ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「おまちどうっ!」
深月「遅いですね」
布団「いやぁ~、雀魂とプロセカにハマりまして遅れました。弁解もございません」
深月「それでは皆様方、ごゆるりとどうぞ!」
布団「ツッコミさえない」
















メイドは慕われている?黒幕排除と新たな厄介事

~???side~

 

暗い室内に研究服を着た男性や女性達が映像を見てかなり慌てていた。その映像とは、ニュースや実況アプリ等様々だ。彼等が慌てている理由とは―――

 

「どういう事だ!何故あれ等が流出している!?」

 

「どうやら機密ブロックの防壁を破ったとの事です。生き残りは監視室に居た数名だけです」

 

「ちいっ、これだから日本で研究なぞするなと言ったんだ!それを欲深な奴がこちらの弱みを握っているから・・・。おい、こちらの情報が洩れる様な文章や資料は送っていないだろうな?」

 

「それについては問題ありません。古い方法ではありますが、情報はモールス信号で簡潔にしております」

 

「ふっ、それならば履歴を見ようとしても無駄だな」

 

研究者は再び流れる映像を見て、次の手をどうするかを画策する

 

「所長、これとは関係ありませんが高坂家がこちらの尻尾を掴みました」

 

「トカゲの尻尾切りとはいい言葉だな。実にいいカモフラージュだよ」

 

所長と呼ばれた男性がスイッチを押して対処が完了した

 

「全く、爆破ではなく毒による集団自殺とは恐ろしいですね」

 

「事前に"我が教団は不滅"という文字を大きく描かせ、施設はここよりも重厚に繊細にを心遣いしてやったのだ。誰もが本丸だと思うさ」

 

「・・・米国の変態集団対策は出来ていますか?」

 

助手の女性の言葉を聞いた所長は、額に手を当てて溜息を吐く

 

「あれはある時期から低迷している。全くもって問題ない―――とは言えん。一度奴等の狂気を見せつけられた身としてはアンタッチャブルだ」

 

「触るべからず・・・ですか」

 

「あれを理解しようとするな。奴等の出鼻を挫くには、先制爆破意外には思い付かん」

 

米国には特殊部隊が居り、その中でも一際目立つ変態な隊がある。普通ではない直感と統率と援護により、味方になれば心強く、敵に回れば厄介極まりない者達なのだ。狂信者とまではいかないものの、それに準ずる何かを持っていると言った方が正しい

 

「これからどうしますか?」

 

「実験は続ける・・・が、今は隠れる事が先決だ。何事にも機を見なければならん―――――ひぎゃああああああ!?」

 

所長は、新たな情報を得る為に映像を切り替えた瞬間悲鳴を上げた

 

「しょ、所長!?どうされたのですか!?」

 

「・・・に」

 

「に?」

 

「逃げるぞ!今すぐ此処を放棄して国外へ退避する!」

 

「え?いや、いきなりどうして・・・」

 

「貴様にはあれが見えんのか!」

 

副所長や他の研究者達が所長が見ていた映像を見ると、一人のメイドが産物達を蹂躙する映像だった

 

「いや、凄いですね。こんな達人が居ようとは・・・」

 

「馬鹿もん!」

 

「うっわ、逸らしてますよ。あれ本当に人間?ちょっと遺伝子欲しいわね」

 

「あほぉおおおーーー!」

 

「さっきから五月蠅いですよ所長。あの遺伝子、絶対に欲しくないですか?」

 

所長以外の研究者達全員が、深月の遺伝子が欲しいと言っている。しかし、所長はそれどころではなかった

 

「貴様等は知らなさすぎる!あ、あれは化け物だ。しかも進化している・・・。もう駄目だぁお終いだぁ。勝てるわけがない」

 

所長は膝から崩れ落ち、体を震わせながら絶望していた。流石にここまで怯えている所長を初めて見た研究者達は、何があったのかを聞き出す

 

「あれは・・・あの米国の変態共の隊に居た子供だ。齢十歳にも満たない少女が戦場に出て変態達を鼓舞して蹂躙するあれは恐怖以外の何物でもない。援護の狙撃は例え数キロ先でもヘッドショットを決めて敵の士気を低下させ、近接戦を試みた熟練兵士はすれ違いざまに喉を切られて死んだんだぞ!?」

 

『え?何その化け物・・・』

 

「だから急げ!ここにある資料は燃やし、コンピューターのデータは破壊だ!物理で完璧に修復出来ない様に破壊しろ!」

 

『りょ、了解しました!』

 

命令を速やかに実行する研究者を他所に、所長は冷や汗を垂れ流していた

 

(何故だ!何故だ何故だ何故だ!?あの悪魔の子供が何故居るのだ!?いや・・・待て、ニュース報道で帰還者と言っていた―――――ふざけるなっ!ふざけるなぁーーーー!あの化け物は未知の力を得ているというのか!?)

 

所長のストレスは天元突破して髪の毛が少し抜けた。それだけ深月の存在は敵にとって恐怖の象徴であり、厄介極まりない存在なのだ。本人の知らぬ所でこの所長と同じ様にストレスマッハな者達は色々と居るが、それは活動に戦場を主としている傭兵達だ。ただただテレビに出ただけでこの打撃・・・最早兵器と言っても過言ではない

 

「終わったな!?急いで逃げるぞ!」

 

所長や研究者達は手持ちを最小限に逃亡。いざという時の為の秘密の通路を使って逃亡するのは見事だと言えるだろう。そして、彼等は一般人の格好になり人込みに紛れて次の集合地点へと向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~深月side~

 

あの時に調教したトラの形をしたキメラがここまで大きくなっているとは思いませんでしたね。あぁ~、癒されます。これは是非とも高坂家のペットとして大旦那様に進言しなくては!

 

現在、深月はキメラを高坂家へと誘導している。まぁ、深月が歩けば歩き、深月が止まれば止まる等のしっかりとした知能を持っている事が分かった為、安全に誘導する事が出来ている。歩いて高坂宅へ帰宅すると、空はすっかりと夕暮れになっていた

そして、高坂宅には現在の嫁~ズが勢揃いして出迎えをしてくれた。そして、キメラは執事長を見た瞬間飛び掛かり怪我がない程度の力でじゃれていた。あっという間の出来事に皆が困惑していると、執事長は既視感を思い出した

 

「・・・これ、あの時のですか?」

 

「そうですね。あの時のトラさんです」

 

「・・・成長しましたね」

 

「毛並みはとてもいいですよ。大奥様、触ってみますか?」

 

「あら、いいの?それじゃあ触るわね」

 

癒理が座ったキメラのお腹を触り、顔を埋めて体を預けた。これだけでも分る通り、モフモフを堪能している

 

「これは癒されるわ。あなた、私が言いたい事は分かるわよね?」

 

「いや・・・流石にそれは・・・はい、ガンバリマス」

 

癒理の眼光が薫に突き刺さり、色々な所への根回しを済ませるのは並みの苦労ではないだろう

 

「癒理おばあちゃん!ミュウも!ミュウも!!」

 

年相応の子供ならこのトラ型のキメラを見ただけで悲鳴を上げるのだろうが、ミュウは直感でこのトラ型のキメラは意味もなく襲わないと感じた。癒理に抱かれてキメラの背中に乗り移り、普通よりも高い景色を見てきゃっきゃとはしゃぐ

トラ型キメラのモコモコに癒されている女性陣を他所に、薫を中心とした男性陣+深月が集まり今回の事件について仮説を立てる

 

「以前から足取りを掴んでいた欧州にあるオカルト組織を潰したのだが、その中で遺伝子工学の資料や培養槽が発見された。そして、組織の主要人物達は全員自殺していた」

 

「更なる報告によりますと"我が教団は不滅"と書かれた血文字が発見されています。恐らく、本体を潰しても尻尾が生きていると思われます。しかし、その尻尾はお嬢様方がこちらに帰られる前に潰したので問題はないかと思われます」

 

「そうなんですか?俺達が拉致られた後って結構物騒な事が起きていたんですね」

 

「ハジメ君、私達は自分達の子供が拉致されたんだ。怪しい組織は徹底的に排除するのは当然だよ?」

 

「あっ、はい」

 

ハジメは、薫はやる時は絶対にやる覚悟があると理解した。しかも、皐月が関係する事なら徹底的に―――それこそ皐月の幸せを邪魔する輩は全て排除する可能性が恐ろしく、そして頼もしく思えた。ハジメも嫁達に手を出す輩が居たら全力で対処するが、排除まではしようとはしないのである意味後ろ盾が出来た様なものだ

 

「・・・・・」

 

そんな中、大人深月は怪訝な表情をして世界地図と睨めっこしていた

 

「・・・深月どうした?」

 

「いえ、敵の尻尾や本体を潰したと言われればそうなのでしょうが・・・何処かしら違和感があって・・・」

 

「深月ちゃん、違和感があるなら是非言ってくれ」

 

「そうですな。大人の方の深月は直感能力に長けているので多少の違和感は何かしらの意味があるでしょう」

 

体担当の学生深月とは違い、精神担当の大人深月だからこそ事の引っ掛かりを感じているのだ

 

「・・・少し試したい事があります」

 

大人深月はそう言うと、トラ型のキメラの元に行き額をくっつけて目を閉じる。そして、大人深月から発する強大な魔力が屋敷を駆け巡る

 

「ちょ!?概念魔法を創ってるの!?」

 

「概念魔法・・・か。皐月達から説明されたがこれが作られる瞬間・・・深月ちゃんは大丈夫なのか?」

 

「あ、はい。深月なら十中八九大丈夫です。一人でニ~三個の概念魔法を創る事が出来る魔力量を持っています」

 

「・・・ハジメ君、深月ちゃんを便利道具扱いしてはいけないよ?」

 

「絶対にしません。というより、目を離すと色々と創っていてそれを把握するのが大変なんです。これでも皐月が見張っているから酷くはありませんが、深月一人の時だとこれがあったらいいな感覚で作るので薫さんの方でも注意して下さい。いや、本当にお願いします」

 

「おい修治(しゅうじ)(※執事長の名前)、お前深月ちゃんに要らない事言っていないよな?」

 

「・・・・・」

 

「ハジメ君、執事長を縛り上げてくれ」

 

「了解です!」

 

「私は悪くない!私は悪くないぞぉぉーーーーー!!」

 

執事長はハジメに縛られ正座させられ、薫が何処からともなく取り出した石板を足の上に置いた

 

「知っている事を全て話せ。なぁに、ちょっとばかりハジメ君の作ったアーティファクトの体験者第一号になればいいだけだ。安全を確認している上での事なので大丈夫だろう?」

 

「・・・高坂家に仕える者としてありとあらゆる事に対処するのは当然でございます」

 

「取り敢えず三ヵ月給料を五割カット+体験者一号だ」

 

「薫さん、足りませんよ。あのトラと一緒に遊ぶ事を義務付けましょう」

 

「!?」

 

「おお、それはいい考えだ!ハジメ君の案も追加しようじゃないか!」

 

執事長の罰は決まり、深月がこちらに帰って来た。その表情はとても良い笑顔で、何かしらの証拠を掴んだ事を意味している

 

「あのキメラ・・・名前はポチにしましょう。記憶を覗く概念魔法を創りポチの記憶を見た結果、色々な情報が得られました。取り敢えず似顔絵を描きましょう」

 

ポチが見たであろう重要人物達を紙に書き起こし終えた深月は、薫にその情報を手渡した。その資料を見た薫は、額に手を当てながら八重樫家の鷲三お祖父さんと虎徹さんに渡して結果を伝える

 

「この主要人物達だが、今回の自殺した一味の中に誰一人入っていない」

 

「これは尻尾切りという事ですね」

 

「私達が掴まされた情報は表層だったという事か」

 

これでは見つけるのに苦労すると思った男性陣達を他所に、深月が世界地図に一つ一つマークを付けていた。場所はバラバラで、気になる所にチェックを入れているのかと思っていると

 

「千里眼で覗いた結果、このチェックをした場所が会合する拠点です」

 

「もうさ・・・深月無双じゃねぇか。敵には憐れみすら感じる」

 

「よし、早速人員を送ろう。米国の彼等に連絡を取ろう。深月ちゃんも久しぶりに彼等と会いたいだろう?」

 

「ふふっ、私の変わり様に驚愕する姿が容易に想像出来ます」

 

最初は深月だけで行く予定だったが、安全を兼ねてハジメも付いていく事となった。転移門は使わず、飛行機を使っての移動だ。深月はいつものメイド服ではなく私服で、ハジメは内心でコロンビアしていたのは言うまでもないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欧州に入国した二人が最初にした事は観光だ。深月の装備は熟練のカメラマンが使う様なゴツイカメラが数個―――周囲の景色や料理を撮影している。ハジメとしては深月と二人きりのデートは初めてだが、これまでの皐月達とのデートで培った経験を活かしてアクセサリーを買ったり撮影スポットの情報を収集したりしていた

おおよそ一日観光をした後、人が疎らの公園に集合の情報を元に向かう。遠目から見ればカメラを片手に景色を撮影していた米国人達を発見

 

「それでは合流しましょう」

 

「いや・・・何となく分かっていたがあいつ等?二十代が殆ど居ねえぞ。むしろ三~四十代が沢山居るんだが」

 

「私が訓練を受けた年齢は一桁の時ですから」

 

ハジメは深月の後に付いて行き、同行する米国人達を見ながら足手纏いは要らないんだがなぁと心の中で愚痴を漏らす。しかし、ここは何も言う訳にはいかないと思いつつ普通に近付き―――

 

「ッ!?」

 

咄嗟に身体が反応して死角から飛んできた飛来物をキャッチする。義手の方の手で取ったそれを見ると、小さな針が付いてあるゴム弾だった。尚、深月は常人では目視出来ない速さで弾丸をナイフで叩き落としている

 

「ほう、それに咄嗟に反応出来るか。深月ちゃんと男が来るから試してみたが、そこそこってところか」

 

「・・・いきなり喧嘩売ってんのか?」

 

「おおう怖い怖い。だが、警戒心が薄いんじゃねぇか?もう既に敵の胃袋の中に居ると思って行動しろ。異世界で濃ゆい生活を送っていたとはいえ、こっちみたく銃弾飛び交う場所じゃねえだろ?」

 

「ちっ!忠告感謝するよ」

 

ハジメは、平和な日常を謳歌していて少しだけ油断していた事に舌打ちしつつ切り替えた

 

「ひゅぅ~!いい集中力じゃねぇか」

 

「隊長~、この二人って使えるんっすか?」

 

この中に居る一番若い者が尋ね、ハジメに注意をした隊長が溜息を吐きつつ憐れみの視線を向ける

 

「新兵、ここは普通の隊じゃねぇ。自分の力量はともかく、相手の力量すら測れないなら辞めちまえ」

 

「隊長優しぃ~」

 

「逆にこいつが足手纏いじゃね?」

 

「お前等もしただろう?この中の新兵達は拠点守備だ」

 

この隊長の決定に腹が立ったのか、新兵達が動こうとした。しかし、体は動かなかった

 

『っ!?』

 

「お~、久しぶりに見たなぁ。深月の秘孔刺し」

 

「打ち込まれた事にすら気付いていない様じゃ駄目だぜ?しっかし、深月ちゃん大きくなったなぁ~。俺も年だなぁ」

 

「子供が成長するってこんな感じなんですね」

 

深月と久しぶりに会った隊員達は、過去の事を思い出しつつそれを懐かしんでいる。そして自分達が年老いたと実感させる。そんな中、変わらない隊員も居たりする

 

「み、深月ちゃん。この作戦が終わったら膝枕を」

 

「ずるいぞぅ!俺は一緒にお買い物!!」

 

「頭をなでなでしたい!」

 

「おうこらお前等!久しぶりの再会だからってはしゃぐんじゃねぇ!」

 

隊長が部下達に喝を入れて元の調子に戻していく。それを見ていたハジメは、「俺の深月にそんな事させるわけないだろ」と口漏らしてしまい深月にチョップされて悶絶しているのは言うまでもない

 

「うわぁ~、深月ちゃん強くなりすぎぃ」

 

「見ろよ、ただのチョップで足元が陥没してるぞ」

 

「尻に敷かれる男だな」

 

ハジメを見てケラケラと笑う隊員達だが、隊長が全員にアルバムを手渡したと同時にそのふざけた様子もすっかりと形を潜める

 

「現物は各所に隠してある。それと、坊主はご自慢のアーティファクトやらを使うなよ?ここは地球で異世界じゃねえんだ。未知の力にはそれ相応の隠匿が必要になる。今回は都内の戦いとなるから違和感のない様に立ち回れ」

 

「ハジメさんは単独行動厳禁です。敵が混乱している中の鎮圧係と言った方が分かり易いですね?」

 

「それはいいんだが・・・深月の立ち位置はどうなるんだ?いつもみたく先行するのか?」

 

「あ~、坊主が知らねぇのは当たり前か。深月ちゃんはスナイパーだ」

 

隊長が指差す先には大きなバイオリンケースが置かれていた。深月がウキウキでそのケースを開けると、当時愛用していたライフルが形を変えて収められていた

 

「こいつは高坂家と元帥達の合同チームによって作られた対物ライフルだ。誰にも扱えないとお蔵行きになった代物だが、深月ちゃんなら余裕だろ?高坂の旦那には色々と教えてもらってるぜ」

 

「うっわ、隊長マジっすか?これって超重くて誰にも扱えないって言ってたのを深月ちゃんが扱えるってやっぱ流石だわ」

 

「ふむ、お嬢様に作っていただいた五十mm対戦車ライフルよりも幾分か小さいですが、問題なく扱えます。ふふふっ、昔を思い出しますね」

 

深月の呟きを聞いた隊長を含めた隊員達は、笑顔で固まっていた。それもそうだろう、五十mmの対戦車ライフルなんて聞いた事がなく、破壊力がどれだけあるのかも想像すら出来ない

 

「さ、さぁ~て、やるぞお前等~。これが終わればバーベキューを奢ってもらえるぞ」

 

「よっしゃあ!高坂家がスポンサーだから良い肉が食えるぜ!」

 

「俺は深月ちゃんの手料理を食べたい」

 

「後で頼もうぜ!」

 

彼等は作戦後のバーベキューを楽しみに各々持ち場へ向かう。ハジメも手渡されたアルバムに偽装された情報資料を頼りに一般人を装いつつ手慣れた感じで荷物を受け取った。尚、深月は町を見下ろせる山に赴いた

 

ふむ、弾丸も特別製ですね。貫通力と破壊力を両立させた逸品は流石プロフェッショナルと言うべきでしょう。飛距離は約五km―――かなり飛びますね。今日は無風ですのでもう少しだけ伸ばす事も出来ますね

 

ケースから対物ライフルを取り出して組み立て専用のスコープを着けようとしたが、身体強化を眼に集中させる事で遠くまで見る事が出来たので付けるのは止めた。メリットは狙撃位置を変えられるという事だ

インカムを装着し終えた深月は、強化した視力で目標のアジトの様子を窺う。そこに気配感知と熱量感知を用いる事で正確な位置が割り出す事が出来た

 

『こちらメイド、ロングショットの準備完了しました。そちらの用意は如何ですか?』

 

『こちらアルファ、ロングショットは何時でもいいぞ。但し、枚数は言ってくれよ?』

 

『そうですね・・・予備の為に十枚いきます』

 

『こちらベータ、了解した』

 

深月は狙撃準備が完了したので、開幕の一発―――窓際に居る男に狙撃。弾丸は真っ直ぐ頭部に吸い込まれて相手を即死させた。それと同時に、アジトの中に居る気配が慌ただしく動き盾になるであろう物置等を背にした。さて、ここで普通なら攻撃を止めるが深月の場合はちょっとしたズルでこの問題も解決してしまう

 

気と魔を螺旋コーティングしてシュートッ!はい、もう一人やりました

 

深月の感知先には盾にしていた障害物諸共爆砕して体をミンチにされた者だった。また一人、また一人と殺され、残りは三十人ほどまでに減った。それと同時に全隊が突入した

 

「ひゃっはー!深月ちゃんの洗礼はどうだぁ!」

 

「首置いてけぇ!」

 

「武器を置いて投降は却下だぜ!」

 

「おっと、逃げても無駄だぜ。なんせ、こちらには凄腕のスナイパー様が居るからなぁ!」

 

深月が爆砕した壁から突入する班と正規の扉から突入する班に分かれて行動しており、敵はみるみると減った。しかし、その敵の中にはリストアップされた重要人物は居なかった。敵もよくやるが、最早詰みなのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁああああ!何故あの変態共が居る!?何故このアジトがバレたのだ!?くそっ!逃げ出せたのは私一人だけだとは・・・。しかし、この通路は私以外誰も知らない脱出経路だ)

 

たった一人の生き残りである所長は必死に足を動かして出口へと走る。時々後ろから聞こえる足音に恐怖しつつ逃げる。曲がり角にぶつかりながらも、走る勢いを殆ど削らない様に逃亡するその姿はとても醜悪だ。そして、遂に出口の一歩手前まで辿り着いた所長は安堵の笑みを浮かべながらその扉に手を掛けて開いた

 

「私は勝った!私はかっ―――」

 

「ご苦労様でした」

 

所長が扉を開けた先には、深月が立っていた。その時点で所長の頭の中には宇宙猫が沸いて現状を何一つ理解出来ないでいた。そして、ようやく理解が追い付き

 

「ぎゃああああああ!?助けっ、助けてくれぇ!?」

 

来た道を戻り、鉢合わせた隊長達に蜂の巣にされたのだった。黒幕の悲しき最後―――、ハジメとしては捕まえて情報を取り出す方が良かったのではないか?と提案したがそれは却下された

 

「坊主の言う通り情報は貴重だ。だが、こいつのパイプは国の裏とも繋がっている。切り捨てられる事がない人材というのは、引き抜かれるという事だ。何処の国もこいつの身柄を欲していると言った方が分かり易いか?」

 

要するに生きているだけで有害な人物なのだ。国からは裏の取引で保護される可能性もあり、それは彼等の国でも起こりうる可能性も無きにしも非ず。次の機会は与えない事が重要なのだ

 

「やっぱり裏で買収があるのか」

 

「こっちでは日常茶飯事だが、元帥が睨んでいるから易々とは出来ねぇさ。もし悪の重要人物を引き抜きを発見した際、俺達全員高坂家の私設傭兵になるのが決まってるからな!元帥も俺達同様で、「引き抜きしてくれないかな~」ってぼやく程だ。俺達は元帥の命令でさっきの奴は必ず殺せって命令されてるから殺したんだが・・・正直言うと拘束して持ち帰りたかったぜ。ほぼ確実に高坂家に移動できるかもしれなかったのによぉ~」

 

「それだけあの馬鹿は価値があったと?」

 

「遺伝子系で右に出る者はいないって聞く程だからな。どうせ重要人物達の寿命を伸ばせやらクローンを作れやらと言われるんじゃねぇか?そういう点で言うなら坊主達も気を付けろよ」

 

隊長はハジメの背を軽く叩き、部下達と共に事後処理に向かった

 

「人生経験が違うな」

 

「あれでも彼等は最前線で戦う特殊部隊ですから当然です。ささっ、早急に撤収準備をしてください」

 

深月は、話しながらライフルを全て片付けて周囲に痕跡が残らない様にキレイキレイし終え彼等の後を追った。ハジメも深月の後を追って秘密の通路の前を通り過ぎた際、微かな振動の音が聞こえた。しかし、それは一瞬だった

 

「・・・気のせいか?」

 

ハジメはジッと通路の奥を見るが、怪しい所はなかったので心の隅に置いて皆と合流した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒幕の研究者達を全て排除し終えた皆は、高坂家が所有する別荘に訪れていた。そして、いつの間にか別荘へと訪れていた嫁-ズとその両親と元帥がBBQを楽しんでいた

 

「パパー、お帰りなの!」

 

ミュウが駆け寄り、ハジメが高い高いしてしっかりと父親をしている。その様子を見た隊員達は、BBQを楽しんでいるハジメの嫁達を見てハジメに舌打ちをする

 

『チッ!』

 

ハジメはゲスい笑みを浮かべながら隊員達を見ていると、皐月が後ろからハリセンで頭を叩き彼らに謝罪した。その後、ハジメは深月にジト目で睨まれてタジタジになり彼等に謝罪した。その様子を見ていた彼等は、嫁の尻に敷かれている旦那だと理解した

 

「さて、隊長報告をしてくれ」

 

「分かりました。資料に書かれていた者は全て排除、念には念を入れて頭部と心臓に一発撃ち確実に殺しました。そして、最重要である黒幕の研究者は蜂の巣にしたので生きてはいません。脈もない事も確認しました」

 

「資料に書かれていない者はどうした?」

 

「その場所に居た者達は全員です」

 

「分かった。これで全て解決した。皆は存分に英気を養ってくれ」

 

元帥の一声で隊員達は歓声を上げながら肉へと群がった。ハジメも彼等に肉が奪われないように走って向かおうとした時、ふと深月が一点を見ている事に気付き立ち止まる。深月が見ている先は山―――秘密の通路の出口があった場所だ

 

「深月、山奥を見つめているがどうした?」

 

「・・・嫌な予感がします」

 

「おいおいマジかよ。嫌な予感ってどんな風だ?」

 

「えぇっと・・・気が山奥に流れていると言えばいいのでしょうか。・・・いえ、これは吸い取られている?」

 

「薫さんヤバイですっ!深月が嫌な予感するって言ってます!!」

 

ハジメの声を聞いた皆の動きはピタリと止まり、明るい空気から一変して重苦しい空気に変わる。皆が深月の元に集まり、視線の先の山を見る。しかし、深月以外の者は何がおかしいのかが分からなった

しかし、変化は一瞬で起きた。森に住んでいるであろう鳥や動物達が一斉に逃げ出した。その先には街がありかなり危険だと思われるが、町の方も野生動物達が逃げていた。特に、飼い犬は山に向かって何度も吠えたりしていた

 

「来ます」

 

「かなり地中深くに眠っていたのですね」

 

深月は地中深くから何かが出てくる事に気付き、皆に見える様に指をさす。皆がその先を見ていると、地面が隆起して爆発したかの様に土が飛び散る。そして、現れたものを見たハジメがありのままを呟く

 

「おいおい、地球はいつからこんなファンタジー世界の仲間入りになってんだ?"ゲームで言うならアースドラゴン"か」

 

翼は無いが、強靭な四肢と長い首に大きな頭―――遠目からでも分る甲殻。山と見間違う程の大きさの巨大なドラゴンが姿を現したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




深月「最後のあれ何ですか?」
布団「何ですかねぇ~?」
深月「全く・・・どうしてこうも厄介な事ばかり起きるのですか!」
布団「それは運だよ」
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