエヒトそっくりに深月はついつい笑ってしまう

 

「ふふふっ、生みの親が馬鹿ならその子である貴女も馬鹿ですね。いえ、これは一般論ではなくエヒトに限定した言葉ですね。敵に対して簡単に情報を渡す―――本当に馬鹿でくだらない」

 

「理解しているからこそ、ステータスで勝っている私の動きの方が強いという事です」

 

「ブフッ!」

 

深月は笑わない様に注意してはいたものの、堪えきれずに吹き出してしまった。一方、ユエ達は少しだけ心配そうに深月を見ていた。ステータス差があって動きを理解しているという事は、知っているのではないと分かっているので深月が不利であると思っているのだ

 

「んん・・・深月が来たのかのぅ?」

 

「あっ、ティオさん目覚めましたか?」

 

「ティオ、ボロボロ」

 

「仕方がないじゃろ。とはいえ、あの先兵は深月の動きを理解しているのじゃぞ?不利ではないか!」

 

「・・・ですよね」

 

やはりティオもユエ達と同様に、理解しているからこそどういった反撃があるか等を知っている事を危惧する。先兵も同様の様子で、「理解させるにはその身で体験が良いでしょう」等と言いたい放題である

 

「それでは、その言葉をそっくりと貴女に返しましょう」

 

「戯言をっ!」

 

先兵は背から魔力放出で一気に近づく。これもまた深月の記憶から得た情報の一つかつ、先手を取るに有利な手だ。深月は、音速を超えた速度で懐に飛び込んで来た先兵の顔面に向けて拳を放つ。それを予想していた先兵は両手で魔力放出をする事で避けつつ、遠心力で速度と破壊力を持った一撃を深月の側頭部に叩き込む

 

「だからこそ甘い」

 

「ぐっ!」

 

深月が放った拳が軌道をいきなり変えて先兵の顔面に飛んで来る。勿論、カウンターで直撃して攻撃が中断される。この深月の反撃に、ユエ達は目を真ん丸にした。「えっ、何が起きたの?」と口漏らしつつ深月の攻撃を見る

 

「ぜぁあっ!」

 

今度は手刀が脇腹目掛けて放たれる。しかし、それは深月の拳で指が砕かれて攻撃そのものを潰される。先兵は飛び退いて一度距離を取る。その間に指も治り元通りである

 

「何故・・・動きが見えない」

 

「あのですね・・・貴女が知識を得て、理解して自身の力にしたのは分かりました。ですが、その間に私が強くなっていないとでも思っていましたか?」

 

「な・・・に?」

 

これを聞いたユエ達は、手を叩いて理解した。この先兵は知識を理解して自身の物に出来た。だが、それはエヒトが深月の身体を乗っ取ってからまでであり、それから先の事は何一つ知らない。エヒトはハジメ達が三日で決戦の準備をして来たと思っているのだろうがそれは違う。刹破によって引き延ばされた二ヵ月の成長率を全くもって想定していないのだ

 

「それに、理解したとしてもそれは私だけの知識でしょう?その先の知識は知らないのであれば、所詮はその程度だけです」

 

深月は先兵にゆっくり近づいてゆっくりと拳を突き出す。先兵は両手で防御した瞬間、全体に走る衝撃は凄まじく、骨がへし折れて宙に飛んだ。先兵が地に着く時には両腕の骨は元通りになっている。しかし、それと同時に理解が出来なかった。力みがない攻撃なのに異常なまでの威力

 

「理解出来ないご様子ですね。一度しか説明しませんが、これは消力(シャオリー)という技術です。究極の脱力から放たれるそれは、直撃の瞬間に力を入れる事で威力を増大させるという事です」

 

「・・・成程。ですがよろしかったのですか?それ程丁寧に説明されては私は出来ますよ」

 

「はっ!武を学んで数日程度の輩に消力は取得出来ませんよ」

 

互いにゆっくりと近付き、ゆっくりと拳を出してぶつける

 

「づぅっ!?馬鹿な・・・どうして!」

 

吹き飛んだのは先兵の方だった。深月の方を見ても痛がっている素振りも見せていない事から、大したダメージを負っていない事が分かる

 

「究極の脱力の意味と直撃の瞬間に力の意味を理解しても、本当の意味では理解出来ない――――これが武です」

 

敢えて教え、それを真っ向から打ち破った深月を見たユエ達の感想

 

「「「深月(さん)ヤベェ(です)」」」

 

ステータスが上の相手を掌の上で操っている策、それを行使する技術。どれを取っても凄いとしか言葉に出来なかった。だが、これで先兵が慢心する事は無くなったという事が懸念点である

 

「成程・・・本当の意味で理解して体験しなければ発揮出来ないという事ですか。ですが、これならどうでしょう」

 

次の瞬間、先兵の魔力量が五倍近くまで増大した。それと同時に感じるプレッシャーは、今までの戦闘がお遊びレベルと感じる程のものだ

 

「限界突破の派生技能、覇潰ですか。そして、欠点と思われる魔力漏れは無し。これはデメリット無しで永久と想定してよいでしょう」

 

「これも貴女の知識と技術です。ですが、私は既に自分の物にしていますので先程の失態は致しません」

 

「はぁ・・・もう何を言っても駄目ですね。ならば、言葉は不要」

 

深月は何時でも迎撃出来る様に構えると同時に先兵は突撃する。先兵が崩拳を放ち、深月はその攻撃を紙一重で避ける。流れる形で顎へカウンターを叩き込もうとしたが、中断して側面から襲い来る蹴りを避ける。その際に、相手の足首に手を添え、動きの流れを阻害しない様に流して払う。そうする事で、重心が体から足に変わり、先兵はクルクルと回転しながら宙を舞い、深月がお返しの崩拳を腹部に放った

 

「はっ!」

 

「ガフッ!」

 

鈍器に殴られたような音が鳴り、深月はそこから更に力を解放する。消力という脱力からの攻撃は遅いと判断していた先兵の裏をかく攻撃、いつも通りの速さで攻撃かつ強力な打撃だ

先兵は再び吹き飛び口から血を吐きながら体勢を整え、ユエのオリジナル魔法の螺旋槍の超強化版のそれを無数に展開して連続で放つ。これは分解魔法も付与されて殺傷力が高く、少しの足止めを目的とした攻撃だ

 

「装填」

 

ユエ達は深月の勝利を確信した。分解魔法を装填してしまえば、物理、魔法の攻撃は素通りしてダメージを与える事は不可能だからだ。だが、深月は装填した魔力を放出して元の状態に戻った

 

「・・・意識誘導の魔法を上乗せしていましたか。状態異常を貫くというよりも、こちらの方がより良いと錯覚させる魔法は厄介ですね」

 

「それをいち早く見抜き捨てる―――ですが、これであの技術は封じました。貴女相手に勝率を少しでも上げる為に不要と判断した魔法を発掘して解析したのです」

 

「これは意外です。やはり、オリジンの先兵となるとそうやすやすとは殺せませんか」

 

「私は時間を稼ぐだけです。貴女はお気付きでしょう?私の身は残り数十分の命―――イレギュラーを諸共に道連れにするのですから」

 

「「「じ、自爆!?」」」

 

先兵の口から自爆と言うとんでもない事が発せられた。深月は先兵の魔力が徐々に大きくなっている事から大体は予想出来ていたが、これで呑気に平行線の戦いをしていたらお陀仏になるとはっきりと分かった。とはいえ、傷が直ぐに治る先兵相手となると生半可な攻撃は通じず、破壊力に特化した攻撃をする必要がある

 

「溜める隙は与えません」

 

先兵は己を消し飛ばす事が出来るであろう攻撃は、どれも溜めが必要であると想定して動く。射程圏内ギリギリを見極め、決して近付かず牽制する。遠距離からの攻撃はどれも防がれ、下手すれば順応して力に変換して対処される危険性があると判断した。先兵の予想は当たっており、今の深月が先兵を倒す為の攻撃には溜めが必要だった

深月は先兵の攻撃を対処しながらこの状況に一度舌打ちをして冷静に物事を判断する事にした

 

攻撃の一つ一つは左程の脅威は無し。ですが、近付けない様にしつつ搔い潜れば退避出来る距離を保っている。クソ神の前座としては優秀です。いえ、もしかしたらクソ神よりも立ち位置を理解していると想定してもいいでしょう。さて、相手の傷は骨折や内臓破裂でも回復するレベルとなれば、欠損でも治る可能性がありますね

 

深月は、武器を放り投げて先兵の視線をずらした隙を逃さず懐に飛び込み、魔力糸の刃を熱量操作で高温に高めたそれを振り抜く。先兵も直ぐに罠だと気付き腕を盾にしつつ後ろ跳びに避けて致命傷を避ける。高温で焼き斬ったので、切断面は火傷で出血もしていない。だが、切断した腕から新しい腕が生えてきた

 

「火傷で再生阻害は無意味・・・アニメ知識も無駄ですね」

 

「付け加えるなら、私は首を落とされても脳を破壊されても再生します」

 

「・・・厄介な再生ですね」

 

休む事のない攻撃を対処しつつ、一つ一つの条件を埋める

 

再生は恐らく細胞単位でしょう。並みの火力では不可能、効果的な攻撃はスト〇ーサンシャイン等の広範囲限定。しかし、この場にはユエさん達が居るので迂闊には出来ない事から、前方だけに放射する攻撃に縛られてしまいます。グラビ〇ィブラストは長時間の溜めが必要な事から却下―――短時間で新技を作るしかありませんね!

 

並列思考で記憶にある技を検索―――該当技複数。後方被害無しを検索―――該当技複数。両方の条件を満たす技―――該当複数

 

どれもこれもが一直線の攻撃ばかりですね!分解魔法の餌食となって攻撃力低下が駄目ですね。操作系の技は・・・ありましたが・・・えぇ、これやるのですか?私が?絶対に似合わないです。ヤダナーヤリタクナイナー

 

本家よりも威力が格段に上なのは確実だが、本家の映像を思い出してしまい、そのキャラの位置を自分に置き換えてみると・・・恥ずかしさがある。とはいえ、今まで散々アニメやゲーム技を再現しているので今更である

 

「深月、頑張れ!」

 

「深月さん、頼みますですぅ!」

 

「深月、頼むのじゃ!」

 

・・・・・やぁああってやるよっ!

 

覚悟を決めた深月は、魔力糸で杖を作成。何事も形から入る事でイメージを明確にして、威力を底上げする事が目的だ。先端に薔薇の様な花弁が付いた杖だ。本来この技は溜めが必要だが、深月の場合はそれが必要ではない

 

「世界を分かつ極光っ!ディバインレ〇ーン!」

 

杖の先端から魔力のレーザーが先兵に向かって放たれた。先兵は分解魔法の障壁を張って防ごうとしたが、放たれたレーザーの軌道が曲がり側面や背後から襲い掛かった

 

「なっ!?」

 

咄嗟に障壁を移動させて防ぐが、数発が直撃する。しかし、威力はそこまで大きくなかった。先兵は直ぐに深月へと視線を向けると、大量のレーザーが自身へ伸びている光景だった。全方位から襲い来るそれを動いて回避しようとしたら、足が空間に固定されたかの様に動かなかった。下を見ると光の輪が足首に着いており、その魔力反応は深月からの物ではなく、ユエのものだった

 

「イレギュラアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

深月だけを見ていたが故の失敗、魔法のスペシャリストはユエである。先兵は障壁と己の拳で迫り来るレーザーを防ぎ、砕く。だが、それでも防げないものもあり直撃してしまう。そして何より厄介なのは、威力が上がっている事だった。魔法の威力が上昇する事=手加減されていると思うが、深月が使う魔法は初めてだという事もある。慣れれば徐々に威力を上げるのも当然だ

一発受ける毎に何処かが傷付き、拳の皮膚が抉れる。再生力をも上回る速度と威力で放たれる魔法が、遂に先兵の腕一本を蒸発させた。そこからはあっという間で、もう片方の腕、頭、足を消し飛ばしたら、とどめの極光が先兵の身体を飲み込み、完全に消滅させた

 

「深月さんの魔法えっぐいです」

 

「ん。・・・一度でも当たれば即終わり」

 

「徐々に威力が上がるのは想定外じゃな」

 

「それはどうでもいいのです。ユエさん達は自力で地上へ帰る事が出来ますか?」

 

傷だらけの身体で深月の魔法について語る三人に、深月は質問する。だが、返ってきた答えは無理の一言だった。帰る為のアーティファクトが無い事と、この空間自体が歪に変化し始めているとの事だ

 

「それならば、私が持っている鍵を渡しますのでこれでどうにか地上へと帰還をお願いします。私はこれからお嬢様達と合流しますので、この空間もどうなるかが不明ですのでご注意を」

 

深月はユエに鍵を渡し、ハジメ達が進んだ先へと突入した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「あのビームを放つ人物をメイドさんに置き換えてみましょう!」
深月「絶対に黒歴史になります!イヤダーイヤダー!!」
布団「世界を分かつ極光っ!ディバインレ〇ーン!」
深月「ぐはっ!?」
布団「メイドさんの中二病黒歴史が出来ちゃったよ♪」
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