ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「台風で予定ズレるぅ!」
深月「予定外の仕事は大変ですね」
布団「それと、野菜の高騰ヤバイ。冬野菜が順調に育つか怖い・・・」
深月「時の運もありますので断言はできませんね」
布団「暗い話もやめて、一気に執筆したよ!ゲームのイベントなんていつも通り放置してやっちゃったぜ!」
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」








メイドは更に覚醒する

~ハジメside~

 

エヒトが住む最深部、宇宙とも言えるそこでは両者の攻撃が激突していた。降り注ぐ白い流星群を、赤い魔力光が迎撃している。千を超える数の一斉攻撃は、拮抗する

 

「クハハハ!こちらは小さじ程の力しか解放していないぞ?もっと踊れ、イレギュラー共!」

 

「ちぃっ!」

 

「めんどいっ!」

 

しかし、その拮抗は力を少しだけ解放したエヒトによって崩される。一割も引き出していない力の解放でも強力で、両手を合わせて広げた掌から白く輝く粒子が煌めく。その一つ一つがハジメ達に近付き、盾として召喚したゴーレム達を崩壊させて素材となる鉱石に戻す。再生魔法の応用だろうか、時間の逆行とも言えるその魔法は、触れれば最後だ

 

「だが、この程度の事も対処出来ない様じゃ挑まねえよ!」

 

巨大チャクラムの円月輪・対を飛ばし、下方へと転移させてやり過ごしドンナー・シュラークでエヒトの急所へ迷いなく撃ち込む。だが、それらの攻撃は全て障壁によって阻まれて攻撃すら通らない

 

「心臓を躊躇いなく狙うその性根・・・楽しませてくれるな、イレギュラー」

 

「深月の身体でも、撃つ時は撃つわよ」

 

手加減は出来ない。手加減をして攻撃すれば、圧倒的なステータス差で殺される可能性があるからだ。それに加え、エヒトが面白がって絶対に軽傷を負う攻撃を与えてくる事が目に見えている

 

「そうかそうか。では、徐々に開放してゆくぞ。イレギュラーの手持ちが無くなるまで遊ばせてもらおう」

 

「消耗戦に持ち込む気か、数は俺達に分があるぜ?」

 

「これを見てそう言えるかな?」

 

エヒトが片手を挙げると、光が収束して形成される

 

「なっ!?」

 

「噓でしょ!?」

 

エヒトが作ったのは近代兵器で、ミニガンに近い形だ。だが、それは自動照準みたく銃口を自動でハジメ達に向けている。ハジメは、宝物庫Ⅱから六連ガトリングガンを取り出すと、光のミニガンが形状変化して同じ六連ガトリングガンへと変貌する

ハジメが光のガトリングガンに向けて弾丸を放つと、あちらもハジメに向けて迎撃を開始。皐月が間を縫う様にして、ドンナーで狙撃して破壊する。だが、光は霧散しただけで、追加と言わんばかりに周囲にライフルが三丁追加された

 

「っこの!」

 

「踊れ踊れ!もっと我を愉しませろ!」

 

エヒトはクツクツと笑みを浮かべながら、わざと同じ土俵で立って戦いを愉しむ。ハジメ達が武器を出せば、同じ武器を作って迎撃し、どの様に戦うかを観察するのだ。自分から動く事はしない

代り映えのしない迎撃、いちいちイラつく笑いと言葉を口に出すエヒト。だが、ハジメと皐月は舌打ちをしつつこの現状を打開する一手の作戦を構築していく

 

「そういう事か。だったら、もっと派手に愉しませてやるよ!」

 

「我の力を引き出してみろ、イレギュラー。この身体、究極の肉体を堪能させてやろう!」

 

「てめぇに堪能されたって嬉しくもなんともねえ!」

 

ハジメは、改良したシュラーゲンに強化パーツを取り付ける。それは大砲の様な大型な筒だ

 

「ぶっとべ」

 

ガゴンッ!

 

「ほう?」

 

放たれた砲弾は相手の攻撃を弾き、エヒトの障壁に直撃した。大きな砲弾は、衝撃が分散して貫通力は無い。だが、それを補う破壊力がある。障壁を張ったエヒトを少しだけ後ろへと押し込む事が出来たのだ

 

「大した破壊力だ。だが、見るからに一発一発しか放てないであろう?」

 

「おいおい、一体誰がこれで終わりだって言った?」

 

エヒトの背後から弾丸が襲う。しかし、それも予見していたのか障壁で防がれる

 

「これで終わりか?」

 

背後の奇襲はあくまで囮で、本命は

 

「捻れ狂う―――偽・螺旋剣(カラドボルグ)!」

 

右手の義手が弓の形状に展開した皐月がエヒトを見据え、先端が捻れた矢を放った。その矢はエヒトの障壁を貫くが、少しだけ軌道が逸れて右手に突き刺さった

 

「この身体に傷を負わせるか。なるほど、その矢が切り札という訳か。だが、次に当たる事は無い」

 

ハジメが偽・螺旋剣を放つが、エヒトはそれを少しだけ体をずらして悠々と回避する。この矢に付与した概念は、周囲を抉りながら貫通するという大雑把でありながら効果範囲が限られている。その周囲を抉るという概念を付与したやにも拘わらず、紙一重で避けても傷が付いていないのだ。その事から、概念魔法の威力が身体強度を上回っていないという結果になる

 

「とはいえ、我が体を傷付けた功績は認め―――片腕を使ってやろう」

 

「何?―――ガアッ!?」

 

エヒトが左腕を動かし、人差し指をハジメに向ける。その瞬間、ハジメに悪寒を感じて盾を展開する。例え先兵の分解魔法でも貫通する事のない盾だが、それを貫通してハジメの腹部を貫く

感知技能に引っ掛からずの攻撃を受けた事に驚愕したが、盾を陰にして表情を悟らせない様にする。だが、それもエヒトは勘づいていた

 

「感知技能を持っていながら感知出来なかった事に驚愕している様子だな。だが、イレギュラーでは成し得ぬ事だ。気力操作―――万能の力ではないか!あぁ、魔力とは別側面の力は馴染む、実に馴染む!」

 

「喋りがキモイ!」

 

ズギュゥゥゥウウウウン!

 

皐月がシュラーゲンA・Aで攻撃。皐月のシュラーゲンも強化パーツを装着しており、弾丸が発射されるのではなく、ヒュベリオンのレーザーを集約して放つ高火力の小型ヒュベリオンと思ってくれれば分かりやすいだろう

障壁は破れ、エヒトの左腕を炭化させる。しかし、炭化した部分が削げ落ち元の綺麗な腕へと再生した。攻撃が通るだけましだと思いたいが、直ぐに再生されるのて厄介だ

 

「再生という事は、再生魔法も難無く使えるという事ね」

 

「大なり小なり神代魔法の全てを扱えるこの身体は素晴らしい。正に、我の為の身体と言っても過言ではない」

 

エヒトは、皐月の方へと指を向けてハジメを攻撃した物と同じ攻撃を放つ。皐月は、直感で射撃線の予測をして回避する。だが、エヒトの攻撃は早く少しして皐月の腕に直撃しようとした攻撃は、直撃する手前で軌道を変えて直撃を免れた

 

「・・・どういう事だ」

 

「私には手加減って事?舐められたものね!」

 

皐月はミーティアの改良版―――ミーティア・ティアーズを取り出し、エヒトに向けて撃つ。魔力弾は棘の様に鋭く細い形となって襲い、一転に魔力弾が重なった場所は障壁を貫通してダメージを与える。とはいえ、致命傷を負わせる事はなかった

 

「煩わしい」

 

エヒトが指パッチンすると、鋭い剣が頭上に現れて武器目掛けて降り注ぐ。アザンチウム鉱石をコーティングしている武器なので傷付かない筈の武器は、バターの様に切り裂かれる。恐らく、剣には分解魔法が付与されているのだろう。皐月は、武器を宝物庫に回収して、攻撃を偽・螺旋剣に切り替える

 

「スイッチ!」

 

ハジメが後退し、皐月が前衛を務める。これで後ろから攻撃されない限りは大丈夫だ。あの早い攻撃はエヒトから直線状に放たれ、皐月に直撃する事がない。理想の配置である

エヒトはその後も攻撃を行うが、その全てが直撃手前で逸れて当たらない。原因は不明だった。だが、エヒトはしばらく攻撃を続けた事によってその原因を突き止めた

 

「やはり神楽深月というイレギュラーは予想外な事ばかりを引き起こす。この身体に概念魔法を根付かせていたとはな。しかも、主を傷付けないという制約とは、何とも忠義の厚い者だ。我の物になれば寵愛を授けていたものを」

 

シュネーの解放者の拠点で概念魔法を創った際、自身を対象とした概念魔法を創っていたのだ。主である皐月に危害を加えないという物だ。これはもしもという時に発動する概念で、深月の攻撃が流れ弾として直撃する事を避けるという物だ。限界を超えた深月の攻撃は、一つ一つが強力となり周囲に被害を及ぼす可能性を考慮しての措置だったのだ

 

「深月の用心深い保険が良い方向に作用したって事か!」

 

「良い仕事をしてくれるわ!」

 

だが、その状態が続くとは思わない。現状では攻撃が当たらなくとも、後半では対処をして当ててくる可能性があるのだ。攻撃できるチャンスは少ないし、それでも相手の攻撃を確実に捌きながらと条件が厳しい

 

「少しばかり解析に時間が掛かるが、それまでの愉しみとして踊れ」

 

エヒトの攻撃がより激しさを増し、皐月はまだしもハジメは迂闊に攻撃が出来なくなった。攻撃の密度が段違いになったせいで皐月のサポートだけしか出来ず、作戦を立てる

 

どうする?今は皐月のお陰で凌げているが、それでも危険な事には変わりない。何か決定的な一撃を入れる方法はないか?・・・そういや皐月のドンナーのレーザーは攻撃が通ったな。あの障壁は完璧だと思ったが、腕が炭化していた。まさか、そういう事なのか?だったら、速攻で作り上げるしかねぇ!

 

ハジメは宝物庫から素材を取り出して新しいアーティファクトを作る。それは手榴弾の形をしているが、中身は別物だ

 

「皐月!」

 

「分かったわ!」

 

皐月は円月輪・対を操作し、速い攻撃の一つを選びエヒトに向けて通し返す。ハジメは目の前に円月輪・対の一つを浮かべて、手榴弾を全力で投球する。通し返した攻撃はエヒトの障壁に直撃して攻撃が一旦止み、ハジメの投げた手榴弾がその攻撃の後を追って障壁に直撃して割れる。その中身は黒いタール状の液体―――フラム鉱石だ

皐月は間髪入れずにレールガンを放つ。結果、レールガンによる発火が起こり、障壁にこびり付いたタールが燃える

 

「イレギュラーが噛みつくか!」

 

エヒトは障壁で燃える事はないが、その熱量だけは別だ。肌を焦がす熱量にエヒトはすぐさま対応するが、それでも手足が直ぐに動かす事は出来ない程のダメージを与える事が出来た。それだけでも十分な時間だ

 

「これは今までの攻撃とは比較にならねぇぞ?」

 

「ある意味攻撃の概念を矛盾させるのよ」

 

宝物庫から巨大なライフルを取り出し、二人で協力する形で心臓部に向けて銃弾を放つ

 

「「照準クリア―――――ブラックバレル発射!」」

 

これがハジメ達の概念武装の名前だ。まんまパクリであり、神に使用するという点も同じだ

 

「ぐっ、ぬぅうううううううう!」

 

エヒトは力一杯障壁を張るが、障壁を削りながらも威力は衰えない黒い弾丸に冷や汗をかく。遂に障壁を破った黒い弾丸はエヒトの心臓部を貫いた。確実にエヒトを捉えて殺したと思ったが、エヒトは再生魔法で即時再生しながら危機をやり過ごした

 

「一体何時ぶりだろうか、我が焦るとはな。だが、惜しかったぞ?この身体と我の魔法の前には通用しなかったがな」

 

「けっ!ならもう一発お見舞いするだけだ」

 

「では、そろそろ終いにしよう」

 

ハジメは弾丸を装填しようとしたが、エヒトがその場から動かずハジメの義手を捥ぎ取った

 

「っが!?」

 

痛みで一瞬だけ硬直した体に、硬いハンマーで全体を連打で殴られたと錯覚する程の痛みが来た。エヒトが動いた様子もないが、恐らく気功の硬質化によって威力を底上げした攻撃であろうと理解は出来た。咄嗟に皐月がハジメの前に立とうとしたが、ハジメと皐月の間に障壁が張られていた。いや、障壁は皐月の周囲に張られているのだ

鳥籠の中に入った皐月は、パイルバンカーを取り出して障壁に攻撃するが貫く事が出来なかった。皐月は驚愕した表情でエヒトを見ると、ハジメに攻撃しながら笑みを浮かべていた。今までの障壁はあくまでもエヒトが愉しむ為の弱い代物であり、獲物を逃さない頑丈な籠を作ったのだと理解した

 

「ハジメ、私の周りには障壁が張ってるわ!」

 

「行かせるとでも思っているか?」

 

「クソッタレ!」

 

ただでさえ片手というハンデを負ってしまったハジメに余裕はない。徐々に体に打ち付けられる攻撃が威力を上げている事に気付きながら、なぶり殺しにするつもりなのだ。ハジメが予測だけで避けていると、背後からも衝撃があった。だが、背後には誰も居ないし武器も存在していない

 

「・・・どういう事だ」

 

「クハハハハ!もっと踊れイレギュラー。我はまだまだ余裕があるぞ?この空間を支配しているのは我だぞ?全方位から攻撃を与える程度造作もない」

 

ハジメは、この状況はどうしようもない程手詰まりであると理解した。そもそも、感知技能を持っているハジメでは避ける事が出来ない気力の攻撃が全方位となれば、亀の様に固まる他ない

 

「さて、終幕だ。この映像はイレギュラーの仲間や地上にも見せてやろう」

 

エヒトは手を振って、ユエ達や地上に居る者達にハジメ達の現状を見せる

 

「神たる我に歯向かう愚か者共よ。貴様達が望みを託したイレギュラーの処刑を見せてやろう。なぁに、心配する事はない。後程我手ずから貴様達も殺される栄誉を与えてやろう」

 

ハジメは逃れようとしたが、手足に光の鎖が巻き着いて身動きする事が出来なくなった。ハジメの方からもユエ達の様子を見る事が出来る様にしており、皆が絶望しようとしていた

 

「我を愉しませたイレギュラーよ、さらばだ」

 

エヒトは光の大剣を顕現させハジメの首に振り下ろし―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギュベッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメへと大剣を振り下ろそうとしたエヒトは、人身事故の様に遠くへ吹き飛んだ

 

「へっ、全く遅えよ」

 

「これでも早く来ましたよ?」

 

エヒトを殴り飛ばしたのは、ハジメ達の元へと合流した深月だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

深月はエヒトが居る場所へと侵入し気配を溶け込ませてハジメを探して発見すると、皐月が身動きを取れずハジメが一方的に攻撃されている光景だった。これを見たら、深月は突撃して強襲するだろう。だが、それをすぐにしないのは作戦の一つだからだ

 

お嬢様の傍まで近づいて色々と観察しましたが、ブラックバレルをエヒトへ撃ち込まれた様子ですね。となれば、作戦は順調、後は私がタイミング良く介入する。それはクソ神が勝ち誇った顔へと拳をねじ込むだけです

 

そして、深月は作戦通りエヒトが勝ち誇った笑みを浮かべながらハジメへと大剣を振り下ろしたと同時にピンポイントバリアパンチをねじ込んだという事だ

 

「さて、お嬢様を囲うこれも邪魔です―――ねっ!」

 

深月が掌底を叩き込むだけで、皐月の周囲を囲んでいた障壁は砕けた

 

「ハジメ!」

 

「・・・おっふ」

 

深月の予定では皐月は感謝してからハジメの所に行くと思っていたが、深月を素通りしてハジメへと一直線に行ったのだ。主として従者を信頼して無事であると確信しているからこその行動だろうが、それでも深月にとっては悲しいのだ

 

「馬鹿なっ!?何故器であるイレギュラーがここに居る!」

 

「気付かなかったという事は、地上等碌に見ていなかったという事ですね。いやはや、上で驚愕させて正面からぶち壊して進んだ意味がないではありませんか」

 

因みに、この会話も全て地上へと流れている。知らない者が見れば、同一人物が敵対している様に見えるだろう

 

「何もかも計算外となるか。だが、それでこそ面白い。我の計画を悉く邪魔するイレギュラーの貴様を躍らせ―――」

 

「隙だらけですね」

 

「ぐはっ!?」

 

喋っていても攻撃するのは当たり前だが、地上に居る兵士達は、「せめて最後まで聞いてあげなよ」と思っていたりする。エヒトは腹部を押さえながら深月を見据える

 

「貴様・・・神である我の言葉を遮るか」

 

「神だからどうしたのですか?戦いの最中無駄に喋る事は不必要、言葉遊びをするのであれば戦いながらでも十分ではないですか。それとも、その余裕もないと?」

 

「粋がるなよ?所詮は人間の枠組みに居るイレギュラー共には我に攻撃は届かぬ」

 

いや、さっきは殴られたじゃんと思いつつ敢えてそれは口にしない。口撃しても逆上させてトータスを崩壊させる可能性がある。とはいえ、それが出来るかは分からない

 

「人は醜い故に、我を愉しませる駒だ。その駒が主である我に歯向かう事自体烏滸がましい!」

 

「・・・はぁ・・・で?」

 

「貴様等イレギュラーは我の手で裁きを下す。特に貴様達は我に傷を付けたのだ。楽には殺さぬぞ」

 

「あ、ハジメさんとお嬢様は離れて下さい。あれには少々鬱憤が溜まっていますので」

 

深月はハジメと皐月の手握って離れる様に促し、二人はそれに従って離れる

 

「忘れたのかイレギュラー、この空間は我の手中にある」

 

エヒトはハジメに攻撃をするが、ハジメはそれを首を傾けるだけで回避した。まるで来ると分かっている様子での回避に、エヒトは疑問に思った。だからこそ、隙が生まれる

 

「考え事とは余裕ですね」

 

エヒトはハジメ達から視線を戻して正面を見ると、既に深月が懐に飛び込んでいたのだ。障壁を張っていたのにも拘らず潜り込まれた

 

「鉄山靠ッ!」

 

「ガッ!?」

 

鉄山靠で胸部から下に衝撃が走り神経系の反応速度を遅らせ、裏拳、肘打ち、フック、アッパーとコンパクトな連打を繋げて再び吹き飛ばす。だが、エヒトは吹き飛ばされながら深月に全包囲攻撃を行う

 

「技能頼りの攻撃を技術を使う私に通用するとでも思っているのですか?」

 

「馬鹿なっ!?」

 

エヒトは再び驚愕する。全方位からの攻撃を深月は見えているかの様に悠々と避けて接近する。エヒトは上体を起こして防御態勢に移るが、深月は改良版のハーゼン・B(ブラック)を構えて頭部目掛けて射撃。エヒトは頭をずらして回避する事が出来たが、深月は攻撃と同時に気配を溶け込ませて一瞬で背後に回り込んだ

 

「无二打!」

 

「ぐがあああああああああああああ!」

 

もろに背骨に直撃し、深月の拳には背骨を粉々に粉砕する手応えを感じた。だが、エヒトもまた再生魔法で元に戻して深月に近接戦闘に持ち込んだ。これには深月もにっこりである

 

「イレギュラー、貴様はこの神の手で直接殺してやろう」

 

深月が攻めの消力でエヒトの拳を迎撃した瞬間、拳が粉砕された。これには深月もびっくりだ。ゼロに言った知識の理解では武を発揮出来ないという根底が覆ったのだ。しかし、深月はこの根底は間違ってはいないと予想しており、エヒトの攻撃には何かしらの要因が含まれていると推測した

 

「所詮は人間、我の前に平伏せよ!」

 

深月は攻撃から防御に移り、エヒトの攻撃を敢えて受ける事にした。すると、貫通力のある拳ではあるが威力は深月が攻撃するものより少し上程度だった

 

攻撃すれば衝撃が強く、防御では衝撃が少ない―――考えられる事は二つ。万象〇杖による衝撃内包を即時放出もしくは、衝撃反転という概念か何かを作ったという事でしょう。私の身体を狙っていた事からこういう使い方を想像していたのでしょう。なるほど、引き出しはまだまだありそうですね

 

深月は防御から攻撃に切り替え、わざと真正面から拳と拳をぶつける。最初の攻めと同じ様に大きな衝撃が深月の手に直撃するが、その衝撃を取り込み無害化させる。エヒトが深月の拳が砕けていない事を疑問に思っている瞬間に、膝にローキックして衝撃をそちらに放出する。攻撃に、エヒトは膝を破壊されて足を捥がれた

 

「ぎぃいいいいい!貴様貴様貴様キサマァアアアアアアア!!」

 

「はあっ!」

 

深月の気合砲がエヒトを弾き飛ばす。大地を転がる様に回転しながら急停止して深月だけを見据える。人間に手も足も出ない現状に怒り狂っており、額に青筋を何本も浮かべていた

 

(ハジメさん、お嬢様、準備は如何程でしょうか?)

 

深月がハジメと皐月に念話を送る。恐らくユエ達や地上に居る者達は、オシオシで深月がエヒトを倒すと思っているだろう。だが、ハジメ達の目的を思い出して欲しい。これはオリジンの深月の身体からエヒトを引き剥がし、ついでにエヒトを殺す戦いなのだ

 

(ああ、深月が時間を稼いでくれたお陰で何時でも行けるぜ!)

 

(お嬢様、任せましたよ?)

 

(責任重大ね。でも、深月なら帰ってくるでしょう?)

 

(まぁ、私ですから確実でしょう)

 

エヒトは体から大量の熱気を放ち光が迸る。その光は神の気―――普通の気ではない特別なそれは深月でも確実に感じ取る事は出来ない。明らかにパワーアップしているエヒトが深月に殺意を向けながら突撃して来た。深月も迎撃しようとしたが、想定していたよりも遥かに早いスピードで近付き攻撃された

 

「っこれは!?」

 

深月は限界突破の最終派生の極限突破を使用しているにも拘らず、その衝撃全てを受け止める事も出来ず吹き飛ばされる。エヒトは猛追し、深月の頬に一撃を入れた

 

「がっ!?」

 

たった一発で頭蓋骨全体にに罅が入った。再生魔法で即時回復して次の攻撃を防ぐ事に全力を注ぐ。光の軌跡の中に存在するエヒトは見えるが、攻撃のモーションが見えにくく回避出来たり出来なかったりする。明らかに劣勢だが、深月は痛みを気にする事もなく集中力を高める

 

集中集中集中集中―――無駄な思考は取り除け。目の前の事だけを考えろ

 

マルチタスクを消していき、徹底的に目の前の事だけに対処出来る様に集中力を上げる。周りの音が聞こえにくくなるが、感知がより鋭くなり体を最短距離で動かす

 

「死ね、イレギュラー!!」

 

エヒトの回し蹴りを受け流し、掌底を叩き込み深月も反撃に移る。両社は激突し、周囲に衝撃を放ちながら攻防を続ける。聞こえだけは対等と感じるが、この攻防は深月が劣勢で防御する回数が圧倒的に多い

 

「は、ハハハハハ!やはり神である我はこうあるべきだ!人という駒は力で操るべきである!!」

 

ハジメと皐月の目でも追いきれない速度の攻防は想定よりも悪い。とはいえ、最悪の想定ではないので作戦は続行―――今は全てが深月頼りになる。この局面を乗り越えなければ攻略出来ない

 

「我が威光に平伏せ、イレギュラー。神の拳で死ねる栄誉を授けよう!」

 

「神神神とやかましいっ!」

 

エヒトの乱打が深月を襲い、完全には防ぎきれないが急所だけは防ぐ

 

「無駄な抵抗をせず頭を垂れ運命を受け入れよ!」

 

深月は弾き飛ばされ、エヒトの追撃の気弾が襲う。もし、ハジメ達が気弾を一発でも直撃すれば即死する程の威力が迫った時、深月の集中力が極限突破を超えた。その瞬間、体が全ての気弾を最小限の動きで回避した。傍から見れば、攻撃が深月を避けて通過したと思われる。それ程早い動きで、エヒトもその動きを捉える事が出来なかった

 

「・・・何をした?」

 

エヒトは何が起きたか分からず、深月に攻撃する為に構えを取る。一歩―――少しだけ足を動かして近付こうとした瞬間、胸部に衝撃が走った

 

「なにいっ!?」

 

エヒトは吹き飛ばされながら体勢を整え、再び深月へと突撃しようとした時に肌に熱を感じた。ハジメと皐月と戦っていた時のタールが燃える熱量ではなく、もっと違う熱量だ。それがどういった熱なのかは言葉に出来ないが、深月を中心に発生する熱を感じていた

 

「うぉおおおおおあああああああああああーーーーーーーーーーーー!」

 

深月の雄叫びは、男が吠える様な力強い厚みがあった。その雄叫びを上げたと同時に、深月を中心に広がる熱と白銀の宇宙が広がった。その輝きは誰もが見惚れる美しさがあり、どこか安心させる輝きだ。だが、エヒトからは理解出来ないイレギュラーな事ばかりが起こり、苛立ちが募る

深月は深呼吸をして、力を蓄えているのか落ち着きを取り戻しているのか分からない。だが、間違いなく良い事が起きているという事だけは分かる。ハジメと皐月はようやく待ち望んだ展開に、いつでも仕掛けを発動できる準備を開始した

 

「イレギュラーめ、何度我の計画を乱すつもりだ。どれ程の力を蓄えようと、人間の貴様は神たる我には一生届かぬ!」

 

エヒトは、片手を挙げて手に気力と魔力を混合させたエネルギーの玉を生成。もし、地上に落とせば塵一つ残さずに消滅するのではないかと錯覚するエネルギーだ。そんな玉をたった一人を葬る為だけに作って落とした。深月に逃げ場はなく、受け止める位しか考えつかない

深月は、足に力を入れてエネルギーの玉に突き進んだ。これを見たハジメ達以外の者達は、終わったと思った。だが、深月が突き進んだと同時に、エネルギーの玉はかき分けられたかの様に力が霧散して消えた。そして、エヒトの頭上に佇み見下ろす深月は、影の深月と戦った時と同じ様に・・・いや、あの時は銀色だったが今は深月の髪色と同じ白銀色で変化が分かりにくいが、光の粒子が炎の様に深月を包み込んで舞い上がっている。その変化がどういった物かを理解したのはエヒトだけだった

 

「ば・・・かな!?ただの人が神気を纏うだと!?」

 

「「!?」」

 

ハジメと皐月は驚愕した。深月の生まれは平凡な地球で、両親も普通の人間。いや、深月の両親は屑親である

それでも分かる事は、深月は人から神の領域へと入り込んだという事だ。人間の究極―――生まれた時代を間違えたのではないかと思う程の覚醒だ。影との戦いで身勝〇の極意を偶然にも習得したのは分かっていたが、それを意図的に引き出す事は難しい事も分かっていた。だが、それを通り越しての覚醒はいい意味での予想外だ

 

「終わりにします」

 

「イレギュラーが大言を吐くか。その自信を打ち砕いてやろう!」

 

身勝手〇極意・白銀へと覚醒した深月と、フルパワーでオーラを増したエヒトが激突した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「メイドさんのオリジナルの覚醒―――白銀という名にしたのは、メイドさんの見た目から取っています」
深月「ネーミングセンス・・・」
布団「同じ名前だと、白銀の粒子が燃え上がる様に巻き上がらないし・・・」
深月「・・・仕方がありませんね」
布団「取り敢えず、次回はメイドさんとエヒトの戦い!とはいえ、一方的になります。この覚醒メイドさんには勝てません」
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